志位和夫 日本共産党

力をあわせて一緒に政治を変えましょう

演説・あいさつ

2024年5月20日(月)

「人間の自由」と社会主義・共産主義――『資本論』を導きに

学生オンラインゼミ 志位議長の講演(5)

当日出された質問から


 事前に準備された35の質問についての講演を終えた志位和夫議長が、当日新たに寄せられた質問について答えたさいのやりとりは次の通りです。


写真

(写真)志位和夫議長を講師に開かれた民青同盟主催の学生オンラインゼミ=4月27日、党本部

当日の質問1 「生産手段の社会化」と協同組合との関係について知りたい。

協同組合は「社会化」の一つの形態になりうる

 中山 今日寄せられたたくさんの質問が、私の手元にとどいています。そのうち3問について、読み上げて紹介し、志位さんに答えてもらいます。

 まず第1問は、「『生産手段の社会化』と協同組合との関係について知りたい」というものです。

 志位 「生産手段の社会化」の形態として、協同組合は大いにありうるものだと考えています。とくに農業とか小規模事業者を、みんなでトコトン時間をかけて合意することが絶対条件ですが、協同組合的なものに移行していくことは、形態として大いにありうると考えています。

 ベトナムは、ドイモイ(刷新)の事業で、「市場経済を通じて社会主義に」ということを大方針にしているわけですが、少し前の時期に、どういう形態で「社会化」をやっているかをいろいろと視察して歩いたことがあるんです。その一つに、協同組合がありました。プラスチック工場だったのですが、組合員の全員の投票で工場長を選ぶ。工場長が適任でないとなったら罷免することもできる。そういう民主的な決定システムがあって、実践されていました。少し前の時期のことで、直近のことはわからないのですが、そういう取り組みをやっていたことは印象深かったです。

 協同組合という点では、科学的社会主義の源流に空想的社会主義という流れがあります。イギリスのロバート・オウエン(1771~1858)は、その代表者の一人で、自分で共産主義的な経営を行い、最初に幼稚園をつくった人でもありました。彼は、協同組合のまさに元祖ともいうべき人物です。ですからいま、農協に行きますと、ロバート・オウエンの写真が飾ってあります。「ロバート・オウエンは科学的社会主義の源流でもあるんです」というと、「同じ先祖を持っているのですね」という話にもなる。協同組合は今の日本の社会にもいろいろな形で生きています。これは「社会化」の一つの形態になりうると考えています。

当日の質問2 恐慌を起こさない資本主義がつくられる動きがあると聞きます。

「ケインズ主義」が破綻し、資本主義にはもはや指導理論は存在しない

 中山 第2問は、「恐慌を起こさないようにする資本主義がつくられる動きがあるとききました。それでもやはり資本主義はだめなのでしょうか」というものです。

 志位 1929年に世界大恐慌が起こりました。この大恐慌を境に、40年以上にわたって資本主義経済の指導理論となったのが「ケインズ主義」と言われる理論です。イギリスの経済学者でジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)が唱えた理論で、彼は、資本主義は矛盾の多い「好ましくない」経済制度だが、「懸命に管理」されるなら効率の高いものになるだろうと主張しました。国家が資本主義体制の全体を代表して、経済の管理にあたる、国の財政をつぎこんで景気を立て直すことをはじめ、国がいろいろな形で経済に「介入」することで、経済を管理し、恐慌をおこさないようにすることができると唱えました。この理論は、第2次世界大戦以後、多くの資本主義国で経済運営の指導理論とされました。

 しかし、戦後の時期に、恐慌がなくなったかというとそうはなりませんでした。1974年、オイルショックから始まった世界恐慌が起こりました。日本でもトイレットペーパーがひどい値上がりをしたり、悪徳商社が買い占めしたり、まさにパニックが起こったんです。そういう事実を前にして、「ケインズ主義」では資本主義は管理できないとなっていく。それに代わって、1980年ごろから、「新自由主義」が世界資本主義を席巻します。大企業に対する規制をすべて取り外し、弱肉強食を徹底するという経済理論ですが、その結果が、今私たちが目にしている貧困と格差の途方もない拡大です。「新自由主義」が席巻したのちの資本主義世界でも、2008年のリーマン・ショックに続く世界恐慌というように、恐慌はなくなりませんでした。

 恐慌を起こさないための最後の切り札が、実は「ケインズ主義」でした。それが失敗し、もう今の世界資本主義というのは指導理論がないのです。その意味でも、資本主義の矛盾の深まりはたいへんに深刻です。資本主義に代わる新しい社会への構想が、大いに求められる時代になっているのです。

当日の質問3 社会主義・共産主義に到達するために最も必要なものはなんでしょうか?

