志位和夫 日本共産党

力をあわせて一緒に政治を変えましょう

インタビュー・対談

2022年1月9日(日)

日曜版新年合併号 2022新春対談 再エネでこそ未来

日本共産党委員長 志位和夫さん

小田原かなごてファーム代表 小山田大和さん


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撮影・野間あきら記者

 神奈川県小田原市。酒匂(さかわ)川沿いに広がる農地の一画に、青く澄んだ空に向かって太陽光パネルが屋根のように並び立っています。

 「地面に届く光は半分ぐらいになりますか」。パネルの下で栽培されている大根や春菊を見回しながら、日本共産党の志位和夫委員長が熱心に質問し、メモをとります。

 「3、4割を遮光する設計になっています。それぐらいだと生育に影響はありません」。そう語るのは志位さんの視察を案内する小山田大和さん(42)=合同会社小田原かなごてファーム代表=。営農しながら農地を発電にも活用するソーラーシェアリングに取り組む起業家です。「最近は光の照度が強すぎて逆に枯れるので、パネルで遮光できる」

 志位さんが訪ねた施設は広さ約1700平方メートル。農作物をつくりながら、年間120万円程度の売電収入があるといいます。小山田さんは耕作放棄地を使ったソーラーシェアリングを4カ所に設置。農作物と電気の地産地消を実践しています。

 その小山田さんが高く評価するのが、日本共産党が2021年に発表した「気候危機を打開する日本共産党の2030戦略」です。「ソーラーシェアリングがしっかり書き込まれていた。『2030戦略』をやれば日本が変わる。素晴らしいできです。共産党を応援する大義名分が立ちました」

 父親が元警察官で、自らも「保守」を自任する小山田さん。昨年の総選挙で志位さんと並んで街頭で共産党への支持を訴えました。

 2人は真っ白な富士山を横目に車を走らせ、一路、ミカン畑へ。小山田さんは耕作放棄地だったミカン畑を再生し、ジュースに加工する事業にも取り組んでいます。共感する多くの若者がボランティアで集まってくるといいます。この日も若者や大学生ら約50人が、にぎやかにミカンを収穫。志位さんと親しく言葉を交わしました。

 「エネルギーの転換は『革命』と同じ。社会を変えることだ」と語る小山田さん。志位さんにエールを送りました。「今の若い人たちに共産党アレルギーはない。気候危機やジェンダー問題で共産党と新しいつながりができる萌芽も感じる。ブレずに政策を深化させていってほしい」

 2人の新春対談。気候危機打開から野党共闘まで本音で語り合い、希望あふれる未来が見えてきました。

再エネ 経済も環境も大きな可能性

小山田 長くやればちゃんと利益出る

志位 政治がイニシアチブの発揮を

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しい・かずお=1954年千葉県生まれ。1990年に書記局長、93年衆院選で初当選(衆院議員10期目)、2000年から幹部会委員長。著書に『改定綱領が開いた「新たな視野」』、『綱領教室』全3巻(いずれも新日本出版社)など

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おやまだ・やまと=1979年神奈川県生まれ。合同会社「小田原かなごてファーム」代表。小田原で農業と自然エネルギーを組み合わせたソーラーシェアリングや、ミカン畑再生など地域活性化にとりくむ。早稲田大学招聘(しょうへい)研究員

 志位 小山田さんが再生可能エネルギーに取り組んだきっかけは何ですか。

 小山田 やっぱり東日本大震災と東京電力福島第1原発事故です。それまで原発に対して賛成も反対も何にも考えていませんでした。事故で大変なことが起きたとわかって“原発に頼らない社会”をつくり、次の世代に引き継ぐことが事故を経験した世代の責任ではないかと思ったんです。

 原発がなくなれば経済がダメになる、雇用がなくなる、電力が不安定になると政府はいいます。しかし、本格的に自然エネルギーに取り組むことでその不安を一つひとつ解決していくことは可能。原発に頼らない方向を、ぼくが実践で示していこうと考えたんです。

 志位 ソーラーシェアリングの現場でお話をうかがっていたら、小山田さんに案内していただいたソーラー発電の初期投資は1600万円で、うち600万円が国の補助金ということでした。そうすると実際の投資は1000万円。毎年120万円ずつの売電収入が入ってくれば、約10年でペイ(採算がとれる)できるわけですよね。

