志位和夫 日本共産党

力をあわせて一緒に政治を変えましょう

演説・あいさつ

2025年11月18日(火)

「公共をとりもどす」運動をともに

「名古屋「自治体労働者のつどい」 志位議長の発言


 日本共産党の志位和夫議長を迎えて9日に名古屋市内で開かれた「自治体労働者のつどい」では、自治体労働者の労働条件をどう改善していくか、保育・医療分野での闘いの焦点、労働者の団結づくりをどう進めていくかといった切実な質問が次々と寄せられました。志位氏は、自治体と自治体労働者を取り巻く深刻な現状の根本原因である財界中心の政治の大転換を強く主張するとともに、世界の潮流とも響き合う「公共をとりもどす」運動をともに発展させようと呼びかけ、日本共産党への入党を心を込めて訴えました。2時間を超えるつどいの中で、志位氏が語った自治体労働分野の現状と展望を、一問一答形式で詳報します。

あいさつ 現場の声に学び、一緒に闘う

写真

(写真)資料を使って質問にこたえる志位和夫議長=9日、名古屋市中村区

 志位氏はつどいの冒頭で、次のようにあいさつしました。

 「この間、全国各地で建設労働者や教職員など、労働者の各分野のつどいに参加してきました。日本の社会を変えるには、働く人の83%を占める労働者階級の団結と闘いが必要です。その思いで各分野のつどいに取り組んできましたが、自治体労働者のみなさんを前にお話しするのは今回が初めてです。政府・財界による長年の自治体・自治体労働者攻撃のもとで、現場にはさまざまな困難や苦しみがもたらされていると思います。今日は、みなさんの声をしっかり受け止め、よく学び、一緒に闘う決意を固め合う日にしたいと思います」

Q1 現場の困難はなぜ生まれる?

 問い 「減らされる職員数」「会計年度任用職員の『雇い止め』」「現業労働者の低い処遇」「進められる民間委託と民営化」。こうした現場の困難はなぜ生まれるのでしょうか?

自治体破壊の政治―90年代以降の「五つの波」

図1 グラフ1

 志位氏は、自治体の使命は本来「住民福祉の増進」(地方自治法第1条の2)であるはずなのに、1980~90年代以降、弱肉強食の「新自由主義」が持ち込まれ、自治体本来の役割を壊す政治が押し付けられてきたと指摘。こうした自治体と自治体労働者への攻撃には、90年代以降の「自治体破壊の五つの波」があると述べ、その内容を告発しました。(図1)

 第1の波は、1995年の日経連「新時代の『日本的経営』」。志位氏は、この号令により非正規雇用の拡大を柱とする労働法制の規制緩和が押し付けられ、その流れは公務職場にも及び、95年以降、地方公務員の定数の連続的削減が進められたと指摘しました。95年に328万人だった自治体職員数は、2024年には281万人に減少。これと一体に非正規職員が増加した実態を告発しました。(グラフ1)

 第2の波は、1997年の「地方行革指針」です。志位氏は、これが自治体の「営利企業」化を進める号令となったと強調。(1)自治体独自の仕事の切り捨て(老人医療助成など)(2)「民間でできるものは民間に」(公立病院や保育園の民営化など)(3)「民間経営の手法の導入」(「効率」優先の事業切り捨て)―が押し付けられたとし、「住民福祉のための自治体を、もうけ本位の企業と同じにする『自治体を自治体でなくする』動きが進められました」と批判しました。

 第3の波は、99年の「地方分権推進一括法」です。志位氏は、これにより自治体の大合併が進められ、99年の3232市町村から現在の1718にまで減少したことで「地方の衰退、過疎の深刻化、災害対応力の低下など多くの弊害が生まれました」と指摘。国庫補助負担金や地方交付税の削減も進められ、自治体の福祉と暮らしの水準が大きく押し下げられたと語りました。

 第4の波は、2005年の「新地方行革指針」。志位氏は、職員定数の大幅削減、民間委託・アウトソーシングが強要され、各自治体に「集中改革プラン」が押し付けられたとし、「この時期の削減が大きな傷痕となりました」と強調しました。

 第5の波は、2018年の「自治体戦略2040構想」です。志位氏は、これは人口減少を前提に、情報技術の活用などで「自治体職員を40年までに半減させる」という恐ろしい計画だと告発し、さらに、都道府県域を超えた広域行政体づくりを促すものだと批判しました。

一つひとつの切実な願いの実現と一体に財界中心の政治の大転換を

 志位氏は、「この『五つの波』を推進してきたのは財界です。『財界のグローバルなもうけのために、邪魔なものはすべて取り払え』という発想のもと、人件費の徹底的なカットと自治体の『営利企業』化が進められた結果、いまの現場の困難が生まれています」と強調。「自治体を壊し、自治体労働者を苦しめ、住民サービスを切り捨てる政治を大転換しましょう」と訴えました。

 政治転換の方向として、公務員削減計画を中止し、計画的な増員に切り替える必要を強調。日本の公務員数と人件費がOECD(経済協力開発機構)諸国の中で最低であることを示し、抜本的な改善を呼びかけました。(グラフ2)

グラフ2

 さらに「労働者も決して『やられっぱなし』ではありません」と述べ、住民とともに闘う中で、会計年度任用職員の処遇改善、保育士配置基準の改善、学校給食無償化、35人学級の実現など勝ち取ってきた成果を強調。「現場の困難を解決するには、一つひとつの切実な願いにもとづく闘いを発展させるとともに、財界中心の政治を根本から転換することが重要です」と訴えました。

Q2 保育士不足を解消するには?

