志位和夫 日本共産党

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演説・あいさつ

2024年9月2日(月)

平和のためのアジアと欧州の連帯を

ベルリン国際平和会議 志位議長の発言


 8月31日にドイツ・ベルリンで開催された国際平和会議「今こそ外交を!」で日本共産党の志位和夫議長が行った発言は次の通りです。

ウクライナでの流血を終わらせるために、和平協議に道を開くあらゆる努力を

写真

(写真)会議閉幕にあたり平和の国際連帯を誓い合う欧州左翼の代表者たちと志位議長=8月31日、ベルリン

 尊敬する議長、親愛な友人のみなさん。会議への招待に感謝します。

 私は、日本共産党を代表し、「平和のためのアジアと欧州の連帯を」と題して発言いたします。

 ウクライナ侵略とガザ危機は、恐るべき犠牲をもたらし、国連憲章にもとづく世界の平和秩序を根底から脅かしています。核兵器による威嚇は世界を震撼(しんかん)させています。長引く戦争は気候危機に深刻な影響を及ぼしています。

 そうしたもと、ウクライナの流血を終わらせるために、国際社会に「和平協議に道を開くあらゆる努力」を求めるこの国際会議のイニシアチブに、私は強く賛成します。

 このイニシアチブが実ることを願って、四つの点を強調したいと思います。

国連憲章・国際法・国連総会決議にもとづく公正な和平を

 第1は、和平協議の目的をどこにおくかという問題です。

 和平は、国連憲章、国際法、ロシアによる侵略を非難し、即時撤退を求める4度にわたる国連総会決議にもとづく公正な和平であるべきです。

 「国連憲章を守れ」の一点で世界の圧倒的多数の国ぐにが団結することこそ、この戦争を終わらせる道です。

 公正な和平を達成するためには一定の時間や段階が必要でしょうが、国連憲章にもとづく平和秩序の回復を和平協議の目的として揺るがずに追求することが何よりも大切だと考えるものです。

「ダブルスタンダード」が最大の障害――誰に対してであれ国際法は平等に適用を

 第2は、公正な和平を阻んでいるものはなにかという問題です。

 米国などG7(主要7カ国)の側の最大の問題点は、「ダブルスタンダード」にあります。ロシアを非難するが、イスラエルを事実上擁護する。これこそが国際社会の団結の最大の障害になっています。ウクライナ人、パレスチナ人、イスラエル人の命に異なる価値をつけることで、どうして世界が団結できるでしょうか。

 誰に対してであれ、国連憲章と国際法は、平等に適用されなければなりません。ロシアの侵略を終わらせるとともに、ハマスによる人質解放、イスラエルによるガザのジェノサイドを止めるために、全世界が団結することを強く訴えます。

ユーラシア大陸の東と西での軍事同盟強化に反対する連帯した闘いを

 第3は、ウクライナ侵略を利用して軍事同盟強化をはかる動きを、決して許してはならないということです。

 アメリカはいま、「統合抑止」の名で、ユーラシア大陸の東と西で軍事同盟強化を進め、それを一つに結びつけようとしています。欧州での北大西洋条約機構(NATO)の強化は日本から見ても恐るべきものです。

 同時に、お伝えしたいのは、日本でもかつてない軍事同盟強化が進行中だということです。集団的自衛権の行使容認、アジア大陸の奥深くまでとどく長射程ミサイルの配備、国内総生産(GDP)比2%の大軍拡、武器輸出の解禁―どれも日本国憲法第9条のもとで「できない」とされてきたことが、多くの国民の反対の声を押し切って強行されつつあります。

 日本の自衛隊とNATO諸国の軍隊との軍事的共同が強まっていることもきわめて重大です。

 軍事同盟強化は、軍事対軍事の悪循環を招き、世界を対立するブロックに引き裂いています。この道で平和をつくることは決してできません。

 欧州左翼のみなさんが、困難な情勢のもとで、軍事ブロック反対の旗を勇気を持って掲げて奮闘していることに、私は熱い連帯のメッセージを送ります。そしてユーラシア大陸の東と西で行われている軍事同盟強化に反対する連帯した闘いをおこすことを心から呼びかけます。

 さらに、広島・長崎で言語に絶する非人道的惨禍を体験した国の政党として、軍事同盟の中核にすえられている「核抑止力」論に反対し、核兵器禁止条約にそれぞれの国が参加するための連帯を心から訴えるものです。

