志位和夫 日本共産党

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2026年5月21日(木)

核兵器廃絶、日米進歩勢力の連帯、理論交流--北米を訪問して

大学人と日本共産党のつどい 志位議長の講演


 日本共産党の志位和夫議長が16日の「大学人と日本共産党のつどい」で行った「核兵器廃絶、日米進歩勢力の連帯、理論交流――北米を訪問して」と題する講演は次のとおりです。

北米訪問の党代表団

志位和夫議長(団長)
緒方靖夫副委員長・国際委員会責任者
吉良よし子常任幹部会委員・参院議員(ニューヨークの日程のみ)
小林俊哉国際委員会事務局次長
遠藤誠二「しんぶん赤旗」記者

 みなさん、こんにちは。ご紹介いただきました、日本共産党の志位和夫でございます。全国学者・研究者後援会のみなさんの日頃のご支援に、まず心からの感謝を申し上げたいと思います。

 これから北米訪問の報告を行います。報告は2時間あまりの予定ですけれども、頑張って話しますので、楽しんで聞いてください。どうか最後までよろしくお願いいたします。(拍手)

 日本共産党代表団は、4月23日から5月6日まで、アメリカとカナダへの訪問を行いました。私たちの行動の概略については、お配りした資料をご覧いただきたいと思いますが、党代表団は、三つの活動目標をもってのぞみました。

 第一は、2026年NPT(核不拡散条約)再検討会議(4月27日~5月22日)に、市民社会の一員として参加して、会議が「核兵器のない世界」にむけて積極的成果を収めるよう、働きかけを行うことです。

 第二は、アメリカ民主的社会主義者(DSA)をはじめ、米国の左翼・進歩勢力と本格的な連帯の関係を築くことです。

 第三は、党綱領と党大会決定にもとづいて取り組んできた党の理論活動の到達点――とくに自由論の発展を踏まえて、理論交流を行うことです。

 それぞれで代表団の活動は、重要な成果をあげることができたと思います。私たちは、多くの新しい友人を得るとともに、今後の党の活動の発展にとっての多くのヒントをつかむことができました。党代表団を送りだしていただいた全党と後援会員のみなさん、一人ひとりの団員のみなさんの献身的な大奮闘に私は心から感謝いたします。また、NPT再検討会議にあたって、さまざまなご協力をいただいた原水爆禁止日本協議会(日本原水協)のみなさんに、心から感謝を申し上げたいと思います。

1、NPT再検討会議の成功にむけた活動

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(写真)NY行動広島県代表団とともに参加する志位議長(最前列右から2人目)と吉良議員(同4人目)=4月26日、米ニューヨーク

 報告の第一の主題は、NPT再検討会議の成功に向けた活動です。

 党代表団は、4月23日から29日までニューヨークに滞在し、NPT再検討会議の成功にむけたさまざまな活動に取り組みました。会議主催者、国連担当者、各国政府に要請文をもって働きかけを行いました。

 4月26日には、NGO(非政府組織)のみなさんが取り組んだ反核平和パレードと国際会議に、日本から参加した原水爆被害者団体協議会(日本被団協)、日本原水協、原水爆禁止日本国民会議(原水禁)、日本生活協同組合連合会(日本生協連)の代表団のみなさんとともに参加をいたしました。その場で、イギリスのジェレミー・コービンさんと再会し、あいさつを交わし、エールを交換しました。米国の反核平和活動家のみなさん、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のみなさんとも懇談して、要請文の内容を伝えました。

再検討会議にのぞむ党の基本姿勢と、要請文について

すべての締約国が受け入れ可能で、「核兵器のない世界」にむけ積極的意義をもつ内容を

 今回の再検討会議は、たいへんに大きな困難のもとで行われています。核保有国による無法な戦争が横行し、核兵器問題でも逆流が強まっています。過去2回の再検討会議が成果文書を発出できず、NPT体制そのものが深刻な危機にあります。そうした状況を考慮して、私たちは、党としての要請文をどうするか、検討を重ねて練り上げました。

 日本共産党の核兵器問題についての基本的立場は、「核抑止力」論をのりこえて核兵器禁止条約を前進させることと、NPT体制を「核兵器のない世界」にむけた枠組みとして発展させること――この両方を「車の両輪」として進めて、核兵器廃絶に道を開くというものです。

 ただ同時に、今度の再検討会議については、どういう要請をするかは考えどころです。わが党の要請内容が、現在の困難な状況にあわない過大なもの――はじめから全会一致での採択が困難となるような内容のものとなったら、そうした要請は力をもたないものになってしまうでしょう。他方、再検討会議の合意が、これまでの到達点を後退させるものとなったら、「核兵器のない世界」は遠のくことになります。この両面をよく考慮しなければならないと考えました。

 そこで、現在の状況下でも、核保有国も否定できず、すべての締約国が受け入れ可能で、かつ「核兵器のない世界」にむけて積極的意義をもつ内容――最小限かつ積極的な要求を要請文にまとめて、その内容で締約国のコンセンサスを得て、成果文書を発出してもらうように働きかけよう――そういう基本姿勢に立って活動することを確認いたしました。

4点で要請文をまとめた--核保有国にNPT第6条の履行を迫ることに力点

 そうした観点から、以下の4点を盛りこんだ成果文書を発出してほしいと、要請文をまとめました。

NPT再検討会議にたいする日本共産党の要請文(要請項目)

 1、すべての締約国が、国連憲章に従い、武力による威嚇または武力の行使を慎むこと、誰によるものであれ国連憲章に反する行動に反対することを表明し、順守する。
 2、すべての締約国が、「核兵器の使用または使用の威嚇を行わない保証を非核兵器国に与える」(2010年再検討会議)ことを再確認し、具体化・履行する。
 3、NPT第6条の履行の停滞、後退を打開するために、これまでの再検討会議で確認された次の諸点を、再確認し、具体化・履行する。
 「核兵器の全面廃絶に対する核兵器国の明確な約束」(2000年再検討会議)
 「核兵器の使用による破局的な人道上の結果に関する深い懸念の表明」(2010年再検討会議)
 「核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを確立するための特別な取り組みを行う」(2010年再検討会議)
 4、中東を非核・非大量破壊兵器地帯にする1995年の再検討会議の決議を再確認し、具体化・履行する。

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(写真)講演する志位和夫議長=16日、党本部

 わが党の要請文は、四つの項目からなっており、どれも重要なものだと考えますが、とくに第3項に力点をおいてつくりました。すなわち、現在のNPT体制の危機というのは、核保有国が、NPT第6条にもとづく核軍備撤廃にむけた義務を果たさず、それに逆行して核兵器の増強や核兵器使用の威嚇を行っていることから生まれています。そのことを重視し、核保有国に第6条にもとづく核軍備撤廃のための義務の履行を強く求めることに力点をおいたものとしました。

会議主催者、国連担当者などの受け止め--要請文の立場はピッタリとかみあった

 わが党の要請文は、再検討会議を成功させようと、たいへんな困難なもとで苦労され、力をつくしている会議主催者と国連担当者などに、会議の成功を真剣に考えた提案として、きわめて積極的に受け止められました。

再検討会議議長のベトナム・ビエット大使--「要請の4点はすべて同じ方向」

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(写真)NPT再検討会議議長のビエット・ベトナム国連大使(右端)と会談する志位議長(中央)と吉良議員=4月29日、ニューヨーク

 再検討会議議長のベトナムのドー・フン・ビエット大使との会談(4月29日)は、限られた時間ながら、内容の濃い、心が通いあうものとなりました。

 大使は、日本とベトナムの関係の発展、日本共産党とベトナム共産党の強い絆の重要性にふれたうえで、こうのべました。

 「日本共産党の要請の四つのポイントはすべて、大多数の締約国がその方向で前進をめざしたい、同じ方向だと思います」、「その(要請文の)内容は(成果文書の)草案をつくるときに考慮に入れたい。NPT再検討会議のプロセス全体でも考慮に入れたい」

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(写真)中満国連事務次長(右端)と握手する(左へ)志位議長、吉良参院議員=4月24日、国連本部

 このように約束してくれました。

 たいへん強い印象に残ったのは、大使が、次のように決意を語ったことでした。

 「今回の会議の議長になるということで、昨年の8月から準備し、広島を訪問しました。広島平和記念資料館を訪れ、また被爆者の方がたのお話をおうかがいしました。心に残る体験でした。ベトナム人は、戦争による荒廃のイメージは強く心に響きます。人道的な被害を目の当たりにしました。そこで、締約国、関係者が前向きな中身で成功することにむけ努力することが重要との決意を固めました」

 私は、「被爆者の声を聞くことから始めていただいたことに、とりわけ感謝します」とのべ、私自身も何度もベトナムを訪問してきましたが、枯れ葉剤の被害が今も続いていることに心を痛めていること、両国は残虐兵器の被害を受けたという共通の体験をしており、両党で核兵器廃絶のための協力をさらに強めたいとのべました。

 大使は、「すべての締約国、関係者と議論し、実際的、かつ履行可能な成果文書を出そうと決意を固めています。私の責任で、最初の草案を2週目半ばで出します。それで議論を収斂(しゅうれん)できるようにしたい」、こういう強い決意を語りました。私が、「困難ななかで成果文書を出せばとても意義あるものになります」とのべますと、大使は「全くその通りです。懐疑論や悲観論もありますが、困難な時だからこそ新しいチャンスが開けます」と語りました。

 私たちは、要請活動を行うなかで、私たちが会った会議関係者が、そろってビエット大使の奮闘に強い信頼を寄せていることを感じました。これはベトナムが、自主独立と国際協力を外交の基本にすえ、世界のすべての国との友好関係を築く外交を実践していることへの信頼だと感じました。ベトナムに行きますと、敵対関係にある国が一つもありません。世界のすべての国と友好関係を結んでいます。日本共産党は、ベトナム共産党と、長年にわたって核兵器廃絶で協力をしてきました。そのベトナムが、いま国際的地位と信頼を高め、この重要な会議の責任者として奮闘していることは、ほんとうに心強くうれしいことであります。

 大使は、会談終了後、私たち代表団を下のフロアの玄関まで見送るという丁重な対応をしてくれました。この会談はベトナム側も写真入りで報道しました。

再検討会議第1委員長のガーナ・クマー大使--「要請は会議のハートの部分」

 再検討会議第1委員長のガーナのサミュエル・ヤオ・クマー大使との会談(4月28日)も重要なものとなりました。

 私たちの要請に対して、クマー大使は、「指摘されたポイントは再検討会議のハートの部分です。これらの四つのポイントに収斂させるのが、私の責任です」と応じました。「ハートの部分」――核心部分という表現が印象的でした。私が、「ぜひ成果文書を出してください」と要請すると、大使は、「もちろんです」と強い決意を語りました。

 第1委員会は、再検討会議のなかでも「核軍縮」を議論する全体の要にあたる委員会であり、その責任者の発言もたいへん心強いものでした。

中満泉国連事務次長--「まったく同じものを考えています」

 中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表は、私たちとの会談(4月24日)で、国連の担当者としての強い決意を語りました。

