志位和夫 日本共産党

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談話・記者会見

2023年2月3日(金)

敵基地攻撃能力保有の核心は何か

志位委員長が会見


 日本共産党の志位和夫委員長は1月31日の記者会見で、衆院予算委員会での自身の質問を振り返りながら、岸田政権の大軍拡・敵基地攻撃能力保有の核心は何かについて明らかにしました。会見での発言を紹介します。


 今日の予算委員会の質疑では、今やられようとしている敵基地攻撃能力の保有と大軍拡の一番根本的な問題について提起しました。憲法との関係、「専守防衛」との関係、「抑止力」との関係、さらに「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)で「米軍とシームレス(切れ目なく)に融合」していく――これらの根本問題が提起できたと思います。

日米「融合」での「統合防空ミサイル防衛」がことの核心

 今回の質問を準備する過程で、「何のために敵基地攻撃能力をいま持とうとしているのか」について探求をしてみたわけですが、その最大の動機の一つが「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)に日本が参加することにあることは間違いないと思います。

 首相は「日本は独自にやる」と言いましたが、そんな代物ではありません。質問で読み上げた通り、「シームレスな融合が必要」だと米軍が言っています。「ミサイル防衛」と敵基地攻撃の両方を一体にやるわけですから、まさに瞬時の軍事的な対応が必要になります。おのおのがバラバラにやっていたら軍事作戦として成り立つ道理がありません。

 まさに日米が「融合」する形での軍事一体化になります。そして、米国は先制攻撃の方針を公然と持っています。そうなると、そうした先制攻撃の戦争に日本が参戦するという危険性が現実のものとしてあるわけです。

 IAMDは、米国がいま地球的規模で構築しているシステムです。それに自衛隊が参加しようと思うとこれまでの自衛隊では参加できません。敵基地攻撃能力を持たないと役に立たない。敵基地攻撃能力を持つことが「エントリー=参加資格」となっている。敵基地攻撃能力を持って参加し、「融合」する形で軍事活動をやっていく。ここに核心があると思います。

 米国は正義の戦争をやっている国ではありません。今日お話ししたように、先制攻撃の戦争をたくさんやっている。そういう国と軍事で「融合」する危険性は恐るべきものであるということが、非常に明瞭になったのではないでしょうか。

米軍の二つの文書が示すもの

 今日の質問で使った米統合参謀本部の文書「対航空・ミサイル脅威」(2017年4月)、米空軍が発行している機関誌『航空宇宙作戦レビュー』をぜひ見ていただけたらと思います。

 米統合参謀本部の文書には、非常に詳しくIAMDのドクトリン(教義)が書かれており、その中心的な内容として、「攻勢対航空作戦」(オフェンシブ・カウンターエア)が明示されています。

 文書の冒頭では「攻勢対航空作戦」とは何かについて、「敵のミサイルサイト、飛行場、指揮統制機能、インフラストラクチャー」を破壊または無力化する、そして「離陸・発射の前と後の双方」においてと、「先制攻撃」を明示しています。文書の中には「先制」という言葉が何度も登場します。先制攻撃の宣言なんです。

 もう一つ、米インド太平洋軍のIAMDに関する米空軍の機関誌を示しましたが、そこには、これまでの米国と同盟国との関係は「サイド・バイ・サイド――隣に並んでの統合」だったと明示されています。「ノルマンディー上陸作戦」「イラク作戦」などもそうだったが、今度は違う。「シームレス――切れ目のない融合」なんだということが非常に明瞭に書かれています。

 今やられようとしている「統合防空ミサイル防衛」というのは、米軍と自衛隊が「シームレスに融合」して作戦を行う。その中身は「ミサイル防衛」だけではありません。「相手国の領域」で相手国を攻撃する敵基地攻撃がセットで作戦がやられる。そして日米が完全に「融合」した形でやられる。当然この指揮権を持っているのは米国です。そして、米国は先制攻撃を隠していない。ここに、今回の大軍拡の一番の危険があると思います。

敵基地攻撃能力の恐るべき実態――「極超音速兵器」

 もう一つの急所は、「反撃能力」「敵基地攻撃能力」の実態は何かということです。結論から言うと、一番の本命は「極超音速兵器」です。

 いま自衛隊が開発しようとしている「極超音速兵器」は2種類あります。一つは「極超音速誘導弾」、もう一つは「極超音速滑空弾」です。今日私が示した防衛装備庁作成の敵基地攻撃能力獲得後の「将来像」の図に登場するのがこの二つです。両方とも飛行速度はマッハ5を超えます。「極超音速誘導弾」は射程3000キロ、「極超音速滑空弾」は2000キロです。敵基地攻撃能力といった場合、トマホークのことがよく言われますが、本命は極超音速兵器です。首相は、これがどうして「脅威でない」と言えるかという問いには全く答えられませんでした。

 反撃能力・敵基地攻撃能力の問題を議論する際に、その実態がどういうもので、どんな兵器を持とうとしているのかというところから議論がされなければならないと思います。そういう点でも、「極超音速兵器」という一番の本命の危険性を告発できたと思います。それが他国に与える「脅威」については、首相も否定できなかった。この点でも、いま起きている事柄の恐ろしさが非常に明瞭になったと思います。

伊能答弁、田中答弁との整合性を説明できず――立憲主義の破壊

 そして冒頭には憲法論を行いました。

 伊能繁次郎防衛庁長官の答弁(1959年3月19日)には敵基地攻撃は「他に全然手段がない場合」には「法理的に可能」だが、そういう事態は現実には起こりがたいので、平素から能力を保有することは憲法違反だと書いてあります。首相は、伊能答弁との整合性は説明できませんでした。「安全保障環境が変わった」と繰り返したけれども、政府の論理でも、日米安保条約があるのだから、「他に全然手段がない場合」とは言えません。

 それからもう一点は、田中角栄首相の答弁(72年10月31日)です。田中答弁は明らかに敵基地攻撃を否定しています。それにもかかわらず、首相は、田中答弁は「海外派兵一般を禁止したものだ」「敵基地攻撃を否定したものではない」という田中答弁を歪曲(わいきょく)した答弁に終始し、まったくの説明不能となりました。

 どちらも国会で確立した答弁なのに、今やろうとしていることとの整合性が全く説明できない。これは立憲主義の破壊です。

平和の対案掲げ撤回のために全力

 これは第一歩です。私たちとしては徹底的に今やられようとしていることの危険性、道理のなさを明らかにし、そして平和の対案を示しつつ、これを撤回する取り組みに全力をあげたいと思います。