志位和夫 日本共産党

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インタビュー・対談

2025年11月9日(日)

『資本論』と現代を語る 志位議長と斎藤幸平氏の対談から

第4回 左翼の力、日本共産党をどう伸ばすか?


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(写真)斎藤幸平氏(左)と語り合う志位和夫議長(YouTubeから)

 次に議論になったのは、左翼の力と日本共産党をどう伸ばすかです。斎藤氏は「左派が衰退している。例えば高齢化しているとか、党員の数、左派団体のメンバーの数も減ってきている。いま言った話が正しいのであれば、なんで支持がとれないのか」と問いかけました。

「反動ブロック」に対して左翼的な流れをどうつくるかは重要な課題

 志位氏は「単純な衰退ではない」と述べ、若い人を党に迎え入れ、党勢を前進に転ずる取り組みを進めていることを紹介しました。

 「赤本」「青本」の元になった「学生オンラインゼミ」を開催して、若い人のなかに社会主義、共産主義の魅力を伝える努力もする中で、日本共産党と協力関係にある日本民主青年同盟の新規加入者数が4年前の年1200人程度から毎年増え、今年は4000人の目標を達成する勢いであること。

 「しんぶん赤旗」日曜版の電子版を10月からスタートさせ、半月で新規読者が6000人を超えたこと。この電子版読者をまず2万まで増やす取り組みに挑戦していることを語りました。

 「左派(勢力)」への斎藤氏の危惧について、志位氏は、「(いま)右翼的な流れと排外主義の流れが合体して反動ブロックをつくる危険があります」「(日本で)左翼的な流れをどうつくっていくかというのは重要な課題になっていると私も思います」と発言しました。

 欧州でも極右・排外主義勢力が古い保守勢力と公然と、また事実上連携するもとで、「それに対して左派勢力が立ちふさがるという構図になっている」こと、「日本でも左派勢力、あるいは民主主義を守る勢力が『反ファシズム統一戦線』みたいなものをつくる必要があります」と提起しました。

 戦前以来の反共主義など「日本固有の後進性」を指摘しつつ、「反動ブロック」に対抗して国民的・民主的共同を広げる取り組みを語りました。

「左翼はこわい」というイメージに対して
――本当の社会主義・共産主義の魅力を伝えていきたい

 斎藤氏が「左翼はこわい」というイメージがあるのではと述べたのに対し、志位氏は「『こわい』というのがどこから来ているかといったら、旧ソ連や中国のイメージですかね。一つ一つお話ししていく必要がある」と答えました。

 志位 たとえば、旧ソ連社会をどう見てきたのか。ソ連がやったチェコ(スロバキア)への侵略とか、アフガンへの侵略とか、われわれは覇権主義と呼んでいますけど、他国を侵略するようなやり方と、一番激しくたたかったのは日本共産党なんです。ですから、ソ連共産党がつぶれたときに「もろ手をあげて歓迎します」と声明を出したんです。そのぐらい厳しくやってきた党なんですよ。ああいうやり方は、社会主義でも共産主義でもないということを、きちんと言ってきた。

 それでは、どういう社会を目指すのか。いまの日本の中で左翼的な流れ、あるいは日本共産党自身を大きくしていく場合になにがポイントかと言ったら、もちろん目の前の暮らしの苦しさに寄り添って、賃金でも、労働時間でも、社会保障でも、ジェンダーでも、いろんな問題での要求を実現していくことが大事になってくる。これをやりながら、同時に社会主義・共産主義の本当の魅力を伝えていかなければいけない。そのプロジェクトが、この「青(本)」と「赤(本)」で始めたことなんですよ。

 斎藤氏は「反ファシズム統一戦線みたいな話もあるし、左派を広げていかなきゃいけない」と思うけれども、「(反レイシズムや環境やジェンダーが大事だという人の中には)共産党とか、共産主義とか、マルクスみたいなもので、ちょっと引いちゃう人も少なくないのでは」と述べました。

 志位氏は「排外主義にしても、ジェンダーにしても、環境にしても、資本主義の枠内でも変えていくことが必要だけれども、(社会主義への)体制変革をした場合に、全部大きな展望が見えてくる」「根本的な解決の道は、社会主義にある、ということをあわせて言っていくことが大事」だと強調しました。

「資本主義は人類最後の社会か」「資本主義に自由があるか」という反問も

 「やっぱり共産主義というゴールは外せない?」と述べる斎藤氏に対して、志位氏は「私はこの問題で、よく反問するんですよ。『あなたは資本主義という社会制度が、人類が到達した最後の制度だと思いますか』。そうすると結構『うーん』となる」と語りました。

 志位 この「青い本」の中で書いたのは、よく「共産主義は自由がない」と言われるんだけど、じゃあ、逆に聞くが、「資本主義に自由があるか」。そこから始めたんです。わずか一握りの超富裕層が富を独り占めにして、50億人の人が苦しい暮らしをしている。気候危機をなかなか解決できない。資本主義の「総本山」といわれるアメリカでは、そのボスが世界の秩序を壊していく。もう帝国の落日が始まっている。この資本主義に、自由が本当にあるのか。実は人々の自由を奪っているのではないか、というところから考えてもらうことも大事じゃないでしょうかね。

 斎藤 でもコンビニもあるし、アマゾンで頼むと次の日にはつくというような人、結構いると思うんです。

 志位 そういう自由はあるし、コンビニは(社会の)インフラになっている。否定するわけがありません。

 斎藤 ただそういうものが長時間労働だとか…。

 志位 コンビニのシステムはオーナーさんにものすごい過重労働を強いている。過労死になったりも多い。(日本でも)アマゾンの倉庫へ行くと、デジタル(技術)で労働者を監視して、10分間休んだら(評価が)マイナスになる。完全にがんじがらめに監視されている。これは本当に自由な社会なのか、という問いかけも大事じゃないでしょうか。

 斎藤 それで気がついてほしいですね。

 志位 気がつく点もある。問いかけが大事です。

党名に込めた理想の社会を正面から訴えていく
――「こそこそするよりいいかもしれない」

 斎藤氏が「(反共主義が強い中で共産党の)名前を変えて復権できるのであれば、名前くらい変えてもいいのでは」と提起し、次のような対話になりました。

 志位 (名前は)日本共産党でいいじゃないですか。あなたもコミュニズムといっているんでしょ(笑い)。名前を変えたら、メディアは「○○党(元共産党)」と書くよ。だから、やっぱりそういう姑息(こそく)なことはやらない。正面から、われわれの理想の社会を訴えていく。

 斎藤 それは確かに、こそこそするよりいいかもしれないですね。

 志位 そうです。

 斎藤 それをやれば、日本も良くなる?

 志位 良くなると思いますよ。

 (つづく)