志位和夫 日本共産党

力をあわせて一緒に政治を変えましょう

TV発言

2022年7月4日(月)

参院選の争点 NHK「日曜討論」

志位委員長の発言


 日本共産党の志位和夫委員長は3日、NHK番組「日曜討論」に出演し、各党党首と参院選の争点について討論しました。司会は伊藤雅之解説委員と星麻琴アナウンサー。志位委員長の発言を紹介します。


ウクライナ侵略への対応は

東アジアの軍事的緊張と分断を激化させた岸田発言――9条生かした平和外交こそ

 ロシアによるウクライナ侵略を受けた対応が議論となりました。自由民主党の岸田文雄総裁は、軍事力が「国民の命と暮らしを守るために十分なのか」と強調。日本維新の会の松井一郎代表は、「自民党のマニフェストにもGDP(国内総生産)比2%をめざすと書いている。それを使って積極的防衛力の強化を」と主張し、原子力潜水艦保有を強調しました。公明党の山口那津男代表は「日本自身の防衛力と日米同盟による抑止力を総合して日本防衛力は強化すべきだ」と発言しました。これに対して志位氏は「軍事対軍事」の危険性を指摘し次のように述べました。

 志位 「ロシアの侵略は絶対に許すな」の一点で全世界が団結することが重要です。

 ただ、私は、岸田さんが、NATO(北大西洋条約機構)の首脳会合で、「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と言って、NATOとの軍事協力を強化する。あるいは軍事費の「相当な増額」を約束する。これは、東アジアの軍事的な緊張と分断を激化させることになる。日本が軍拡で構えれば、相手も軍拡を加速させる。「軍事対軍事」の悪循環、「安全保障のジレンマ」に陥ってしまいます。これが一番危険な道だと思うんですね。

 日本がやるべきは、東アジアで戦争を起こさないための憲法9条を生かした平和外交です。いまASEAN(東南アジア諸国連合)は、ASEANの10カ国プラス日米中ロなどの8カ国で東アジアサミットをつくり、これを平和の枠組みとして発展させて、東アジアを戦争の心配のない平和な地域にしようという構想を立てています。このASEANと協力して、この道を進むことが重要です。

 「軍事対軍事」では平和はつくれない。これがヨーロッパの教訓であり、これを東アジアで生かす必要があると思います。

賃上げのための具体策は

大企業への内部留保課税で最低賃金を1500円に――2300万人の賃上げに

 次に、物価高騰の中で、賃上げをどう実現するかが議論になりました。番組では、日本の賃金の伸び率は低い水準が続き、一人当たりの賃金の伸び率は1991年を百とした場合、この30年は、欧米の先進国に比べて伸び悩んでいるとし、各党代表に賃上げ実現の具体策を聞きました。岸田氏は「(賃上げの)呼び水となる政策を用意し民間に広げていく」などと述べるだけで具体策はなく、松井氏は「規制改革で新しい分野のビジネスチャンスをつくっていく」と新自由主義の推進を主張しました。

 これに対し志位氏は、次のように述べました。

 志位 日本共産党は、「アベノミクス」で膨らんだ大企業の内部留保に、年2%、5年間で10兆円の時限的な課税を行って、二重に賃上げを促進する提案をしております。

 一つは、大企業が賃上げやグリーン投資にお金を使った場合には課税をせずに、賃上げと脱炭素を促進する。

 もう一つは、税収の10兆円は、最低賃金を(時給)1500円に引き上げるための中小企業支援にあてたい。(最賃が)1500円になりますと、1日8時間働いて、週休2日で、手取り20万円になります。

 (最賃が)1500円になりますと、(時給)1500円以下でいま働いている2300万人の労働者の賃上げになります。民間労働者のうちの44%、つまりパートやアルバイトだけではなくて、正社員も含めて44%の方の賃上げになる。

 そうしますと、日本の経済全体がぐーっと底上げされて、経済の好循環が始まる。ぜひ、この方策を採用していただきたいと、岸田さんに求めたいと思います。

格差是正をどうするか

格差拡大の元凶は90年代からの労働法制の規制緩和――新自由主義からの決別を

 格差是正が議論になりました。岸田氏は、「労働の流動性を高めることは重要」とし、国民民主党の玉木雄一郎代表は「賃上げのために労働市場の流動化は不可欠」などと労働法制の規制緩和を推進する立場を述べました。松井氏は、資本主義である以上「格差があることは受け入れるべき」などと発言しました。志位氏は、次のように反論しました。

 志位 何で格差を生じたのかといいますと、1990年代以来の労働法制の規制緩和、これがまさに元凶だと思います。

 これによって、まず派遣労働の原則自由化が99年にやられました。2004年には製造業の自由化がやられた。そして働く人がどんどん「使い捨て」にされる。こういう非正規への置き換えが起こりました。

