志位和夫 日本共産党

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国会質問

2022年1月21日(金)

命・経済・平和守る提案 岸田政権の姿勢問う

志位委員長の代表質問

衆院本会議


 日本共産党の志位和夫委員長は20日の衆院本会議で代表質問を行い、新型コロナのオミクロン株から国民の命を守るための緊急提案、“やさしく強い経済”への大改革、東アジアを平和と協力の地域にする平和外交などを示し、財界応援、アメリカ言いなりの岸田政権の姿勢をただしました。


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(写真)代表質問する志位和夫委員長=20日、衆院本会議

■コロナ対策 ただすべき四つの問題

 志位氏は「新型コロナのオミクロン株から国民の命を守ることは最優先の課題だ」と強調。緊急にただすべき四つの問題点を提起しました。

 第一は、ワクチン3回目接種の遅れです。追加接種を終えたのは全国民のわずか1・3%しかありません。志位氏は「OECD(経済協力開発機構)加盟の36カ国で日本の3回目接種はダントツ最下位だ」と批判。遅れた原因を明らかにし、迅速接種のために政府の責任を果たすことを求めました。

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 第二は、PCR検査体制の遅れです。志位氏は、急速な感染拡大による医療と介護の崩壊を防ぐうえでも、高齢者施設や医療機関などの頻回検査が急務だと強調。ところが実施判断は「自治体まかせとなっている」と批判し、国が主導して検査体制の抜本的拡充をするよう求めました。

 第三は、医療と保健所体制の問題です。志位氏は、昨年夏の「第5波」のように「自宅放置」で亡くなる人を出してはならないと強調。岸田首相が発熱外来への補助金や診療報酬の加算を昨年中で打ち切ったと批判し、医療機関の支援強化を迫りました。

 志位氏は、来年度予算案に保健所の人員増に向けた施策が盛り込まれていないと指摘。東京都の墨田区保健所が定数の10倍以上で感染症対策の体制をつくり、重症・死亡事例を数カ月にわたってゼロに抑えたと紹介し、「体制強化をはかることは本来、国の責任だ」とただしました。

 第四は、沖縄をはじめとする米軍基地が水際対策の「大穴」になっていることです。志位氏は、昨年12月に玉城デニー沖縄県知事が米軍の入国停止・外出禁止を求めるよう政府に要求していたにもかかわらず、対応をおこたった責任は重大だと批判。「問題の根本には、米軍に治外法権的な特権を保障している日米地位協定がある」と指摘し、抜本改正に踏み切るよう迫りました。

 岸田首相は、ワクチン接種やPCR検査の遅れについてまともに答えず、「米軍を特別扱いしているという指摘はあたらない」と開き直り、地位協定を見直さない考えも示しました。

■新自由主義からの転換 “やさしく強い経済”へ

財界応援から決別を

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 志位氏は、岸田首相が施政方針演説で述べた「新自由主義の弊害」について、首相がどう認識しているか具体的にただしました。

 新自由主義の「自由」が誰にとっての「自由」か。志位氏は「国民にとっての『自由』ではなく、大企業のもうけの『自由』だ」として、「そのために邪魔になるものは全て取り払う。国民には『自己責任』を押し付け、『弱肉強食』を強いる。ここに新自由主義の本質がある」と迫りました。

 さらに、岸田首相が「新自由主義」の「弊害」をどう認識しているかです。志位氏は、新自由主義が「“強い経済”をつくるといううたい文句とは反対に、日本経済を“もろく弱い経済”にした」として三つの角度で認識をただしました。

 第1に「賃金が上がらない国」です。1人当たりの実質賃金がピークの1997~2020年に64万円減り、OECD加盟国で比較可能な22カ国のうち日本の賃金の伸びが世界最低になりました。

 第2に「成長できない国」です。13~20年の7年間で名目GDP(国内総生産)の伸びは米国25%、ユーロ圏14%に対し、日本はわずか6%です。

 第3に「競争力の弱い国」です。スイスのシンクタンク・IMDが発表した各国の競争力ランキングで、日本は90年代初めの世界1位から直近で31位まで落ち込みました。

 志位氏は、日本経済を“もろく弱い経済”にしてしまった責任が「大企業の利益を最大にするために、財界の要求にこたえて、人件費を限りなく削減していくことを応援してきた歴代自民党政権にある」と批判。(1)労働法制の規制緩和(2)社会保障費の自然増削減路線(3)大企業と富裕層への減税と一体の消費税の連続増税―の3点を指摘し、歴代自民党政権の財界応援政治と決別し、転換する意思を迫りました。