 中満事務次長は、「今回は、絶対に、(成果文書を)出すという立場です」と決意を語り、私たちの要請文について、「私たちとしても、まったく同じようなものを考えています」とのべました。私が、「過去のものの再確認、履行であっても、核兵器をめぐる安全保障環境が悪くなるもとで、成果文書を発出することは積極的な意義があると思います」とのべますと、中満事務次長は、「その通りだと思います。…こういう状況だからこそ、なおさら今回やる意義があります。…現在の危機的状況を脱し、すべての国にとって安全保障が確保できる状況にむかって反転するための機会にしなければなりません」とのべました。危機をチャンスに変える反転の会議にする、こういう決意を語ったのです。

 私は、中満事務次長とは、2017年の核兵器禁止条約の国連会議で、ニューヨークで初めてお会いして以来、広島でのシンポジウムでも討論するなど、何度も意見交換し、互いの立場をよく理解しています。会談は45分間に及びましたけれども、議論が深くかみあって、心が通いあうものとなったと思います。

キューバ・グスマン大使、オーストリア外務省・ガルホーファー部長

 キューバのエルネスト・ソベロン・グスマン大使にも要請を行いました(4月23日)。大使は、「要請は適切な内容であり、キューバ政府の立場と共通しています」と賛意を表明し、「要請内容は最小限必要なものですが、現状ではそれさえも難しい面もあります。しかし何らかの成果文書が出せるよう努力していきます。いまクレージーな戦争が行われているもとで、国連憲章と国際人道法を守らせる努力が必要です」と語りました。

 キューバのグスマン大使は、第1委員長をつとめるガーナのクマー大使との会談をアレンジしてくれるなど、党代表団に対して親身な協力をしてくれたことも報告しておきたいと思います。

 キューバのグスマン大使とは、トランプ政権によるキューバに対する燃料封鎖や軍事攻撃の動きに断固反対するために連帯することでも固く一致をいたしました。キューバへの燃料封鎖は、いま深刻な人道的危機を引き起こしています。大使が、私たちに、「電力不足のため約10万人が手術を待ち、うち1万1千人が子どもです」と苦境を語ったことが胸に刺さりました。国際法を蹂躙(じゅうりん)する“集団的懲罰”を許してはなりません。この暴挙を一刻も早く終わらせるために日本からも連帯の声を広げることを強く呼びかけたいと思います。

 オーストリア外務省のガルホーファー軍縮・軍備管理・不拡散担当部長(大使)は、私たちの要請(4月29日)に対して、「強いコミットメントに感謝します。提示していただいた4点を中心に議論が深まると思います。そのプロセスを進めたい。日本からの強い関与はありがたい」とこたえました。

 党代表団は、要請文を、日本政府の国連代表部の鈴木孝宏参事官にも手渡しました(4月24日)。すべての締約国にメールで要請文を送りました。メキシコの駐日大使、イランの国連大使には個別に要請を行いました。

 お話ししてきたように、会議主催者、国連担当者のみなさんは、たいへんに大きな困難を自覚しながらも、強い決意をもって成果文書の発出のために奮闘しています。2週目半ばに草案を出すというのも、前回の失敗の教訓を踏まえて、何としても成果文書を実らせようという立場からのものです。日本共産党の要請文は、この会議を成功させたいと努力されている方々の気持ちにかみあい、やろうとしていることにピッタリとかみあったという実感を強くしたということを報告したいと思います。

一般討論の特徴、成果文書案(5月13日)について

三つの流れが浮き彫りに--NPT第6条履行を迫る国が7割を超えた

 4月27日から始まった一般討論、30日から始まった第1委員会での討論は、わが党の要請文で求めている方向が、国際社会の圧倒的多数であり、世界の本流であることを示すものとなっています。討論をつうじて三つの流れが浮き彫りになってきました。

 第一は、核保有国にNPT第6条の履行を迫り、具体的行動を起こすことを求める流れです。非同盟運動代表のウガンダ、新アジェンダ連合代表のメキシコ、核兵器禁止条約締約国代表の南アフリカ、ASEAN(東南アジア諸国連合)代表のフィリピン、南太平洋非核地帯代表のソロモン諸島、中央アジア非核地帯代表のキルギス、中南米カリブ海代表などが、この立場を主張しました。私たちが数えてみると、NPT第6条の履行を迫った国は、締約国の7割を超えました。圧倒的多数です。

 第二に、一部の国――核保有国と核兵器に依存する国から、「核抑止」を安全保障に不可欠なものとする立場がのべられました。核保有の永久化につながるこの主張は、NPT第6条によって核保有国に課せられた核軍備撤廃という義務に反するものといわなければなりません。

 第三に、一部の国から、核兵器の「透明性」を高めることや、「核リスクの低減」が先決だという立場がのべられました。日本政府もこの立場をのべました。「透明性」を否定するものではありませんが、いくら「透明」にしたところで核兵器の危険性がなくなるわけではありません。「核リスクの低減」といいますけれども、核兵器が存在するかぎり、その「リスク」がなくなることはありません。

 こういう流れがくっきりと浮き彫りになる中で、核保有国にNPT第6条の履行を迫る声こそ、国際社会の圧倒的多数の声であることが明らかになりました。また、その履行をはっきりと迫るかどうか――これがNPT体制をめぐる最大の対決点となっていることが示されました。

 核保有国の第6条の不履行に対する批判が、多くの非核兵器国の代表からあがりました。私たちがとりわけ印象深く聞いたのはカメルーン代表の訴えです。カメルーン代表は、「われわれは核兵器国に対し、第6条を順守するよう求める。核軍備の近代化を非難する。サイクルは完結し、何も変わることなく、5年後にまた同じ呪文を携えて戻ってくる」、このように発言しました。核保有国は「同じ呪文」を唱えているだけで、少しも進歩していないではないか。再検討プロセスで核軍縮の前進がないことを強い口調で非難しました。これは非核兵器国の不満を代弁した象徴的な発言だったと思います。

成果文書案を心から歓迎、この方向で成果文書の発出を

 そうした討論を踏まえて、5月13日、ビエット議長によって、成果文書案が明らかになりました。それは、わが党の要請文の内容を全面的に反映したものとなっています。党の要請文の内容がどのように反映されているかを、項目ごとに整理してみました。

党の要請文の内容を反映した成果文書案(5月13日)

 (要請第1項に関して)「武力の行使または武力による威嚇に関する国連憲章および国際人道法を順守する義務を再確認する」
 (要請第2項に関して)「非核兵器国に対して核兵器の使用および威嚇を行わない」
 (要請第3項に関して)「すべての締約国が条約第6条に基づき、核軍備競争を停止し、核軍縮に関する効果的措置についての交渉を、誠実に行う法的義務を負っていることを再確認する」。「2000年および2010年の再検討会議で行われたコミットメントの履行をすすめる」。「核兵器国が自国の核兵器の完全廃絶を達成するという明確な約束を想起する」。「核兵器のいかなる使用も、破滅的な人道上の結末をもたらすことを認識する」
 (要請第4項に関して)「1995年再検討・延長会議で採択された『中東決議』の履行へのコミットメントを再確認する」

 私たちの要請文の内容を、全面的に反映した内容になりました。日本共産党は、この成果文書案を心から歓迎するものです。すべての締約国が、この方向で5月22日の会議最終日までにコンセンサスをつくりあげ、成果文書として発出することを強く要請するものです。

 5月11日、参院決算委員会で、吉良よし子議員が、ニューヨークでの活動を踏まえて、高市首相に対して、わが党の要請文の方向が実るように、日本政府が積極的役割を果たすことを提起しました。その際、吉良さんは、再検討会議での日本政府代表の発言が、「第6条の履行」を明示的に求めなかったということを批判し、高市首相に対して、「日本政府は、核兵器国が第6条の義務を果たしていると認識しているのか」という、もっとも本質的な問いを突き付けました。首相は、「一概に答えることは困難」と答弁を回避しました。「一概に答えるのは困難」と言いますが、核兵器国が核軍備競争に走り、第6条の義務に反することをやっているのは、誰の目にも明らかではないですか。しかしそういえない。ここに日本政府の態度の根本的問題点があることを率直に指摘しなければなりません。吉良さんは、ニューヨークでの一連の要請行動で、「帰国したら国会で日本政府に責任を果たすよう質問します」と約束し、どこでも「期待します」という声が寄せられましたが、この“国際公約”を立派に果たしたということが言えると思います。(拍手)

 唯一の戦争被爆国の政府の立場が厳しく問われています。成果文書案が採択され、「核兵器のない世界」にむけて一歩前に進む会議となるよう、日本政府が、積極的役割を果たすことを、私はこの場でも強く求めたいと思います。(拍手)

日本共産党の野党外交の力、党綱領の世界論の生命力に確信をもって

 今回の再検討会議の行方がどうなるかは、現瞬間では予断をもっていえません。核保有国などからの逆流も起こりえます。しかし、間違いなく言えることが二つあります。

党の野党外交の力--一貫した活動の積み重ねが、国際的信頼を広げている

 第一は、日本共産党の要請文が、この会議を成功させようと真剣に力をつくしている会議主催者や国連担当者などの努力方向ともピッタリと一致したものであるとともに、世界の圧倒的多数の声に立ったものであることが明らかになったということです。

 私は、ここには、日本共産党の野党外交の力が示されていると思います。わが党は、被爆者を先頭にした市民社会のみなさんと協力して、「核兵器のない世界」の実現にむけ、これまでのNPT再検討会議、核兵器禁止条約の国連会議、核兵器禁止条約の締約国会議などに一貫して参加し、奮闘してきました。この活動の積み重ねが、党の外交方針を確かなものとし、国際的信頼を広げていることを実感いたします。

「法の支配」にもとづく平和をつくる理性の声が国際社会の圧倒的多数に

 第二は、わが党綱領の世界論の生命力です。国際政治の表面だけ見ますと、トランプ米政権などによる無法な戦争が横行して、「法の支配」はいまや崩壊したかのようにも見えます。しかし、国際政治を深いところから捉えるならば、再検討会議の経過が示しているように、「法の支配」にもとづく平和を求める理性の声が圧倒的多数となっています。いま核保有国に第6条の履行を迫ること自体が、「法の支配」を求める行動であり、それが圧倒的多数となっていることに、私は今日の世界の大きな希望があると思います。

 ここには20世紀に起こった植民地体制の崩壊と百を超える主権国家の成立というわが党綱領が明らかにした世界の構造変化の力が働いています。こうした構造変化を促したものは、世界の人民のたたかいです。核兵器問題でも、ここまで前進をつくり、逆行を許さない最大の力となっているのは、各国の草の根からの市民社会の力です。ここに確信をもって、「核兵器のない世界」をつくるために力をつくそうではありませんか。(拍手)

2、米国の左翼・進歩勢力との連帯について

 報告の第2の主題に進みたいと思います。米国の左翼・進歩勢力との連帯について報告いたします。

 党代表団は、DSA(アメリカ民主的社会主義者)など、アメリカの左翼・進歩勢力と会談をもち、連帯の関係を公式につくりました。私は、これは、今後を展望して、きわめて大きな意義をもつ、今回の訪問の重要な成果だと考えます。

DSA(米民主的社会主義者)指導部との会談--ニューヨークで

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(写真)フセイン氏(右から3人目)らDSAメンバーと議論する志位議長(左から2人目)と吉良議員(その右)=4月29日、ニューヨーク

