志位和夫 日本共産党

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TV発言

2023年2月27日(月)

BSテレ東番組「日曜サロン」

志位委員長の発言


 日本共産党の志位和夫委員長は26日放映のBSテレ東番組「日曜サロン」に出演しました。司会は芹川洋一日経新聞論説フェローと榎戸教子キャスターです。大要を紹介します。


敵基地攻撃能力で、何を持とうとしているのか

 芹川 政府の防衛3文書、防衛費の増額に、共産党は反対しておりますね。いまの日本を取り巻く安全保障環境を、どうご覧になっていますか。

 志位 きな臭い問題があることは事実ですが、解決方法で戦争という選択肢はありえないですね。外交で解決するしかない。今の問題は、肝心の外交をやらないでおいて、軍事一辺倒になっている。これが一番の問題だと感じます。

 とくに今、岸田政権がやろうとしているのは、敵基地攻撃能力の保有と大軍拡です。敵基地攻撃能力と一言で言いますが、何を持とうとしているのか。

 この前の予算委員会で、私は生々しくやったんですけども、長射程のミサイルをたくさん導入する。「スタンド・オフ・ミサイル」と言われているものです。12式地対艦誘導弾能力向上型―射程が1000キロです。極超音速の滑空弾―射程が2000キロです。極超音速のミサイル―射程が3000キロです。トマホーク―射程が1600キロ。こういうものをたくさん導入して、それを乗せる戦闘機や護衛艦や潜水艦を大増強するという話ですから、どうして「専守防衛」といえるのか。「他国に脅威を与えるような軍事大国」そのものじゃないか。こう問い詰めたんですが、まともな答弁がありません。「専守防衛」をかなぐり捨てるもので、私たちは断固反対をつらぬきます。

先制攻撃の危険――「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)への参加

 芹川 志位さんは、予算委員会での質問で、いわゆる反撃能力――敵基地攻撃能力について、日米が一体化して先制攻撃につながるんじゃないかと言っておられましたけれど、ただ、やはり日本は「専守防衛」ですし、先制攻撃は国際法で禁じられている。そのあたりどういうふうに考えておけばいいですか。

 志位 私は、敵基地攻撃能力を保有するのは何のためかと調べてみて、なるほどと思ったことがあるんです。端的に言いますと、アメリカがやっている「統合防空ミサイル防衛」―IAMDと呼ばれているものに参加しようと。これは、中国に対する軍事的な封じ込めのために、地球的規模でアメリカが同盟国と一体に構築しているシステムで、ミサイル防衛―相手国のミサイルを撃ち落とすオペレーション(作戦)と、相手国を攻撃する―敵基地攻撃のオペレーション、これを一体に進めるのがIAMDなんです。

 ここに持ってきましたけども、アメリカの統合参謀本部が出している『統合防空ミサイル防衛』―IAMDの基本方針です。

 芹川 これはいつ頃のものですか。

 志位 2017年です。これを読んでぞっとすることが二つある。

 一つは、攻撃対象です。ミサイルサイトだけじゃなくて、飛行場、指揮統制機能、インフラストラクチャー、全部を攻撃対象にする。インフラ―空港、港湾、鉄道、道路なども攻撃対象にする。指揮統制機能といったら、日本でいえば官邸や防衛省も壊していく。つまり全面戦争をやるってことがはっきり書いてある。

 もう一つは、このオペレーションは、相手のミサイルや飛行機の発射・離陸の「前」もやるんだと(書いてある)。「前」ということは、先制攻撃ということです。「先制的にもなる」とも明記されています。アメリカのこのドクトリン(基本原則)は、国際法違反の先制攻撃を公然と宣言しているわけです。

 そしてもう一つ、アメリカの方針は、(「統合防空ミサイル防衛」では)米軍と同盟国の軍隊が「シームレスに融合」していく、つまり切れ目なく融合した軍隊として、オペレーションをやるんだということが書いてある。「同じプレーブックを持って、同じ訓練をやって、同じ作戦をやって、敵からは一つのチームとしてみなされる」、「シームレスに融合」して作戦をやるんだと。

