2024年10月8日(火)
志位議長の代表質問 衆院本会議
日本共産党の志位和夫議長が7日の衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。
石川県・能登の豪雨災害、旧優生保護法への対応について
![]() (写真)代表質問する志位和夫議長=7日、衆院本会議 |
私は、日本共産党を代表して、石破総理に質問します。
冒頭、石川県・能登の豪雨災害で亡くなられた方々に深い哀悼を申し上げ、被災された方々に心からのお見舞いを申し上げます。
2度目の避難に多くの被災者が苦しんでいます。にもかかわらず、避難所での温かく栄養のある食事の提供やプライバシーの確保などで、1月の震災の教訓が生かされておらず、「見捨てられた」との声もあがっています。ただちに改善することを強く求めます。浸水した仮設住宅の早期改修や安心できる場所への仮設住宅の建設など、住まいの確保への支援の強化を強く求めます。ただちに補正予算の編成が必要だと考えますがいかがですか。
旧優生保護法の違憲判決を受け、本日の本会議で、謝罪決議と被害補償法を可決しました。引き続き、当事者である障害者のみなさんの声を聞き、真摯(しんし)な反省のもとに検証を行い、優生思想を根絶することは、政府と国会に課せられた重要な責務であります。答弁を求めます。
腐敗政治をなくし、政治に信頼を取り戻すために――総理の基本姿勢を問う
総理自身の言行不一致――どうして政治の信頼が回復するか
私は、総理の政治姿勢の基本について三つの点を質問します。
第一は、腐敗政治をなくし、政治に信頼を取り戻すという問題です。
まず問いたいのは、総理自身の言行不一致の問題です。あなたは、自民党総裁選で「国民に判断してもらえる材料を提供するのは新しい総理の責任だ」「本当のやりとりは予算委員会だ」と繰り返しました。ところが総理に就任すると、前言を覆し、明後日にも解散を強行するとしています。
解散・総選挙は、民主主義の根幹にかかわる大問題です。そうした大問題で、数日前の自らの発言を平気で覆す。これでは総理が今後、どんな発言をしようと、国民はそれを信用することができなくなるではありませんか。一国の政治指導者がこういう姿勢をとっていて、どうして政治への信頼が回復するでしょうか。しかとお答えいただきたい。
石破派にも「裏金」疑惑――徹底的な再調査で、国民に真実を明らかにせよ
裏金問題について、9月9日、日本ジャーナリスト会議は、今年度のJCJ大賞に「しんぶん赤旗」日曜版の裏金スクープを選ぶとともに、その受賞理由のなかで、裏金問題を「大政治犯罪」だと断罪しました。端的に聞きます。総理は、そもそも裏金問題を「大政治犯罪」だと認識しているのか否か。お答えいただきたい。
「しんぶん赤旗」日曜版の10月6日号は、総理が代表を務めた石破派が、政治資金パーティーの収入を6年間で計140万円分、不記載にしていた事実を新たにスクープしました。総理は、昨年12月12日のテレビ番組で、石破派にもキックバックがあったことを認めたうえで、「出も入りもきちんと載せている」とし、政治資金収支報告書の記載に問題はないと強調していましたが、あなたの発言は、“真っ赤なウソ”ということになるではありませんか。総理、石破派にも、主要5派閥と同じ深刻な裏金疑惑が問われているのであります。総理は、「新しい事実が判明したら調査する」、「勇気と真心を持って真実を語る」といわれました。ならば、徹底的な再調査を行い、国民に真実を明らかにすべきではありませんか。
腐敗政治の大本――企業・団体献金はパーティー券も含めて全面禁止を
自民党の底知れない腐敗政治の大本には、企業・団体献金があります。パーティー券も含めて企業・団体献金は全面的に禁止し、政党助成金は撤廃すべきです。明確な答弁を求めます。
大企業・大金持ち優遇から、国民の暮らし最優先に――経済政策の根本を問う
国民の深刻な生活苦をつくりだした経済失政を引き継ぐのか
7月、厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査」で、「生活が苦しい」と答えた方は59・6%にものぼりました。働く人の実質賃金はこの11年間で年33万円も減りました。他方、大企業の内部留保は同時期に200兆円以上も膨らみ、539兆円に達しています。大富豪40人の資産は7・7兆円から29・5兆円へと膨れ上がりました。
これは決して自然現象ではありません。「異次元の金融緩和」で物価高騰を招き、国民を苦しめているのは誰か。働く人を、派遣・パート・アルバイトなど非正規ワーカーに置き換え、使い捨て労働をまん延させたのは誰か。大企業減税を行い、その穴埋めに消費税大増税を強行したのは誰か。今日の国民の深刻な生活苦は、すべてが自民党の経済失政の結果ではありませんか。総理にはその認識がありますか。あなたは岸田内閣の経済政策を引き継ぐと言いますが、こうした経済失政を引き継ぐおつもりですか。答弁を求めます。
最低賃金の1500円への引き上げ――中小企業への直接支援への認識を問う
大企業・大金持ち優遇から、国民の暮らし最優先に、経済政策の大転換が必要です。三つの点にしぼって具体的に提案いたします。
第一は、最低賃金をすみやかに全国一律1500円に引き上げることです。最賃の大幅引き上げのために不可欠なのが中小企業への社会保険料減免など直接支援ですが、総理は、所信で一言もふれませんでした。直接支援は必要ないというお考えですか。