 岸田首相は具体的指摘には答えず、「財界の応援との指摘は当たらない」と強弁。答弁不能となりました。

共産党の五つの提案

 志位氏は、新自由主義を転換し、“やさしく強い経済”への大改革を行うため、五つの提案を示しました。

 第1は、政治の責任による「賃金が上がる国」の実現です。志位氏は、人間らしい雇用のルールの策定や最低賃金の引き上げの実現だけで平均賃金を1997年のピークに戻すことができるとの民間シンクタンクの試算を紹介しました。

 第2に、社会保障の削減から拡充への転換です。志位氏は、急性期病床20万床の削減計画の撤回、75歳以上の医療費2倍化の中止、年金削減の中止を求めました。

 第3に、富裕層と大企業への応分負担と消費税5%への減税です。志位氏は、世界62カ国で実施・計画されている消費税減税こそ、コロナから暮らしを守り、経済を立て直す決定打だと強調し、インボイス(適格請求書)制度の中止を求めました。

 第4に、気候危機打開の本気の取り組みです。志位氏は、日本自動車工業会が、火力発電偏重が是正されない場合、日本の自動車の輸出ができなくなり、約100万人の雇用喪失と26兆円に及ぶ経済損失の可能性を示したと紹介しました。

 第5は、ジェンダー平等の視点を貫くことです。志位氏は、12年連続でジェンダー平等世界一のアイスランドの首相が、大企業に男女同一賃金の証明を義務づけることなどに取り組み、経済を強くする「副産物」が生まれたと述べたことを紹介。日本でも企業への実態公表の義務づけを迫りました。

 岸田首相は、気候危機打開に関わる産業界の危機感について「否定できない状況だ。日本にとって大きな損失で、何としても避けなければならない」と述べざるを得ない一方、具体策は述べませんでした。

■「戦争する国」づくりやめ 東アジアの平和外交を

 米中対立が強まるもと、日本の進路が問われています。志位氏は、岸田首相が敵基地攻撃能力の保有に踏み出そうとしていることは「極めて重大だ」と指摘。中国の東シナ海や南シナ海での覇権主義の行動に対しては、軍事的対応では破局的事態を招きかねないとしたうえで、「国連憲章と国際法に基づいた冷静な外交的批判が何よりも大切だ」と強調しました。

 そのうえで志位氏は、昨年11月に安倍晋三元首相が敵基地攻撃能力について、「敵基地だけに限定せず、『抑止力』として相手をせん滅するような打撃力をもたなければ日米同盟は成り立たない」という趣旨の発言をしたことを示し、「いざという時は相手国をせん滅する全面戦争を行う、それができる軍事力を持てということだ」と指摘。「日本国憲法とは絶対に相いれない」として、「『打撃力』という議論を拒否できるか」と迫りました。

 岸田首相は安倍元首相の発言について「政府としてコメントすることは控える」として否定しませんでした。

 志位氏は、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国+日米中を含む8カ国で構成される東アジアサミット(EAS)では、毎年首脳会議を開き、地域の平和の枠組みが発展していることを紹介。2019年に採択された「ASEANインド太平洋構想」は、東アジア全体を「対抗でなく対話と協力の地域」にし、東アジア規模の友好協力条約を目指すことが提唱されていることをあげ、「いま日本がやるべきは、ASEAN諸国と手を携え、平和の枠組みを活用・発展させて、東アジアを平和と協力の地域にしていくための、憲法9条を生かした平和外交だ」と訴えました。

 EASについて岸田首相は、重要な会議だとして「今後ともしっかりと活用していく」と述べました。

■本土復帰50年の沖縄 普天間無条件返還こそ

 本土復帰50年を迎える沖縄の基地問題について志位氏は、日米両政府が96年に普天間基地の全面返還に合意してから25年以上が経過した今も、いまだに返還が実現しない根本的な原因をただしました。

 志位氏は、95年の米兵による少女暴行事件への島ぐるみの怒りに押され、普天間基地の全面返還合意が交わされたにもかかわらず県内の新基地建設を条件としたとして、「少女の人権を奪っておいて普天間(基地)を返してほしければ新しい基地をよこせ。こんな理不尽な要求を沖縄県民が受け入れるはずがない」と厳しく批判。普天間基地の無条件返還を求める米国との交渉と、軟弱地盤の存在で破綻した辺野古新基地建設の中止を求めました。

 岸田首相は「辺野古移設が唯一の解決策だ。この方針に基づき着実に工事を進める」と述べました。