 DSAは、昨年11月に行われたニューヨークの市長選挙で、ゾーラン・マムダニさんの勝利を勝ち取るなど、いま世界でも、日本でも、大きな注目と期待を集めています。DSAは、この間、バーニー・サンダース上院議員の選挙キャンペーンのなかで急速に勢力を拡大して、全米で10万人を超える会員が活動しています。ニューヨーク市長選挙では、家賃軽減、バス無料、保育無料、市営スーパー設立など身近な要求とともに、ガザでのジェノサイド(集団殺害)の中止などを掲げ、10万人のボランティアが300万の全戸訪問を行って、みごとに勝利を勝ち取りました。

各人がめいめいに意見をのべ、私たちも応答するというユニークな会談に

 この間、DSA側から、日本共産党と関係をもちたいという連絡があり、今回の訪米の際に会談を行うことになりました。

 4月29日、ニューヨーク市内のDSA・ニューヨーク支部の事務所で、アーメド・フセイン全国政治委員ら全国役員4人の指導部、ニューヨーク支部役員2人と会談し、双方の協力と連帯の関係を公式に確立することで一致しました。

 事務所は、たいへんに小さいのです。「ここを拠点に巨大なニューヨークの市長選をよく勝ち抜いたものだ」と驚きの気持ちをもちましたが、小さいながらも明るい活気にあふれた事務所でした。

 司会を務めたDSAの同志がこう切り出しました。「それぞれの組織の活動を紹介し、話し合い、協力の課題についてアイデアを出し合い、議論しましょう」。それを受けて、私は、まず、次のような短いあいさつを行いました。

 「みなさんの活動を大きな期待をもって見てきました。ニューヨークでのゾーラン・マムダニさんの勝利をお祝いします。みなさんの活動の仕方を学んできました。ストリート対話や要求対話は私たちも全国で始めています。日本とアメリカは、太平洋をはさんだ隣国であり、経済、文化、歴史、人的な交流は深いものがあります。同時に、日本国民からするとアメリカの帝国に支配されている、支配・従属の関係にあります。ですから、日本とアメリカの左翼・進歩勢力が、今日を出発点にして連帯の関係を公式に確認し、双方が一致点で協力し、学びあうことになれば、たいへんに素晴らしいと思います」

 DSA側から東京都の清瀬市の市長選挙での(日本共産党員市長の)勝利へのお祝いがのべられました。よく知っているんですね。うれしい気持ちで受け取りました。

 この会談は、ユニークなやり方で進められました。DSA側が、各人がめいめいに意見をのべ、それに私たちも応答するというやり方です。本当に楽しい会談になりました。通常は、国際会談というのは、双方の団長同士が意見をのべあうというものです。それとはまったく違うやり方です。DSA側は、参加した6人全員が自由に発言しました。その主なものを、できるだけ雰囲気がわかるように紹介します。

身近な要求の課題とともに、「US戦争マシンを終わらせる」が綱領に

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(写真)「US戦争マシンを終わらせる」ことを宣言しているDSA綱領

 まず、こういう発言から始まりました。「DSAは日本に人を送って、みなさんの動きを学んでいます。沖縄の新基地建設反対、核兵器に反対する運動を学び教訓を見いだしています。共通の目標があると思います。アメリカの帝国主義をやめさせるということです。外国にある基地の閉鎖縮小などで、アメリカの帝国的なやり方を抑えこむことで協力できると思います」

 DSAがどんな活動に取り組んでいるかについては、次のような発言がありました。「選挙は、州レベルで議員を当選させることと、市のレベルでもゾーラン(・マムダニ・ニューヨーク市長)にみられるように取り組んでいます。政策的に、何よりも焦点にしているのは、高い家賃の問題です。無料保育も焦点です。財源は富裕層への課税(タックス・ザ・リッチ)です。州レベルでは公営住宅の建設などを提起しています。反戦運動、パレスチナ連帯の行動も行っています」

 アメリカ帝国主義とのたたかいについての発言が続きました。「アメリカ帝国主義は、世界中の国民だけでなく、アメリカ国民も抑圧しています。沖縄の米軍基地問題は重大で、中国に対して戦争をけしかけていることのあらわれです。ここに使われている軍事費のほんの一部でもあれば家賃補助や無料保育ができます。外国の基地をさらにつくることに反対することはメンバーで共有されています」

 核兵器問題については、「トランプ大統領が核実験の再開を言っています。NPT再検討会議に来られていると聞いて、この問題で協力できることがあれば提案いただきたい」という発言が出されました。

 沖縄の基地問題へ注目と連帯はうれしい驚きでした。そして、DSA側が、「外国の米軍基地の撤去、それによってアメリカ帝国主義をやめさせる」という根本問題をズバリ語ったことに大きな驚きを感じました。

 DSAの綱領(2025~26年)を見ますと、「US戦争マシンを終わらせる」という項目があります。「US軍事費の大幅削減、外国軍事基地の撤去、外国駐留軍の帰還」と書いてあります。これは、日本国民にとってもきわめて重要な要求です。もしもDSAが政権につけば、沖縄をはじめ日本の米軍基地の全面撤去への道が開かれるではありませんか。まさに「アメリカ帝国主義を終わらせる」という革命的な変革につながることになるわけであります。DSAが、こういう綱領を掲げて活動している。しかも綱領で掲げているだけではありません。会談の発言でしめされたように、メンバーの間でそれが共有されているのです。

国際連帯の課題、活動と理論の交流を進めていくことで一致

 私は、そうした意見を受けまして、4点での連帯を提案しました。

 一つ目は、イラン、ベネズエラ、ガザ、キューバなどでのトランプ政権による無法な戦争に力をあわせて反対し、国連憲章にもとづく平和の秩序をつくる。

 二つ目は、日本とアメリカで進められている大軍拡に反対する。

 三つ目は、在日米軍基地を撤去させ、対等・平等・友好の日米関係をつくる。

 四つ目は、「核兵器のない世界」の実現、核兵器禁止条約を広げる。

 私は、こういう課題で双方の連帯が可能ではないですかと話しました。DSA側は、歓迎しますとのべて、今後、具体化していこうとなりました。

 また私は、双方の間で活動内容や、理論・学習活動の交流を進めていくことを提案しました。DSA側は、日本共産党は草の根で大きな力をもっているとして、お互いに学びあえるような経験交流を進めていきましょうとのべました。オンラインなども活用して、今後、交流をしていくことを確認しました。

 さらに私は、英語版の『自由に処分できる時間と「資本論」』――これは「赤本」と「青本」と「緑本」を英訳して1冊の英語の本にまとめたものですが――これを参加者全員に贈呈して、今後、こうしたテーマも含めて理論的な交流をやっていきましょうという提案をいたしました。DSA側は、読んで、共有していきたいと応じました。

「楽しい」と実感できる活動、他の国の運動から学ぶことへの熱心さ

 DSAの活動には、学ぶべき点がたくさんあります。

 私が、「DSAのメーガン・ロマー共同議長は、『しんぶん赤旗』の取材に対して、『DSAの活動は気持ちの良いものでなくてはならない、趣味や大切な人たちとの時間を楽しむこと、皆の心身の回復が取れることも意識しています』という趣旨の話をしていました。DSAへの入会を勧めるときにも、『誰かに入会の機会を与えることは、その人に世界を変えるチャンスを与えることであって、それは相手にとって負担ではなく、贈り物だということ』だと話していました。みなさんの活動はどうでしょうか」と聞きました。そうしますと、「楽しい組織づくりに心がけているのはその通りです」という答えが返ってきました。「楽しい」という点では、いまお話ししたように、私たちとの会談自体も楽しんでやっています。ですから私たちも楽しくなる。そんな感じなのです。「楽しい」と実感できる活動、そういう活動をやることによって、活動の魅力で若者を引きつける活動――これは私たちが、大いに学ばなければいけないと感じた点であります。

 それからもう一つ、「学ぶ」という点では、DSAは、世界の他の国の運動から学ぶことにきわめて熱心なんです。日本共産党からも学びたいと繰り返し彼らは語りました。党代表団に参加した「しんぶん赤旗」の遠藤誠二記者は、こういう感想を語りました。「自分は、アメリカ特派員として約10年間活動したけれども、米国では“自分の国が中心”という態度が少なくない。他から学びたいというのは初めて聞いた」。こういう率直な感想を語っていました。他から熱心に学ぶ。この謙虚さ。これもDSAが躍進している生命力だと、私は感じました。

 会談終了後も、写真撮影をはじめ、楽しい交流が続きました。私が贈呈した本をDSAのみんながもってくれて、吉良さんはゾーランさんの本をもって、みんなで撮影しました。お互いに「歴史的な一歩だ、しかも重要で大きな一歩だ」と確認しあいました。DSAとの公式の関係が確立したことは、私たちにとって大きな喜びであります。(拍手)

DSAシカゴ支部との懇談--活動の実態が生き生きと語られた

 党代表団は4月30日、シカゴに移動して、5月2日、シカゴ市内のDSAのバイロン・シグチョ・ロペス市議会議員(連邦下院選候補)事務所で、DSAシカゴ支部との懇談を行いました。DSA側の参加者は8人、懇談終了後にバイロン氏を含む2人が加わりました。シカゴでのミーティングも、自由で双方向の楽しい懇談となりました。DSAという運動、組織の実態がどのようなものか、非常によくわかるやりとりとなりましたので、できるだけ再現してみたいと思います。

どんな課題を重視しているのか、どんなやり方で活動を進めているのか

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(写真)バイロン市議(最前列右から4人目)と握手する志位議長(その左)とDSAシカゴ支部、党訪問団のメンバー=5月2日、シカゴ市内

 まずDSA側から、こういうあいさつがありました。

 「本当に今日は、来てくださって光栄に思っています。日本共産党は、100年以上にわたる歴史を持った党だということを存じています。私たちは学ぶことがものすごく好きなので、深い歴史を持った日本共産党のみなさんからも学びたいと思っています。DSAは地域ごとにいろいろユニークで、このシカゴにもいろいろな地域でユニークさがあります。ですから質問をなるべく出してもらって、それに答えたいと思います」

 そこでまず私たちの側から、DSAについていろいろな角度から質問してみました。質問に答えてDSA側が語ったことを報告したいと思います。

 まず私は、「どんな課題を重視しているのですか?」と聞いてみました。

 「生活費、家賃が大きな問題だということは、シカゴでも同じです。税金の問題をとても重視し、富裕層に課税する(タックス・ザ・リッチ)を重視しています。100万ドル以上稼いでいる人に対し4%の課税という累進性をもつような税金にしたいということです。法人税の引き上げも要求しています。富裕層に課税して得た収入は、住民、市民のために使えと求めています。教育、家賃、職業訓練、コミュニティーの安全、暴力を減らすなどです。シカゴは人種隔離時代からの負の遺産が強く、学校制度の中にもそれが残っています。黒人やヒスパニックの住んでいるところにしっかり税金を回すことも訴えています」

 次に私は、「活動の仕方はどんなやり方をしているのですか?」と聞いてみました。

 「バイロン氏が、無所属で下院選に出ます。無所属なので立候補に多数の署名が必要です。全戸訪問――ノッキングがものすごく効果的です。同時に、選挙区北部の方に行くと、ちょっと感じが違っていて、直販運動のようないろいろなものを売ったりする人たちがいるのですけれども、そういうところ、公園などに、テーブルを持って行って、そこでみなさんおいでくださいと、いろいろな政治的な話をすることをかなりやっています。これをテーブリング・オペレーションと呼んでいます」