 太陽光パネルの耐用年数は「40年」とおっしゃった。そうであれば、11年目からは収入だけになるわけです。再エネ事業は中長期で見れば、うんと利益が出るんですね。ここにきちんと投資をして、自分たちの暮らしも、地域経済もよくする。そして地球環境をよくしていく流れになっていけば、すごく大きな可能性があるなと思いました。

 小山田 経営者の端くれからみて、どう考えても再生可能エネルギーの方に経済合理性があるんです。しかも農業をはじめとした地域の課題を解決する道具にもなる。目先の数年では投資の回収はできないけど、約10年で回収できるんです。そこに投資するよう企業の意識も変わるべきです。そうすれば再生可能エネルギーはどんどん広がります。

 志位 日本のビッグビジネス(巨大企業)に弱いのはその視点だと思いますね。

 イギリスに英国産業連盟という日本の経団連にあたる組織があります。そこに日本共産党の笠井亮衆院議員たちが2008年に懇談に行きました。話を聞くと政府と経済界が一体になって温室効果ガス削減に全力をあげていました。英国産業連盟の担当者は“いま投資をすれば先々、利益がうんと返ってくる。そして地球の未来を守れる。日本もやるべきだ。経団連を説得しにいきたい”って語ったそうなんです。(笑い)

 しかし日本の財界の主流は「短期の利益さえ上がればいい」「株価さえ上がればいい」でやっていて中長期で先を見る目がない。だから、結局、原発や石炭火力から抜け出せません。これでは、世界から置いてきぼりです。やっぱりここは政治がイニシアチブを発揮して変えていかなければいけないと思います。

 小山田 ほんとにそう思います。あまりお好きじゃないかもしれませんけれども(笑い)、僕は小泉(純一郎)元首相と脱原発運動をやっているんです。

 志位 小泉さんとは総理時代には対立していたけれど、原発反対は本気ですね。最近、音楽対談をしたこともあったんです。(笑い)

 小山田 その小泉さんが「政治が決断すれば『原発ゼロ』はすぐ実現できる」っていっています。企業は原発も石炭火力も「使えるうちは使いたい」って思うわけで、政治が「やめる」と決断すれば新しい投資をしていくんです。そうなれば再生可能エネルギーは勝手に広がっていきます。

 だいたい、岸田(文雄)首相は「新しい資本主義」っていうなら、そういうことをやってください。(笑い)

 自然エネルギーは地域経済を活性化させます。共産党の「気候危機を打開する2030戦略」にも“約250万人程度の雇用が生まれる”と書いてありました。単に気候危機をあおるだけでなく、その中から新しい経済をつくっていけることを、もっと提案していけば共感する動きが社会に絶対に出てくると思います。

志位危機感を共有しつつ未来への希望を語る

 志位 私は、気候危機の問題で国民的なウエーブをつくるうえで、二つポイントがあると思っています。

 一つは、「危機感の共有」です。例えばカーボンバジェット―温暖化を一定レベルに抑える場合に想定される温室効果ガスの累積排出量の上限値―からみると、これから排出できる炭素の量は、全世界で4000億トンしかない。いま年間330億トン出していますから、このままのペースでは10年ちょっとしかもたないんですね。日本の場合、人口比でみれば65億トン。いま年間11億トン出していますから、いまのままでは6年しか持たないことになります。

 石炭火力の反対運動をしている横須賀市の若い女性が言っていました。“カーボンバジェットがあと6年分しかないことを20歳の時に知った。私の人生は26歳で終わってしまうと思ったら、涙が止まらなかった”と。それくらいの危機感と切迫感をもっているんですね。“危機感を共有して緊急の行動に立ち上がろう”―こういう姿勢がとても大事だと思いました。

 もう一つは、「希望」です。小山田さんが紹介してくださったように「2030戦略」では30年度までにCO2を最大60%削減(10年度比)する、そのために再エネと省エネを大規模に推進すれば、254万人雇用が増え、GDP(国内総生産)を205兆円押し上げると提案しています。

 こちらの道のほうが、雇用でも、経済でも、希望が出てくるじゃないですか。そして実際に、小山田さんが実践している道ではないですか。「危機感の共有」と「希望」が大事だと思うんです。

