志位和夫 日本共産党

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主な活動

2022年4月30日(土)

ウクライナ侵略

「価値観」で世界を二分するのでなく、「国連憲章を守れ」の一点で団結を

志位委員長が大学人の集いで講演


 日本共産党の志位和夫委員長は29日、全国学者・研究者日本共産党後援会の主催でオンライン開催された「大学人と日本共産党のつどい」で、「ウクライナ侵略と日本共産党の安全保障論」と題して講演しました。講演は、「ウクライナ侵略と日本共産党の立場」「危機に乗じた9条改憲を許さず、9条を生かした平和の外交戦略を」「安保条約と自衛隊に対する日本共産党の立場について」の三つの柱で約1時間半にわたって行われ、その後、志位氏は、全国から寄せられた質問に30分にわたって縦横に答えました。


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(写真)講演する志位和夫委員長=29日、党本部

 講演のなかで志位氏は、ウクライナ侵略に対する軍事ブロック的な対応を批判するとともに、「核抑止」論を徹底的に克服する論戦を呼びかけました。

ウクライナ侵略と軍事同盟の問題――二つの角度から

 志位氏は、講演の第一の柱として「ウクライナ侵略と日本共産党の立場」について、踏み込んで明らかにしました。この事態への対応の最大の基準に国連憲章と国際法をおくことの重要性を強調するとともに、ウクライナ侵略と軍事同盟の問題について二つの角度から日本共産党の立場を述べました。

 第一の角度は、一部に侵略の原因にかかわってロシアとウクライナの双方に問題があるとして同列におく「どっちもどっち」論があるが、日本共産党はそうした立場はとらないということです。志位氏は、日本共産党は軍事同盟のない世界をめざしており、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大や域外派兵に反対してきたが、軍事同盟の問題は、国連憲章を蹂躙(じゅうりん)したロシアの侵略の免責にはならないと強調。軍事同盟に対する態度の違いを超えて、世界が「ロシアは侵略をやめよ」「国連憲章を守れ」の一点で団結することが重要だと語りました。

 第二の角度は、侵略に対する軍事ブロック的対応は批判していくということです。志位氏は、バイデン米大統領は3月の一般教書演説でロシアを激しく非難したが、「国連憲章」「国連」という言葉は一言もなく、押し出したのは「民主主義対専制主義のたたかい」というスローガンだったと指摘。プーチン政権は専制主義的な政権であることは間違いないとしつつ、「いま問われているのは、あれこれの『価値観』ではない」、「あれこれの『価値観』で世界を二分したら、解決の力も解決の方向も見えなくなる」とし、現にいま、アメリカの立場に新興国や途上国などから批判が上がっていると述べました。「大切なのは、あれこれの『価値観』で世界を二分するのでなく、『国連憲章を守れ』の一点で世界が団結することです」と強調しました。

 志位氏は「それでは岸田首相はどうか」と問いかけ、岸田首相もロシアの軍事行動に対して「国連憲章違反」という批判の言葉を最大限使っていないことを指摘。「岸田首相が繰り返しているのは『価値観を共有するG7主導の秩序の回復』ということです。しかし回復すべきは『G7主導の秩序』ではありません。『国連憲章にもとづく平和秩序』なのです。この方向こそ、新興国や途上国も含めて世界が結束できる秩序ではないでしょうか」と訴えました。

 そして志位氏は「侵略に対する軍事ブロック的な対応は、ロシアの侵略を止める国際的な団結をつくる点でも、戦争の拡大を招きかねないという点でも、大きな問題があります。こうした動きに対しては、『国連憲章にもとづく平和秩序を回復する』という立場から、冷静な批判をしていきます」と語りました。

世界がいま目にしているのは「核抑止の重要性」でなく「核抑止」論の破綻

 また志位氏は、核兵器問題で「核抑止」論を徹底的に批判し、克服する重要性を強調しました。

 「いま核兵器使用の現実的危険が生まれています」として、「プーチン大統領のたびたびの核使用の恫喝(どうかつ)は偶然ではありません」と指摘。2020年の大統領令で核兵器の先制使用を国家の基本戦略に公然とすえていると告発し、「アメリカも核の先制使用を否定していませんが、公然と国家の基本戦略にすえているのはプーチン政権だけです」と述べ、「『核兵器の使用を絶対に許すな』の声を、全世界で、とりわけ被爆国日本からあげていくことを訴えます」と語りました。

 プーチン大統領の核恫喝のもとで、「核には核」という危険な動きが起きていると指摘。安倍晋三元首相や日本維新の会から唱えられている「核共有」はその最悪の表れであり、「核抑止がいよいよ大切だ」「核の傘が大切だ」という大合唱が起きていることを強く批判しました。志位氏は「しかし実は、世界が目にしているのは、『核抑止の重要性』でなく、『核抑止』の破綻です。『核抑止』論を克服する論戦を徹底的に行っていきたい」と強調し、二つの角度から「核抑止」論を批判しました。

 第一は、プーチン大統領という核兵器の先制使用を国家の基本戦略にすえ、自国民にどんな被害が出ようとも、核兵器の使用をためらわない指導者が登場しているもとで、「核抑止」がいよいよ無力になっていることです。志位氏は、「核抑止」はともかくも双方の指導者が自国民の犠牲を回避する判断をするという前提に成り立っているが、「プーチン大統領は、そもそもそういう立場に立っていない」と強調しました。