 私が、「日本でも赤テントを立てて同じような活動をやっています」と話しましたら、「それ、それ」、「赤テントいいね」と盛り上がりました。ストリートトーク、テーブリング・オペレーション、ノッキング=全戸訪問の三つを戦略としてやっているという説明でした。これは日本の運動にも生かしたいなと思って聞きました。

 「会員を増やすにはどういう活動をしていますか?」と聞いてみました。

 「つながりや、集会に来てくれた人の名前を聞いて、Eメールリストをつくってコンタクトします。拡大のイベントにつれていったり、社会主義についての勉強会などにつれていって、長期的な視野で接しています」

 こうした系統的な取り組みで会員を増やしているという説明でした。

マルクス『資本論』学習運動について

 さらに私が、「学習運動をやっていると聞いていますが?」と尋ねますと、こういう答えでした。

 「社会主義に対する勉強会は、まず、1対1でやる90分セッションがあって、綱領を10分で読んで、その後の80分でいろいろと政治について話し合います。次の段階は、半日ぐらいかけて、イデオロギー、変革の理論、組織論についてオリエンテーションをします。ここでも長い質問時間をとっていろいろと議論してもらい、教育活動を行い、理解を深めてもらいます。そういう中で、最初は支持者ですが、だんだんと活動家になり、最後は組織者になるまで成長してもらう取り組みをやっています」

 とても系統的な教育活動に力を入れていることが語られました。

 そこで私は、「マルクスの『資本論』の学習はどうですか?」と聞いてみました。

 「マルクスの『資本論』の学習会を、2週間に1回のペースでやっています。同時に、一般の人にも開放して夜間学校もやっています。これも2週間に1回のペースです。気軽に来られるというのが大事です。DSAに入る前は、『資本論』なんて読んだこともありませんでしたけれども、2週間に1回、5年間やってきて、高いレベルになれば、何のために自分たちがやっているかということが『資本論』に書いてあるとわかってくるので、それは大事なことだと思います」

 さらに私は、「『資本論』を読んで一番心に響くことは何ですか?」と尋ねてみました。

 「やはり剰余価値です。資本主義がどういう仕組みなのかがよくわかりました。私たちは、プリンストン大学出版会から出た新しい『資本論』の英訳で勉強しています。いままでの『資本論』は19世紀の英語でしたが、プリンストン版はものすごく理解しやすい。勉強がものすごく進んでいます。大きな障壁を取り払ってくれたという感じです」

 剰余価値=搾取の仕組みの理解というのは、『資本論』の一番の根幹部分です。日本でも、『Q&A資本論』=「赤本」を学習して、搾取の仕組みを理解し、使用者側がひどい労働条件をおしつけているのにたいして、勇気をふるって交渉し、改善をかちとったという経験がありました。そのことも思い起こして、私は、『資本論』の学習について、日本共産党の取り組みを紹介しました。『Q&A資本論』=「赤本」をテキストにして、7000を超える党支部で学習会に取り組んでいると話すと、「それはすごい」「読んでみたい」ということになりました。

ソ連共産党解散に「もろ手をあげて歓迎」に、「すごい!」と歓声が

 次は、DSA側からいろいろな質問が寄せられる番になり、私たちは、その一つひとつに回答しました。

 「日本共産党の科学的社会主義の立場とはどんなものですか?」という質問がありました。

 私は、「日本共産党の理論は、スターリンがつくった旧ソ連製のものとはまったく違います。日本共産党は、ソ連からひどい干渉をうけ、それを断固はねのけた歴史があるんです。だからソ連共産党が解散したときに、『もろ手をあげて歓迎する』という声明を出したんです」。こう話しますと、一同から「すごい!」と歓声があがりました。日本共産党の未来社会論についてお話しして、私たちは、崩壊したソ連などとはまったく違う、「人間の自由」が花開く社会を目指していると説明しました。

 私が、「日本共産党からすると、アメリカの左翼・進歩勢力との関係は特別な意味があります。同じ帝国とたたかうという点で連帯ができるのではないですか」と話しますと、「本当にそうだと思います」との強い反応が返ってきました。彼らは、トランプ政権によるイラン、キューバへの無法に対する怒りをのべ、「真に反帝国主義で協力するのはDSAにとってはものすごく重要で、外国の反戦グループとの協力は非常に大事だと思っています」とのべました。

 また先方からの質問になって、DSA側から、「写真を見たのですが、日本共産党はものすごく大きな本部ビルを持っていると思いました。私たちはビルを持つお金がありません。資金はどうしているのでしょうか?」との質問が出ました。こういうこともよく知っていることに驚きました。すべて個人募金で建設しましたと答え、「しんぶん赤旗」読者が80万人で購読料収入も重要ですとのべますと、これも「すごい!」となりました。財政活動では私たちはいろいろと苦労しているわけですが、本部ビルが大きいということに関心が寄せられたことを通じて、私たちの草の根から国民に依拠した財政活動がいかに大切か、その意義をあらためて再発見する思いでした。

 「議会のなかでの活動は?」、「地方議員は?」、「平和と経済のどちらを重視しているのか?」、「組織の原則がどうなっているのか?」。こういうさまざまな質問が次々に出されて、一つひとつに回答しました。

 「米国ではかつて『赤狩り』もありました。人々に接触するときに、共産主義についての障害みたいなものはないのですか?」という質問が出されました。私は、この間、取り組んでいる「共産主義と自由」に関するキャンペーンを話しました。二つの『Q&A』とその理論的背景を話した講義をまとめた英語版の本も紹介しました。これはアメリカのドルに換算すると、16ドルだと話しますと、「安い!」という声があがりました。

 これは余談ですが、久しぶりにニューヨークに行ってみると物価があまりに高い。とくにマンハッタンは高いです。なにもかも高い。たとえばラーメン1杯で20ドルです。普通のレベルのラーメンでこの値段です。日本円でだいたい3000円になる。英語版の本は16ドルですから、「ラーメン1杯より安い」ということを話しました(笑い)。こうして理論交流もやっていこうとなったわけであります。

 こういう感じのミーティングでした。「学ぶことがものすごく好きです」とDSAのみなさんは言ったわけですが、本当にそのとおりで、“好奇心の塊”といった感じでした。そういう楽しい交流を行い、連帯していくことをシカゴでも確認してきたということをご報告したいと思います。(拍手)

『ジャコバン』誌・幹部との懇談--DSAの理論的バックボーン

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(写真)『ジャコバン』誌幹部と懇談する志位議長(右から2人目)と吉良議員(その右)=4月28日、ニューヨーク

 日付はもとにもどるんですが、ニューヨークとシカゴでのDSAとの会談に先立ちまして、4月28日、左翼系雑誌『ジャコバン』の幹部――エーシャー・デュプイスペンサー発行人、マイカ・ユートリヒト編集者との懇談を、約2時間にわたってニューヨークで行いました。食事をしながら話し合ったのですけれども、日本共産党および「しんぶん赤旗」と協力関係をつくることで合意しました。

 『ジャコバン』誌というのはどういう雑誌かといいますと、発行部数が7万5千、ウェブで180万の読者をもっています。創設者・編集長はバスカー・サンカラ氏です。世界各地でそれぞれの言語での雑誌をもっています。ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、ギリシャ語、オランダ語で、雑誌をもっているということでした。ドイツ語版の編集長を務めたイネス・シュベルトナーさんという方は、その後、ドイツ左翼党(リンケ)の国会議員となり、現在は、共同議長を務めています。シュベルトナーさんとは、一昨年、ベルリンに行ったときに国際会議でお会いして、理論交流も一緒にやった方なんですが、『ジャコバン』誌のジャーナリストとして活躍した方が、左翼党の共同議長になっているのです。

 『ジャコバン』誌とDSAとの関係は、形のうえでは独立しているということですが、実態は、密接な協力関係にあり、DSAの理論的バックボーンとなっているのが『ジャコバン』誌だという関係だと思います。今回の訪問で再会したマルチェロ・ムスト・カナダ・ヨーク大学教授や、アンドリュー・ハートマン・イリノイ州立大学教授も、『ジャコバン』誌の寄稿者となっています。その理論的影響力は大きなものがあると感じました。懇談は、理論問題を中心に行われ、事実上の理論交流になりました。

「しんぶん赤旗」への注目--協力関係を進めることで一致

 まず「しんぶん赤旗」が話題になりました。『ジャコバン』誌側から「『赤旗』がスクープを飛ばし政権を追い詰めたと聞いていますが?」と聞いてきました。私が、「日本ジャーナリスト会議大賞を2回受賞しました」と紹介しますと、「すごい。スクープはどういう内容ですか?」。説明しますと、「『ジャコバン』がそういうことをするのは想像できない。トランプを追い詰めるなど」。こういう反応でした。私が、「しんぶん赤旗」との協力関係を、小木曽編集局長に了解を得たうえで提案すると、「それはぜひ、お願いしたいことです。一般的な交流とともに、記事の交換などをやりたい」となり、協力関係を確認したということを報告しておきたいと思います。

「DSAの社会主義とは?」、「DSAは政党をめざすのか?」

 社会主義について議論になりました。私が、「あなたがたは社会主義と共産主義をどのように定義していますか?」と聞くと、『ジャコバン』誌側は、「(社会主義と共産主義を)厳密に区別していません」とのことでした。私は、「日本共産党は区別して使っていません。マルクス、エンゲルスはこの二つの言葉を同じ意味で使っていました」と話しますと、『ジャコバン』誌側は「よく理解できます」とのべました。つまりDSAや『ジャコバン』誌が言っている社会主義は、共産主義と一線を画すという意味で、社会主義という言葉を使っているわけではないということだと思います。

 私はさらに、「DSAの『規約』を読みますと、めざす社会主義は、『歴史的な社会民主主義よりもさらに先をめざし、同時に権威主義的な社会主義(――ソ連式の社会主義という意味だと思います)は歴史のゴミ箱に葬り去る』と書いてあります。この点は私たちと同じです。それではDSA、あなたがたのいう社会主義とはどういうものなのですか?」と尋ねてみました。『ジャコバン』誌側の答えは、「アメリカの社会主義の伝統に根ざし、世界の社会主義の潮流に根ざすことです」というものでした。

 さらに私は、「DSAは政党をめざしているのですか?」と聞きました。『ジャコバン』誌側の説明は、「いまはめざしていません。政党をつくるチャンスは、二大政党制のもとではありません。民主党のなかで准政党として活動しています。大事なのは、社会主義の旗を立てることです。そして民主党の右派に屈しない組織をつくることです」と説明しました。たしかにアメリカの場合、二大政党制というのは、制度として社会に深く組み込まれていますから、DSAがこういう戦略をとっているのは理解できると思って聞きました。

「自由に処分できる時間(ディスポーザブル・タイム)に乾杯!」

 「自由な時間」で議論が盛り上がりました。切り出したのは吉良さんです。吉良さんが、「自由な時間、労働時間短縮は選挙の争点になりますか?」と聞きました。そうしましたら、『ジャコバン』誌側は、「大きな争点になります。労組も要求しており、若い人の関心は高くなっています」と答えてきました。DSAの綱領を見ますと、「週32時間労働制」の要求が掲げられています。