平和の対案――ASEANに注目し、協力を追求してきた

 第4は、平和の対案をうちたてるということです。

 東アジアの平和構築という点で、私たちが注目し、協力を追求してきたのが、東南アジア諸国連合(ASEAN)です。ASEANは、紛争の平和的解決を義務づけた東南アジア友好協力条約(TAC)を土台に、徹底した対話の積み重ねによって、東南アジアを平和の共同体に変えました。

 さらにASEANは平和の流れを域外にも広げてきました。その最新の到達点が、2019年のASEAN首脳会議で採択された「ASEANインド太平洋構想(AOIP)」です。この構想は、TACを指針として、ASEAN10カ国プラス日本・中国・米国・ロシアを含む8カ国で構成される東アジアサミットを対話と協力のプラットフォームとして強化し、ゆくゆくは東アジア規模の友好協力条約を展望しようという壮大な構想です。

 私たちはこの構想に全面的に賛成です。私たちはこの構想の何よりもの意義は、あれこれの国を排除する排他的枠組みでなく、地域のすべての国を包み込む包摂的な平和の枠組みをつくることにあると考えています。

「東アジア平和提言」――包摂的な平和の枠組みの重要性は欧州でも

 日本共産党は、大軍拡への抜本的対案として「東アジア平和提言」を提唱しています。いま日本がやるべきは、軍事的対応の強化ではなく、ASEAN諸国と手を携え、AOIPの実現を共通の目標にすえ、東アジアを戦争の心配のない地域にしていくための憲法9条を生かした外交にこそある。これが私たちの「提言」です。

 軍事でなく対話を、排除でなく包摂を―私はここにこそ東アジアに平和をつくる大道があると確信します。

 欧州と東アジアには条件の違いがあるでしょう。同時に、欧州でも欧州安保協力機構(OSCE)の再活性化など、包摂的な平和の枠組みの構築に関する議論や探究があると聞きます。欧州の平和と安定を確かなものとするためには、欧州のすべての国を包摂する平和の枠組みが大切になってくるのではないでしょうか。

 平和のためのアジアと欧州の連帯を強く訴えて発言とします。

会議の趣旨とかみあい、響き合った

志位議長が感想

―今回の国際会議の特徴は?

 志位 この国際会議は、ウクライナ和平交渉を開始することを国際社会に求めることを中心テーマにしたもので、欧州左翼党のワルター・バイアー議長、英国のジェレミー・コービン労働党前党首、イタリア左翼のルチアーナ・カステリーナ氏をはじめ、欧州左翼の主要人物が次々と発言し、重要な成功をおさめたと思います。

―議長の発言の中心点は?

 志位 ウクライナ和平交渉開始を国際社会に訴えるという会議の趣旨に、強く賛同したうえで、和平は国連憲章、国際法、4回にわたる国連総会決議に基づいた公正な和平であるべきで、一定の時間や段階がかかってもこの目的を揺るがずに貫くことが大切だと訴えました。

 そのうえで公正な和平を阻んでいるものとして、米国を筆頭とする主要7カ国(G7)の態度―ロシアを非難するが、イスラエルを擁護するという彼らの「二重基準」を厳しく指摘しました。

―アジアと欧州での平和の連帯の訴えはとても印象的でした。

 志位 アジアの政党の参加者は私だけでしたから。アジアと欧州で米国主導で軍事同盟の恐るべき強化が同時並行的に進んでいます。連帯したたたかいが必要です。同時に、平和の対案が必要です。党の「東アジア平和提言」を紹介しつつ、対話による包摂的な平和の枠組みづくりの重要性を訴えました。

―どのような反応が寄せられましたか?

 志位 アジアからの発言に、メモをとって食い入るように聞くなど、強い関心とともに温かい連帯の気持ちを感じました。発言後、参加者から「素晴らしいスピーチでした」と次々に感想が寄せられました。

 核兵器と核兵器禁止条約に関する箇所では拍手が起こりました。発言後はドイツの大学生から「国連憲章を重視するなど原則を重視した発言に注目しました」という感想や質問もいただきました。発言は、全体として会議の趣旨とかみあって、響き合い、歓迎されたと感じました。

―会議で確認された重要点は?

 志位 ウクライナ戦争をめぐり軍事一辺倒になっている状況を転換し「今こそ外交的解決を」と和平交渉を国際社会によびかけたことです。とりわけ地域と世界を分断するブロック政治に反対するという立場が、最後の段階で「呼びかけ文」を修正・補強する形で明記されたことはたいへんに重要だったと思います。

 (聞き手・吉本博美)