志位和夫 日本共産党

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演説・あいさつ

2022年3月25日(金)

ロシアのウクライナ侵略と日本共産党の立場

志位委員長の訴えから


 日本共産党の志位和夫委員長が23日の千葉市の演説会で、ロシアによるウクライナ侵略、憲法9条改憲など危機を利用した危険な動きへの批判、日本共産党の「外交ビジョン」について語った部分を紹介します。


ロシア・プーチン政権のウクライナ侵略――三つの無法を糾弾する

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(写真)訴える志位和夫委員長=23日、千葉市中央区

 ロシア・プーチン政権によるウクライナ侵略が始まって1カ月になります。まず、私は、みなさんとともに、ロシアの蛮行に対して強い抗議を突きつけるとともに、ロシア軍の軍事行動の即時中止を求めるものであります。(拍手)

 プーチン政権は三つの無法行為をやっています。

 第一は、武力の行使を禁止した国連憲章に反する侵略だということです。

 第二に、ロシア軍は、原発を攻撃し、病院を攻撃し、民間人を無差別に攻撃しています。マリウポリなど各地で深刻な人道危機が起こっています。これは、どういう性格の戦争であれ、どんな国であれ、守らなければならないジュネーブ条約など国際人道法に違反する戦争犯罪と言わなければなりません。

 そして第三に、プーチン大統領は「核兵器大国」ということを自慢して、核兵器の先制使用の恫喝(どうかつ)を世界に対して行っています。昨日、ロシア大統領府のペスコフ報道官は、ロシアが「存亡の危機」に陥ったら、核兵器使用もありうると言いました。絶対に許すわけにいきません。「核兵器を使うな」という声を、被爆国・日本から急いであげていこうではありませんか。

「核抑止」はいよいよ無力に――危険をなくす道は核兵器廃絶しかない

 みなさん。いま世界が目にしているのは、核兵器という兵器を人間に持たせることがどんなに危険か、核兵器というのは人間に持たせてはならない「絶対悪」の兵器だということではないでしょうか。

 核兵器保有国が核を持つ最大の理屈にしてきたのは、“核を持てば「核抑止」が働いて戦争を止められる”という理屈でした。しかし、プーチン大統領のような先制核使用を公言する、自分の国の国民が報復によってどんなに犠牲になろうと核兵器を使うことをためらわない指導者が出てくるもとで、「核抑止」はいよいよ無力だということが、世界の目の前で明らかになっているのではないでしょうか。

 ならばみなさん。この危険を打開する道――核兵器を使用させない道はただ一つ、全世界から核兵器をなくすことではないですか(「そうだ」の声、拍手)。そのことがいよいよ急務だということを訴えたいと思います。

経済制裁とともに非軍事の人道支援を――ウクライナ支援募金にご協力を

 みなさん。国際社会がどう対応するか。もちろん国際社会が協調しての効果的な経済制裁を続けることが必要です。同時に、日本の支援としては、非軍事の人道支援が大切です。日本共産党としてはウクライナ支援の募金運動に取り組んでまいりました。今日までに6846万円を、お寄せいただいたことをご報告したいと思います。(拍手)

 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)とユニセフ(国連児童基金)に、第1次分をお渡しいたしましたが、そのときに私は、現地のお話をうかがいまして、350万人を超える国外への避難民の方々のほとんどが女性と子どもだということでした。しかも家族がバラバラにされる、そのことへの深い心の痛みをかかえている、心のケアも含めた国際社会の支援が必要ですという訴えでありました。

 日本国民ができる支援で一番役にたつものは何ですかと聞きましたら、「現金が一番役にたちます」との答えでした。ウクライナ支援募金に引き続き取り組みますので、ご協力をよろしくお願いいたします。(拍手)

危機は深刻だが歴史は無駄に流れていない――国際世論の包囲で侵略を止めよう

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(写真)志位和夫委員長の訴えに拍手をおくる人たち=23日、千葉市中央区

 どうやって侵略を止めるか。何よりも重要なのは、国際世論です。つまり世界の多くの国ぐにの政府と市民社会が、「ロシアは侵略をやめろ」「国連憲章をまもれ」「国際人道法をまもれ」――この一点で声をあげ、力を合わせることこそ、侵略を止める一番の力になるということを、私は訴えたいのであります。(拍手)

 あのプーチン大統領に、国際世論なんて効き目がないのではないかという声もあるかもしれません。しかし、彼が一番恐れているのは世論の力なのです。その証拠に、プーチン大統領は、“虚偽の報道をおこなったメディアを厳罰に処す”というとんでもない法律をつくりました。こんな法律をつくったら自分で自分を罰さなければならなくなりますが、こういうものをつくるということは、彼がいかに世界の世論を恐れ、国内の世論を恐れているかを示すものではないでしょうか。(拍手)

