2020年9月13日(日)
パンデミックとマルクス・エンゲルス
千葉・船橋 「Cゼミ」で志位委員長が講義
日本共産党の志位和夫委員長を講師に、政治の問題や社会の見方など青年・学生の関心にこたえて多彩なテーマで学ぶ「船橋社会科学ゼミナール」(略称Cゼミ)の第3回が12日、千葉県船橋市内で行われました。テーマは「パンデミックとマルクス・エンゲルス――古典をひもといて」。志位氏は、科学的社会主義の土台を築いた2人の思想家・革命家が、感染症のパンデミックの問題にどういう姿勢でとりくんだかについて、2人の残した古典を紹介しつつ、縦横に語りました。
都市は感染症であふれていた
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志位氏は、マルクス・エンゲルスが生きた19世紀のイギリスについて、産業革命をへて人口が増え、農村から都市に人口が集中し、大都市がつくられたが、衛生環境は劣悪をきわめており、「とりわけ都市は感染症にあふれていた」と指摘。ロンドンはコレラ流行に繰り返し襲われ、機械制大工業の発展にともなう劣悪な労働環境のもと結核が猛威をふるったとのべました。
「マルクス・エンゲルスにとって、感染症は身近な大問題でした。この問題について、さまざまな角度から論じた文献があります」と語りました。
14世紀のペスト大流行と『資本論』
一つは、14世紀のペスト大流行とマルクスの『資本論』です。当時の繰り返しのペスト襲来は農村人口を激減させ、農業労働者の地位が向上し、賃金の高騰が生まれます。労働者を強制的に働かせ、力ずくで賃金を抑えつけるために、最初の「労働者規制法」(1349年)がつくられます。
この立法を出発点として、「労働日」をめぐる資本家と労働者の数世紀にわたる歴史的闘争が展開されます。最初は、労働者を抑圧するための立法が、やがて労働者の権利を守るための立法(イギリスの10時間労働法・1848~50年)へと転化します。
志位氏は、このことを、『資本論』やその草稿を紹介して詳しく解明。「14世紀のペスト大流行が、今日の日本での労働時間短縮をめざす運動ともかかわってくるのは、とても興味深いことではないでしょうか」と語りました。
イギリスの植民地支配が、コレラ・パンデミックをつくりだした
いま一つは、19世紀に繰り返されたコレラ大流行について、マルクス・エンゲルスがどういう角度から論じているかです。
コレラの原発地は、ガンジス川下流(現インド・バングラデシュ)。もともとは地域限定の風土病でした。世界的な大流行をもたらしたのは、イギリスによるインドに対する過酷な植民地支配でした。マルクスは、「ニューヨーク・デイリー・トリビューン」(1853年)によせた時事評論のなかで、イギリスによる植民地支配こそ、コレラの世界的大流行の「温床」だったこと、それは「人間の苦難と非行の連帯を示す、痛烈な、きびしい実例」だと告発しています。
志位氏は、「いま私たちは、新型コロナ・パンデミックなど、新興感染症の多発について、現代の資本主義による自然環境の破壊に根があると批判していますが、マルクスがイギリスによる植民地支配こそがコレラ・パンデミックの『温床』とのべていることは、とても鋭い社会科学の批判的視点があると思います」と語りました。
現代のマンチェスターでエンゲルスの像が
コレラとのかかわりで、さらに志位氏が紹介したのは、エンゲルス『イギリスにおける労働者階級の状態』(1845年)です。
この著作には、エンゲルスが生活していたイギリス・マンチェスターなどで、労働者がどんな不衛生で劣悪な環境のもとに暮らしていたか、それがコレラなどの大流行をもたらしたことが、リアルに描写され、告発されています。
しかし、こうした状態は労働者のたたかいによって、また、資本家自身が疫病を恐れたことによって徐々に改善され、公衆衛生が発達していくことになります。今日では、マンチェスターの河川は美しくなり、良好な環境を取り戻しています。
そして、今日、エンゲルスは、マンチェスターで「市の都市環境と労働者・住民の生活を改善するのに貢献した功労者」とたたえられ、2017年には、同市の市議会決議にもとづきエンゲルスの彫像が建てられました。
志位氏は、「新型コロナ・パンデミックのもとで、奴隷商人などの像が倒されていることが話題になっていますが、エンゲルスの像が新たに建てられたというのは、うれしいことではありませんか」とのべました。
新型コロナと立ち向かう上での重要な示唆
志位氏は、講義の結びに、「マルクス・エンゲルスは、感染症のパンデミックについて、それがなぜ起こったのか、どのような歴史的意味をもつのかを、社会科学の光をあてて分析しました。労働者の劣悪な衛生状態を厳しく告発する論陣をはりました。これらは、新型コロナ・パンデミックをどうとらえ、どう立ち向かうかにとっても、重要な示唆をあたえていると思います」とのべました。
講義をうけ、参加者との活発な質疑応答が行われました。