志位和夫 日本共産党

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演説・あいさつ

2022年4月22日(金)

志位さん、科学的社会主義を大いに語る(上)

学生オンラインゼミ 詳報


 日本民主青年同盟(民青)が17日に開催した「社会は変わるし、変えられる――志位さんと語る学生オンラインゼミ」第2弾のテーマは「科学的社会主義」。全国の学生から寄せられたさまざまな質問に答える形で、日本共産党の志位和夫委員長が2時間半にわたって縦横に語りました。2回に分けて紹介します。


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(写真)質問に答える志位和夫委員長。左は司会の中山歩美民青副委員長=17日、党本部

志位さんと「科学的社会主義」の出会いは?

 冒頭の質問は「志位さんと科学的社会主義との出会いは?」です。志位さんは、中学3年生のころに父親が買ってくれた、エンゲルスの著書『猿が人間になるにあたっての労働の役割』が初めて手にした科学的社会主義の古典だったとして、サルから人間への進化を「労働」と「言語」を媒介に解明した同著の中身を紹介(パネル1)。「当時は、マルクスもエンゲルスも『資本論』という経済学の大きな本を書いた革命家というイメージしかもっていませんでした。ところが自然科学の話が書いてある。人類の知識のこんな分野まで研究した人なのかと大きな驚きでした」と、当時の感動を語りました。

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パネル1

 さらに志位さんは、エンゲルスが同著を書いたのは1876年のことで、ダーウィンが進化論を人間の進化に全面的に適用した『人間の由来』を書いたわずか5年後だと指摘し、「当時は、サルと人間をつなぐ化石人類も、サルから人間に進化するメカニズムも明らかになっていませんでした。その条件のもとで科学的な解明に取り組んで人間進化論を書いたことは驚くべきことです」と語りました。

 志位さんは、「父には、私に科学的社会主義の本を読ませよう“作戦”があったと思います。父の“作戦”にまんまとはまって、この出会い以降、マルクス、エンゲルスの本を読むようになりました」と語りました。

マルクスは古い?今学ぶ意義は?

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パネル2

 つぎの質問は、「『科学的社会主義』と『マルクス主義』は違うのですか」「『マルクスは古い』と言われることもありますが、いま学ぶ意味は」でした。

 志位さんは、「私たちは『マルクス主義』ではなく、『科学的社会主義』と呼んでいます」と回答。その理由について、この理論の土台をつくり上げたのはマルクスとエンゲルスですが、2人が頭の中で考え出したものではなく、「人類のあらゆる価値ある知的達成を集大成した理論だからです」と説明。マルクスが膨大な書物から徹底して「抜粋ノート」をつくるという研究法を生涯にわたって貫いたと紹介。『資本論』準備のノートだけでもほぼ50冊にのぼることを示しました(パネル2)。さらに「時代とともに絶えず進歩、発展させていかなければならない理論」であることもその理由として示しました。

 「マルクスは古い?」「今学ぶ意義について?」という疑問について、志位さんは「21世紀に人類が直面している重大問題を解決するカギはマルクスにあります」とずばり。ドイツの代表的な博物館の一つ、「ドイツ歴史博物館」で今年2月から「カール・マルクスと資本主義」展が開催され、そのオープニングスピーチで、資本主義の矛盾として貧富の格差の拡大や気候危機が問題になるもと、「マルクス・リバイバルが見られる」「(各分野で)マルクスをめぐる議論と資本主義をめぐる議論が本流をなすようになっている」「資本主義のシステムと内的関係を根本から解明しようとした最初の人であるマルクスが社会的批判者として再び前面に出てきている」と語られたことを紹介しました。

科学的社会主義の「科学的」とは?