日本共産党は、大企業の内部留保の増加分に時限的課税を行い、10兆円の税収を中小企業の賃上げ支援にあてる提案を行っていますが、この提案を受け入れる意思はありませんか。答弁を求めます。
賃上げと一体に、労働時間を短縮し、「自由な時間」を増やす
第二は、賃上げと一体に、労働時間を短縮し、「自由な時間」を増やすことです。
日本の労働時間はヨーロッパの主要国に比べて年間で300時間も長く、「過労死」がいまだに一大社会問題になっています。
こうしたなか、博報堂の行った若者調査では、「今一番欲しいもの」との問いに、1位は「お金」、2位は「時間」、3位は「自由」という結果が出ました。あるベビーシッター会社が、子育て中のお母さんを対象に、「母の日」のプレゼントに何が欲しいかのアンケートを行ったところ、断トツ1位は「自分だけの時間」でした。多くのお母さんが、仕事と家事と育児に追われ、睡眠時間を削らざるをえない現状にあるのであります。総理は、「自由に使える時間が欲しい」という願いが、国民の切実な願いであるという認識をお持ちですか。「男性は仕事、女性は家事」――こういう不平等を正し、ジェンダー平等の日本をつくるためにも労働時間の短縮が必要だと考えますが、いかがですか。
こうした事態の抜本的打開のために、日本共産党は、「自由時間拡大推進法」を提案しております。「1日7時間、週35時間労働制」に速やかに移行すること、この目標達成のために、政府に中小企業への支援、介護、教育、建設、運輸など人手不足の分野で特別の対策を義務づけること、残業規制を強め、「サービス残業」を根絶することなどをパッケージで提案しています。
人間は、ただ働いて、食べて、寝るだけの存在ではありません。
働く人が、人間らしい生活を営む「収入」とともに、余暇や趣味を楽しみ、豊かな教養に親しみ、家族と一緒の時間を大切にし、社会活動に取り組むための「自由な時間」をもつことのできる社会こそ、本当に豊かな社会と言えるのではないでしょうか。
総理にわが党の提案への見解を問うものです。
税金と財政の民主的改革――消費税減税、高齢者福祉充実、大学学費ゼロを求める
第三は、暮らしを支え、格差をただす税金と財政の民主的改革です。
空前のもうけをあげている富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税を緊急に5%に減税する、インボイスは廃止する――これこそ物価高騰への最良の特効薬ではありませんか。
「高齢者の負担を増やし、給付を減らすのは当たり前」という冷酷な政治がまかり通り、高齢者の人権と尊厳が踏みにじられている現実は、ほんとうに異常です。老人福祉法は、「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として、かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする」と定めています。総理、この基本理念に立って、年金、介護、医療の充実をはかることこそ、政治の使命ではありませんか。
大学の学費値上げが一大社会問題になっています。今でも異常に高い学費を、さらに値上げなど、とんでもありません。高等教育への公的負担を大幅に増やし、学費値下げに踏み出し、学費ゼロの社会をつくるために、本気で政治の責任を果たすべきではありませんか。答弁を求めます。
日米軍事同盟絶対の政治を続けていいのか
「日米同盟」の4文字で思考停止に陥る――こんな政治を続けていいのか
日米軍事同盟絶対の政治を続けていいのかが問われています。
この間、集団的自衛権の行使容認、長射程ミサイルの配備、GDP(国内総生産)比2%への大軍拡、武器輸出への解禁など、憲法9条のもとで「できない」とされてきたことが、次々と強行されています。それらのすべてで「日米同盟の強化」が最大の理由とされています。
「日米同盟」の4文字を聞くと、思考停止に陥ってしまう政治が、いま日本の政界を覆っています。「日米同盟」のためにと言って、日本国憲法を平気でじゅうりんする。「日米同盟」のためにと言って、核兵器禁止条約に背を向け、果ては「核共有」――米国と核のボタンを押すことを共有するなどという被爆国の首相にあるまじき恥ずべき主張を行う。「日米同盟」のためにと言って、沖縄県民の民意を踏みつけにして辺野古新基地建設を押し付け、少女への性暴力を隠蔽(いんぺい)する。独立国にあるまじきこんな政治を続けていいのかを、私は、総理に問いたいのであります。
日本が軍事同盟強化で構えれば、相手もいっそうの軍事力強化で構え、軍事対軍事の悪循環をひどくします。その先に決して平和は訪れません。日本共産党は、世界を対立するブロックに引き裂く軍事同盟強化に、断固反対を貫きます。
軍事同盟に頼らずに平和をつくる――ASEANと協力して東アジアの平和構築を
世界を見れば、軍事同盟に頼らずに平和をつくる動きがあるではありませんか。ASEAN(東南アジア諸国連合)は、域内で年間1500回も会合を持つなど、徹底した対話の積み重ねで、東南アジアを平和の共同体に変えました。さらに平和の流れを域外に広げ、ASEAN10カ国プラス日本、中国、米国を含む8カ国で構成される東アジアサミットを強化して、東アジアの全体を、ASEANのような戦争の心配のない地域にする大構想を提唱しています。あれこれの国を敵視するブロック政治を排し、地域のすべての国を包摂した平和の枠組みを発展させようというのがその根本精神であります。
いま日本政府がなすべきは、ASEANと協力して、東アジアに平和を構築する、憲法9条を生かした平和外交ではないでしょうか。
総理の答弁を求めて、質問を終わります。