志位和夫 日本共産党

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インタビュー・対談

2025年11月7日(金)

『資本論』と現代を語る 志位議長と斎藤幸平氏の対談から

第3回 労働時間の短縮――「自由な時間」について


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(写真)泉弘志・大阪経済大学名誉教授の推計をもとにした「必要労働時間」と「剰余労働時間」のパネルを示して、搾取を説明する志位和夫議長(YouTubeから)

 資本主義の枠内での改革と社会主義的変革の関係について、「自由な時間」の獲得をめぐっても議論が進みました。

 志位氏が作成した「各人の自由な発展…」に関するパネルについて、斎藤氏は「資本主義を乗り越えると、やっとこれ(「万人の自由な発展」)になるんですよね。だから、(資本主義の枠内で教育)無償化なんかもある程度実現できるけど、本当に万人が(自由に発展できるか)、この『万人が』のところを強調すると制限が(ある)」と述べました。

 志位氏は「『各人の自由な発展』は資本主義では全然不可能だったかというと、そんなことはない」と応じ、労働時間がフランスで週35時間、ドイツで週32時間、産業によって週28時間になっていることを例にあげました。「ですから、資本主義の枠内でも、『自由な発展』はある範囲まではできる。でも万人が『自由な時間』を持って、みんなが伸び伸びと自分の力を伸ばせるようにするには、やっぱり搾取制度をなくしていくということが必要になる」と述べました。

 斎藤氏が「(僕がよく批判されるのは、共産主義になったら)いま豊かな暮らしをしている人たちはいろんな我慢とか不自由を強いられることになるんではないか(という点です)」と語ったのに対し、志位氏は次のように答えました。

 志位 私たちの目指す未来社会、社会主義、共産主義となったら、『自由な時間』をみんなが持てるようになる。その場合の時間の使い方は、文字通り自由になる。遊んでいてもいいし、それから趣味に使ってもいい。まさに、なんの制約もなく、みんなが享受できる。そうなったら人間は必ずこの時間を、自分の中に眠っている精神的な可能性、知的な可能性、あるいは肉体的な可能性を伸ばすために使うだろうと(思います)。

「自由時間」論は、労働者にとってどれくらい魅力的か?

 続いて斎藤氏が提起したのは、「この『自由時間』論は、いまの資本主義で暮らしている労働者にとって、どれぐらい魅力的なのか」という論点です。「もっと働いて、もっとお金を稼ぎたいという方たちが結構このリハックでは多い」「そういう人たちに『自由時間が大事だ』と言っても、『そんなことないよ』と言われてしまうんじゃないか」と問いかけました。

 志位氏は「自由時間」の問題を訴える際に気をつけているのは「賃上げと一体に労働時間の短縮を」と必ず言うことだと答えました。時給1000円余りの日本の最低賃金は2000円台のヨーロッパの半分にすぎず、賃上げは「当然の要求」だと指摘。フランスの労働総同盟(CGT)が週35時間労働制から週32時間労働制をめざす中でも「労働時間の短縮は雇用の敵でも、賃金の敵でもありません」と強調していることを紹介しました。

日本の一番大きな問題の一つは長時間労働

 そのうえで、日本でも週35時間労働制を目標に据える政策を日本共産党が出したところ、「全体はとても歓迎されている」と語りました。

 志位 「もっと自由な時間がほしい」「残業つづきで、家に帰ったら寝るだけ、こんな生活はなんとかしたい」―この要求は強いですよ。日本の場合は労働時間が、いまでもだいたいヨーロッパに比べて年間300時間も長い。その上に残業がほとんど規制なしで乗っかる。「サービス残業」(ただ働き)まである。もう本当に働きすぎなわけです。「これはなんとかしないとジェンダー平等も実現できない」という強い願いがあることも感じます。

 斎藤 結構、現場の声としても、いまの(労働)時間を短くしたいと。

 志位 そうです。この「青い本」で、自由時間の問題をかなり論じたんですが、とくに「自由に処分できる時間―自由な時間こそ富だ」という(主張に対して)ずいぶん共感の声がありました。

 人間にとって、もちろん物的な富、これは資源ですよね。しかし、時間も大事な資源で、だいたい人間の一生というのは時間的に限られている。1日だって24時間と限られている。この時間をいかに本当に人間らしく豊かに過ごすかというのは、人間にとっては根本問題だと思いますよ。

 斎藤 日本の一番大きな問題の一つは、長時間労働ということですね。

 志位 そう思いますね。働く条件で言うと、私は「低賃金」、「長時間」、そして「非正規」。こういう問題があると思う。

 斎藤 やっぱり日本はそこを変えていかないと。

 志位 これは資本主義のもとでもできますよね。最大限やる。しかし、そういう問題を根本的に解決しようと思ったら、体制変革が必要になるということではないでしょうか。

賃上げと一体に時短をすすめれば、良質な雇用が増え、本当に豊かな社会が

 斎藤氏は「『もっと働いて(経済)成長しないと』みたいなマインドにみんなとらわれていると思うんですけど、いまの日本をそうした(時短と賃上げの)やり方でよくできる?」と尋ねました。

 志位氏は「できると思います」と述べ、日本経済停滞の根本に経済の5割を占める消費の冷え込みがあり、原因は実質賃金の低下なのだから、そこから変える必要があると指摘しました。賃上げと同時に労働時間を短縮すれば、良質な雇用が増え、本当に豊かな社会ができると主張しました。

(つづく)