 続いて「科学的社会主義と言いますが、『科学的』とは何ですか?」との質問が。

 志位さんは、「科学的」とは一言で言えば、「事実から出発して法則を見いだす」ことだと指摘。あらゆる自然科学は、この立場に立っているとして、物理学者のニュートンは、惑星の運動の観測から導かれた事実から出発し「万有引力の法則」を発見したことを紹介。「空を飛べると思い込んで、2階から飛び降りたらけがをするように、『願望』から出発すれば失敗に終わります。科学的態度を社会の見方にも貫いているのが科学的社会主義です」と語りました。

 志位さんは、資本主義社会の害悪を解決しようと考えたサン・シモン、フーリエ、オーエンが最初の社会主義の担い手となったが、現代につながる協同組合や幼稚園などの業績を残しつつも、「『願望』=青写真をつくって社会に受け入れさせようとするやり方で、うまくいかなかった」と指摘しました。

 その上で志位さんは、「社会主義を『科学』にするためには、『願望』=『青写真』を押し付けるのでなく、『事実から出発して法則を見いだす』という姿勢で発展させなければなりません。それをやりぬいたのがマルクスとエンゲルスでした」と強調。社会主義を「科学」にしたマルクスの「二つの偉大な発見」――(1)唯物論の考え方を社会の見方にも発展させて、社会についての科学的な見方を明らかにした「史的唯物論」、(2)資本主義社会における搾取の仕組みを明らかにした「剰余価値」の理論について、そのあらましを語りました。

弁証法とは何か?

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パネル3

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パネル4

 「弁証法とは何ですか。志位さんは弁証法をどのように身につけたんですか」との質問に志位さんは、「弁証法」が古代ギリシャ哲学を起源にしていることを解き明かしつつ、「いろいろな論じ方があるが」と強調して、エンゲルスが、弁証法について(1)物事を、ばらばらではなく、連関の中で捉える、(2)物事を、不動の、固定したものとしてではなく、変化、運動、発展の中で捉える、(3)不動の対立や固定した境界線を認めず、物事の中にある対立した側面の全体を捉える――という三つの特徴をあげている(『空想から科学へ』)ことを紹介しました。

 その実例として志位さんは、日本を世界との「連関の中で捉える」と、「日本という国の本当の特徴がよく見えてくる」と説明しました。アメリカとの関係では、在日米軍が低空飛行訓練をはじめとする国内法が適用されない特権をもつなど、アメリカへの従属が大変深刻だと指摘。また、ヨーロッパとの関係でみると、非正規雇用の多さや最低賃金が低すぎるなど、「ルールなき資本主義」と言われる財界中心の政治のゆがみが浮き彫りになると指摘しました。(パネル3)

 また志位さんは、ロシアのウクライナ侵略に関わって「発展の中で捉える」ことの大切さを強調。「断面だけで捉えると19世紀の弱肉強食の世界に逆戻りしたように見えますが、世界の構造変化を踏まえた世界史の発展という大きなスケールで捉えると、戦争の違法化、核兵器の違法化という平和の流れが進んでいます」と語りました。(パネル4)

理系の勉強で科学的社会主義が役立つことは?

 「志位さんは大学で工学部だったと知りました。理系の勉強のなかで科学的社会主義が役立つことはありますか」との質問に志位さんは、「専攻は物性物理学でしたが、素粒子論や宇宙物理学が大好きでした」として、「物理学と方法」について学んだことを振り返りました。日本は多くのノーベル賞受賞者を出すなど理論物理学で輝かしい業績を上げているが、「日本の素粒子論の中に、科学的方法――唯物論と弁証法を導きの糸として、自覚的に取り組んできた流れがあります」と紹介しました。

 エンゲルスが、「自然における階層性」という捉え方で、物質はミクロに向けてもマクロに向けても無限に続く段階的な構造を持ち、それぞれの階層は相互に関連し、移行しあっているという弁証法的自然観を明らかにしたことを紹介。志位さんは、模式図で「―宇宙―銀河―天体―物体―分子―原子―素粒子―」と示し、それぞれの段階、階層で物質の存在の仕方や物理法則が異なっていると説明しました。

 この自然観を意識的に研究に活用したのが日本の物理学者・坂田昌一さんで、益川敏英さんはその薫陶を受けた人であると紹介。益川さんが「『なぜ起きているのか』と聞かれると、もう一段深いところから説明しなければ答えようがない…そこから坂田さんのいう『無限の階層性』が出てくる」と語ったことを紹介しました。

 坂田昌一さんが提唱した「複合モデル」の考え方は、その後、「クォーク」の発見によって、その正しさが証明されました。志位さんは、ノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎さんが、「現在の素粒子論の発展は坂田博士の筋書き通りになっている」とのべていることを紹介しました。

『資本論』は何がすごい?

