志位和夫 日本共産党

力をあわせて一緒に政治を変えましょう

TV発言

2022年5月2日(月)

NHK「憲法記念日特集」 志位委員長の発言


 1日放送されたNHKの憲法記念日特集番組での日本共産党の志位和夫委員長の発言は次の通りです。

ウクライナ侵略

「ロシアは侵略やめよ」「国連憲章を守れ」――この一点で力をあわせよう

 冒頭、テーマになったのが、ロシア・プーチン政権によるウクライナ侵略です。志位氏は次のように語りました。

 志位 プーチン政権は、三つの無法を犯していると思います。

 第一は、武力の行使を禁止した国連憲章に違反する侵略ということです。

 第二は、民間人への無差別攻撃や虐殺は、ジュネーブ条約など国際人道法に反する戦争犯罪だということです。

 そして第三は、核兵器によって世界を威嚇している。これは国連憲章および核兵器禁止条約に違反する許しがたい暴挙です。

 それでは、どうやって侵略を止めるか。

 私たちは、経済制裁を続けることは必要だけれども、何より大事なことは国際世論による包囲だと考えています。

 国連総会で141の国の賛成でロシア(の侵略)を断罪する決議が採択されましたけれども、この流れをさらに広げて、世界中の国ぐにと市民社会が、「ロシアは侵略やめよ」「国連憲章を守れ」と、この一点で声をあげ、力を合わせることが、侵略を止める一番の力になる。このことを訴えたいと思います。

日本をどう守るか

憲法9条を生かして東アジアに平和をつくる「外交ビジョン」を提案する

 そのうえで、伊藤雅之解説委員は「ロシアによる侵攻を目の当たりにして日本をどう守るかということが各党の議論の一つの中心になりつつある」として、「この憲法の観点から日本をどう守るか」と問いました。岸田文雄首相は「国民の命や暮らしを守るために抜本的に防衛力を強化しなければならない」と述べるとともに、「憲法、『平和安全法制』といった法律、専守防衛といった今日までのわが国の方針を守りながら、その枠内で何ができるか。考えていきたい」と発言しました。志位氏は、「平和主義と日本の国を守るための防衛力、これどう考えますか」と問われ、次のように答えました。

 志位 よく一部から「9条で平和は守れるか」という声が聞こえてきますけど、戦争を起こさないための9条を生かした外交に、知恵と力を尽くすのが政治の役割ではないかと思うんですね。

 日本共産党は、東アジアに平和をつくるための「外交ビジョン」を提案しております。私たちが注目しているのは、あらゆる紛争問題を徹底的な平和的な話し合いで解決しているASEAN―東南アジア諸国連合の取り組みなんです。いまASEANは、ASEAN10カ国プラス日米中など8カ国で東アジアサミットという平和の枠組みをつくって、これを発展させて、ゆくゆくは東アジア規模での友好協力条約を展望しようという大構想を示しています。

 私は、いま日本が進むべきは「敵基地攻撃」だのそういう物騒な話ではなくて、ASEANの国ぐにとしっかり連携して、東アジアを戦争の心配のない平和な地域にするための9条を生かした平和外交だと、この努力をしっかりやるべきだと(思います)。まさに9条の出番の時を迎えていると、私は思います。

「アジアにおける平和の枠組みを考えていくことは重要」(岸田首相)

 志位氏の提案に対して、伊藤解説委員が「アジアの地域のなかでの安全保障の構想、これはどうだという提言もありましたけど、この点はどうですか」と問いかけたのに対して、岸田首相は「国際秩序の根幹が揺るがされる事態を前にして、あらためてアジアにおける安全保障や平和の枠組みを考えていくという考え方は重要だと思います」と認めました。

「核の傘」と「非核三原則」

プーチン大統領の出現のもと、「核抑止」論はいよいよ無力になった

 次いでテーマになったのが、プーチン大統領が核兵器の先制使用を公言するもとで、日本の「非核三原則」をどうするかです。日本維新の会の馬場伸幸共同代表は「『核共有』の議論を行うべきであって、議論さえ認めないのはおかしい」と発言しました。志位氏は、「日本はアメリカの核の傘の中にあるという現実がある。一方で非核三原則は行うと。この関係をどういうふうに整理していくべきと考えますか」と問われ、次のように発言しました。