 問い 「子どもたちにもう一人保育士を」の運動が全国に広がり、保育士の配置基準を改善させることができました。しかし、保育士不足が深刻です。保育士として働きたいと思ってもらうためには、何が必要でしょうか?

なお低水準な配置基準と低すぎる給与

 志位氏は、保育士の配置基準が改善されたことについて、「4・5歳児の配置基準の見直しは75年ぶりであり、大きな成果です。『子どもたちにもう一人保育士を』を合言葉に頑張ってきたみなさんの運動が実を結んだものだと思います」と語りました。

 その上で、保育士不足が続く要因として「改善されてもなおあまりに低水準な配置基準」があると指摘。日本の3~5歳児の配置基準はOECD加盟38カ国の中で最下位にあり、「改善されたとはいえ、いまだに配置基準は悪い状態です。とても一人ひとりの子どもを大切に保育できる水準ではありません。平均並みにするためには、倍にするくらいの抜本的改善が必要です」と強調しました。

 また、「保育士の低すぎる給与」にも言及。保育士の給与が全産業平均より8万円も低い実態を示し、「保育士の仕事は高度な専門職です。専門職にふさわしい賃金が保障されてしかるべきです」と改善に取り組む決意を表明しました。

二つの闘いの焦点―公立保育園と会計年度任用職員

 志位氏は「保育分野での闘いを考えたとき、『二つの闘いの焦点』があると思います」と語りました。

 一つは「公立保育園を守り発展させる闘い」です。志位氏は、自民党政権が公立保育園の運営費の国庫負担金を廃止し、一般財源化したことで民営化が進み、2000年に1万2723カ所あった公立保育園が、22年には7296カ所と6割にまで減少したと指摘。一方で、愛知県内の公立保育園は660カ所で全体の49・2%を占め、東京都(799カ所)に次いで全国第2位の規模であることを紹介し、「全国でこれだけ減らされる中で、愛知は公立保育園を守ってきた。これは住民のみなさんの闘いの成果です」と強調しました。

 さらに志位氏は、公立保育園が自治体として住民の要求に直接責任を負い、質の高い保育を提供していることを指摘し、「医療的ケアが必要な子どもや障害児の受け入れ」「災害時の避難所としての役割」など、地域全体の子育て支援の中核として保育の水準を保障する存在だと力説。また、東京都の民間保育園の園長の声として、「民間保育園にも行政から新たな要請はあるが、断ることもできる。行政は補助金を出すだけで保育内容は園まかせ。公立保育園は、子育て世代のニーズに自治体として直接応える存在であり、地域の保育全体にとってかけがえない存在です」との言葉を紹介しました。

 もう一つの焦点は「会計年度任用職員の待遇改善の闘い」です。志位氏は、20年に導入された同制度が、会計年度ごとの1年契約を原則とする不安定な働き方を強いるものであり、女性の占める割合が非常に高いのが特徴だと指摘。自治労連の調査では、勤続5年以上でも年収200万円に満たない人が少なくなく、公立保育園では労働者の56・9%が会計年度任用職員で、「週5日働いても月収11万円」という深刻な実態もあると述べました。「女性の犠牲の上に成り立っている制度であり、根本から改革が必要です」と訴えました。

 名古屋市では、会計年度任用職員の再任用の回数を4回に制限し、5年目で雇い止め・公募を行う仕組みを強行しましたが、新たな雇用の拡大につながらず、公募が集まらず深刻な人員不足を招く結果となったと指摘。一方、大阪府箕面市で任期付きのスクールソーシャルワーカーを常勤に切り替えたところ、採用の競争率が23倍に跳ね上がった事例を紹介し、「会計年度任用職員の制度が破綻していることは明らかです。『雇い止め』の仕組みはやめ、『常勤』にし、正規化への道を開くことこそ、解決の方法だと思います」と語りました。

 そして、「保育士の労働条件の改善は、よりよい保育を受ける国民の権利を守る、大きな社会的意義をもつ闘いです」と力を込めて訴えました。

Q3 病院経営の危機をどうする?

 問い 多くの病院が赤字に陥る中、診療報酬の改定は2年に1度で全く間に合いません。改定を待たずに緊急的な財政的支援をしてほしいと思っていますが、病院経営の危機をどう打開していけばよいでしょうか?