 そして私は、訴えたい。危機は深刻ですが、歴史は無駄に流れていないということを。この間、国連総会で、ロシアの侵略を国連憲章違反と糾弾し、ロシア軍の即時・無条件撤退を求める決議が、国連加盟国193カ国のうち7割をこえる141の国の賛成で採択されました。これまで国連総会で、アメリカ、旧ソ連、ロシアの行った侵略に対する非難決議があがったのはこれで6例目になります(注)。六つのケースのなかでも141カ国という数は史上最高の数となったということを強調したいと思います。

 歴史は無駄に流れていません。ジグザグはあっても平和を求める声は世界で着実に広がっている。ここに確信をもって、国際世論を広げに広げ、プーチン大統領を包囲し、侵略を止めようではありませんか。(拍手)

 (注)米ソ・ロに対して国連総会が行った非難決議は、1979年のソ連のアフガニスタン侵略、83年の米国のグレナダ侵略、86年の米国のリビア攻撃、89年の米国のパナマ侵略、2014年のロシアのクリミア併合、22年のロシアのウクライナ侵略の6例になります。

ロシア覇権主義と正面からたたかってきた党、100年間、反戦平和貫く党の躍進を

 この問題で、国民のみなさんとお話ししておりますと、「でもロシアって共産党じゃないんですか」――こういう声も聞かれるといいます。

 とんでもありません。

 だいたいソ連共産党を名乗る党が解散してから、もう31年もたっています。いまのロシアの政権は、「共産党」とも「共産主義」ともまったく無関係です。

 そして旧ソ連の時代に、ソ連が行った、1968年のチェコスロバキアへの侵略、79年のアフガニスタンへの侵略などに対して、社会主義とは縁もゆかりもない覇権主義だと、断固反対を貫いた自主独立の党が日本共産党であります。(拍手)

 ソ連の党は、私たち日本共産党に対して、「いいなりの党になれ」という乱暴な干渉の攻撃をかけてきましたけれども、すべてをはねのけて相手に非を認めさせた、そういう党であります。ですから1991年にソ連共産党が解散したときには、「覇権主義の巨悪の党がなくなったことに、もろ手をあげて歓迎します」という声明を出したのが、日本共産党であります。(拍手)

 日ロ領土問題が大きな問題になっていますけれども、この問題の根っこには、第2次世界大戦の戦後処理の不公正という問題があります。つまり、“戦争に勝った国も領土を拡大しない”、これが戦後処理の大原則だったのですが、この原則に反してスターリンが覇権主義をふるって千島列島を横取りした。ここに一番の問題があるのです。この不公正を大本からただして全千島列島の返還をという、正義と道理にたった主張を堂々としているのが日本共産党だということもお伝えしたいと思います。(拍手)

 私たちは、そういう歴史的な経験をすべてふまえまして、2年前の党綱領一部改定のさいにこういう一文を綱領に書き込みました。

 「どんな国であれ覇権主義的な干渉、戦争、抑圧、支配を許さず、平和の国際秩序を築く」

 「どんな国であれ」というところが大事なところです。世界で覇権をふるっているのはアメリカだけではありません。中国もロシアもふるっている。どんな国であれ覇権主義を許さないという立場を貫く党が日本共産党です。

 私たちは、今年で党をつくって100年になりますが、100年にわたって反戦平和を貫いてきた日本共産党を、どうか世界平和のために大きく伸ばしてください。よろしくお願いいたします。(大きな拍手)

 志位氏は、この後、参院選で問われるものは何かと問いかけ、「暮らしがかかった選挙」であることを強調。「新自由主義を転換して、『やさしく強い経済』をつくろう」とよびかけ、日本共産党の経済政策を縦横に語りました。そのうえで次のように続けました。

「軍事対軍事」が一番危険――憲法9条を生かした外交戦略こそ必要

 もう一つ、今度の参議院選挙は平和がかかった選挙になります。日本共産党は、戦争する国づくりにストップ、憲法9条を生かした外交の力で平和な東アジアをつくろう――このことを訴えてたたかいます。(拍手)

 いまのロシアの無法などを見て、「日本の平和は大丈夫か」と、ご心配の方も少なくないのではないでしょうか。ただみなさん、相手が「軍事、核兵器、力の論理」できた時に、こちらも「軍事、核兵器、力の論理」で対抗したらどうなるでしょうか。「軍事対軍事」の悪循環が起こってしまいます。果てしのないエスカレートに陥ってしまいます。それが一番危険ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)

