志位和夫 日本共産党

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演説・あいさつ

2025年10月2日(木)

綱領、党大会決定、「赤本」「青本」を広く国民のものに

志位議長の講義から


 日本共産党の志位和夫議長は9月26日、国会内で行った「資本論」学習会で、「労働者階級の成長・発展を主軸にして、社会変革をとらえる--『Q&A資本論』(赤本)をまとめるさいに心がけたこと」と題して講義しました。このうち、講義の最後に、綱領、党大会決定、「赤本」「青本」の関係について述べた部分を紹介します。


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(写真)「赤本」を手に講義する志位和夫議長=9月26日、衆院第2議員会館

 講義の最後に、党綱領、党大会決定、『Q&A 共産主義と自由』(青本)、『Q&A いま「資本論」がおもしろい』(赤本)の関係についてお話ししておきたいと思います。

 第6回中央委員会総会決議が述べているように、昨年、今年と、連続して行われた民青同盟主催の「学生オンラインゼミ」と、それらをまとめた「赤本」「青本」、そして、いまとりくんでいる、「赤本」「青本」を学び広げる運動は、第29回党大会決定の具体化・実践としてとりくまれているものです。

第29回党大会決定--「人間の自由」こそ社会主義・共産主義の目的であり特質

 第29回党大会決定は、改定綱領を踏まえて、未来社会論にかかわる大きな理論的発展を行いました。

 大会決議の「第4章 世界資本主義の矛盾と科学的社会主義」は、今日の資本主義が直面している深刻な矛盾を明らかにするとともに、「人間の自由」をキーワードにして、党綱領の未来社会論を大きく発展させました。

 そこでは「人間の自由」こそ社会主義・共産主義の目的であり、最大の特質だと強調し、それを「利潤第一主義」からの自由、人間の自由で全面的な発展、発達した資本主義国の巨大な可能性の三つの角度から明らかにしました。それは、「21世紀の日本共産党の自由宣言」ともいうべき画期的な内容となったと言えると思います。

『Q&A 共産主義と自由』(青本)--「自由に処分できる時間」を中軸にすえた

 『Q&A 共産主義と自由』(青本)では、この党大会決定の提起を発展させるために力をつくしました。その論理構成は、党大会決定の骨組みにそくしたものでしたが、とくに「自由に処分できる時間」--「自由な時間」の重要性というマルクスの思想に光をあて、それを資本主義論、未来社会論の中軸にすえたことは、大きな意義があったと思います。

 「青本」のなかで、資本主義的搾取によって奪われているのは単に労働の成果--「モノ」や「カネ」だけではない、本来、すべての人々が持つことができる「自由に処分できる時間」--「自由な時間」が奪われ、横領されている。奪われている「自由な時間」を取り戻し、拡大することによって、「人間の自由で全面的な発展」を可能にする、自由な社会をつくろう。マルクスの『資本論』『資本論草稿』からこうしたメッセージを引き出し、「青本」の中心にすえたことに、反響が広がっていることはうれしいことです。

「青本」の理論的限定と、「赤本」の意義について

 ただ「青本」で、私は、二つの点で、必要な理論的限定を行いました。

 一つは、資本主義的搾取の仕組みについての立ち入った説明を行わなかったということです。その説明ぬきに、「搾取によって奪われているのは何か」という設問をたてたことは、論理の飛躍と言われれば飛躍ですが、「人間の自由」を焦点においた講演の性格上、必要な理論的限定でしたので、どうかお許し願えればと思います。

 もう一つは、「青本」では、私たちが目指す未来社会の魅力を論じたのですが、資本主義の「必然的な没落」がどのようにして起こり、社会主義・共産主義社会への道が開かれてくるかについての立ち入った説明を行いませんでした。そのカナメの問題である労働者階級の成長・発展という問題についても、正面から論じることをしていません。

 この二つの問題を、理解していただくためには、どうしても『資本論』の第一部の内容を「ごくごくのあらまし」でもお話しすることが必要でした。この課題にとりくんだのが「赤本」です。「赤本」は、『資本論』第一部の「ごくごくのあらまし」を紹介することで、『資本論』を読む誘い水になることを願ってつくったものです。同時に、それは、「青本」を理解するうえでの理論的な土台を提供するものともなっています。そうした意味で、どうか「赤本」と「青本」をセットで読み、広げていただければと心からお願いするものです。

科学的社会主義と『資本論』の素晴らしさを、広い国民のものに

 「赤本」「青本」でも紹介し、きょうもお話ししてきたように、世界の資本主義の矛盾はきわめて深く、この体制の存続の是非が根本から問われる情勢が私たちの目の前に広がっています。そうしたなかで、アメリカでも、ヨーロッパでも、『資本論』の新たなブームとも呼ぶべき動きがおこっています。

 私は、科学的社会主義と『資本論』の輝き、21世紀に生きる新鮮な生命力を、それを土台として全党の英知を結集してつくりあげてきた党綱領路線の素晴らしい魅力と一体に、広い国民に、とりわけ若い方々と労働者に伝えることができれば、それは日本社会を変えるうえで大きな力になるとともに、日本共産党の新しい前進への巨大な知的・理論的な推進力となることは疑いないと確信しています。

 日本共産党の新たな前進という点では、私たちは第29回党大会決定で、党勢の後退傾向がなぜ長期にわたって続いてきたのかについて、突っ込んだ分析をやりました。そこには主体的対応の弱点もあったことを率直に明らかにしましたが、客観的な問題もありました。その最大の問題は、「社会主義・共産主義の問題」でした。旧ソ連・東欧の体制崩壊をへて、社会主義・共産主義は、少なくない人々から、「失敗を証明された体制」と受け取られることになりました。わが党は、「そんなことは決してない。崩壊したのは、社会主義とは無縁の覇権主義と専制主義の体制だ」と述べ、「社会主義」を看板にした巨悪とたたかってきた自主独立の党が日本共産党であること、社会主義・共産主義の真価は、人類史的にはこれから発揮されることになることを、胸を張って訴えてきました。それでも、「社会主義・共産主義の問題」を乗り越えて、党勢を後退傾向から前進へと転換させるにはいたっていない。これが現状です。

 ただ私は、ここにきて、世界の資本主義が、気候危機の問題でも、格差拡大の問題でも、人々の生活苦の問題でも、さらに資本主義の“総本山”のアメリカ帝国主義の没落が始まったという面でも、これだけの矛盾が噴き出すなかで、いままさに社会主義・共産主義の本当の魅力を広げる歴史的チャンスの時期を迎えていると思います。党の主体的条件としても、改定綱領のうえに、党大会決定にもとづいてとりくんできた一連の理論的な到達点を私たちは持っています。

 それを全党が身につけて、直面する熱い問題で、国民要求にこたえたたたかいにとりくみ、対米従属と財界中心という自民党政治の「二つのゆがみ」を正す民主的改革に国民多数派を結集することに力を注ぎつつ、「社会主義・共産主義の問題にも理論的に強い党」「みんなが日本共産党という党名に込められた科学的社会主義の魅力を自分の言葉で語れる党」へと私たち自身を成長・発展させることができるならば、そして自らを成長・発展させつつ、広い国民に私たちの事業の魅力と希望を思い切って伝え、心を込めて働きかけるならば、必ず党の新しい前進と躍進の時代をつくることができると、私は、確信しています。そうした“ビッグプロジェクト”の最初の素材として、「赤本」「青本」を広く活用していただくことを心から願って、講義を終わります。