社会を変える国民の多数派を、倦まずたゆまずつくっていくこと

 中山 第3問を読み上げます。「人類は存続する限り、必ず社会主義、共産主義に到達するという理解でいいのでしょうか。そうだとしたら到達するために最も必要なのはなんでしょうか。また日本が世界の中でもいち早く、社会主義・共産主義に移行する可能性があると考えていますか?」

 志位 この質問はずいぶん考えた質問ですね。まず「人類は存続する限り」とありますね。「人類は存続する限り」、私は、必ず社会主義・共産主義に到達するというふうに確信しています。今日、さまざまな角度からお話ししたように、資本主義が自分の発展のなかで、次の社会に進む客観的条件と主体的条件の両方をつくりだす。だから必ず新しい社会――未来社会に到達すると考えています。

 ただ、到達するには段階が必要です。日本だったら、「アメリカ言いなり」「財界中心」のゆがみをただす民主主義革命をやりとげたうえで先に進むという段階が必要ですけれども、必ず到達するという確信をもっています。

 そのうえで、質問された方が、「人類は存続する限り」と書いているのはとても大事で、存続しなくなったら到達できません。気候危機はまさにその危険をはらんでいる。また、世界規模での核戦争が起こったら存続できなくなる。自然災害であるならば、大きな隕石(いんせき)が落下してきた場合も存続できなくなる。そういうことはないことを願っていますが、そうしたさまざまな危機を打開し、回避して、「人類が存続する限り」、未来社会は現実のものとなると私は確信しています。

 「社会主義・共産主義に到達するために最も必要なものは何でしょうか」とあります。一言でいうならば、社会主義・共産主義の目的と理想をみんなのものにして、そのための国民の多数派を倦(う)まずたゆまずつくっていくことにあります。もちろん、さきほどお話ししたように、すぐに社会主義・共産主義に進むというのは、私たちのプログラムではありません。国民多数の合意で、まずはアメリカ・財界中心のゆがんだ政治を変える民主主義革命をやりとげる。それをやりとげたら、これも国民多数の合意で、社会主義・共産主義に進んでいく。社会の発展の法則にのっとって、その法則を実現する多数派をつくるたたかいこそ、社会主義・共産主義に到達するために最も必要なものです。

 自然と同じように、人類の社会は発展法則をもっています。ただ自然の法則と違うのは、自然には進まないということです。自然の法則というのは、人間の意思にかかわりなく働きます。明けない夜はなく、必ず、夜明けはやってきます。寝ていても朝になります。しかし社会の法則は、人間がたたかって多数の人々を結集してこそ、はじめて実現するのです。それを推進するのが日本共産党の役割だと思うし、民青同盟のみなさんとも力をあわせて進みたいと思います。

 最後に、「日本が世界のなかでもいち早く社会主義・共産主義に移行する可能性があると考えていますか」とあります。

 日本共産党についていうと、かつてソ連のスターリン、フルシチョフからひどい干渉を受けました。中国の毛沢東からもひどい干渉を受けました。そういう干渉とたたかって自主独立の立場を確かなものとしていくとともに、理論の面でも、スターリンに由来するような、科学的社会主義とは縁もゆかりもないまがいものの理論――古い、間違った理論をのりこえて、マルクス、エンゲルスの本来の理論を発掘し、現代に生かす探究を続けてきました。今日、お話ししたような未来社会論でも、こういう理論的達成をしている政党は世界に他にありません。そういう点では、たたかいの面でも、理論の面でも、新しい道を開拓してきた日本共産党を大きくして、民青同盟を大きくしていけば、日本がいち早く社会主義・共産主義に到達する可能性は大いにあると考えています。一緒にやりましょう。

「なぜ」と問いかけ、みんなで学び、成長する青春を

 中山 ありがとうございました。最後に志位さんから、民青同盟への加盟の訴え、メッセージをお願いします。

 志位 今日の話を聞いていただいて、民青同盟にまだ参加していない方は、あなたも参加していただくことを、心から呼びかけたいと思います。

 私自身は1973年、大学1年生の時に民青同盟に入り、日本共産党に入党し、半世紀以上やってきました。この間、民青のみなさんが新しい仲間をどんどん増やして前進していることを、一人のOBとしても、とてもうれしく思います。

 私なりの実感でいいますと、民青同盟は、若者にとって“三つのかけがいのない魅力”があると思います。

 第一の魅力は、若いみなさんのあらゆる切実な願いにこたえて、その実現のためにともにたたかう組織であるということです。2020年5月から、民青のみなさんがはじめた学生向けの食料支援が、47都道府県で3400回以上、のべ16万人が利用する取り組みに発展していると聞きました。この運動のなかで、連帯する大切さ、楽しさを実感して、支援されていた学生が、ボランティアとして支援する側になったという出来事もたくさん生まれているとのことです。たいへんにすてきなことだと思います。大軍拡に反対して平和をつくる取り組みで、草の根の青年のネットワークを全国で200以上つくったとも聞きました。若者憲法集会を大きく成功させようとしていることも頼もしいことです。民青に入って、一人ひとりの切実な願いを一緒に実現する取り組みに参加しようということをまずいいたいと思います。