 小山田 耕作放棄地や人口減少…。たくさんある地域課題の解決方法の一つとして、再生可能エネルギー事業をうまく入れ込むという視点が全国的にも、地域の経済界にもほとんどないのが残念です。

 いま対談しているこの農家カフェの電気は先ほど一緒に見た4キロ離れたソーラーパネルから送電線を使って送られています。この自家消費モデルは日本初。新しい技術を使えばこういうことがどんどんできるんです。

小山田“眠っている農地”も宝の山に変えられる

 志位 小山田さんの取り組みで印象深いのは、地域に眠っているポテンシャル(可能性)を引き出していこうという考えです。

 眠っているものすべてを無駄にしないで、役立てていく。ソーラーシェアリングを導入すれば、耕作放棄地からまったく違った価値が生まれる。小山田さんのように、耕作放棄地だったミカン畑を再生させ、摘果したミカンも一つもムダにしないでおいしいジュースやお酒もつくることができる。資本主義のもとで大量生産・大量消費・大量廃棄をずっとやってきたけど、それではもう地球がもたなくなってきた。そのなかで“地域に眠る可能性を引き出し、眠っているものを絶対に無駄にしない”という考え方がとてもいいなと思いました。

 小山田 ありがとうございます。僕は、耕作放棄地を“お昼寝している”ととらえています。“お昼寝していた”土地もソーラーシェアリングという新しい技術で“宝の山”に生まれ変わるんです。

 志位 いま日本全国で、42・5万ヘクタールの耕作放棄地があります。たとえばその半分がソーラーシェアリングになってよみがえったら、そこからはかり知れない価値が生まれてきますね。

 小山田 原発100基分近くにもなる。

 志位 大量生産、大量消費、大量廃棄からシステム的に抜け出す―。これから人類がまともな発展をしていく上では、そういう考え方に立たないとだめだと思いますね。

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(写真)かなごてファームが運営する農家カフェの前で志位委員長と小山田さん

小山田 ミカン暴落1個6円

志位 米国言いなり政治の転換必要

 志位 農家カフェのすぐ近くにあるソーラーシェアリング1基の年間の売電収入は150万円ありながら、敷地の田んぼでとれた米6俵(1俵=60キロ)は10万円だったと聞きました。

 小山田 酒米としてご厚意で少し高く買ってもらっています。

 志位 それでもあまりに安い。いまは米価が暴落でもっとひどい状況になっているでしょうね。

 小山田 そうなんです。だから、お米をみんなつくらなくなってしまうんです。きょう視察されたミカン畑でとれたミカン1個が一番安い時いくらだと思いますか。ミカンの価格も暴落していて、1個100グラムで6円なんです。

 志位 6円ですか。

 小山田 1キロ60円にしかなりません。そのために資材費、人件費、輸送費なんかかけられないですよ。

 志位 持続可能な農業にするために米価のきちんとした保障が必要ですし、農産物の価格保障が必要です。

 小山田 戸別所得補償もやらないといけない。農業は単なる産業じゃなくて地域やその集合体である日本を支える社会インフラなんです。農業が壊れるというのは日本が壊れるということなんです。

 日本は目先の効率を追求し、自らの生存に必要なものをあまりにも外部に依存する社会をつくってしまった。そんな状況を打破していくのが政治の役割ですが、逆にぼくがやっている取り組みを邪魔してくるのが政治なんです。

 志位 農業を考えたとき、どこから壊れたかといえば、やっぱりアメリカです。「輸入自由化を進めて安いものを食え」「米を食べるのをやめて、小麦、パンに変えろ」といって、農業を壊し、日本人の食生活をアメリカ言いなりに変えてきた結果です。

 エネルギーでも、原発をおしつけてきたのはアメリカです。アメリカ言いなりでやってきてここまでひどい国になってしまいました。ここも政治の大転換が必要だと思っています。

志位 「2030戦略」で転換

小山田 エネルギー政策転換は「革命」

 小山田 そうだと思いますよ。エネルギー政策の転換は「革命」だと思います。エネルギーを変えれば社会が変わる。いま志位さんがおっしゃったアメリカ言いなりも含めて戦後の仕組みをすべて変えることになる。原発に固執する人たちというのは、「革命」が起きることを怖がっている。だから、徹底して邪魔をしているんだと思います。

