志位和夫 日本共産党

力をあわせて一緒に政治を変えましょう

TV発言

2020年5月9日(土)

BS日テレ「深層NEWS」

志位委員長の発言


 日本共産党の志位和夫委員長は7日夜放送のBS日テレ番組「深層NEWS」に出演し、緊急事態宣言延長のもとでの政治の課題、「出口戦略」やコロナ後の日本の政治などについて語りました。司会は右松健太キャスター、飯塚恵子・読売新聞編集委員。コメンテーターは細川昌彦中部大学特任教授、寺嶋毅東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科部長でした。

パンデミックのもと、世界でも日本でも民主主義が試されている

 最初に大型連休中の全国の観光地の人出が例年に比べ7~9割減少したとのデータが示され、志位氏は「国民のみなさんは、たいへんに大きな協力をやっておられると思います」「政府がこれだけ国民に協力を要請しているわけですから、それにふさわしい補償がないと続けられない」と強調しました。

 一部でパチンコ店が営業を再開していることについて国民の自覚の問題なのか、それとも政治のメッセージの問題かと尋ねられ、「ごく一部のそういう状況をもって、罰則を強めるという方向に行くのは、私たちは賛成できません。補償をしっかりやることによって、安心して休業ができる状態をつくることが政治の責任です」と語りました。

 これに対し、飯塚氏は憲法との関係で「集会の自由」が制限されていることをどうみるかと質問。志位氏は次のように答えました。

 志位 私は、感染拡大を防止する、「公共の福祉」を守るために一定の私権の制限は、どうしてもやむを得ない面があると思うんです。ただ、それは最大限に抑制的にやられるべきです。たしかにいま、大きな集会はなかなか難しい。しかし、そういうなかでも、言論の自由、表現の自由、こういうものは最大限守っていくということが必要です。

 集会で声を上げることはできなくても、SNSその他を使って、どんどん声を上げることはできます。ですから、いろんな方法で表現・言論(の自由)、そして知る権利、基本的人権を、こういうときだからこそ、しっかり守っていく。

 私は、ある意味では、世界の民主主義が試されていると思うんです。パンデミック(世界的流行)のもとで、強権に頼っていこう、「強いリーダー」がいいというところになびいていく動きが一方である。たとえば、東欧のある国では、独裁的な権限を政府の長が握って、何でもできるようになっている国ありますよ。

 飯塚 ハンガリーみたいに。

 志位 そう。ハンガリーがそうです。そうなっていいのか。私は、そうではなくて、民主主義を本当に大切にする。こういう危機の中だからこそ、国会もしっかりやることによって、本当に民主主義を成熟させていく。そして人々の中にいろんな分断を持ち込んで、あいつが悪い、こいつが悪いと分断を持ち込んでいくのではなく、世界でも連帯をする、国内でも連帯をして、連帯の力でパンデミックを乗り越えていく。どっちに進むか、世界でも日本でも民主主義が試されていると(思います)。

 右松、飯塚 そうですね。

医療・補償で緊急策を実行しつつ、第2次補正予算案をすみやかに

 右松氏から、緊急事態宣言の延長の受け止めについて聞かれた志位氏。「いまの感染状況、医療の状況を見たときに、延長はやむを得ない判断だと考えます」と答えたうえで、次のようにのべました。

 志位 ただ、延長したからには今度こそ、暮らしと営業に対する補償をしっかりやる。もう一つ、検査と医療に対する支援を抜本的に強め、この面でもしっかり備えをやる。この二つがとても大事になっている。

 志位氏は、安倍首相が延長を宣言した4日の記者会見で、家賃負担の軽減、雇用調整助成金の拡充、アルバイト学生への支援の追加措置、PCR検査センターの設置などに取り組むとのべたことをあげ、次のようにのべました。

 志位 「追加措置」をやりますと言った以上は、ただちに実行すると(いうことが必要です)。与党案を出していただき、われわれ野党ともよく話し合っていただいて、すぐに与野党で話し合って一つ一つすぐ実行していく。スピード感が求められる。

 それから補正予算だけでは足りませんから、すみやかに第2次補正予算案を組んで、医療と補償――この二つの大テーマで、ドーンとお金をつけることが必要になってきます。

専門家会議と政府――科学的提言をうけ、判断は政治が責任をもって

 細川氏は、延長の判断はやむなしだが、危機管理における意思決定のあり方として、専門家の意見を聞きながらも、複数の意見をぶつけ合い、相互に検証を繰り返すプロセスが重要だと指摘。専門家会議の意見も検証する仕組みが必要だと指摘しました。

 志位 専門家会議と政府の関係ですが、私は、(政府が)専門家会議にあらゆる責任を丸投げして、それで、全部責任を押し付けるというやり方はよくないと思います。専門家会議というのは、科学者の集団として、あくまでもエビデンス(根拠)にもとづいて、いろんな科学的提言する。これを受けて判断するのは、政治の側なのです。

 4日の安倍首相の会見を聞いていましたら、例えば、PCR(検査)がなんで進まないかという設問を、(首相は)尾身(諮問委員会会長)さんの方にふるわけです。

 しかし質問に答えるのは総理の責任です。PCR検査というのは国の政策としてやっているわけですから。なぜ進まないのかは、まず総理が言わなければならないのを、専門家会議に丸投げして答えさせるというのは、やっぱりよくない。