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パネル5

 「マルクスといえば『資本論』が有名ですが、『資本論』は何がすごいんですか」との質問が。

 志位さんは、「すごいことだらけですが、資本主義を人類が到達した最後の社会と見ずに、歴史的な生成・発展・没落の中で捉えた――その法則を明らかにしたところに『資本論』の一番のすごさがあると思います」と答えました。志位さんは、マルクスが『資本論』の「あと書き」で弁証法について語っている一文を紹介(パネル5)。マルクスが資本主義社会を「肯定的理解」「必然的没落の理解」の両面から捉えていたことを強調しました。

 志位さんは、スミスやリカードゥなどマルクス以前の古典派経済学は、科学の力で資本主義に切り込んだが、資本主義社会を「人類社会の絶対的形態――いつまでも変わることなく続く永久的な形態」という立場に立ったところに重大な弱点があったと指摘。「『資本論』は全く違います。資本主義社会を絶対化せず、人類の歴史のなかの一段階と捉えています」と語りました。

 志位さんは、『資本論』を読むうえでの注目点として、マルクスが「過去の社会」「未来社会(社会主義・共産主義)」との比較を通じて資本主義社会の特徴を明らかにしていることをあげ、「『資本論』というと、資本主義社会の研究だけをやった本だと思われるかもしれませんが、『資本論』には人類の歴史の全体が出てきます」と強調しました。

社会主義・共産主義は自由がない?

 旧ソ連や中国などは、自由がない、表現規制などイメージが悪いとして、「社会主義や共産主義の理論にはそういった問題があるのか?」との疑問が出されました。

 志位さんは、「もともとの理論は、問題があるどころか正反対です」とのべ、プロイセンの検閲制度に反対したマルクスの初期の論文も紹介しながら、「マルクスとエンゲルスは、出版・結社・集会の自由のためのたたかいを労働者の運動の中心課題として一貫して重視してきました」と強調。マルクスとエンゲルスが人民主権の民主共和制の旗を高く掲げ、民主主義を壊す攻撃には断固反撃をくわえたとして、「『自由がない』『独裁と専制』などは科学的社会主義とは無縁のものです」と語りました。

 その上で、なぜ旧ソ連や中国では自由がない制度になってしまったかについても回答。志位さんは、「出発点の遅れ」「指導者の誤り」の問題をあげ、ロシア革命前の帝政ロシアにも、中国革命前の中国にもまともな議会が存在しなかったことや、スターリンや毛沢東のもとで、「民主主義に逆行する深刻な誤り」が起きたことなどを指摘しました。一方で、日本は高度に発達した資本主義国であり、「日本国憲法のもとで、75年間にわたり、国民主権、基本的人権、議会制民主主義の制度を国民は経験しています」として、「これを土台にして社会主義に進むわけです。自由がない制度への逆行は起こりえないというのは、私たちの党綱領の約束であるとともに、歴史の必然です」と話しました。

社会主義・共産主義のイメージは?

 「『社会主義』『共産主義』のイメージがわきません。資本主義のなかにヒントがありますか?」「社会主義はいいが共産主義はいやだという人もいます。違いを教えてください」との質問がありました。

 志位さんは、社会主義と共産主義は同じ意味で使っており、マルクスもエンゲルスも同じ意味で使ったことを紹介し、旧ソ連社会や中国の間違った行動は社会主義・共産主義とは無縁のものだと強調しました。

 社会主義への展望に関して、いきなり社会主義にいこうということではなく、アメリカいいなり、財界中心という二つのゆがみをただして「国民が主人公」の日本をつくることが直面する課題だと指摘。その先の社会主義についても国民多数の合意で進むべきだと考えており、「今から青写真を描けないし描くべきではありません」とのべました。

 その上で、志位さんは、「ただ、資本主義のなかにも社会主義のヒントはあります」と語り、「発達した資本主義のもとで社会主義・共産主義に引き継がれ発展させられる要素が豊かにつくり出されます」とのべ、党綱領に五つの要素――(1)高度な生産力(2)経済を社会的に規制・管理するしくみ(3)国民の生活と権利を守るルール(4)自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験(5)人間の豊かな個性――を書き込んだことを紹介。私たちの目指す未来社会のイメージがつかめるのではと語りました。

 これらの要素のうちの多くは「たたかってこそつくられます。今のたたかいは未来社会につながっています」とのべました。

 (つづく)