2025年5月11日(日)
いま『資本論』がおもしろい
志位議長の講演 若者真剣に
民青が学生オンラインゼミ
日本民主青年同盟(民青)は10日、日本共産党の志位和夫議長を講師に、学生オンラインゼミ第4弾「いま『資本論』がおもしろい―マルクスとともに現代と未来を科学する」を開催しました。党本部の会場から全国に中継し、ユーチューブの同時接続数は3248件に達しました。
![]() (写真)講演する志位和夫議長=10日、党本部 |
「『資本論』と現代」というテーマでの学習会を行うことは、以前から民青が強く要望していたものでした。ゼミに先だって行われた「ミニ学習会」での内容を踏まえて、西川龍平委員長と中山歩美副委員長が質問。志位氏は『資本論』第1部の全体の流れにそくして、八つの柱で質問に答えながら、搾取の仕組み、労働時間を短くするたたかいの意義、環境破壊や貧富の格差の解決の展望、未来社会とはどんな社会かなどを、今日の熱い問題との接点をまじえて力説し、21世紀に『資本論』がどう生きているのかを縦横に語りました。会場は真剣な表情で講演を聞く学生らの熱気に包まれました。
『資本論』とはどのような本なのか?
第1章「『資本論』とはどのような本なのか?」からスタート。志位氏は、欧州や米国でも、いま『資本論』に新鮮な注目が集まり、米国では新しい英語版の発刊を契機に、『資本論』の読書運動が広がっていることをリアルに紹介した上で、『資本論』の特徴を(1)資本主義を生成、発展、没落でとらえた書(2)資本主義をのりこえた未来社会―社会主義・共産主義社会が、最も成熟した形で豊かに語られた書(3)労働者と人民に社会を変えるたたかいを呼びかけた書―の三つの角度から語りました。
どうやって搾取が行われているのか?
第2章は「どうやって搾取が行われているのか?」です。「今の日本で『搾取』が行われているのか」と問われた志位氏は、大企業の純利益がこの30年間で16・5倍に、株主への配当が9・6倍に膨張する一方、実質賃金がマイナスになっていることにふれ、「大企業の利益をつくりだしたのは労働者です。ところがその富が労働者に回らず、大株主が空前のもうけをあげている。私たちの目の前でひどい搾取が行われていることは明らかです」と強調。その上で『資本論』第1篇「商品と貨幣」では、資本主義社会における商品経済の法則の根本として、「価値法則」―商品の価値の大きさを決めるのは、その生産に社会的に必要な労働の量、または、社会的に必要な労働時間であること―を明らかにしていると指摘。これを土台に、第2篇「貨幣の資本への転化」から、第3篇「絶対的剰余価値の生産」にかけて、資本主義的な搾取の秘密の「謎解き」を進めていることを、『資本論』の論理にそくして詳しく明らかにしました。
志位氏は、現代日本の労働時間は搾取される時間の方が長いと告発する中で、労働者が搾取によって、「カネ」だけでなく「自由な時間」が横領されていると指摘。「『自由な時間』の横領は『文明』―労働者の知的・精神的・文化的発展の横領でもあります。労働者は団結して、『カネ』とともに『自由な時間』を取り戻そう。これがマルクスの呼びかけです」と語りました。
労働時間を短くするたたかいの意味は?
第3章は「労働時間を短くするたたかい(『自由な時間』を拡大するたたかい)の意味は?」です。志位氏は、第3篇「絶対的剰余価値の生産」では、搾取を拡大する第1の方法として「1日の労働時間を長くすること」を明らかにしていると指摘。労働時間は、労働者階級と資本家階級とのたたかいによって決まると述べるとともに、第8章「労働日」では、資本家が労働時間を延長する「ただ働き」のあくどい方法を暴き出し、経済学書で初めて過労死を告発していると紹介しました。
志位氏は、「マルクスの告発を読むと何と日本の現実そのものかと思う」として、現代日本で「ただ働き」と過労死が横行している実態を告発。過労死したトラックドライバーの「ただ働き」が1カ月で96時間33分にもおよんでいたことを明らかにし、改善を迫った党議員団の論戦を紹介し、「マルクスの告発は、現代日本の資本への告発でもあります」と述べました。
その上で、「自由な時間」を拡大する意義について、志位氏は、第8章「労働日」の中身を一つひとつ紹介しながら、(1)労働者の健康と命を守るために絶対に必要(2)労働者の成長にとって必要不可欠(3)労働者の解放にとっての「先決条件」である―の3点を強調。「この道は『各個人の完全で自由な発展を基本原理とするより高度な社会』―社会主義・共産主義社会に地続きでつながっています」と強調しました。
生産力の発展が労働者にもたらすものは何か?
