2025年11月11日(火)
『資本論』と現代を語る 志位議長と斎藤幸平氏の対談から
第5回 搾取の問題、共産主義のイメージをどうよくするか?
![]() (写真)民青主催の「学生オンラインゼミ第4弾」(5月10日)で講演する志位和夫議長(YouTubeから) |
続いて日本社会をどのように変えるかを巡り、搾取とのたたかいが議論になりました。
労働者階級が搾取を自覚し、これを打ち破ろうとなったら 世の中は変わる
志位氏は「『資本論』は労働者階級にたたかいを呼びかけた本だ」という見方を語りました。
――『資本論』は、労働者から「お金」と「時間」の両方を搾取する資本主義の仕組みを明らかにし、それらを取り戻そうと呼び掛けている。
――また、資本主義のもとでの生産力の発展が、さらなる過密労働や長時間労働、リストラの強要のために使われることを明らかにし、そうした不合理とのたたかいを呼び掛けている。
そう論じた上で、日本の働く人の83%が労働者階級なのだから、この人たちが「自分たちは搾取されていると自覚して、これを打ち破ろうとなったら世の中が変わる」という展望を語りました。
志位氏はパネルを示して、全産業の雇用者の労働時間を1日8時間労働に換算すると、労働者と家族の生計費を賄う「必要労働時間」は3時間42分にすぎず、残り4時間18分は資本家に搾取される「剰余労働時間」になっているという推計(大阪経済大学の泉弘志名誉教授の研究)を紹介しました。
「剰余労働時間」の正体は賃金が支払われていない不払い労働であり、「お金が奪われている」。同時に、労働者は本来3時間42分働いたら、あとは「自由な時間」を過ごせるはずなのに、その「『自由な時間』も奪われている」と述べました。
志位 こういう事実も、私は労働者のみなさんに知っていただきたいと(思う)。こういう事実を知れば、だったら、賃上げも時短も両方求めるのは当たり前(ということになる)じゃないですか。
斎藤 この4時間をちょっと3時間ぐらいにたとえば1時間短くしたって良いし…。
志位 こっち(剰余労働時間)をうんと短くすることも可能じゃないですか。
「やっぱり社会主義に戻ってきちゃう。だから共産党なんですね」
志位 いまの日本に搾取があるかないか、この間も街頭で(対話を)やってきたんですよ。シールアンケート。(日本共産党の)田村(智子)委員長が錦糸町(駅前)でやった。そうしたら、4人に3人ぐらいは「ある」にシールを貼るんです。搾取があるという感じは持っている。だって、こんなに一生懸命労働者が働いても賃金が…。
斎藤 賃金低いし。
志位 長時間労働で苦しんでいる。大金持ちはべらぼうな額をもうけるから、一体、あの金はどこから来たのか。働いた人から搾り上げた以外考えられないじゃないですか。搾取があるっていう感覚がある。つまり「搾取の感覚」を持っている。これを科学の力で解き明かしたのがマルクスじゃないですか。それが『資本論』。だから、そこのところを本当に分かってもらう、どういう仕掛けで搾取をやるのかと。資本主義というのは必ず搾取を生み出してきます。もちろん搾取を制限することは資本主義の枠内でもできます。
斎藤 一定程度はね。
志位 そう。ただなくすことはできない。それはこの(社会)体制の本質です。それをなくすには社会主義・共産主義なんだよって。
斎藤 やっぱり社会主義に戻ってきちゃうんですね、必ず。だから共産党なんですね。
志位 そうです。
まず米国・財界中心の政治のゆがみをただす多数派をつくる
つぎに話題となったのは、どうやって共産主義のイメージを良くするかです。斎藤氏は「私も本では『将来社会』を論じながら、『コミュニズム』ってカタカナでいう」のは、共産主義に付随する「イメージをよくできるかな」と考えているからだと話しました。志位氏は「(著書での呼称は)斎藤さんの自由だとして、やっぱり党としては横文字じゃなくて、日本の政党なんだから日本語で直球勝負する」という考え方に立っていると応じました。
斎藤氏は立憲民主党の勉強会に参加し、「ジェンダーとか環境とか、あるいは反レイシズムの問題をやるんだったら、やっぱりその根源にあるのは資本主義という問題なんだから、本当に解決しようと思ったら、みなさんも社会主義者にならなきゃいけないですよって話をした」ところ、「(環境などの理念はいいが)社会主義が加わるとちょっと」という反応だったと語りました。
志位氏は「すぐに社会主義の多数派を形成するのは、これは難しいと思います。私たちは段階的に考えているわけで、まずアメリカと財界中心の(政治の)ゆがみをただす」と述べ、党綱領の立場を説明しました。
財界中心政治の転換については、労働条件、社会保障、学費無償化など、ヨーロッパで当たり前になっている暮らしを守るルールをつくるために多数派を形成すると語りました。
アメリカいいなり政治の転換については、首都のど真ん中に巨大基地があり、沖縄が米軍基地に占領されたような状態に置かれ、被爆国なのに核兵器禁止条約に参加もできない、「こんなアメリカの顔色をうかがっているだけの日本でいいのか。対等・平等の関係が必要でしょうと。ここでは多数を結集できると思うんですよ」と語りました。
中国との関係――言うべきことを言いつつ、絶対に戦争を起こさないための外交に知恵をつくす
この中で中国との関係が話題に上りました。
志位 中国との関係では、僕は絶対に戦争を起こしてはいけない(と思う)。当たり前じゃないですか。だから、外交でどうやって関係を良くしていくかという「提言」を出しました。簡単に言いますと、2008年に日中両国の首脳合意というのがあるんですよ。とてもいい合意で、福田康夫首相(当時)と胡錦濤(こ・きんとう)主席(当時)の合意なんだけど、「双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない」と書いてある。互いに脅威になっちゃいけない。これはいまでも双方とも「守る」と言うんですよ。だったら、これを守って、日本は中国の脅威になることをやらない。中国も日本に脅威になるようなことはやらない。お互いに厳格に守っていこうと提案したんです。
斎藤 共存していこう。
志位 そう。そういう外交的な中身を、この前、訪中したときに全人代の委員長などと会談して話したら、中国側も「それはよくわかる」と言う。もちろん中国に行った場合は、東シナ海での一方的な現状変更の動きはやめてほしいと言いました。それから台湾問題については、平和的解決をわれわれは求めている。だから中国による武力の行使や威嚇は反対だと、はっきり言いました。同時に、第三国が(軍事的に)関与することにも反対だと。
斎藤 だから、アメリカが台湾で変な問題を起こすのにも反対だと。
志位 どちらにも反対だと。中国の武力の行使に反対だとはっきり言って、それは向こうと立場が違いますから、議論になるんです。言うべきことはちゃんと言う。しかし、中国を敵視して軍事で構えていくということをどんどんやっていけば、向こうも軍拡を加速させますよね。それでは軍事対軍事の悪循環になっちゃうので、お互いに自制していくという外交こそが必要です。
斎藤 決して、それは別に反日活動ではない。
志位 もちろん、そうです。中国に言うべきことは言う。アメリカに対しても言う。しかし、絶対に戦争を起こさないために外交に知恵を尽くす。両方やっています。
斎藤 こういうふうに言えば、なんか普通に伝わるんではないかなと思いますね。(対談配信時に視聴者の)コメント欄を見るのが楽しみですね。
(つづく)


