2025年8月6日(水)
原水爆禁止世界大会フォーラムⅡ
核兵器も戦争もない世界へ――国際連帯のよびかけ
志位議長の発言
原水爆禁止世界大会・フォーラムⅡでの、日本共産党の志位和夫議長の冒頭発言(全文)は次の通りです。
![]() (写真)発言する志位和夫議長=5日、広島市中区 |
みなさん、おはようございます。日本共産党の志位和夫です。
広島・長崎被爆80年の年に、はるばる大陸をこえて、原水爆禁止世界大会に参加されたイギリス、ベルギー、ドイツ、アメリカの友人のみなさん、素晴らしいプレゼンテーションをしてくださったみなさんに、心からの歓迎と連帯の気持ちをお伝えしたいと思います。(拍手)
いま世界は、文字通り、「戦争か、平和か」の歴史的岐路に立っています。世界の平和・進歩勢力の連帯がこんなにも求められている時はないと思います。私は、いま私たちが共通して直面している四つの死活的な課題についての国際連帯を訴えたいと思います。
核兵器禁止条約の推進--「核抑止力」論の克服が最大のカギ
第1は核兵器の廃絶です。核兵器使用の深刻な危険が起こっています。ロシアによる核兵器の威嚇、アメリカやイスラエルによるイラン核施設への攻撃、そして核保有国とその同盟国で核戦力強化の暴走が起こり、新たな核軍拡競争が起こっています。日本でも、日米共同で核兵器使用を想定した演習が行われ、「核共有」の議論が横行しています。そのすべてに対して、私は、強い抗議の声を上げたいと思います。(拍手)
同時に、大きな希望もあります。核兵器禁止条約の広がりです。すでに批准73カ国、署名94カ国にのぼり、公式に賛成表明した国をくわえると138カ国、国連加盟国の70%に達し、国際法として堂々たる地位を占めています。
この画期的条約をどうやってより実効あるものにしていくか。その大きなカギは、核兵器保有国とその同盟国――すなわち、ここに集う私たちの五つの国を含む国々の世論を変え、政府を変え、禁止条約に参加することにあります。
そして、そのための最大のカギは、「核抑止力」論の克服にあります。核兵器禁止条約は、ノーベル平和賞を受賞した被爆者のみなさんを先頭にした核兵器の非人道性の告発――「人道的アプローチ」が実を結んだものでした。そして、核兵器の非人道性を批判することと、いざとなったら核兵器の使用のボタンを押すことを前提とする「核抑止力」論は決して両立するものではありません。「人道的アプローチ」は「核抑止力」論をのりこえる大きな力になると、私は、確信するものです。
同時に、私たちが、国会でこの問題を提起しますと、日本政府は、「安全保障環境が悪い」という言い訳を持ち出します。しかし、安全保障の観点からも「核抑止力」論は合理性をもつでしょうか。核兵器禁止条約の第3回締約国会議の報告書が提起したように、いかなる立場に立つ国であれ、「核兵器は、すべての国家の安全に対する深刻かつ根本的な脅威」であることは誰も否定することはできない事実です。そして、この報告書が指摘しているように「核抑止が失敗する可能性があるという事実には疑いの余地」はありません。それはキューバ危機をはじめ、あと一歩で人類の破滅をもたらした、過去の歴史が証明していることではありませんか。私たちが、いまこうして存在していること自体が、幸運にすぎないのです。
それぞれの国で、「核抑止力」論を打ち破り、核兵器禁止条約参加への多数派を形成し、禁止条約に参加する流れをつくりだそうではありませんか。私は、そのための国際連帯を心から訴えるとともに、唯一の戦争被爆国である日本がその先頭に立てるように全力をあげることを表明するものです。(拍手)
ウクライナとガザ--国連憲章にもとづく平和秩序の構築
第2は、国連憲章にもとづく平和秩序の構築です。世界は、平和秩序の面でも深刻な挑戦に直面しています。トランプ米政権は、ガザ、ウクライナ、イラン、パナマ運河、グリーンランド、地球上のいたるところで国連憲章と国際法を無視した言動を繰り返しています。