![]() (写真)志位和夫議長の講演を聞く参加者=10日、党本部 |
第4章は「生産力の発展が労働者にもたらすものは何か?」です。志位氏は、第4篇「相対的剰余価値の生産」では、搾取を拡大する第2の方法として「労働力の価値を低下させ、必要労働時間を短くし、剰余労働時間を長くすること」を明らかにしていると指摘。資本は労働の生産力を増大させ、必要労働時間を短くしていくと述べ、第13章「機械と大工業」を中心に、生産力の拡大のもつ意義について解明しました。
資本主義的な機械制大工業のもとでの生産力の拡大は、一方では、労働者に対してさまざまな害悪をもたらすが、他方では未来社会のさまざまな要素をつくりだし、未来社会の物質的土台を創造することが解明されているとして、「この両面を読み取ることにこの章の醍醐味(だいごみ)があります」と強調しました。
志位氏は、マルクスが、資本主義のもとでの生産力の発展が労働者にもたらす害悪を具体的に告発するとともに、労働者の集団の力が成長すること、未来の教育が芽生えること、子どもの権利が宣言されること、「家父長制」解体の経済的基礎がつくられること、環境破壊とその再建の展望など、さまざまな未来社会につながる要素をつくりだすことの、一つひとつを丁寧に紹介し、「そのどれもが現代に直結する新鮮な解明です」と語りました。
貧困と格差拡大のメカニズムは?
第5章は「貧困と格差拡大のメカニズムは?」です。志位氏は、現代の世界資本主義が目もくらむような格差と貧困をつくりだしていることに、国際NGO「オックスファム」の最新の報告書を紹介して触れたうえで、第7篇「資本の蓄積過程」の第23章「資本主義的蓄積の一般的法則」で、社会的規模で貧困と格差が拡大していくメカニズムを明らかにしていると語りました。資本主義の仕組みでは、景気が良くても悪くても、仕事につけない労働者=「相対的過剰人口」「産業予備軍」を生み出し、社会的な規模で、一方に「富の蓄積」を、他方に「貧困の蓄積」をつくりだすと述べました。
志位氏は、「産業予備軍」は失業者だけでなく、現代日本では、派遣、パート、アルバイト、フリーランス、ギグワーカーなどの非正規ワーカーを含み、これは財界の「使い捨て労働を増やせ」の号令のもと、自民党政治が二人三脚でつくりだしたものだと指摘。「正社員と非正規ワーカーを含むすべての労働者・国民の連帯こそが、現実を変える道です」と訴えました。
社会の変革はどうやっておこるのか?
第6章は「社会の変革はどうやっておこるのか?」です。志位氏は、第24章「いわゆる本源的蓄積」は『資本論』の中で社会主義的な変革について述べた唯一の重要な箇所だと指摘。社会変革が進むプロセスを、(1)資本主義の胎内で未来社会を形づくるさまざまな客観的な要素が成熟する(2)資本主義の胎内で古い社会を変革する契機が成熟する、とくに社会変革の主体となる労働者階級が成長していく(3)社会を変える客観的条件とともに主体的条件が成熟するもとで、社会の変革が現実のものとなる―と『資本論』を引用して詳しく解明しました。
この中で、志位氏は「マルクスは『資本主義的私的所有の弔いの鐘が鳴る』と述べていますが、弔いの鐘は鳴らす人がいなければ決して鳴りません」「たたかってこそそれは現実のものとなります」と強調しました。
社会主義・共産主義で人間の自由はどうなるか?
第7章は「社会主義・共産主義で人間の自由はどうなるか?」です。志位氏は、昨年のオンラインゼミ『Q&A 共産主義と自由』で語った三つの角度―(1)「利潤第一主義」からの自由(2)人間の自由で全面的な発展(3)発達した資本主義国での巨大な可能性―を紹介。その中で、「戦争からの自由」について、マルクスの「新しい社会の国際的なおきては平和」という言葉を紹介しながら、「『戦争のない世界』を求めるたたかいは、資本主義のもとでも最も重要なたたかいの一つです。同時に、それが地球的な規模で確かな現実となるためには、人類社会の大勢が社会主義・共産主義に進むことが必要となります。未来社会では『戦争を絶滅』すること―『戦争からの自由』が確かな現実となるでしょう」と語りました。
『資本論』をどう学び、人生にどう生かしていくか
第8章は「『資本論』をどう学び、人生にどう生かしていくか」です。志位氏は、マルクスが「フランス語版への序言とあと書き」で、「真理を切望する読者」への「心がまえ」として、「学問にとって平坦(へいたん)な大道はありません」との言葉を贈ったことを紹介し、「この言葉をしっかりと胸に刻んで、この著作を読んでいきたい」と語りました。
最後に志位氏は、「序言〔初版への〕」でマルクスが述べた「私は、新たなものを学ぼうとし、したがってまた自分自身で考えようとする読者を想定している」との言葉を紹介。「新しいものを学ぼう。自分の頭で考えよう。そして、この社会の不合理がどうして起こるのか、どうしたら不合理を解決できるのかをつかんだら、連帯してたたかうことで、この世界を変えよう。これがマルクスが『資本論』に込めたメッセージだと思います。ぜひこのメッセージを自らの人生の指針として生かして、素晴らしい人生を歩んでほしい。そのためにも民青への加盟、日本共産党への入党を心から訴えます」と締めくくると、盛大な拍手が湧き起こりました。