2020年10月30日(金)
志位委員長代表質問
学術会議任命拒否 識者の受け止めは コロナ禍医療支援
日本学術会議の人事に介入した菅義偉首相の違法性を29日、衆院本会議の代表質問で徹底追及した日本共産党の志位和夫委員長。志位氏は増加傾向に歯止めがかからない新型コロナウイルス感染症の対策についても、緊急焦眉の課題を提起しました。志位氏の指摘にまともに答弁できない菅首相。質疑を聞いた識者の受け止めは―。(岡素晴、丹田智之)
政府に拒む裁量権ない
日本学術会議法(第7条)は、会員について学術会議の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」と定めています。
志位委員長は、任命拒否が同法に「真っ向から違反する」と指摘しました。
菅首相は法違反の指摘に答えず、公務員の選定や罷免は国民固有の権利だとする憲法15条1項を持ち出し、「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではない」とくり返しました。
京都弁護士会元副会長の渡辺輝人弁護士は「憲法15条1項は個々の公務員の選任のあり方について定めたものではなく、任命拒否の根拠にはなりません」と述べ、こう指摘します。
「政府の解釈として義務ではないからといって、無限定の裁量があるわけではありません。(任命拒否などの)裁量権はないと考えるべきです」
菅首相が「学術会議の会員が一部の大学に偏っている」「民間、若手が極端に少ない」と述べていることについて、志位氏は首相が勝手に基準をつくることで学術会議から選考・推薦の権利を奪うことになると指摘しました。学術会議法が、会員候補者を「優れた研究又は業績がある科学者」のうちから選考するとしているからです。渡辺氏も、菅首相の言い分は「法的に考慮すべきではない事情であり、それが任命拒否の判断に影響したのなら違法です」と強調します。
渡辺氏は「菅首相は、『総合的・俯瞰(ふかん)的活動』を念頭に判断したと答弁しています。学術会議法には書かれていない判断基準で、そのような理由で任命を拒否することは許されない」と批判します。
秋以降どう備えよと?
「コロナ禍で苦しむ国民の命、健康、くらしを守るために、どう地域医療を守り社会保障を拡充させていくかが問われたのに、その姿勢が1ミリも見えない菅首相の答弁でした」。
開業医らでつくる全国保険医団体連合会(保団連)の住江憲勇会長は憤ります。
志位氏は質問で、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、地域医療が崩壊の危機に直面していると強調。赤字を強いられ、疲弊する医療機関への減収補てんに踏み切るべきだと求めたのに対し、菅首相は「これまで約3兆円の支援を実施してきた」と胸を張りました。
住江会長は「その執行が遅れ、医療機関に届いていないのが現状です」と反論します。9月末までに感染防止の支援は2次補正予算で決まった額の10分の1しか執行されておらず、医療従事者などへの慰労金も3分の1の執行にとどまっていると指摘。重点医療機関の病床確保などに対する支援も予算額の5分の1だと話します。
「決まった予算額さえ執行されていないのに、どうやってインフルエンザとコロナの同時流行が懸念される秋以降に備えよというのでしょうか。臨時国会でこのまま新たな支援策を講じることなく、年明けの3次補正予算編成などに後回しされるとすれば、地域医療は重大な危機に陥りかねません」
大企業・富裕層を優遇し、社会保障を劣化、脆弱(ぜいじゃく)化させてきた新自由主義との決別こそが、「コロナ禍を経験した多くの国民の願いであるはず」と語る住江会長。教訓を全く生かそうとしない菅政権に国民の声を突き付け、政治を変えていかなければと力を込めます。