2021年12月10日(金)
命・暮らし守れ 焦眉の課題で提案
志位委員長の代表質問
日本共産党の志位和夫委員長は9日の衆院代表質問で、新型コロナウイルス対応や補正予算案をめぐる岸田文雄首相の矛盾を厳しく追及しました。また、志位氏は、気候危機や選択的夫婦別姓、安保外交問題など焦眉の課題などでも国民世論や世界の流れに沿った提案を行い、岸田政権の政治姿勢の根本転換を迫りました。
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コロナ対策
病床削減やめ拡充を
新型コロナの新たな変異株「オミクロン株」への対応について志位氏は、医療崩壊をもたらしたデルタ株への対応の失敗を反省し、最悪の事態を想定して水際対策、検査・医療体制の強化などあらゆる手だてをとることが必要だと強調。病床確保とワクチン接種の2点を追及しました。
第一は、医療機関に病床確保を求めながら、病床削減を推進する矛盾した政策を改めることです。
志位氏は、政府は公立公的病院に法律に基づいた要請を行い、新型コロナの専用病床化を進める一方で、なぜ「地域医療構想」の名で430もの公立公的病院の統廃合計画を進め、消費税を財源に20万床もの急性期病床の削減を進めるのかと質問。「病床削減計画を中止し、病床の抜本的拡充にかじを切るべきだ」とただしました。
岸田首相は「地域の医療ニーズに合わせて取り組むことが重要だ」などとまともに答えませんでした。
第二は、ワクチン接種の問題です。
志位氏は3回目のワクチン接種について、政府が安全性と供給への責任を果たしながら「思い切った前倒しを決断」するよう要求。「だれもが安全にならない限り、だれも安全ではない」というデルタ株の痛切な教訓は、オミクロン株の出現でも重要性が示されたと指摘しました。
同時に、富裕国と貧困国のワクチン格差解消のために、ワクチンに関する「知的財産権」の保護義務を一時免除するという世界100カ国以上が求めている提案を日本が強力に支持するなど、日本政府としてイニシアチブを発揮するよう求めました。
補正予算案 生活・営業
苦境救う手だてこそ
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志位氏は、岸田政権が提出した21年度補正予算案について二つの角度からただしました。
第一は、コロナで疲弊した暮らしと営業の苦境を救うものとは程遠いことです。
志位氏は、個人向け現金給付案が住民税非課税世帯に限定され、東京23区の単身世帯の場合、年収100万~200万円のワーキングプアさえ対象外になると指摘。「コロナでお困りの方々を守るための給付金」と公約した岸田首相に対し、「給付金は生活に困っている方々、コロナで収入が減った方々を広く対象にして支給すべきだ」と主張しました。
また、志位氏は、岸田首相が「持続化給付金・家賃支援給付金の再支給」を約束したのに、事業者向け給付金(事業復活支援金)は予算規模2兆8千億円と、持続化給付金の実績額の半分にすぎず、1~10月の売り上げ減少は対象外だと指摘。「事業復活支援金を少なくとも2倍にし、家賃支援給付金を再支給し、国民への公約を果たすべきだ」と迫りました。
さらに志位氏は、岸田首相が看護師・介護士・保育士などの賃上げを公約したのに、具体化されたものはあまりに不十分だと批判。看護師の賃上げは月4千円で、対象は全体の半分程度だとして、賃上げ額を大幅に引き上げ、対象を医療従事者全体に広げ、診療報酬を引き上げるよう主張しました。介護士・保育士などの賃上げが月9千円にとどまっている点については、「全産業平均との格差、月7万円から8万円を埋める引き上げを目標にすえるべきだ」と求めました。
岸田首相は「さまざまな施策を講じている」と個人・事業者向け給付金の不十分さを認めませんでした。
補正予算案 大企業と軍事費
バラマキやめ暮らしへ
第二は、大企業と軍事費に異常な大盤振る舞いの予算案となっていることです。
志位氏は、「経済安全保障」の名で半導体製造で世界最大手の台湾企業に4000億円もの巨額な税金をつぎ込む前代未聞のバラマキが計上されていると指摘。本来、半導体の安定確保は電機や自動車などのユーザー企業の自己責任で行うもので、コロナの下でも電機・自動車大企業の内部留保は54兆円にも膨れ上がっているとし、「税金で支援することは到底、国民の理解を得られない」と強調しました。
また、補正予算案には過去最大の軍事費7738億円が計上され、当初予算と合わせると軍事費は初めて6兆円を超え、今回は新規に導入する多額の正面装備も含まれていると指摘。そもそも補正予算案は財政法上、大規模災害への対応など「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要になった経費の支出」について作成するものだとして、「今回のような軍事費の計上は緊急を要するものではなく、財政法と財政民主主義に反する」と批判しました。
岸田首相は、周辺国の安全保障の厳しさを理由に「特に必要な事業に要する経費を計上している」とし、財政法の趣旨に反してはいない、と強弁しました。
志位氏は「大企業と軍事費への異常な大盤振る舞いをやめ、コロナで苦しむ国民の暮らしにあてるべきだ」と主張。「消費の喚起というならコロナのもとで大もうけをしている富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税を5%に減税すべきだ」と述べました。