 そうなりますと、米軍が先制攻撃の戦争を始めた。そうすると、自衛隊も米軍の指揮下で一体になって、先制攻撃をやることになる。その結果は、相手からの報復攻撃です。日本が焦土化する。(政府は)「日本を守るため」とよく言いますが、アメリカの戦争に、日本を巻き込んで、日本を廃虚と化すというのが、実態です。

ディフェンス(防衛)とオフェンス(攻撃)が一体になったシステム

 芹川 日本防衛ということで考えるわけでしょう。外に攻めることはないわけですから。

 志位 そうじゃないんですよ。このIAMD――「統合防空ミサイル防衛」というのは、今言ったように、ミサイルディフェンス――ディフェンス(防衛)だけじゃなくて、オフェンス(攻撃)が入っています。相手国に対するアタック――攻撃をするということです。守りと攻めを一体にしたようなシステムなんです。しかも先制攻撃もやりますよ、とはっきりうたっている。日本に対する武力攻撃がなくても、アメリカが戦争を始めた、そうしたら集団的自衛権行使で自衛隊が一緒になって(敵基地攻撃を)やる。その結果は、報復攻撃だと。この危険がある。

「存立危機事態」での武力行使――日本に対する武力攻撃がないのに、戦火を呼び込む

 芹川 ただ、存立危機事態とかで、一応枠がはまっていますよね。日本の集団的自衛権行使には。

 志位 「存立危機事態」というのは、政府がそう認定したとすれば、「存立危機事態」になるわけです。アメリカが戦争を始めた。それがどういう戦争であっても、これは「存立危機事態」だということを認定しさえすれば、一緒になって軍事行動をすることになる。そして、「存立危機事態」で大事なことは、日本に対する武力攻撃がない(状態である)わけです。まだないんです。武力攻撃事態ではない。

 芹川 (武力攻撃事態の)直前です。

 志位 直前であったとしても(武力攻撃は)ないわけですよ。そのときに、自衛隊が武力の行使を始めたら、相手からの反撃になります。ですから、「存立危機事態」での武力の行使というのは、つまり集団的自衛権の行使というのは、日本に対する武力攻撃がなくても、(自衛隊の)武力の行使によって、相手の反撃を招いて、戦火を呼び込むことになる。これは絶対に、私たちは反対なんです。

「専守防衛」を投げ捨てたら、地域の緊張関係をうんと悪くする

 芹川 専守防衛というのは、たとえば日本のどこかの大都会が一撃を受ける、そしたらすでに終わってますよね。それをやられないようにするのも、専守防衛ではないですか。

 志位 「専守防衛」の考え方というのは、簡単に言えば、(政府は)どう説明してきたかというと、日本は「盾」に徹する。「矛」を持たない。あえて持たないことによって、相手との緊張関係をエスカレートさせないで、日本の安全を守っていこうという考え方なんですね。これはこれで一つの、私は、筋だったと思うんです。

 「専守防衛」の国だった。つまり相手の国まで届くミサイルは持たない。空母を持たない。そういうことが、たとえば東南アジアとの関係でも、日本が平和の国として、信頼されることになったという評価もあるわけです。

 それを、「盾」だけじゃなくて、「矛」を持つという。しかも2000キロ、3000キロという射程の「矛」ですよ。沖縄に配備したら、中国と北朝鮮の主な都市は全部射程内に入るような「矛」ですよ。しかも極超音速兵器はマッハ5以上ですよ。こういうものを持ち、配備することになったら、地域の緊張関係をうんと悪くすることになる。

日本共産党の「外交ビジョン」――軍事対軍事でなく、包摂的な平和の枠組みを

 芹川 ただ北朝鮮のミサイルを見てますと、盾だけではどうも防ぎきれないから、矛の部分を持っておかないと盾が有効に機能しないという、私もちょっとそんなふうに感じたりするんですけども。

