2025年11月1日(土)
志位議長が斎藤幸平氏と対談(後半)
『資本論』を読むムーブメントで協力を
大反響のネット番組
日本共産党の志位和夫議長と、マルクス研究者の斎藤幸平東京大学准教授との対談がインターネットメディアReHacQ(リハック)で行われ、大反響の前半部分(配信は23日から)に続いて、後半部分が30日夜9時から配信されました。
![]() (写真)対談する志位和夫議長(右)と斎藤幸平東京大学准教授(YouTubeから) |
後半も、斎藤氏の質問に答える形で志位氏との対談が進められ、「資本主義に自由があるか」、「搾取の実態について」、「どうやって共産主義のイメージをよくするか」、「脱成長、脱成長コミュニズムをどう見るか」、「使える技術、使えない技術」などについて両氏は縦横に語りあいました。対談の最後に、志位氏が、「われわれには、マルクスと『資本論』に対する理解の違いもありますが、『資本論』を読むムーブメント(運動)をつくっていく、という一点で協力しませんか」と語りかけると、斎藤氏は「もちろんですよ」と応じ、意気投合しました。
さらに、極右・排外主義に対抗する現代版「反ファシズム統一戦線」を協力してつくっていきたいと志位氏が提案すると、斎藤氏は「左派がもっと重要な問題では協力して、そのうえで議論もできたら」と語りました。
「資本主義に自由があるか」
斎藤氏は、「やっぱり(日本共産党という)名前を変えるべきじゃないか」という声も出されるが、どう答えるかと質問。
志位氏は、『Q&A 共産主義と自由』では、「資本主義に自由があるか」との反問から始めたとのべ、格差拡大、気候危機、デジタル監視など、「人々の自由を奪っているのは資本主義ではないか、ということから考えてもらうことも大事ではないでしょうか」とのべ、「政党は自分の目指しているものを正直に掲げるべきです」と語ると、斎藤氏は、「こそこそするよりいいかもしれないですね」と応じました。
搾取をなくすためには
志位氏は、日本の労働者階級の搾取の実態が、8時間労働に換算して、必要労働時間(3時間42分)、剰余労働時間(4時間18分)になっているという試算のグラフを示して、「お金とともに自由な時間が搾取されている。搾取の制限は資本主義の枠内でもできるが、なくすことは社会主義が必要になります」と語りました。斎藤氏は、「やっぱり社会主義に戻ってきちゃうんですね。必ず」と語りました。
言うべきことを言う外交
話は外交問題にもおよび、志位氏が、「アメリカに対しても、中国に対しても言うべきことを言う。同時に、絶対に戦争を起こさないために外交に知恵をつくす。両方やってます」と語ると、斎藤氏は「こういうふうに言えば普通に伝わるんではないかと思います」とコメントしました。
「脱成長」と気候危機
斎藤氏は、自身が主張している「脱成長」、「脱成長コミュニズム」について「志位さんはどう考えるか」と質問。志位氏は、「斎藤さんがそう言われるのは気候危機の打開をめざしてのものだと思います。ただ、私は、率直にいって二つ問題を感じています」とのべました。
一つは、今行われている脱炭素の努力との関係です。志位氏は、日本共産党が「気候危機打開の2035戦略」で、脱炭素をすすめながら、雇用創出、GDP(国内総生産)増加をはかることは可能だと具体的な数字で示していることを紹介。「脱炭素と成長は両立する」「気候危機打開のためには脱成長が必要と言ったら、企業を含めての今のとりくみにブレーキを踏んでしまうのでは」と指摘しました。
斎藤氏は、「おっしゃりたいことはよくわかります」としつつ、気候危機が「人類の未来を資本主義が壊すという問題だからこそ、企業のあり方を変えていくような運動を対峙(たいじ)する」ことが重要ではないかとのべました。志位氏は「企業のあり方を変えていく必要がある。そういう規制をつくっていく必要があります」と応じました。気候危機の打開のために、資本主義の枠内でも最大の努力をしつつ、社会主義に移行すれば根本的に解決するという展望を語ることが重要ではないかと語りました。
「脱成長」と未来社会
二つ目は、「脱成長」と未来社会の関係です。志位氏は、「私は、社会主義・共産主義の社会を『脱成長』の社会ととらえる考え方はとっていないし、それはマルクスの考えでもないと思います」と語りました。
志位氏は、社会主義・共産主義では、資本主義のもとで行われているような生産力の無制限な量的発展は当然なくしていくべきだが、「生産力が新しい質で発展する」という展望をもつことができるのではないかと指摘。「新しい質」のなかでも一番重要なのは生産力の担い手である「人間が変わる」ことにあると強調し、こう語りました。
「すべての人間が十分な『自由な時間』をもち、『自由で全面的な発展』を実現する、こういう社会になったら科学・技術・文化の全く新しい発展が生まれ、それが物質的生産の領域にも反作用し、人間の発展と社会の発展が好循環していく、生産力の質のダイナミックな発展を展望できるのではないでしょうか」
斎藤氏は「(この指摘は)(私の)脱成長と両立する。無限の量的な成長を手放すことで、質的な成長・発展を重視する社会への転換と捉えているので、今おっしゃられたことと(脱成長が)近いっていうのは、直接お伝えしたい。お伝えできてよかった」と応じました。
マルクスブームを日本でも
志位氏は、米国で半世紀ぶりに『資本論』の第1部の新英語版が発刊されたことなどをあげ、「世界は、今マルクスブームじゃないですか」とのべ、「マルクスの理解には違いもありますが、そこは大いに議論していったらいい。それぞれの立場で、マルクスの『資本論』を読むムーブメントを日本でもアメリカに負けないでつくっていくという一点で協力しませんか」と提案。斎藤氏は「もちろんですよ」と応じました。志位氏が「一点共闘」というと、斎藤氏は、「私たちもっと多面的に共闘できると思いますが、まずはその一点で」と語りました。
本当の富―豊かさとは何か
斎藤氏に若い世代へのメッセージをと促された志位氏は、「人間にとって本当の富――豊かさとは何か」という問いかけをしたいと語りました。マルクスは、「富」を、(1)労働がつくりだす物質的富、(2)自由な時間、(3)自然の豊かさ、(4)自由で全面的に発展した人間など、豊かに全体としてとらえているのではないかとのべました。
![]() 動画の視聴は次のQRコードでできます。youtu.be/ujLjyXg0n1A |
『資本論』を読もう――志位氏と斎藤氏のよびかけ
対談の最後に視聴者へのメッセージを求められた志位氏は、マルクス『資本論』の「初版への序言」を引用し、「新たなものを学ぼう」「自分の頭で考えよう」と語りました。「社会は複雑で豊かなものだから時間をかけて、粘り強く学んでいこう」と呼びかけました。
斎藤氏は、「『資本論』は難しいものですが、しっかり読んでいただいて、価値観が変わったり、新しい生き方の指針とか、いろんなものが得られる古典だと思うので、そういうのを感じていただく、今日は、そういう第一歩になれば良かったなと思っています」と語りました。
「ドキドキする面白さ」 前半に続き反響広がる
前半につづき公開直後から大きな反響を呼び、動画へのアクセス数は前半で28万回を超え、後半で6万回(31日午後7時現在)を超えています。
「成長か脱成長か、二人の話の核心部分はドキドキする面白さでした。…一点共闘を呼びかけるに至った時、感動しました」、「現実だけみて不安や分断だけ煽(あお)る政党が跋扈(ばっこ)してる中で、現実をよくするために現実と理想を地続きで見ながら課題と発展方向を両睨(にら)みでみてるのはすごいと思う」などコメントが多数寄せられています。