 私は、そういう道ではなくて、いまこそ外交の出番だと思います。東アジアを平和な地域にしていくための憲法9条を生かした外交戦略こそが必要ではないでしょうか。(大きな拍手)

危機に乗じて9条を改定し、「軍事対軍事」の危険な道に引き込む動きを断固止めよう

 ところが、岸田政権の対応というのは、肝心の平和をつくる外交戦略がありません。軍事一辺倒になっている。ここに問題があります。

 岸田政権は、「敵基地攻撃能力の保有検討」と言い出しました。どういうことでしょうか。岸防衛大臣が国会で答弁しました。相手国の領空に入って軍事拠点を爆撃することも「排除しない」と言ったんです。相手国の領空で、爆弾を落とす。プーチン大統領がやっていることじゃないですか。これを戦争と言わずして何というのか。戦争放棄をうたった憲法9条違反であることは明瞭じゃないですか。(「そうだ」の声、拍手)

 岸田首相は、先日の自民党大会でこうも言いました。“憲法改正にいまこそ取り組まなければならない。そのための力を得るたたかいが参院選挙だ”と。

 みなさん。危機に乗じて憲法9条を改定し、日本を「軍事対軍事」の危険な道に引き込む動きを断固として止めようではありませんか。(大きな拍手)

維新の会の「核共有」提言――「日本国民を核戦争に導く危険きわまりない提言」

 この点で、もう一つ言いたいのは、とくに悪質なのが維新の会だということです。アメリカと日本で核兵器を共有する議論を始めようという「提言」を出しました。

 これに対して日本被団協のみなさんが、「日本国民を核戦争に導き、命を奪い国土を廃墟(はいきょ)と化す危険きわまりない提言」だと批判し、その撤回を求めました。

 みなさん。核の脅威に対して核で対抗する。結局は、プーチン大統領と同じ立場に身を置くものではないですか。世界中の国ぐにがそんな対応をしたら、世界はどうなるでしょうか。まさに人類を破滅の淵に追いやることになるではありませんか。そういうことを平気で「提言」するというのは、私は、被爆国の政党の資格がないとはっきり言いたいと思います。(大きな拍手)

 核兵器を使用させない唯一の保障は、全世界から核兵器をなくすことです(拍手)。核兵器禁止条約への参加こそ、日本が選択すべき道だということを、私は、強く訴えたいと思います。(大きな拍手)

東アジアを平和と協力の地域にしていくための日本共産党の「外交ビジョン」

 日本共産党は東アジアに平和をつくる「外交ビジョン」を提案しています。

 私たちが、大きな注目を寄せているのはASEAN――東南アジア諸国連合の取り組みです。ASEANは、東南アジア友好協力条約(TAC)という条約を結びまして、あらゆる問題を平和的な話し合いで解決する努力を何十年も積み重ねてきました。

 私は、インドネシアのジャカルタにあるASEAN事務局を訪問して驚いたことがあります。私が「ASEANの成功の秘訣(ひけつ)は何ですか」と聞きましたところ、「徹底した話し合いです。域内で年間1000回もの会合をやっています」という答えが返ってきました。年間1000回というと、1日3~4回になります。それだけの話し合いをやっている。年がら年中やっている。そうしますとお互いのことがよく分かりますし、信頼関係もできて、いろんなもめ事が起きても絶対に戦争にならないのがASEANです。

 ASEANの立派なところは、そういう地域の平和共同体をつくっただけじゃない。それをASEANの域外に広げる努力をしているということにあります。

 ASEANがいま一番力を入れているのは、東アジアサミット(EAS)という枠組みです。東アジアサミットというのは、ASEAN10カ国、プラス日本、米国、中国など8カ国、合計18カ国でつくっている枠組みですが、毎年、首脳会談をやっています。ASEANは、この東アジアサミットを強化していって、ゆくゆくは東アジア規模の友好協力条約を展望しよう。つまり東アジア全体をASEANのような平和な地域にしよう。これがASEANが追求している大展望ですが、すばらしいじゃないですか。

 みなさん。いま日本政府がやるべきは、「敵基地攻撃」だの、「9条改定」だのという物騒なことでなく、ASEANと協力し、東アジアサミットを活用・強化して、東アジアを平和と協力の地域にしていく、憲法9条を生かした平和外交ではないでしょうか。(拍手)

 どうか、東アジアに平和をつくる責任ある「外交ビジョン」――安全保障論を提唱している日本共産党を伸ばしてください。よろしくお願いします。(大きな拍手)