 志位 それをやれば、相手はさらに大きな矛を持とうとする。悪循環になっていく。

 芹川 安全保障のジレンマですね。

 志位 安全保障のジレンマになっていく。つまり、軍事に対して軍事で対応する。軍事対軍事の悪循環になっていくのが一番悪い。

 私たちは、そうじゃなくて、この地域の全ての国を包み込む形での、包摂的な平和の枠組みをつくっていく。そういう「外交ビジョン」を提案しております。ASEAN(東南アジア諸国連合)の国々と協力して、東アジアサミットという、ASEAN10カ国プラス日本・アメリカ・中国など8カ国でつくる枠組みが現にあるわけですが、それを平和の枠組みとして発展させていって、ゆくゆくはASEANのような戦争の心配ない地域をつくっていこうと。こうした大構想をASEANは今示しています。「ASEANインド太平洋構想」――AOIPという構想ですが、2019年の総会で決めている。この方向を、9条を持つ国として強力にプッシュしていく。これが、私は一番の安全保障になっていくと考えています。

「岸田政権の大軍拡を許さない」――この一点で国民的共同、野党共闘の再構築を

 榎戸 野党連携について伺います。立憲民主党は、日本維新の会と国会共闘などということがありまして、共産党と距離を置いている印象です。

 志位 維新の会について、超党派的に取り組むべき課題で、いろんな取り組みがあることは、私たちは問題視しておりません。ただ、今の大軍拡にどう立ち向かうかという点では、維新の会の立場とは全然違うわけですから、正面から対峙(たいじ)し、打ち破っていくことが大事だと思っています。

 野党共闘の話ですが、私たちは、今の状況のもとで、「岸田政権の大軍拡を許さない」、この一点で国民的な共同をつくりたい。そして野党共闘の再構築をはかりたい。こう思っているんです。たとえば、立憲民主党との関係でも、安全保障政策でいろいろな違いがあることは事実だけれども、岸田政権が今やってる大軍拡は許さないという点では、接点があるのではないか。立憲民主党は、集団的自衛権の行使として敵基地攻撃をやることには反対とはっきりおっしゃってますよね。これはかなり核心部分での一致ということになってくると思うんです。そういう一致を大事にして、共闘の再構築をはかっていきたい。

大軍拡を強行するというなら、解散・総選挙で国民の審判を仰げ

 芹川 選挙ということでは、当座は(統一)地方選挙に全力投球だと思いますけども、解散・総選挙の見通しと備えはどんな感じかっていうことをお伺いしたいんですが。

 志位 敵基地攻撃能力保有と大軍拡というのは、岸田首相は、この前の参議院選挙で公約したわけでも何でもない。国民との関係で、何の公約もなしに始めているわけです。しかも「専守防衛」という根本を投げ捨てる。憲法にも違反する。先制攻撃という点では国際法にも違反する。こういうことを今やろうとしてるわけですから、私たちは、断固反対で撤回を求めますけれども、もしどうしても、それをやるというんだったら、国民に審判を仰ぐべきだと。解散・総選挙を強く求めていきたいと思います。

「130%の党」への努力、若い方々のなかでの前向きの変化について

 榎戸 共産党の現状と、これからについてお伺いします。党員も高齢化が進んでいるというふうに聞きますし、「しんぶん赤旗」の購読者も減っているというお話を聞いています。現状とこれからについてどのようにお考えでしょうか。

 志位 その点はいま努力中で、前の大会との比較で、党員と読者の数を、130%に増やそうという運動に取り組んでおります。ぜひこれを成功させたい。

 ただ、日本共産党の今の草の根での力ということを言った場合に、全国に1万7000の支部があり、26万人の党員をもち、90万人の「しんぶん赤旗」の読者をもち、2500人の地方議員をもっている。これは他党にはない力だと思ってるんですよ。その力を本当に発揮すれば、130%に増やすことはできる、ということでいま努力中です。

 民青同盟といって、私たちと協力関係にある青年組織があるんですが、去年1年間の拡大目標の1500人を超過達成し、今年は2000人に挑戦すると、若い方々のなかで新しい前進が始まっています。私も最近、学生の党支部のみなさんと懇談してきたんですけども、学費が高すぎる、アルバイトづけで、深夜のバイトも余儀なくされる、ジェンダーや気候危機で、関心も強く、強い危機感を持っている。そこに本当にこたえる活動をやれば、ぐっと広がる感じがします。