 第二の魅力は、さきほどからお話している日本の政治の二つのゆがみ――「アメリカ言いなり」「財界中心」のゆがみをただして、「国民が主人公」の日本をつくることこそ、青年の願いを実現する道があるということを示して、青年に希望を届けることができる組織が民青同盟だと思います。

 今日は、私たちのめざす社会主義・共産主義とはどんな社会なのかを、いきなり話しました。ただ、私たちのプログラムは未来社会にいきなり進もうというようなせっかちなものではありません。まずは「アメリカ言いなり」「財界中心」の政治のゆがみをただす民主主義革命をやる。その次の段階として国民多数の合意で、今日、お話しした社会主義に進もうというのが私たちのプログラムです。この道をぜひ一緒に歩みましょう。民青に入って、新しい日本をつくる主人公として、ともに歩もうということを訴えたいと思います。

 第三の魅力――私は、これこそが一番の魅力だと思うのですけど、民青同盟が日本共産党綱領と、今日お話しした科学的社会主義を学ぶことを、目的に掲げている組織だということです。こういう組織は日本の青年組織のなかで民青しかありません。私は、ここに民青の一番のすてきな魅力があると思います。

 私が民青のみなさんの活動をみていて、素晴らしいと思うのは、「なぜ」と思うことを何でも率直に出し合って、答えをみんなで見つけ出す組織であるということなんです。今日は、35問もの「なぜ」を、民青のみなさんが議論してつくってくれて、私は、ふーふー言いながら答えたのですけれども、世の中には理不尽なことがたくさんあるじゃないですか。その時に、でも、なかなか「なぜ」ということを口に出して言えないということが多くありませんか。理不尽なことがいっぱいある。どうしてこんな理不尽なことが起こっているのか。でも、「なぜ」ということを口に出すのにはなかなか勇気がいります。それからいう場所がないという悩みもあると思う。そこで、モヤモヤしている人も多いのではないでしょうか。民青は「なぜ」と思うことを、みんなが率直に自由にいえる場所だと思います。民青の加盟のよびかけ文を読んだら、こう書いてありました。「知識ゼロからでも学びあえるのが自慢です」。「なぜ」と思うことをみんなが自由に口にだして、「知識ゼロ」からでもみんなで学んで、答えを見つけることができる組織が民青ではないでしょうか。ここに私は民青の一番すてきな魅力があると思います。

 私は、「なぜ」という問いかけは本当に人間にとって大事だと思います。今日は35問の「なぜ」があり、全国からのメールで追加の三つの「なぜ」も寄せられましたけれども、「なぜ」と問うことはもう半分、答えをみつけたことになると思うのです。問題をたてるということはそれ自体が、答えに向かっての大きな前進になると思います。

 理不尽なことを見逃さないで、みんなで「なぜ」と問いかけよう。そして学ぶことを通じて社会の仕組みを知って、社会の発展の法則をつかむ楽しさをみんなでつかもう。そしてその法則を前に進めるためにみんなで力を合わせよう。私は、これこそ一番人間らしい生き方だと思います。

 どうか民青同盟にまだ参加されていない方は、今日を機会に参加していただきたいと思います。それから、まだ日本共産党に入ってない方は、共産党を大きくすることが日本と世界を良くする一番の力になるし、民青を大きくする力にもなります。ぜひ日本共産党に入党していただきたいと訴えます。

 今日は、「自由な時間」を得て、自分の可能性を生かして、自由な成長をしようという話をしました。マルクスが高校生の時に書いた論文があります。「職業選択に関する一青年の考察」という論文です。この論文は人間にとっての本当の幸福とは何だろうかと問いかけています。若きマルクスが出した答えは、「最大多数の人を幸せにした人が最も幸せな人である」というものでした。そしてそのなかでこそ、「人格の完成」が得られると言っています。

 今日は、人間としてどう成長するかが主題だったと思います。そのために、「自由に処分できる時間」を取り戻そう――これがキーワードでした。

 他の人の幸福のために自分の人生を重ね合わせていく、そのなかに自分の幸福を見いだす生き方を、マルクスの若い時期の言葉を励ましに、選びとっていただきたい。

 そういう努力のなかでこそ、一人ひとりの「自由で全面的な発展」を実現することができる。そのことを訴えて終わりにしたいと思います。(おわり)