 さらに、プーチン大統領が2018年に「ロシアを全滅させようとする者がいるなら、それに応じる法的な権利がわれわれにはある。確かにそれは、人類と世界にとって大惨事だ。しかし、私はロシア市民で国家元首だ。ロシアが存在しないなら、どうしてわれわれが、そんな世界を必要とするだろうか」と発言し、この発言がいまロシアで繰り返し流されていることを指摘。「つまり、自国民への犠牲をちゅうちょしないだけではない。全人類の破滅をもちゅうちょしない。こうした状況のもとで、『核抑止』はいよいよ無力ではないでしょうか」と強調しました。

 第二は、より一般的・本質的な「核抑止」論の批判です。志位氏は、「核抑止」とはいざという時には核兵器を使用する――核ボタンを押すことを前提にした議論であり、広島・長崎のような非人道的惨禍をためらわない議論だと指摘。日本政府も核兵器の非人道性を批判していることに触れた上で、「核兵器の非人道性を批判する立場と、『核抑止』論にしがみつく立場とは決定的に矛盾しています。唯一の戦争被爆国の政府が、こうした議論にしがみついていることは、恥ずべきことではないでしょうか」と批判しました。

 志位氏は、「それでも安全保障のために必要だ」とする見方に対して答えたいとして、「一方が核を使用するならば、他方は核の報復でこたえます。その結果は、ニュークリア・ホロコースト――核による大虐殺です。『核抑止』は誰の安全も保障するものではありません」と指摘。「真剣に人類の安全保障を考えるならば、核兵器を禁止するしかありません。そのためには『核抑止』という間違った議論から抜け出さなければなりません」と強調しました。

 その上で、核兵器禁止条約は、核兵器の保有・使用を禁じるだけでなく、威嚇――核抑止を禁止していることに重要な意義があるとして、「人類はこの間違った議論を克服する大きな歩みを開始しています。日本政府が、『核抑止』論という間違った呪縛から抜け出して、核兵器禁止条約に参加することを強く求めます」と述べました。

 講演は、日本共産党のホームページで見ることができます。

「ウクライナ侵略と日本共産党の安全保障論」(講演骨子)

1、ウクライナ侵略と日本共産党の立場

対応の基準に国連憲章と国際法をおくことの重要性について

・プーチン政権の三つの無法――どういう形で戦争を終わらせるか

・ロシアとウクライナを同列に置く「どっちもどっち」論の立場はとらない

・「民主主義対専制主義」で世界を二分――解決の力も解決の方向も見えなくなる

核兵器問題――「核抑止」論を打ち破る論戦について

・「核兵器の使用を絶対に許すな」の声を、全世界から、被爆国日本から

・プーチン政権の登場で、「核抑止」論は、いよいよ無力となっている

・核兵器の非人道性の批判と、「核抑止」論は、決定的に矛盾している

綱領の世界論――危機は深刻だが、歴史は無駄に流れていない

・国連の現状をどうみるか――「国連は無力」という議論に対して

・2回にわたる国連総会決議――「世界の構造変化」の力がここにも示されている

・国連の民主的改革――国連総会により強い権限を与える方向での改革を

・「戦争のない世界」をめざす人類の歩みのなかで捉える

「どんな国であれ覇権主義を許さない」――日本共産党の歴史と綱領について

・「ロシアはもともと共産主義ではないか」――もともと社会主義・共産主義とは無縁

・ロシア覇権主義はどこから始まったか――プーチンはロシア帝国の末裔(まつえい)

・20年の綱領一部改定の意義――四つの覇権主義とたたかった歴史を踏まえて

2、危機に乗じた9条改憲を許さず、9条を生かした平和外交を

日本における現実の危険は何か――安保法制のもとでの「敵基地攻撃」

・自民党提言の危険(1)――「敵基地攻撃能力」の「保有」に踏み込んだこと

・自民党提言の危険(2)――安保法制のもとでの「敵基地攻撃」

・9条改憲は、この危険な道を自由に推進するためのもの

東アジアに平和をつくる日本共産党の「外交ビジョン」について

・ASEAN諸国との交流との体験を踏まえた提案

・「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)と、日本共産党の提案

・この構想の現実性と合理性について

・憲法9条がつくりだした「信頼力」を生かした外交で、東アジアに平和をつくりだす

3、安保条約と自衛隊に対する日本共産党の立場について

異常な対米従属をどのようにして打破していくか

・日米軍事同盟――他の軍事同盟には見られない特別の危険

・「二重の取り組み」(1)――安保条約の是非を超え、緊急の課題で共同する

・「二重の取り組み」(2)――安保条約廃棄の国民的多数派をつくる独自の努力

・それぞれを真剣に取り組んでこそ、相乗的にすすむ

自衛隊の段階的解消の方針について

・1994年の第20回大会決定の意義と限界

・自衛隊の段階的解消の方針について

・自衛隊の「活用」について――いくつかの疑問に答える

・9条を守り生かすことと、命と主権を守る政治の責任を果たすことを、統一的に追求