気候危機
石炭火発 合意と矛盾
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志位氏は、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では「グラスゴー気候合意」で「気温上昇を1・5度に制限する」ための決意を参加国の総意として確認したことを指摘。日本政府として「1・5度以下」達成に責任があるという認識であれば、なぜ首相スピーチで石炭火力の撤廃について一言も触れなかったのかとただしました。
岸田首相は「非効率な石炭火力のフェードアウトをはじめ、石炭火力発電比率を着実に減らしていく」と言うだけ。志位氏は「日本が2030年度も電源の19%を石炭火力に頼り、九つもの石炭火力の新増設を進めることは『1・5度以下』と根本的に矛盾する」と批判しました。
選択的夫婦別姓
改正案採択を直ちに
志位氏は、総選挙の党首討論で「選択的夫婦別姓に反対したのは総理ただ一人だった」と指摘。岸田首相が半年前には自民党の夫婦別姓推進議連の「呼びかけ人」だったのに、首相になると反対に回ったのは「党内の一部の強い抵抗に屈したということか」と追及しました。岸田首相は「国民の間にさまざまな意見がある」と述べるだけで、正面から答えませんでした。
志位氏は、自民党内でも反対強硬派はもはや少数だと指摘。同党衆院議員のうち候補者アンケートでは「反対」は261人中73人で28%にすぎず、たった28%のために先送りは許されないとして、「自民党総裁としてイニシアチブを発揮し、いいかげん推進の方針を決めるべきではないか。それができないのならば、党議拘束をはずし、ただちに民法改正案を採択しようではないか」と迫りました。岸田首相は「引き続き議論する」として、問題を先送りしました。
戦争する国づくりを許さない
辺野古新基地
なぜ地盤調査を拒む
沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐって、沖縄県の玉城デニー知事が政府の申請していた基地建設の設計変更を不承認とする決定を行ったことについて、志位氏は「日本共産党は知事の決定を断固支持する」と表明。「知事が不承認の決定を行った理由の一つは、軟弱地盤対策で必要な調査すら行われていないことだ」として「なぜ軟弱地盤の最深部での調査を拒むのか」とただしました。
軟弱地盤は「B27」と呼ばれる地点で、最深部が海面下90メートルに達するにもかかわらず、設計変更で地盤改良するのは海面下70メートルまで。志位氏は、防衛省が77メートル以下の地盤は「固い」と主張する地盤データは150~750メートル離れた3地点のデータを使った推計値に過ぎず、「B27」地点では地盤強度調査は行われていないとして、「調査をすれば新基地はつくれなくなるからとしか説明がつかない」とただしました。
岸田首相は「現在、沖縄防衛局が国土交通大臣に審査請求を行っているところであり、不承認理由の内容については私から申し上げることは差し控える」と答弁拒否。志位氏は「沖縄県民の総意を受け止め、破綻した新基地建設は中止し、世界一危険な普天間基地の無条件撤去を求めて米国と交渉すべきだ」と強調しました。
核兵器禁止条約
締約国会議へ参加を
核兵器禁止条約をめぐっては、ドイツで新政権を担う3党が連立政権合意で、核兵器禁止条約の第1回締約国会議へのオブザーバー参加を決定。北大西洋条約機構(NATO)加盟国からのオブザーバー参加は、ノルウェーに続いて2カ国目となります。
志位氏は、同じ米国の「核の傘」のもとにあるドイツ、ノルウェーが核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加できて、日本が参加できない理由を説明するよう要求。同条約への日本の参加を強く求めるとしたうえで、「唯一の戦争被爆国の政府として、まずは締約国会議にオブザーバーで参加し、核兵器廃絶を実現するための話し合いの輪に加わるべきだ」と主張しました。
岸田首相は「現実を変えるためには核兵器(保有)国の協力が必要だ」と述べ、核兵器廃絶の世界の潮流に逆行する姿勢を鮮明にしました。
敵基地攻撃能力
憲法解釈変えるのか
志位氏は、岸田首相が所信表明で「敵基地攻撃能力」の「検討」を進めると表明したことは「極めて重大だ」と指摘。歴代政権が「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは憲法の趣旨とするところではない」と「敵基地攻撃能力の保有」は「憲法違反」としてきたことをあげ、「歴代政権の憲法解釈を変更することを『検討』の対象にするつもりか」とただしました。
岸田首相は「敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討する」「憲法の範囲内で進めている」などと正当化。志位氏は「海外で戦争する国づくりへの暴走を許してはならない。安保法制に続く立憲主義の破壊、9条改憲をはじめとする自民党改憲4項目に断固として反対を貫く」と表明しました。
歴代政権の憲法解釈
「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない」(1959年3月19日、伊能繁次郎防衛庁長官=当時)