 そこで私は、少しまとまって聞いてみようと考えて、次のように発言しました。

 「『ジャコバン』誌に掲載されたサンカラ同誌編集長の『資本主義の後に社会主義が必要だ』と題する最近の発言を読みました。私が注目したのは、サンカラ氏が『社会主義経済における生産性向上の目的は、成長そのものにあるのではなく、余暇、安全、そして生産以外の時間の拡大にある』、『社会主義は、活力ある経済を、労働時間の短縮、寿命の延長、そして人生の送り方におけるより大きな自由へと転換させることができる』と強調していることです。これは私たちの考え方に近いものを感じます。日本共産党は、万人が十分な『自由に処分できる時間』(ディスポーザブル・タイム)を持ち、自身を『自由に全面的に発展』させることが共産主義の一番の基本原理だと考えています」

 そうしましたところ、『ジャコバン』誌側から、「自由な時間を増やし人間が発展するのが社会主義だというのは、『ジャコバン』の考えていることと同じです」という答えが返ってきました。そこで私は、「マルクスは『資本論』でそれが未来社会の基本原理だと書いています。この本のなかでそのことを論じています」とのべ、英語版の本にサインをして贈呈しました。『ジャコバン』誌側は、「素晴らしい。自由な時間を増やすのは進歩の方向性として重要です」とのべました。私が、「資本が搾取しているのは物質的な富だけではない。『自由に処分できる時間』を搾取している。この本に詳しく書いています」とのべますと、『ジャコバン』誌側は「読むのにワクワクします」となりました。

 その後、「自由な時間」の拡大というのは、未来社会で初めて問題になることではない。日本でも、アメリカでも、現在の国民の強い要求だという認識で一致しました。『ジャコバン』誌側は、「それはアメリカでも重要な要求です。歴史上、最も裕福な国になって裕福な人もいますが、一般の人々はそうなっていません。何でこんなに働かなければならないのか。自由な時間への強い要求があります」とのべました。

 私が、この間、日本共産党が探究してきた「自由に処分できる時間」=「自由な時間」論をさらにくわしくのべますと、『ジャコバン』誌側は、「自由な時間がないと、人間は全面的な発達ができないということですね」と深い理解を示しました。この対話は、たいへん盛り上がって、最後に乾杯しようとなり、「自由に処分できる時間=ディスポーザブル・タイムに乾杯!」となりました。

 吉良さんの一言から始まった自然な会話で、私たちが探究してきた「自由に処分できる時間」を軸にすえた未来社会論で、認識の接近、一致を見たのは、たいへんにうれしいことでありました。

 懇談の最後に、私たちは協力を重ねて確認しました。『ジャコバン』誌側は、「いろいろな国にDSAを紹介したい。いろいろな国の左翼の人たちと交流できれば、世界の左翼の運動の一部だと感じることができます」とのべ、記念撮影をして終わりとなりました。

 以上が、DSA、『ジャコバン』誌との交流と、関係の確立についての報告であります。(拍手)

アメリカ共産党との会談--関係強化を確認

両党関係強化、連帯の課題で一致

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(写真)アメリカ共産党のシムズ共同議長(右端)らと会談する志位議長(その左)ら=4月29日、ニューヨーク

 米国を訪問した機会に、当初の計画にはなかったのですが、アメリカ共産党(CPUSA)との関係強化をはかろうと考えました。

 日本共産党とアメリカ共産党とは、1982年に、当時の書記長が、ソ連追随の立場から日本共産党を一方的に攻撃する論文を発表したことがきっかけになって、関係が断絶していた時期があります。しかし、2003年に、アメリカ共産党が当時の議長と国際局長の連名で、不破(哲三)議長(当時)と私(当時は委員長)あてに書簡が送られ、そのなかで、「日本共産党の階級的立場と自発性に対する攻撃について謝罪したいと思います」と表明したことで、両党関係は正常化しています。

 この書簡を、私は、東京から送ってもらって、ニューヨークでもう一度読んでみたのですが、いま読み直してみても、率直で真剣なものです。そこでこの機会に両党の関係を強化しようと考えまして、東京の田村(智子)委員長、小池(晃)書記局長とも電話で相談のうえで、先方に会談を打診しました。ただちに「代表団を構成して、お迎えします」という返事がきました。党本部はニューヨークですから、すぐに行けます。党本部にうかがって会談を行いました。ジョー・シムズ共同議長をはじめとする指導部のみなさんとの会談は、1時間半にわたりました。

 私が、両党関係を強化したいと提案しますと、アメリカ共産党側は「歓迎します」と応じ、両党間の確認となりました。さらに私は、両党で協力して取り組む課題として、DSA指導部との会談で提起した4点を提案しました。シムズ共同議長は「すべての点について合意できます」とのべるとともに、「環境を守るうえでの協力も大切です」とのべ、それも含めて5点で共同して取り組むことになりました。

旧ソ連との関係の歴史的問題、CPUSAとDSAの関係

 私は、この機会に率直な意見交換をしておきたいと考えて、日本共産党が経験してきた旧ソ連の覇権主義との闘争の歴史を話しました。そして、こう尋ねました。

 「率直に、今の意見を伺いたいのですが、アメリカ共産党も同じように、ソ連によって被害を受けています。1930年代のスペインの革命運動への支援に対するソ連の対応、1939年の独ソ不可侵条約などです。そうしたソ連の行動によって、アメリカの運動は深刻な打撃を被ったのではないでしょうか」

 シムズ共同議長は、「大きな問題です」と応じ、そうした問題を提起してくれたことはよかったとのべ、旧ソ連との関係の歴史的問題について語りました。私は、真剣な検討の途上にあると受け止めました。この会話の最後に、私は、彼に、こうした会話が率直にできたことを感謝しました。

 さらに私は、アメリカ共産党とDSAの関係についても聞きました。私が、「協力関係にあるのですか」と尋ねますと、シムズ共同議長は「課題に応じて協力しています」と語りました。「DSAが社会主義の精神をもって広がっていることは非常にいいことです」、「勇気づけられます」とも語りました。「正式な関係はないですけれども、DSAのメンバーになっている党員もいますし、アクティブな協力関係にあるということです」という説明でありました。

 最後に、日本とアメリカの情勢、直面しているたたかいの課題について、それぞれが語り、核兵器廃絶では具体的協力について話し合いました。

 アメリカ共産党は、平和運動などで献身的な取り組みを行っていることでも評価されていると聞きました。日本共産党は、両党会談の合意にそくして、アメリカ共産党との関係を今後発展させていきたいと考えます。この会談は、後でのべますが、アメリカ共産党の機関紙「ピープルズ・ワールド」のアトキンス編集長が、カナダ・ヨーク大学まで取材にこられて、私たちの活動を詳細に紹介する大型の記事を出すことにもつながったということも報告しておきたいと思います。

アメリカでの社会主義運動の躍進、本格的な協力関係をつくった意義

 こうして、この訪問をつうじて、日本共産党は、DSAとの連帯の関係を公式に確立するとともに、アメリカ共産党との関係強化を確認しました。一連の会談・懇談をつうじて感じたことを、ここでまとめておきたいと思います。2点ほどいいたいと思います。

世界最大の帝国主義国での社会主義運動の躍進--その意義はきわめて大きい

 第一は、アメリカという世界最大の、そして唯一の帝国主義国、資本主義の“総本山”と見なされている国で、社会主義を公然と掲げる勢力が、ニューヨーク市長を獲得するほどの躍進をとげていることの持つ意義はきわめて大きいということです。

 私たちが米国滞在中、保守系といわれる「FOXテレビ」でメーデー特集が行われていました。そのなかで「DSAは米国の歴史でも最大の社会主義勢力」だという紹介がされていました。ここには私は、トランプ米政権、さらにいえば、共和党と民主党の「二大政党制」の深い矛盾があらわれていると思います。さらにもっと言えば、現代資本主義の深刻な矛盾のあらわれと言えるのではないでしょうか。

 そして、DSAの綱領には、さきほどお話ししたように、「外国軍事基地の撤去」が掲げられていますが、仮にそれが実現すれば、アメリカ帝国主義は大きく性格を変えることになるでしょう。アメリカには、繰り返しの「赤狩り」によって社会主義・共産主義の勢力が破壊されてきた歴史もあります。そういう国で、DSAのように社会主義を公然と掲げた勢力が伸長している意義は大きいと思います。私は、前途にはさまざまな困難もあるでしょうけれども、その成功を強く願わずにはいられません。

 DSAとの会談、『ジャコバン』誌幹部との懇談の中で、彼らは、自らの源流として、20世紀の初頭、1901年に結成されたアメリカ社会党のリーダーとして活躍したユージン・デブスの名をあげました。DSAシカゴ支部との懇談で、参加したメンバーに「ユージン・デブスをどう評価していますか」と聞いたところ、「最も尊敬しています」という答えが即座に返ってきたことが印象的でした。『ジャコバン』誌幹部との懇談でも、「デブスはサンダースに影響を与えました。マムダニが市長就任演説で最初に言及したのはデブスです」と語ったことも強く印象に残りました。

 デブスはアメリカ社会党というアメリカ史上最大の社会主義政党の指導者となった際に、マルクスを完全に受け入れていたといわれています。マルクス主義の立場にたつ歴史学者、アンドリュー・ハートマン・イリノイ州立大学教授は、「歴史上、アメリカ・マルクス主義を体現する人物がいるとすれば、それはユージン・ビクター・デブスである」とのべています。ですから、DSAや『ジャコバン』誌が、マルクスや『資本論』を研究・学習しているのは、偶然ではなく、こうした歴史的背景があると思います。DSAは偶然に誕生したのではありません。そこには、デブス以来のアメリカ・マルクス主義の革命的伝統が、脈々と流れているといえるのではないでしょうか。

米国の左翼・進歩勢力との本格的協力は104年の党史上初めて--綱領的な重要性

 第二は、わが党にとっての意義です。アメリカの左翼・進歩勢力との本格的な協力をつくったのは、日本共産党の104年の歴史でも今回が初めてのことであり、わが党にとって、その意義はきわめて大きいということです。

 戦前、わが党は非合法下にあり、こうした国際交流を行う条件はありませんでした。戦後も、「赤狩り」によって米国の社会主義・共産主義勢力が破壊されたこと、アメリカ共産党との関係では前述した両党関係の断絶などの事情もあり、日米両国間の左翼・進歩勢力の本格的な協力関係は存在しませんでした。今回、DSAとの間で本格的な協力関係を公式に確認し、アメリカ共産党と関係強化を確認し、アメリカの左翼・進歩勢力と本格的な協力関係をつくったことは、わが党にとって党史上初めてのことであり、まだ第一歩を踏み出したところですが、その意義はきわめて大きいと考えます。