 志位 「2030戦略」は、30年度までにCO2を50~60%減らす(10年度比)ことを目標とするよう提案しています。再エネ・省エネを大規模に進めるためには、電力、産業、都市、運輸・交通、都市・住宅など、あらゆる社会システムのチェンジ(転換)をしないといけないという強い思いで、小山田さんのような取り組みに学びながら、半年かけて作り上げたものなんです。

 世界ではスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんの頑張りにみられるように気候危機打開のビッグウエーブが起こっています。日本でも次々と台風や豪雨災害が起きている。運動も始まっています。いよいよ切迫したこの状況にふさわしい、突っ込んだ政策が必要だと思って作りました。

 小山田 すべて「2030戦略」の通りになれば、日本は変わると思えるくらい素晴らしい政策です。共産党にしてはちょっと“現実的”すぎるんじゃないかなって思いましたけど(笑い)、総選挙でかなり踏み込んで共産党を応援することができたのは「2030戦略」が出たからです。ソーラーシェアリングのこともちゃんと書いてある。(笑い)

 志位 “共産党冥利(みょうり)”につきる評価です。(笑い)

 小山田 (温暖化防止に取り組むNPO法人)「気候ネットワーク」が各政党の脱炭素政策を評価して共産党は20点満点中の20点でした。自民党なんか0点ですからね(笑い)。どちらが現実的な政策なんだという話です。

 保守的な人たちはよく“共産党は理想論しか言わない”とか言いますが、理想があるから現実があるんです。どんなに自民党があがいても、今後は間違いなく共産党が提案したような方向に向かわざるを得ない。ぼくは共産党の政策提言能力をすごく評価しています。政策をさらに深化させてほしいというのが今後の要望です。

 志位 今日、現場を見て、ますます確信をもちました。

気候危機に若者は関心 政治とつながれば変化

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(写真)ミカン畑でボランティアの人たちと小山田さん、志位委員長

 小山田 ミカン畑にいた若い人たち、学生さんたちには共産党アレルギーが全然ありません。偏見があるのは、彼らのお父さんやおじいさんたちの世代です。

 若者たちが共感できるのは気候危機の問題です。「自分たちに残された時間は少ない」と思っている。あとジェンダー平等の問題です。

 一般の党員の人が気候危機を普通に語れるようになって、共産党は、そういう活動を応援する党だと分かってもらえるようになれば、必ず新しい支持層が増えていくと思います。ぶれずに公約をもっと深掘りしていってほしいと思います。

 志位 印象深かったのは、先の総選挙最終盤で東京・立川市で街頭演説をしたときです。演説カーから降りたら高校2年生の女性が握手を求めてきて、グータッチをしました。「共産党の政策が好きです」と。「どこが好きなんですか」と尋ねますと、「一番の老舗の党なのに、気候危機とジェンダーという最先端の主張をしていること」と。そういうふうに見てくれていました。

 未来につながる鉱脈にぶつかった感じがしています。

 小山田 おっしゃる通りだと思います。

 志位 気候危機打開とジェンダー平等という道は、3年先、5年先も訴え続けます。多くの方々とこの道で出会い、協力関係が始まった。そういう道が見つかった選挙だった感じがしています。

 今日、ミカン畑でお会いした若い方々は、どういうお気持ちで参加されているんですか。

 小山田 地域の課題を学びたいとか、地方創生、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献したいという気持ちがありますね。

 志位 持続可能な社会をつくりたいと。

 小山田 これまでの経済、社会ではもたないことを一番わかっている世代だと思います。

 一方で、おとなはまだ何とかなると、これまでの社会にしがみついている。それに若い世代は嫌気がさしている。だから「学びたい」「何かしたい」と思っています。

 主軸になっている学生は、交通費も自費できてくれています。彼らはひょんなことから農家カフェ「SIESTA」にやってきて、「小山田さんのやっていることを知りたい」と。それ以降、一緒に連携してやっています。

 今まででは考えられなかったような新しいつながりがSNSの発達も相まってできていますが、それを政治や政策に生かしていくというところがいまはない。でも萌芽のようなものがある気がします。

 志位 ジェンダーでも気候危機でも暮らしや格差の問題でも、若いみなさんは現状に強い危機感や息苦しさを感じ、答えを求めている。だけど政治とつながっていない。政治とつながったら、すごい力になると思います。

 小山田 あっという間に変わると思いますよ。あっという間に政権交代です。(笑い)