自治体病院を守り発展させる特別の意義

 志位氏は、国費を緊急に投入して診療報酬を抜本的に引き上げるとともに、改定を待たずに緊急補助を行うことを強く求めていくと表明。「この声は病院のみなさんの共通の声です」と強調しました。

 その上で、自治体病院が果たしている役割について語りました。志位氏は、全国の病院のうち6割が赤字に陥るなか、自治体病院では赤字の割合が9割近くにのぼっていると指摘。背景には、診療報酬の引き下げとともに、自治体病院が民間では困難な不採算部門―高度医療、救命・救急、感染症、精神医療、小児科・産婦人科、「僻地(へきち)」医療など―を担ってきた実態があると述べました。

 「自治体病院の努力が足りないわけではありません。『不採算であっても住民の命と健康を守るために必要なものはやる』―これが自治体病院です。こうした自治体病院の在り方を壊す政治を許すわけにはいきません」と語りました。

 自民党政権は公立病院に統廃合を迫る「自治体リストラ」攻撃を仕掛け、その結果、東日本大震災の際には災害拠点としての役割を十分に果たせず、コロナ禍では救える命が救えないという事態も生まれたと指摘。こうした経験を踏まえ、自治体病院を守り発展させることには特別の意義があると強調しました。

自治体が担う公共的な仕事は、民間委託や民営化が行われても、その公共性がなくなることはない

 さらに志位氏は、「この分野でも希望はある」と述べました。全国自治体病院協議会を含む病院6団体が「このままでは、ある日突然、病院がなくなります」と経営の危機を訴えていること、また東京都多摩北部地域では、統廃合で小児医療体制が弱められる中でも、住民があきらめずに産婦人科の設置や小児集中治療室(NICU)の増設を求める運動を続けていることなどを紹介しました。

 その上で志位氏は、「自治体が担う公共的な仕事は、たとえ民間委託や民営化が行われても、その公共性がなくなることはありません。闘うことで取り戻すことは可能です」と呼びかけました。

Q4 労働者の団結をどうつくる?

 問い 自治労連は「住民福祉と労働者の幸福」を求めて活動していますが、まわりの職員はなかなかのってきてくれません。労働者の団結をつくるにはどうしたら良いでしょうか?

この現実を変えるためには労働者の団結した闘いが必要――マルクス『資本論』のよびかけ

 志位氏は、「いまの自治体労働者の苦難の根源には、財界中心の政治があります。それと闘おうと思えば、どうしても労働者の団結が必要です」と強調。その重要性をマルクスの『資本論』を引用しながら語りました。

 志位氏は、資本主義の仕組みでは、景気が良くても悪くても、仕事につけない労働者=「相対的過剰人口」「産業予備軍」を生み出し、社会的な規模で、一方に「富の蓄積」、他方に「貧困の蓄積」をつくりだす法則が働くと説明しました。「資本の蓄積は『資本家に有利で、労働者に不利な情勢』を累進的につくり出します。だからこそ、この現実を変えるためには労働者の団結と連帯が不可欠―これがマルクスの呼びかけです」と強調しました。

 志位氏は、さらにマルクスが労働時間の短縮を労働者の解放の「先決条件」と位置づけていることを紹介。「資本の側は、労働者を長時間働かせることで、考える時間や自身を知的・精神的に発展させる時間を奪い、さらには団結して闘う時間さえ確保できないように追い込みます。そのような状況で攻撃に屈して闘いをあきらめれば、現状は永久に打開できません。だからこそ、現状を変えるためには、『自由な時間』を拡大することと一体に、労働者が団結して闘うことが絶対に必要です」と訴えました。

「公共をとりもどす運動」を日本でも発展させよう

図2

 次に志位氏は、自治労連や全労連、国公労連などが取り組む「公共をとりもどす運動」が現実の政治を動かしていることを力説しました。そしてこの運動が世界の流れとも響き合っていることを、欧米の左派・進歩勢力の経験を紹介しながら語りました。(図2)

 米国では、ニューヨーク市長選で勝利したゾーラン・マムダニ氏が、「公共の再構築」として公共交通の市営管理、保育・医療の無償化、公共雇用の拡充などの政策を掲げ、支持を広げたことを紹介。「マムダニ氏は、こうした政策の財源は富裕層への課税だとしています。反トランプ、ガザでのジェノサイド断固阻止などとともに、『公共をとりもどす』という旗を掲げて勝利しました。日本も続きたいですね」と述べました。

 また、英国のジェレミー・コービン元労働党党首が、公共交通の再国有化や保健・医療ではNHS(国民保健サービス)の拡充などの政策を掲げていると強調。「『公共の再構築』をスローガンにした流れが米国でも欧州でも起きています。この運動にこそ世界の未来があると思います。欧米の運動とも連帯して、『公共をとりもどす』運動を大きく発展させましょう」と熱く訴えました。

最後に 人間らしい生き方をともに

 最後に志位氏は、田村智子委員長と連名の「入党のよびかけ」(2日)の結びの一節を読み上げて次のように訴えました。

 「自治体労働者のみなさんが憲法15条の『全体の奉仕者』として頑張るとともに、そのためにも自らの生活と権利のためにたたかうという二重の仕事に取り組んでいることに心からの敬意を表します。歴史の岐路に、社会進歩を促進する人間らしい生き方を選んでいただき、力をあわせて日本の社会を変えましょう。どうか日本共産党に入党してください」