日本共産党の指導体制と、指導部の選出方法について

 芹川 志位さんも、もうだいぶ長くなりましたね。不破さんも宮本さんも、長かったですから、共産党さんは長くトップにいらっしゃいますけども、これは、ずっとってことじゃないでしょうから、あとをどうするのか。あとは何か党員の公選と言うんですかね。そういうトップの(選び方)は、どうお考えになっていますか。

 志位 私たちの中央の体制について言いますと、党大会ごとに、その時期の任務に照らして、ベストと考えられる人事を、集団で検討し、提案して、党大会、中央委員会総会で民主的に選出をするという手続きで、選んできました。選挙によって選ばれてきた。これがこの間の経過で、その結果として(委員長の在職が)22年ということになったということなんです。

 そういう中央の体制をつくる場合に、つねに考えて重視してきたことは、ベテランの幹部と若くて新しい幹部、その力を結合して、両方の力が生きるような体制をつくることをずっと努力してきました。ですから、世代的な交代をしていくという体制もしっかりつくっていくと。現に、若くて、力もあり、魅力もある幹部がたくさん出てきていると、私は、思っております。

 芹川 (直接)投票的なものってどうなんですか。

 志位 私たちは、全国の支部から民主的に選出された代議員で、党大会をやる。党大会で中央委員会を選びます。そこで、委員長、書記局長、副委員長などを選ぶというやり方をとっているんです。私たちは、日本共産党にとって、これは一番合理的だと思ってるんです。

 まず一つは、個人の専断を許さないで、集団指導によって民主的な党運営をやっていくうえで一番合理的だと。かりに直接選挙で党首を選ぶということになりますと、党首に相当権限が集中しますよね。党首が、たとえば幹事長、あるいは幹部を任命しますよね。そういう力が非常に集中するわけですけども、そういうやり方が、私たちは必ずしも民主的だと思っていません。

 芹川 派閥的になってくる。

 志位 それが二つ目の問題で、直接選挙で党首を選ぶということになれば、多数派を形成するために派閥ができてきます。私たちは、政党として、民主的な討論をつくして方針を決めますけれども、いったん決まったらみんなで実行する。つまり行動を統一する。これは国民に対する責任だと考えております。派閥はつくらないということは、党の規約にも書いていることで、今のやり方はそういう点でも合理的だと。

 もう一つ、三つ目に言っておきたいのは、共産党というのは、「ポスト争い」とは無縁なんです。共産党に入る人というのは、どなたも、みんな私利私欲で入ってくる人はいない。共産党に入って金もうけしようとか、出世してやろうとか、一旗揚げてやろうとか、そういう人はいないんです。

 芹川 金もうけはないでしょうね。(笑い)

 志位 ないですね。国民の苦しみを軽減していこうと、平和と民主主義のために頑張ろうということで、私利私欲なく入ってこられる方々がみんななんですね。もともと「ポスト争い」というのはやらないんですよ、わが党は。そういうわが党のあり方に、合わないんですね。直接選挙というのは。

 芹川 そうですか。

 志位 私たちは、今の選出方法が一番合理的だと思っています。ただ、他党にそれを押し付けるつもりはありません。政党は、(選出方法を)それぞれ自由に決める権利があるわけですから、押し付けるつもりはない。でも、唯一の民主的方法が直接選挙で、それ以外は、みんな非民主的だというのは、私は根拠がないと思っています。

前人未到の道――「開拓」の精神で次の100年にのぞみたい

 芹川 最後に、共産党101年ですね。これからの共産党をどうするか。一言で言うとどういうふうなイメージでされるんですか。

 志位 「開拓」といいたい。私たちが目指しているのは、高度に発達した資本主義日本で、まず民主的な変革をやったうえで、社会主義、共産主義に進もうというプログラムなんですけども、そういう事業を始めた国、成し遂げた国は世界にどこにもないんです。

 芹川 ないですね。

 志位 どこもやったことがない、世界で初めての道を歩んでいこうということですから、そこには困難もあるでしょうけども、やりがいもあるしロマンもある。ですから、「開拓」という精神で次の100年にのぞみたいと思います。