 日本とアメリカの2国間関係は、日本がアメリカによる帝国主義的な支配のもとに置かれているという点で、他のどの国にもない特別の重要性をもっています。自民党政権の側は、「日米同盟が外交の基軸」だと繰り返しますが、それとはまったく違う意味で、わが党にとって日米関係は特別の重要性をもっています。それは、わが党綱領が米国との従属関係を終わらせることを当面の民主主義革命の中心課題にすえているからです。そういう意味で、文字通り綱領的な重要性をもっているのです。そしてアメリカの帝国主義的支配と闘うという点で、日本共産党とアメリカの左翼・進歩勢力は、共通の相手と闘っている同志であります。そういう両者が協力の関係をつくったことは、わが党の綱領路線の実現――対等・平等・友好の日米関係をつくることを展望しても、きわめて大きなものがあるということを重ねて強調したいと思います。(拍手)

 私たちは今回の最初の一歩の踏み出しを大切にして、日米両国の左翼・進歩勢力が互いに学びあい、協力しあい、国際連帯の関係を発展させるために力をつくしたいと決意をしているところです(拍手)。それはわが党自身の前途を展望しても、大きな意義をもつものとなると、私は強調したいと思います。

3、科学的社会主義の理論交流について

 報告の第3の主題は、科学的社会主義の理論交流についてです。

 党代表団は、党大会決定にもとづく党の理論活動の到達点――とくに「自由に処分できる時間」を軸にすえた未来社会論を一つの素材として、理論交流を発展させることを、今回の訪問の重要な目的にすえて活動しました。

 この活動を進める際に、私たちは、さきほど紹介した、「青本」「赤本」「緑本」を1冊にまとめた英語版『自由に処分できる時間と「資本論」』をさまざまな場面で活用しました。私たちが取り組んでいる理論活動の成果は、どこでも新鮮に受け止められ、共感を広げたと思います。これは、たいへんに心強く、うれしいことでありました。

イリノイ州立大学・アンドリュー・ハートマン教授との対談--シカゴで

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(写真)ハートマン教授(左)と握手する志位議長=5月1日、シカゴ市内

 私たちは、5月1日、ちょうどメーデーの日、シカゴのイリノイ州立大学を訪問し、アンドリュー・ハートマン教授との対談を行いました。ハートマンさんは、マルクス主義の立場に立つ歴史学者です。DSAや『ジャコバン』誌とも深い交流をもっている研究者です。

『カールマルクス・イン・アメリカ』が出会いのきっかけに

 じつは私は、2025年7月に、『Q&A資本論』(「赤本」)の出版会見をやった際に、ハートマンさんが、2025年5月に出版した『カールマルクス・イン・アメリカ』を読んだこと、彼がこの本のなかで、「私たちは第4次マルクス・ブームを生きている」とのべていることを紹介したことがあるんです。その会見の動画の存在が、ハートマンさんに伝わったようで、先方から「X」で私にエールが送られてきました。それで、私の方からも「X」でエールを送ったことがあるんです。そうしたしたやりとりもあり、今回の訪米にあたって、「ぜひお会いして意見交換をしたい」と提案したところ、歓迎していただき、実現の運びとなりました。

 ハートマンさんの著作は、近く新日本出版社から日本語版が森原公敏さんの訳で出版されます(『マルクス・イン・アメリカ』、5月31日発売)。私は、出版社から日本語版のゲラを提供していただき、日本語でじっくり読んだうえで対談にのぞみました。ハートマンさんには、私の英語版の『自由に処分できる時間と「資本論」』をお送りし、先方も拙著を読んでいてくれました。まったくの初対面で、1時間ほどの対談だったのですが、とてもかみ合った、そして響き合ったものになったと思います。そこで、先方の了解を得て、5月15日付「しんぶん赤旗」に対談の全体を掲載をいたしました(「マルクス、アメリカ、自由論を語り合う」)。ぜひお読みいただければと思いますが、対談のいくつかの中心点を紹介させていただきたいと思います。

資本主義の“総本山”でマルクスが150年余にわたって読み継がれてきた

 私は、対談で、なぜ記者会見でハートマンさんの本を紹介したか、そして日本語で読んでもらいたいと思ったかについて、次のように切り出しました。

 「多くの日本人にとって、アメリカという国は、資本主義の“総本山”とみなされています。そのアメリカで、マルクスが、繰り返しの『赤狩り』にもかかわらず、150年余にわたって、途切れることなく読み継がれ、さまざまな形で受容され、そして影響力を与え続けてきました。そして、繰り返しのブームをつくり、今、『第4のマルクス・ブーム』にある。そのことをこの本は、無数の歴史的事実を丁寧に紡ぐように叙述しています。この本は、日本人に、アメリカに対する新しい見方を提供するものだと思います」

 アメリカという“資本主義の権化”のように見られている国で、マルクスがずっと読み継がれてきた事実を伝えることは、日本人に新しいアメリカの姿を示すことになると思いますと。

 それに対してハートマンさんは、このようにのべました。

 「私がこの本を書いた理由の一つは、マルクスに対する情熱や執着だけでなく、米国の歴史においてこれほど多くの人々がマルクスを読み、考察してきたという事実を、米国の歴史家でさえもほとんど認識していないという点にもありました。本書は出版されてからほぼ1年ですが、反響としては、多くの驚きが寄せられています」

 こんなにアメリカでマルクスが受け容れられていたのかと、当のアメリカでも多くの人が驚いて読んでいるということですね。聞きますと2万5000冊が出ているとのことでした。学術書でこの数はすごいと思います。

マルクスがアメリカ人社会で支持を得てきたのは、「力強い自由論」を示したから

 私は、対談で次のように続けました。

 「私が、この本でたいへんに印象深く読んだ点がもう一つあります。冒頭のところに出てくるのですが、『マルクスが150年以上もの間、アメリカ人社会で支持を得てきたのは、力強い自由論を提示したからだ』とあります。『マルクスと自由は相いれない』という議論は、日本でも強いですし、おそらくアメリカでもそうだと思います。しかし、仮にそうであったとしたら、どうして人類の歴史で初めて民主共和制を打ち立て、人権宣言を発したこの地で、マルクスが受け容れられたのか。説明がつきません。マルクスがアメリカで150年以上にわたって受容され続けてきたという事実そのものが、『マルクスと自由は相いれない』という議論への一番の事実による反論になっていると思います」

 ハートマンさんは、マルクスの自由論について、「それは私がマルクスについて常に最も関心を持ってきた側面です」と語り、次のようにのべました。

 「私の目標やプロジェクトの一つは、人々が冷戦時代の先入観を乗り越えられるようにする手助けすることでした。現在、『マルクス・ブーム』は第4の波を迎えており、とくに『ジャコバン』誌の若者やアメリカ民主的社会主義者(DSA)の若者たちのように、多くの若者がマルクスの思想に関心を寄せています。その理由の一つは、彼らの見解が冷戦によって形成されていないからです」

 つまり、人々が冷戦時代――旧ソ連が存在していた時代につくられた先入観を乗り越えられるようにすることが自分の目的だが、いまそういう古い時代の悪い影響を受けていない世代の人たちが若者となってマルクスの思想に関心を寄せている。若い人々にマルクスを大きく広げていく条件は大いにあるということだと思います。

 私は、この話を聞いて、日本で私たちは同じような課題に取り組んでいるし、若い人々にマルクスを広げていくうえで同じような条件があるなと感じ、「私もそう思います」と応じました。そして、ニューヨークで『ジャコバン』誌幹部とマルクスの自由論を大いに話し合い、協力関係をつくることで一致しましたと話しますと、ハートマンさんは「素晴らしいです」と喜んでくれました。

「自由に処分できる時間」と未来社会論で見解の一致が

 対談は、マルクスの自由論の中身に入っていきました。私は、ハートマンさんに次のように提起してみました。

 「あなたは本の末尾のところで、『生存のためには労働が必要だが、それは必然の領域である。……人間が自由であるためには、自律性を有する自由の領域でも時間を過ごさなければならない』とのべています。たいへん興味深い。というのは、私たちがこの間、この問題でずっと探究してきた方向と全く一致しているからです」

 ここで引用したハートマンさんの記述は、マルクス『資本論』の「必然の国」と「真の自由の国」を念頭に置いたものだと、私は読みました。

 それに対して、ハートマンさんは、次のようにのべました。

 「あなたの講演集の英訳を読んだ際、私もそう感じました。この理論的探究、すなわち労働や時間、自律性に関連して自由を重視するこの視点は、極めて重要であるだけでなく、また、マルクスの主要な理論的展開とも非常に整合しているだけでなく、人々、特に私の学生たちや、米国をはじめとする各地の若者たちの心に深く響いていると思います」

 こういう応答が返ってきました。そこで、私が、「ここ(英訳本)でのべた、『自由に処分できる時間こそが真の富』という考え方を、マルクスがその未来社会論の根幹にすえていきました」とのべますと、ハートマンさんは、「まったく同意します。たとえマルクスに未来の青写真がなかったとしても、彼の資本主義に対する分析と批判のすべては、人々が自分の時間や労働をより自由にコントロールできる世界を想定した上に成り立っているのです。その点については、全面的に同意します」と語りました。

 こうして、「自由に処分できる時間」の重要性と、それを軸にすえた未来社会論という私たちの探究の核心部分で、ハートマンさんとの見解の一致を見たのは、たいへんにうれしいことでありました。

 その後、対談は、『資本論』の学習運動、理論的な統一戦線、マルクスとリンカーンの交流、米国の左翼・進歩勢力についてなど、多面的な論点に及びましたが、どれも見解の前向きの一致が得られたと思います。

 マルクスとリンカーンの関係については、リンカーンが、マルクス、エンゲルスがたくさんの寄稿文を寄せた「ニューヨーク・デイリー・トリビューン」の熱心な読者だったこと、リンカーンが大統領に再選された際に、マルクスがインタナショナル(国際労働者協会)の名で送った祝辞を執筆し、リンカーンの側からそれへの返書が送られるなど(1864~65年)、大西洋をはさんだ交流を行っていたという歴史的な事実があります。

 リンカーンは共和党の創設者です。私は、最初の訪米の時に、ワシントンで共和党の連邦議員と懇談したときに、「リンカーンとマルクスの交流のことを知っていますか」と言ったら、知らなかったという話をしましたら、ハートマンさんは、「知らない人がほとんどです。共和党ならなおさらです」とのことでした。19世紀におけるマルクスとリンカーンの関係を明らかにすることは、私たちが反米主義者ではないことを示すうえでも大切になるということでも、話が弾みました。

 引き続き、こうした意見交換を行っていくことを確認して別れました。

対談を終えて--「X」でのエールの交換

 対談後、ハートマンさんは、「X」に、私との写真を添えて次のような投稿を行いました。

 「今朝、日本共産党の志位和夫議長とお会いする印象深い経験をしました。彼の熟練した通訳、小林俊哉氏の助けを借りて、マルクス、歴史、政治、戦略について1時間にわたる会話をしました。たくさん学びました!」

 そこで私は、「X」で次のように返信しました。

 「シカゴでの素晴らしい出会いに感謝します。私こそ、ハートマン教授とその著作からたくさんのものを学んだ対話となりました! マルクスの影響力はインターナショナルであり、意見交換をこれからも続けていきたいと願っています!」

 私は、この場からもハートマンさんに、同志的な感謝と連帯の気持ちをお伝えしたいと思います。(拍手)

ノーマ・フィールド・シカゴ大学名誉教授との対話

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(写真)核分裂連鎖反応実験のモニュメント前でノーマさん(左端)、宮本さん(右から2人目)と懇談する志位議長(左から2人目)=2日、シカゴ大