ロシアによるウクライナ侵略をすみやかに終わらせるための和平が必要です。同時に、和平は国連憲章と国際法、一連の国連総会決議にもとづく「公正な和平」でなくてはなりません。
イスラエルによるガザへのジェノサイド――死者6万人を超え、恐ろしい栄養失調と餓死が住民と子どもたちにもたらされ、援助を求める人々への無法な攻撃が行われていることを、私は最も強い言葉で非難します。
一刻の猶予も許されません。国際社会の実効ある行動が必要です。イスラエルの戦争犯罪を止める国際的制裁が必要です。パレスチナ国家承認が急務です。フランスが踏み出し、イギリスも表明し、カナダも表明しました。日本政府は何をぐずぐずしているのか。日本もパレスチナ国家承認にただちに踏み出すことを、私は強く求めたいと思います。(拍手)
「力による秩序」の押し付けでなく、国連憲章と国際法にもとづく平和秩序をつくるための国際連帯を、私は心から呼びかけるものです。
大軍拡に反対し、外交によって平和を創造する
第3は、大軍拡に反対するたたかいです。
ユーラシア大陸の東と西で深刻な軍拡競争が起こっています。トランプ政権の「守ってほしいなら、軍事費をふやせ」という恫喝(どうかつ)に屈し、北大西洋条約機構(NATO)は6月の首脳会議で、軍事費を「国内総生産(GDP)比5%」に引き上げることを決定しました。日本でも「GDP比2%」に向けて空前の大軍拡が進行中ですが、トランプ政権から「GDP比3・5%」という目標が押し付けられています。
この道は、国民の暮らしと決して両立できないものです。日本では、大軍拡予算によって、すでに社会保障、教育、中小企業、農業など暮らしの予算の深刻な圧迫がもたらされていますが、「GDP比3・5%」ならばその影響は文字通り破滅的なものになるでしょう。
同時に、この道は、決して平和をもたらしません。それが「安全保障のジレンマ」――軍事対軍事の悪循環をもたらすことは、日本でも欧州でも、その現実が証明しているではありませんか。
戦争の準備でなく平和の準備が必要です。私たちは、東南アジア諸国連合(ASEAN)と協力して東アジアを戦争の心配のない地域にする平和構想を提唱し、実践しています。その精神は、「軍事でなく対話」、「排除でなく包摂」によって平和を創造することにあります。
私は、欧州の進歩・左翼勢力のみなさんが、厳しい情勢のもと、大軍拡にキッパリ反対する旗を旗幟(きし)鮮明に掲げ、奮闘していることに対し、熱い連帯の気持ちを表明したいと思います(力強い拍手)。平和も暮らしも壊す大軍拡に反対し、外交によって平和を創造する国際連帯を強めようではありませんか。
極右・排外主義とのたたかい--重要な国際連帯の課題
第4は、極右・排外主義とのたたかいです。
欧州、米国に続き、日本でも起こっているこの逆流から、人間の平等と人権を擁護することは、それぞれの国の国内問題にとどまるものではありません。それは重要な国際問題であり、国際連帯の課題ではないでしょうか。
諸国民の暮らしが苦しいのは、外国人のせいでも、移民・難民のせいでもありません。一握りの大金持ちの利益を優先し、多数の国民の暮らしを踏みつけにする社会システム、「新自由主義」の経済政策にこそその根源があります。
極右・排外主義が侵略戦争につながったことは、日本と欧州の共通する歴史の教訓です。その台頭を許さない国際連帯を心から呼びかけたいと思います。(拍手)
この五つの国が変われば、世界は間違いなく変わる
このフォーラムに集った五つの国――イギリス、ベルギー、ドイツ、米国、そして日本が変われば、世界は間違いなく変わります。(拍手)
力をあわせて、核兵器のない世界をつくりましょう。戦争の心配のない世界をつくりましょう。すべての人々の人権と尊厳が尊重される世界をつくろうではありませんか。(拍手)