 「右」の人たちは本当に怖がっています。若い人たちが気づいてワーッと(野党共闘の方へ)いってしまうかもしれない。だから徹底的につぶそうとしている。

 志位 総選挙では、初めて本格的な野党共闘の態勢をつくり、いよいよ攻め落とすつもりでした。

 小山田 そうですね。感じました、感じましたよ(笑い)。いよいよ本丸攻めだと。(笑い)

 志位 そこで相手も危機感を燃やし、ものすごい共闘攻撃、共産党攻撃をしてきて、攻め落とすまではいきませんでした。1回のチャレンジでうまくいかなくても、教訓を学び、次のチャレンジで攻め落とせばいいと思っているんです。

 小山田 そうですよ。

 志位 沖縄では県民は辺野古の米軍新基地建設に反対です。「オール沖縄」の人たちの合言葉は「勝つ方法はあきらめないこと」。私たちも、こういう精神で共闘を今後も発展させていきたい。

小山田共闘呼びかけに鳥肌 共産党との壁突破を

 小山田 みなさんと接して、ぼくは初めて瀬長亀次郎(元沖縄人民党委員長、元日本共産党副委員長)という人を知ったんです。沖縄で(米軍統治下で圧政とたたかった瀬長さんの生涯を展示する)不屈館に行きました。「これぞ国士だ」(笑い)と思いました。あんな迫力のある政治家は、なかなかいない。「右」でも「左」でも国を思う気持ちは一緒です。なのに「共産党員は日本人じゃない」という雰囲気で攻撃しています。

 リスペクト(敬意を払う)が大事です。考え方が違ってもリスペクトの気持ちがあれば、(一致しなくても)「ここはこうしましょう」となる。それが人間の知恵です。それを実践していたのが志位さんでした。

 保守のぼくでも、安倍政権が集団的自衛権行使容認の閣議決定をして、安保法制を強行採決(15年)したとき「これは危ない」と思いました。その時に、志位さんが(戦争法=安保法制廃止の国民連合政府を呼びかけ)野党共闘に踏み込んだ。

 小泉さんが脱原発といったときに鳥肌が立ちましたけど、志位さんが言ったときにも鳥肌が立った。「右」とか「左」とか言っている場合ではないだろうって本当に思ったんです。

 そこでぼくらも踏み込まなければ、と16年の参院選で、不破哲三さん(社会科学研究所所長)と一緒に街頭に立ちました。これって警察一家に生まれた人間からすると、とんでもなく大変なことなんですよ。(笑い)

 そういうこともあって共闘が間違っているという思いは全然ない。むしろ自分を成長させてくれたという思いが強いくらいです。

志位自民は共闘恐れている

 志位 一部メディアは総選挙で「野党共闘は失敗した」といっていますが、失敗していません。59選挙区で共闘候補が勝っています。野党共闘には解決すべき問題はありますが、間違いなく成果を上げた。この成果の上に立って、もっとやろうと。野党共闘を一番恐れているのは自民党です。

 自民党のある重鎮からメッセージを最近いただきました。“野党共闘は大きな成果を上げた。共産党が野党共闘の路線を続ける限り、自民党はつねに政権交代の恐怖におびえ続けなければならない”という内容でした。

 小山田 そうですよ。

 志位 自民党は恐怖に駆られて必死だった。それに対し私たちはまだ力不足でした。次はもっと力をつけて、今度は攻め落とそうと。

 小山田 「共産党は怖い」と感じている国民がたくさんいると総選挙で思いました。最初はぼくも怖かったですよ。(笑い)

 警察官の父は対共産党の教育をものすごく受けている。私はその影響を受けて育ちました。だから「こんなに(共産党に)踏み込んでもいいのかな」という躊躇(ちゅうちょ)があったのは事実です。

 でも志位さんは野党共闘だと踏み込んだ。へたしたら議席も票も減らすかもしれないけれど、それでも共闘するのが国民の意思だといった。すごいと思いました。それくらい大きな決断をしたんだから国民の側も(共産党との)壁をブレークスルー(突破)しなければ…。そんな思いでした。

 志位 ほんと、うれしいですね。野党共闘を打ち出す前は「自共対決」がスローガンでした。当時の安倍(晋三)首相と党首討論をやると、終わった後、安倍さんは「やっぱり自共対決ですね。志位さんとの議論が一番かみ合う」などといってきたものでした。