 5月2日午後、私たちは、シカゴ大学を訪問して、同大学名誉教授のノーマ・フィールドさん、デュポール大学教授の宮本ゆきさん(被爆2世と自己紹介された)と懇談をいたしました。

 ノーマ・フィールドさんは、日本でもよく知られた方です。アメリカ人を父に、日本人を母に生まれ、小林多喜二の研究家としても知られ、シカゴ大学で日本文学・日本文化を教えてきた著名な研究者です。核兵器廃絶や原発問題でも、さまざまな発言をされています。私は、彼女が執筆した『小林多喜二――21世紀にどう読むか』(岩波新書)などを読んで感銘を受けた記憶があり、シカゴを訪問する機会に、ぜひお会いしたいと連絡したところ、「喜んで」といって会ってくださいました。

 ノーマさんとの対話は、理論交流というよりも、ノーマさんが現在のアメリカ社会と日本に対してどういう思いをもっているか聞きたいという思いで申し入れたものでした。ノーマさんは、宮本さんとともに、広いシカゴ大学の構内を長時間にわたって案内してくれ、さまざまな話題を話し合いました。大学の食堂で食事をともにしながら話し合いは続きました。とくに印象深く聞いたことを報告したいと思います。

マンハッタン計画、「世界終末時計」をめぐって

 ノーマさんが、まず案内してくれたのは、1942年、人類が初めて制御された核分裂連鎖反応の実験に成功した場所でした。そこにはモニュメントが建っています。ノーマさんは、「こんな危険な実験を大学のど真ん中で行ったことは許せない」と語っていました。また、シカゴ大学の物理学、数学、化学など理系の諸部門がマンハッタン計画(原子爆弾開発プロジェクト)に動員されたこと、学生を対象に人体実験が行われたことを、強い憤りとともにノーマさんは語りました。

 さらに、マンハッタン計画の発端をつくった物理学者のレオ・シラードが「原爆を市民に投下すべきではない」と大統領に直訴しようとしたんですが、グローブス少将に阻まれたこと、その後、1947年、「原子力科学者会報」がシカゴ大学のキャンパスで発行されたこと、あの有名な「世界終末時計」はこの「会報」のロゴとして案出されたものだったことを説明してくれました。ちなみに「世界終末時計」は、2026年1月、「残り85秒」となって、前年の「89秒」から4秒進んでしまい、史上最短となっています。ノーマさんは、核兵器廃絶への強い思い、原発に反対する立場を語りました。

トランプ政権の「恐ろしさ」への憤り、日本共産党、多喜二について

 この会話でたいへんに印象的だったのは、ノーマさんが、トランプ政権下で「この国が無法地帯になってしまった」とのべ、そのことの「恐ろしさ」を強く訴えたことでした。彼女はこういいました。

 「学生を守れると思っていたものが、もう守りきれない。学生も移民税関捜査局――ICEに連れていかれたら、72時間はどこに行ったか家族であっても誰も教えてもらえない。州の外に連れていかれることもある。そういう時に本当に何もできない、教員として学生を守れないことがすごくショックです。言論の自由がどんどん消えている。財政難と留学生がいなくなったことで、アメリカの大学教育はつぶされつつある」

 ノーマさんは、そうしたトランプ政権の独裁政治のもとで、DSAの活動に希望を見いだしていました。

 日本共産党の活動については、総選挙での後退を残念がっておられましたが、野党共闘に取り組んだことは良かったと評価し、ぜひ盛り返してほしいとの強い期待を語られました。私が、憲法記念日に5万人が集まったことを伝えると、たいへんに喜んでくれました。多喜二の文学についても、『党生活者』を中心に、かなり時間をとってノーマさんの思いを聞き、語り合うことができました。最後に、「今後も、交流を続けましょう」と約束し、シカゴ大学を後にしました。ノーマさんの期待にこたえて、日本共産党の前進のために力をつくしたいと決意しているところです。

カナダ・ヨーク大学、マルチェロ・ムスト教授主催の討論企画への参加

教授、院生、学生、社会活動家、ジャーナリストなど60人の参加で熱気にあふれた

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(写真)ヨーク大の学内に張り巡らされた討論企画の告知ポスター

 党代表団は、5月3日、カナダ・トロントに移動し、5月4日、ヨーク大学で、マルチェロ・ムスト・ヨーク大学教授が主催して行われた討論企画「今日の日本の左翼、マルクスの『資本論』に帰る」に参加し、発言をいたしました。

 ムストさんとは、昨年12月末に、東京で「しんぶん赤旗」1月1日付に掲載された「新春対談」を行い、彼がカナダに帰国する前の1月に再度会合を持ち、その時にカナダの日程について相談して決め、その後もメールでたびたび連絡をとり、今回の討論企画が実現しました。ムストさんがなみなみならぬ情熱を注いで討論企画を準備してくれました。ムストさんは、たびたび私に、「日本共産党の政治的、理論的達成は非常に高い。ところが言語の壁があって英語圏、世界にその内容が知られていない。世界の運動のためにもぜひ知らせたい」ということを言ってくれるのです。大きな情熱を注いで準備をしてくれました。

 実は、私たちが訪問する直前の時期に、運悪く、トロントで水害が起こり、ムストさんのアパートも蔵書が水没するというたいへんな被害にあったとのことでした。修復のためのたいへんな労力が必要ななかで、彼が私たちを温かく迎え、討論企画の成功のために尽力してくれたことに、心からの感謝の気持ちをのべたいと思います。

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(写真)ヨーク大学で開かれた討論企画「今日の日本の左翼、マルクスの『資本論』に帰る」=5月4日、トロント郊外

 討論企画に参加するために、ムストさんの案内で広い大学の構内に入りますと、案内のポスターがたくさん張り出されています。ポスターにはヨーク大学のロゴも記載されています。討論企画には、ヨーク大学、トロント大学など地元大学の教授、院生、学生、社会活動家、ジャーナリストなど多彩な顔触れが参加して、その日は大学は休校日だったのですが、会場は予定を超えて60人の参加者で埋まり、熱気にあふれました。マルクス主義の素養をもつ一定水準以上の研究者を中心に声をかけたとのことでした。アメリカ共産党やカナダ共産党からも参加がありました。

 私は、ムストさんと、事前に討論企画をどう進めるかについて相談しました。彼の意向は、「日本共産党の政治的な姿と、理論的な到達点の双方を、一体のものとして聴衆に伝えたい」ということでした。そこで2時間余の討論企画を二つに分けまして、第1部を熱い政治問題での質問に答えるという内容にし、第2部を理論問題について私がまとまって講演し、質問に答えるという内容にしようということで合意しました。

 討論企画の会場に行ってみますと、なんと日本共産党の深紅の党旗が置かれています。「青本」「赤本」「緑本」「英語版」が展示されています。ムストさんは、開会にあたって、私について心がこもった温かい紹介をしたうえで、スライドも使って、党代表団の活動と日本共産党についてのプレゼンテーションをしてくれました。彼は、私や吉良さんの「X」をフォローしていて、次のようにのべました。

 「昨日、代表団にお会いした時に、今回の米国訪問で行ったことを話そうとしていましたが、あなた方の活動はすでにフォローしていると答えました。彼らは、国連でNPT再検討会議に参加し、中満泉事務次長らに会いました。吉良よし子参議院議員も参加しています。日本共産党はかなりのフェミニストの党でもあります。田村智子委員長が、新しい委員長です」

 NPT再検討会議での要請、田村委員長、吉良議員の写真が画面で紹介されました。たいへん温かい心配りのきいたプレゼンテーションに感動しました。

第1部--熱い政治の問題で質問に答える

 討論企画の第1部は、ムストさんと参加者の自由な質問に私が答えるという形で進行しました。まずムストさんから四つの問いがぶつけられました。

 第1問は、「NPT再検討会議がどうなっているのか? 戦争反対、核兵器反対でたたかうことは、志位さんの政治的人生において最優先課題ですか?」というものでした。私は、核兵器廃絶は、唯一の戦争被爆国の政党の議長をつとめているものとして最優先課題の一つですとのべ、NPT再検討会議の現状について、締約国の7割以上が核保有国にNPT第6条の履行を迫る状況にあること、深いところで平和の流れが広がっているということを話しました。

 第2問は、「戦争は今、どこでもあって、国連憲章を破るという状況ですが、トランプ政権をどう見ていますか?」というものでした。私は、日本共産党は、「アメリカ帝国主義の“落日”が始まった」という大局的見方をしていますと話し、イランへの侵略をとっても、トランプ米政権は国際社会での孤立を深めていること、そのときに日本の高市政権が卑屈な従属的姿勢をとっていることは情けないことであり、日本共産党の役割は大きいと話しました。

 第3問は、「世界中で左翼が苦しい中で、ベルリンの壁崩壊以降、これだけうまくやっている共産党はなかなかないわけですが、その秘密はどこにあるのでしょうか?」というものでした。私は、「うまくやっている」とはいえない困難や苦労もありますとのべつつ、自主独立の路線を貫いたからこそ今日の日本共産党があること、スターリンによってゆがめられた理論の抜本的刷新もこの立場で進めてきたことを話しました。

 第4問は、「憲法9条を守る闘争は、いまどうなっているのでしょうか?」でした。私は、4月11日の「Q&A戦争と平和」学習会で話した内容を中心に、憲法闘争の焦点を説明するとともに、5月3日の憲法記念日の集会が大成功したこと、古賀誠自民党元幹事長など保守の政治家からも憲法9条を断固として守り抜く良心の声があがっていることを紹介しました。

 この後、参加者から次々と挙手で質問が出され、一つ一つに答えました。出された質問について紹介いたします。どこに関心が寄せられたかがだいたいわかると思います。

 「軍拡への政治のシフトの現状はどうなっているのですか?」「日本共産党と労働組合との関係はどうなっていますか?」「日本政府は右にシフトし、トランプは国際法を順守していません。日本共産党の戦略はどんなものですか?」「ソ連式の『マルクス・レーニン主義』を厳しく批判していましたが、どのように社会主義を築くのですか?」「台湾問題での日本共産党の考え方はどんなものですか?」「日本では若者の間に進歩的な声が広がっていますか?」「憲法9条を守り、軍事関係を終わらせるロードマップはどんなものですか?」――こういう質問が出ました。全体としてトランプ政治の危険、日本の政治の右傾化への危惧が語られ、日本共産党がどう対応しようとしているのかについて強い関心が集中した質疑となりました。

第2部--「自由に処分できる時間と未来社会論」をめぐる理論交流

 続いて第2部となりました。冒頭に私が、「自由に処分できる時間と未来社会論」と題して、20分ほど英語で講演を行い、自由な質疑となりました。その要旨は、9日付「しんぶん赤旗」で報道しておりますので、お読みいただければと思います。

 私は、講演で、「私たちがなぜこうした理論問題を重視しているのか」という政治的動機を話したうえで、マルクスが「人間の自由で全面的な発展」を未来社会の最大の特徴・目標にすえたこと、その保障を、資本主義的搾取をなくすことによって、万人が十分な「自由に処分できる時間」を持つことに求めたことを、『資本論草稿集』と『資本論』などでのマルクスの理論的探究の足跡をたどりながら話しました。