 いま働く人の4割が非正規ですよ。女性は5割以上が非正規です。これが格差の元凶になっているわけです。

 ですから、私は、労働法制の規制緩和路線はやめて、規制の強化に踏み切ると。非正規の方を正社員に移していくというような労働のルールをしっかりつくっていくと。同一労働、同一賃金、このルールもしっかり実態的につくっていくと。こういう労働法制の規制緩和路線からの決別、新自由主義からの決別です。これがどうしても必要だと(思います)。

 岸田さんは「新自由主義の弊害(を乗り越える)」と言われた以上、ここにメスを入れるつもりがあるのかどうか、ぜひ聞きたいですね。

社会保障・教育の財源どうする

日本共産党は政策と財源をセットで公約――大軍拡の財源を隠す無責任は許せない

 次に、社会保障や教育の充実のための財源が論点になりました。岸田氏は社会保障削減の「全世代型社会保障」の推進を主張。富裕層の金融所得課税の見直しについては、先送りの姿勢をあらわにしました。山口氏は「歳入改革や効率化を進める」と発言しました。これに対して、志位氏は次のように述べました。

 志位 日本共産党は、消費税減税、社会保障、子育て、あらゆる公約を、19兆円の財源とセットで提案しています。

 その柱に据えているのが、富裕層と大企業に対する応分の負担を求める税制改革です。

 岸田さんは先送りの態度をまた言いましたけれども、所得1億円を超えると税負担が減ってしまう「1億円の壁」、これを是正するための金融所得課税、いますぐ見直しに取り組むべきです。

 それから、大企業が中小企業に比べて法人税の実質の負担率が低いと、この不公平をただすために、研究開発減税など大企業優遇の税制をなくす。

 あるいは、安倍政権が23%まで下げてしまった法人税率を28%にもどすこと(です)。バイデン政権も28%と言っていますから、日米協調でもどすと、こういう税制改革をやるべきです。

 最後に一つ言いたいのは、自民党は、軍事費を「GDP比2%」といいながら、その財源をどうするかは一切明らかにしていない。隠したままです。これは一番無責任だ。私は、政策と財源はセットで公約する、これは民主政治の基本だと言いたいと思います。

電力逼迫とエネルギー政策

逼迫の根本に省エネ・再エネの遅れ――「気候危機打開の2030戦略」の実行を

 猛暑で電力の逼迫(ひっぱく)も起こる中、エネルギー政策がテーマに。維新、自民、国民が原発再稼働をそろって強調。公明も原発再稼働を否定しませんでした。志位氏は、電力逼迫の事態の根源にある問題とともに打開策について次のように発言しました。

 志位 いま電力逼迫という事態が起こっている根本には、日本の省エネと再生可能エネルギーが、世界でもうんと遅れてしまっているという問題がある。これを打開しないといけません。

 日本共産党は「気候危機打開の2030戦略」を提唱しております。2030年度までにCO2最大60%カットする。省エネによってエネルギー(消費)を40%カットする。そして電力の50%を再生可能エネルギーでまかなうという、かなり詳細なプランを出しております。

原発再稼働の大合唱

福島の苦しみをかえりみない無責任な議論――原発即時ゼロの政治決断を

 志位 原発について言いますと、私は、再稼働を求める声に対して、「福島を忘れたのか」と言いたいと思います。福島では、いまも事故が続いているんです。多くの方々が避難生活を、苦しい避難生活を強いられているんです。そして、汚染水は増え続けているんです。事故は終わっていないわけですよ。それを、あたかも事故などなかったかのように再稼働を言うっていうのは、本当に無責任な政治だと思います。

 私は、原発は即時ゼロ、これを政治決断する。石炭火力からの撤退、これを政治決断する。これをやってこそ、省エネ、再エネ、気候危機打開が進むと思うんですね。そういう政治決断が必要だと強く言いたいと思います。

憲法改定問題

「軍事費2倍」、「敵基地攻撃」――憲法9条との関係で説明がつかなくなっている

 最後に憲法改定問題がテーマに。志位氏は次のように主張しました。

 志位 岸田さんは、9条改憲を早期に実現したいとおっしゃいますが、なぜそんなに急ぐのか。

 私は、いま(政府・自民党が)やろうとしていることが、憲法9条との関係で説明がつかなくなっているからだと思います。

 政府はこれまで、9条のもとでは「専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならない」。これを「国防の基本方針」としてきました。

 ところが、「軍事費2倍」となりましたら、日本の軍事費は世界第3位ですよ。これは「他国に脅威を与える軍事大国」そのものじゃないですか。

 さらに政府は、集団的自衛権(行使)の際にも、「敵基地攻撃」ができるという答弁をいたしました。そうしますと、日本が攻撃されていないのに、米軍が海外で武力行使を始めたら、集団的自衛権を発動して、自衛隊が米軍と一緒に、「敵基地攻撃」で相手国に攻め込むことになる。これが、どうして「専守防衛」で説明できるのか。説明できないですよ。

 私たちは、こうした道は断固反対です。9条を守り生かす――この立場で頑張ります。