 志位 まず「非核三原則」は、しっかり守っていく必要があると(思います)。一部にある「核共有」という議論に対して、日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)のみなさんは、“日本を核戦争に導き、命を奪い、国土を廃虚と化す、危険極まりないものだ”と厳しく批判していますが、その通りだと思うんです。

 そして、いまのお話についていいますと、私は、この「核の傘」「核抑止」、この議論がプーチン大統領の出現によってどうなったか、これをよく見る必要がある(と思います)。

 プーチン大統領という、核兵器の先制使用を国家の基本方針にすえ、自国民にどんな犠牲が出ても核兵器の使用をちゅうちょしない、こういうリーダーが現れてきたもとで、「核抑止」が効くのか。つまり「核抑止」というのは、核兵器を持てば核の使用が止められるという議論ですよね。これが、いよいよ無力になったということを世界が目にしている。そう思うんです。

 ですから、こういう状況のもとで、核兵器の使用を止める唯一の方法は、地球的な規模での核兵器の廃絶を緊急課題として真剣に取り組む以外にない。そういう立場で、日本政府は、核兵器禁止条約に参加すべきだということを強く求めたいと思います。

「核抑止」論をどう考えるか

「核抑止」論の呪縛を吹き払って、核兵器禁止条約に参加する決断を

 「核抑止」論について、岸田首相は「米国との間で、核抑止を含む拡大抑止の信頼性を高めていく努力は、拡大抑止協議等、さまざまな形で続けていかなければならない」と発言しました。立憲民主党の泉健太代表は「拡大抑止協議をより充実させていくことが必要」と語りました。維新の会の馬場代表は「核共有の議論をしないと宣言してしまえば、抑止力は一段階下がってしまう」と発言。国民民主党の玉木雄一郎代表は「私も拡大抑止は維持する立場」と述べました。岸田首相は、核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加も否定する立場を表明しました。志位氏は次のように述べました。

 志位 いま岸田さんの話を聞きまして、結局、核兵器禁止条約に背を向ける。(その)一番の理由にしているのは、結局、「核抑止」という話だと思うんですよ。

 では、「核抑止」とは何か。これは、いざというときには核兵器を使う、つまり核のボタンを押すということが前提になっている議論なんです。つまり、いざというときには、広島・長崎のような非人道的惨禍を引き起こすことをためらわないという議論なんですよ。こういうことを被爆国の政府が、それにいつまでもとらわれていいのかが問われていると思うんですね。

 アメリカの国務長官を務めた(ジョージ)シュルツ氏がこう言った。

 “核抑止というのは、(核を)使えなければ抑止にならないぞ。それじゃあ、何十万、何百万の人々のいる上に核は落とせるか。文明国の指導者だったら、そんなことはできやしない。だから核抑止は幻想なんだ”

 こう言っている。私は、その通りだと思う。

 私は、いま世界が目にしているのは、核兵器という兵器を人間に持たせることがどんなに危険なことか。まさに「絶対悪」の兵器だということを目にしていると思うんですよ。

 ですから、私は、「核抑止」という呪縛を吹き払って、被爆国の政府として核兵器禁止条約に入るという決断をすべきだと強く求めたいと思います。

憲法論議どう進める

憲法9条の「信頼力」を生かした外交で、アジアと世界の平和に貢献する議論を

 最後に、憲法をめぐる議論をどう進めるかがテーマになりました。

 志位 私たちは、憲法9条を変える議論ではなくて、憲法9条を生かした平和外交の議論を大いにやっていきたい。

 外務事務次官を務めた藪中三十二さんが最近の著書で、“日本の強みは信頼力にある”ということを強調して、こう述べておられる。

 “ASEAN諸国は、日本、中国、アメリカ、どの国を一番信頼するかという問いかけに対して、日本を一番信頼してくれている。日本は、ASEAN諸国と協力して、これまで築き上げてきた信頼力の上にたって、世界の平和に貢献するという強いメッセージを打ち出すべきだ”

 私は、その通りだと思うんです。

 憲法9条のおかげで、戦後、自衛隊は、一人の外国人も殺していない。一人の戦死者も出していません。「非核三原則」を「国是」とし、核兵器を持っていない。

 つまり憲法9条がつくりだしてきた、この「信頼力」があるわけです。この「信頼力」を生かした外交で、アジアと世界の平和に貢献するということが日本に求められていると、強く言いたいと思います。