 英語での20分のスピーチというのは実は初めてで、2024年8月のベルリンの国際会議で12分間話したのが最長時間でした。しかも今回は理論問題を話したので、内容が伝わったかどうか不安もありました。しかし、だいたいは伝わったようです。なぜならここでも参加者がいっせいに挙手し、次々と質問が出たからです。伝わっていなかったら質問が出ないでしょう(笑い)。伝わったと安心したところであります。

 出された質問は、「AIをマルクス主義の観点からどう捉えたらいいのでしょうか?」、「『資本論』は労働者の階級意識についてどういう捉え方をしているのでしょうか?」、「日本の労働時間が長いのはどうしてでしょうか?」、「マルクスがいま生きていたら、現代の課題にどう対処したでしょうか?」、「労働生産性が高まれば失業する人がいる、どう捉えたらいいでしょうか?」など、どれも『資本論』にかかわるもので、一つひとつに答え、真剣で活発な討論となりました。

討論企画の反響から--アメリカ共産党機関紙編集長が長文の紹介記事を執筆

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(写真)マルチェロ・ムスト・ヨーク大教授主催の討論企画で講演する志位議長(中央)。その右はムスト教授=5月4日、トロント郊外

 討論企画が終了しますと、ムストさんは、私に、「大成功です」とうれしそうに評価を語ってくれました。企画が終了した後も、参加者との懇談が30分ぐらい続きまして、写真撮影が続きました。「これまで聞いたことのない新鮮な話だった」との評価が多く寄せられたのはたいへんうれしいことでした。

 寄せられた感想のなかから若干を紹介します。「『資本論』は何度か読んできたが、自由に処分できる時間に焦点を当てて、未来社会を論じる角度はフレッシュであり、新しい研究の角度を提供してくれた」、「政党のリーダーが政治活動と同時にここまで理論を解明していることに率直に驚きました。とても刺激を受ける講演でした」、「何が本当の社会主義なのかを考える機会となりました。マルクス主義は本来豊かなものと思え、さらに研究しようと思いました」、こうした声が寄せられました。

 この討論企画には、カナダ留学中の日本人の学生も参加していて、「日本では民青同盟員として活動していました。今日の講演に感動しました。帰国したら日本共産党に入党します」と約束してくれたことは、私たちの大きな喜びだったことも報告しておきたいと思います。(拍手)

 アメリカ共産党機関紙の「ピープルズ・ワールド」紙が、5月6日号電子版に、「日本の従業員が過労死する中、共産主義者たちは『マルクスを見よ』と主張する」と題して、ヨーク大学での講演と、私の英語版の本を紹介する長文の記事を掲載しました。筆者は、C・J・アトキンス同紙編集長で、ヨーク大学の講演に取材に訪れ、追加取材を行って記事を執筆したとのことです。アトキンスさん自身がヨーク大学の政治学博士です。記事は講演と英語版の本の要点を実によく把握してくれていて、評価してくれたものとなっています。抜粋をそのまま紹介させていただきたいと思います。

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(写真)アメリカ共産党機関紙「ピープルズ・ワールド」紙=5月6日号電子版〈Photo=c.J.Atkins/People's World〉

 「ヨーク大学で、志位氏は、ポスト資本主義社会を『あらゆる個人の全面的かつ自由な発展が基本原理をなす社会』と定義したマルクスの言葉を引用した。しかし、彼はこう問いかけた。『人々が自分の望むように使える十分な自由時間を持たない場合、どうしてその潜在能力を全面的かつ自由に発展させることができるであろうか?』。これこそが、彼の著書の核心的な問いである。同書は、マルクスが『自由に処分できる時間』と呼んだ概念――労働者が自身と家族の生計を維持するために必要な労働を終えた後に残る時間――を軸に構成されている」

 「志位氏はその著作の中で、マルクスがこの洞察をもとに社会主義の全体像を構築したことを示している。資本主義下では、労働者は生存に必要な量よりもはるかに多くを生産するが、その余剰――物質的な財だけでなく、極めて重要な点として『時間』も――資本家によって奪い取られる。……志位氏は、これこそがマルクスの資本主義批判の道徳的核であると論じている。それは単なる金銭の不公正な分配だけではなく、人間の生命と可能性の窃取なのである」

 「志位氏は、資本主義批判におけるこの側面が、マルクス以降の研究者たちによって必ずしも十分に評価されてこなかったと強調する。マルクス主義の伝統においては、物質的な豊かさが社会主義を定義するという議論が多くなされてきたが、労働者の『時間』という問題には十分な注意が払われてこなかった。『人々が自由に使える余暇を増やすことこそが、未来社会の中心的な目標である』と、彼はトロントの聴衆に語った」

 こういう紹介をしてくれたのです。最後に出てくる「マルクス主義の伝統においては、物質的な豊かさが社会主義を定義するという議論」「労働者の『時間』という問題には十分な注意が払われてこなかった」というのは、マルクスの『ゴータ綱領批判』(1875年)の一節を誤読して、共産主義社会の特徴を物質的生産の領域に局限し、しかも生産物の分配のあり方においた旧ソ連流の議論を指していると思います。この議論の最大の理論的誤謬(ごびゅう)は、人類の未来史からその最も輝かしい部分――「自由に処分できる時間」の飛躍的拡大と「人間の自由で全面的な発展」という特徴を切り捨ててしまうことにありました。そのことを私は、『自由な時間と「資本論」』(「緑本」)の「補注」(82~83ページ)で指摘していたのですが(英訳本では253~254ページ)、アメリカ共産党機関紙の編集長が、そこまで注目して読んでくれていたのは、本当にうれしいことでした。

党の理論活動の生命力と理論交流の可能性

 アメリカとカナダでの理論交流は、この間、私たちが取り組んできた「自由に処分できる時間」を軸にすえた未来社会論が、世界でも共感を広げる生命力をもっていることを確信させるものとなりました。それはDSAや『ジャコバン』誌・幹部との交流、ハートマンさんとの対話、ムストさんとの対話、ヨーク大学での討論企画をつうじて、強く感じられたことでした。

 この間、私たちが欧米の左翼・進歩勢力と交流してきて実感していることは、どこでも活動の面で私たちが学ぶべき豊かな経験をつくりだしていることと同時に、理論の面、とくに社会主義・共産主義をどう理解し展望するかという点では、欧州の左翼勢力も、米国の左翼勢力も、模索と探究の過程にあるということでした。もちろん、模索と探究の過程にあるというのは私たちも同じです。ただ、そうした状況にあるだけに、日本共産党の理論的到達点を紹介しますと、新鮮な共感をもって受け止められるということも、私たちが感じてきたことであります。

 マルクスの理論はインターナショナルな力をもっており、また、本来、科学的社会主義の事業は、インターナショナルに発展させることを追求すべきものだと私は思います。国際的な理論交流を強めることは、わが党の理論を豊かにするとともに、世界の運動の貢献にもなりうるものであり、さらに発展させていきたいと決意をしているところであります。(拍手)

むすびに--日本共産党の綱領路線が今日の世界で大きな生命力を発揮している

 報告の最後に、全体の感想をのべたいと思います。

 今回の北米訪問で私たちが取り組んだ課題はたいへん多岐にわたりましたが、その全体を通じて強く実感していることがあります。それは、日本共産党の綱領路線が、今日の世界で大きな生命力を発揮しているということです。三つの点をとくに強調したいと思います。

世界論--NPT再検討会議で発揮されていた、発展途上国・新興国の大きな力

 一つは、世界論です。わが党は、2020年の綱領一部改定で、「植民地体制の崩壊と百を超える主権国家の誕生という、20世紀に起こった世界の構造変化は、21世紀の今日、平和と社会進歩を促進する生きた力を発揮しはじめている」という見方を、世界論の中心にすえました。この世界論の正確さは、私たちがNPT再検討会議に参加して強い実感をもって確信したことでありました。

 この会議では、発展途上国や新興国を中心に、核保有国にNPT第6条の履行を迫る声が締約国の7割を超えました。そして会議成功の要となって生き生きと奮闘していたのは、ベトナム、ガーナという新興国や途上国の外交官でした。

 このことは、党綱領がのべている「一握りの大国が世界政治を思いのままに動かしていた時代は終わり、世界のすべての国ぐにが、対等・平等の資格で、世界政治の主人公になる新しい時代が開かれつつある」ことを、大国によって無法な逆流がもちこまれているもとでも、力強く示しているのではないでしょうか。

民主主義革命の路線--米国の左翼・進歩勢力との連帯の確かな土台に

 二つ目は、民主主義革命の路線です。わが党綱領が、民主主義革命の中心課題の一つに、国民多数の合意で日米安保条約を廃棄し、米軍基地を撤退させ、対等・平等・友好の日米関係を築くことをすえていることは、DSAなど米国の左翼・進歩勢力との連帯をつくっていくうえでの確かな土台となることを強く感じました。

 私たちはDSAとの交流で多くの学ぶべきものがあると感じましたが、なかでも強い感動をもって受け止めたのは、さきほど紹介したように、彼らが「US戦争マシンを終わらせる」「外国軍事基地の撤去」などを綱領に掲げていることでした。会談のなかで先方から、「アメリカ帝国主義は、アメリカ国民とともに、世界中の国民を抑圧している、この抑圧を終わらせることで協力できる」との表明があったことは、本当に心強いことでした。「他民族を抑圧するものは自由ではあり得ない」という真理を彼らは理解し実践しているのであります。私はここに、DSAが掲げる社会主義の旗が真剣なものであることの何よりもの証しがあるように思います。

 私たちが、今回の訪問をつうじて、アメリカの帝国主義的支配に共同して闘う立場に立つ友人を、この帝国の心臓部において得ることができたことは、大きな喜びであることを、重ねて申し上げたいと思います。(拍手)

未来社会論--一連の理論交流でも強い共感をもって受け止められた

 三つは、未来社会論の生命力です。わが党は、2004年の綱領改定で、「生産手段の社会化」を社会主義的変革の中心にすえるとともに、労働時間の抜本的短縮によって「社会のすべての構成員の人間的発達」を保障する社会という、マルクス本来の未来社会論を生きいきとよみがえらせました。この探究は2020年の綱領一部改定で発展させられ、2024年の第29回党大会では、「人間の自由」こそ、社会主義・共産主義の目的であり、最大の特質であるという立場を、三つの角度から打ち出しました。この間の「青本」「赤本」「緑本」で取り組んできた内容は、党綱領と大会決定の具体化にほかなりません。

 これらの私たちの理論的探究、とくに「自由に処分できる時間」を軸にすえた未来社会論が、北米での一連の理論交流でも強い共感をもって受け止められたことも、私たちの大きな喜びでした。そしてこの問題でのわが党の理論的探究を発展させる土台となったのが、自主独立の立場を貫き、この立場から、スターリンによって「マルクス・レーニン主義」という名前を冠してゆがめられた理論の刷新をはかってきた先人たちの先駆的努力にあったことを、交流をつうじて強く実感をいたしました。

 みなさん。激動の世界で大きな生命力を発揮している綱領路線に深い確信をもって、強く大きな党をつくり、国政と地方選挙で反転攻勢に転ずるために、奮闘しようではありませんか(拍手)。私も、全国の党と後援会のみなさんと心一つに奮闘する決意をのべ、報告を終わりにします。ありがとうございました。(拍手)