 ところが野党共闘にかじを切った後は、党首討論でもムキになって攻撃してくるようになりました。共産党がいよいよ本気で自分たちを倒しにきたと感じたのでしょう。自民党も、この道が一番手ごわいとみています。

 小山田 「右」の勢力にとって共産党は怖い。怖いからこそ、テレビでもやっていましたが、「暴力革命の党だ」とすり込んでくる。「共産党は危ない」と、いろんなネットワークを使っていい続ける。共産党が本気になって政権をとりにくる意思を示したからだと思います。

小山田日本共産党創立100年 すごい可能性がある

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(写真)ソーラーシェアリングの田んぼで稲刈りをする小山田さん(本人提供)

 志位 日本共産党は今年で党創立100周年です。100年の歴史で、順風満帆だった時はありませんでした。

 小山田 そうなんですか。(笑い)

 志位 戦前は侵略戦争反対で頑張った。弾圧され、亡くなった先輩がたくさんいます。当時、共産党は非合法でしたが影響力はかなりあったんですよ。(党員作家の)小林多喜二が作品を出したのは『中央公論』や『改造』など一流雑誌でした。(党幹部の)野呂栄太郎は、岩波書店から『日本資本主義発達史講座』を出しました。

 小山田 へえー。

 志位 影響力があったから、それを恐れて弾圧してきたんです。

 戦後も共産党さえ抑えれば乗り切れると考え、1980年には社会党と公明党による政権合意―「社公合意」を結び、共産党排除の仕掛けをつくりました。

 ところが、2015年以降、「共産党を除く」の壁が壊れ、共産党が野党共闘の中で大事な役割を果たすようになりました。このままではえらいことになるという危機感で相手はやってきています。

 小山田 なるほど。

 志位 だからこっちも負けるものかと。これが今の状況です。

 小山田 やっぱり人間は弱いから(笑い)、議席減らすとぶれちゃうこともある。共産党さんが野党共闘せずに国会で一定の議席を維持していく道もある。だけど、そこはあえて(自公政治を変えるために)、野党共闘は揺れ動かないでほしい。

 志位 私たちはこの路線を捨てることはありません。私たちは始めたからには断固としてトコトンやります。

 小山田 素晴らしい。

志位信頼関係を築きながら

 志位 だから国民の中にあるいろんな不安に答える取り組みが大事だと思っています。

 小山田 共産党さんは誤解を受けている部分がたくさんあるので、払拭(ふっしょく)する努力をお願いしたいです。ぼくは共産党が“危ない”とは全然思っていません。やっぱり対話を重ねることが必要だと思います。普通の国民は共産党の綱領に「暴力革命」なんて書いていないことすら知りません。

 誤解を解きつつ、新しい政策をより深化させ、「共産党は変わった」というイメージを保守層の人たちにも与えてほしい。

 志位 その点は努力していきたいです。「暴力革命」でいえば、私たちは、どんな社会発展の段階でも、国民多数の合意にもとづき、平和的に、選挙と議会を通じて、一歩一歩社会を改革していく立場を明らかにしています。「暴力革命」など根も葉もない話です。そういうことも丁寧に知らせていきたい。同時にこういう問題を乗りこえる上で、人間と人間の信頼関係が大事だと思うんですよ。

 小山田 いや本当にそうなんですよ。

 志位 簡単にいえば、私が鉄砲もって「暴力革命」をやりそうな顔に見えますか、という話です。(笑い)

 小山田 そうそう、見えませんって(笑い)。人間と人間のお付き合いで信頼関係を築く。胸襟を開いて酒でも飲む感じで互いに思っていることをざっくばらんに話す。そういうことを各層でやっていけば共産党への支持は絶対に広がります。

 いまどの党も高齢化で党員が減ってきているとか、組織が動かないとかの悩みを抱えています。だったら新しい人たちを味方につければいい。その点で共産党は気候危機やジェンダー平等を訴えていて、すごい可能性、潜在能力を持っている。本気になってやられたら自民党は本当に怖いと思います。

 志位 頑張ります。きょうは本当にありがとうございました。今年のたたかうエネルギーをいただきました。力を合わせ、いい日本をつくっていきましょう。

 小山田 はい。いやあ、楽しいお話でした。ありがとうございました。