 それから専門家会議がもっているいろいろなデータは、やっぱり公開され、共有される必要があります。いろんなデータを共有して、専門家会議以外の専門家にもデータが共有されてはじめて、公正な正しい判断ができると思います。

 右松 そういった判断基準になる情報が、枯渇しているという印象はおぼえます。

「宣言」解除の大前提――感染の全体像をつかみ、医療のひっ迫を打開する

 ここで大阪府の吉村知事が、独自の休業要請解除の基準を示し、「大阪モデル」とされていることが話題になり、志位氏は問われて次のように答えました。

 志位 吉村知事が「出口戦略」と言っているのは、休業要請の解除の基準ということで言ったと思うのです。それに対して、西村(経済再生)大臣は、休業の要請はもともと知事の権限だと(言った)。これは特措法のたてつけを言ったということだと思います。

 問題は、国が国の責任で行った緊急事態宣言の解除の条件をどうするかということです。これは国の責任でやらなければならない。

 私は、この解除を考えるときに、二つの大前提があるということを言いたい。

 第一は、PCR検査を本格的に増やして、感染の全体像を把握する(ことです)。今のPCR検査は、あまりに少ない。人口10万人あたり、イタリアやドイツはだいたい3000件、お隣の韓国で1200件、日本は190件。桁違いに少ない。

 たいへん印象深かったのは、厚生労働省のクラスター対策班の西浦北大教授が、実は、実際の感染者は、発表されているものの「少なくとも10倍以上いる」、つかめているのは「氷山の一角だ」と、こう率直におっしゃった。専門家会議の尾身副座長も「10倍以上というのはその通りだ」ということを、この前の記者会見でおっしゃいました。

 つまり、「氷山の一角」を見て判断しているわけです。「海中」にある実態は、実はつかめていない状態にある。もちろん国民全員を検査すべきというつもりはないんだけれども、PCR検査の桁を、少なくとも1桁あげませんと、正確な情勢判断というのは難しいと思っております。

 検査を抜本的に増やし、感染の全体像を把握する。それが解除ができるかどうかの最大の前提になってくる。これを見誤って、まだ時期ではないのに(解除)したら、大きな失敗になって犠牲を出すことになります。PCR検査を増やすことが、まず第一の条件になる。

 それから、もう一つの前提は、医療提供体制について、今のひっ迫状況を打開して、ゆとりのある体制をつくることです。重症者の方のベッドだけじゃなくて、中等症の方のべッド、そして軽症者の方の療養施設、この全体をゆとりをもって確保する。さらに一般の治療があるわけですから、一般の治療、とくに(ひっ迫している)救急外来と妊産婦さんの受け入れもきちんと確保できるような医療の面での体制、そして医療機関に対する財政的な補償、これをしっかりやって医療のひっ迫を打開する。

 感染の全体像をつかむ、医療のひっ迫を打開する、この二つの前提をしっかり確保して、判断するべきだと思います。

 細川氏が、大阪での情報公開の取り組みに対し東京では、情報の公開が遅れており、専門家も状況を分析できない状況だと指摘したのを受けて志位氏は次のようにのべました。

 志位 東京はたしかに規模が大きいこともあり遅れており、陽性率(検査数に対する陽性の割合)も出ないわけです。いまの現状のもとでのデータ処理はきちんとしなければならない。

 (同時に)大阪も含めて、PCRが1桁足らないというのは日本全部で共通しているわけですよ。若干の県によってばらつきがあったとしても、1桁足らないというのは、全部共通している。そうすると、いろいろな数値目標を出しても、その裏付けとなるデータの基本のところが欠けているんですよ。ここで思い切ってPCR検査をいかに増やすかをやらないと、科学的な「出口戦略」は立ってきません。

対応のタイミングを間違えてはならない――十分なPCR検査が必要

 志位 私は、この疫病は、ある意味で、(感染の)山を繰り返す。感染がぐっと広がって、その時にかなり強い行動制限をしますでしょ。その時に、一定(感染が)下がる。しかし、ずっとは続けられませんから、経済活動とバランスをとる時期が来る。次の(感染の)山がどうしてもある。何回か(感染の山を)繰り返しながら、やがて、本当の意味での収束に向かうという、かなり長期戦になってくると思うのです。

 その時に、大事なのは、この(感染の)山に対する、対応のフェーズ(局面)を切り替える時のタイミングを間違えないことだと思います。つまり、早すぎたら、失敗します、次の山が大きくなってしまう。遅すぎたら経済が壊れる。ですから、そのタイミングを間違わないためには、検査がいる。十分な検査がいる。少なくとも、桁を一つあげる必要がある。これを強く言いたい。

必要なPCR検査はすべてやる――国立大、民間の力をあわせて

 右松氏が「ところがこのPCR検査が増えない。どうすればPCR検査は増えていくのでしょうか」と尋ねたのに対し、志位氏は、これまでの保健所が担う「帰国者・接触者(相談)センター」から「帰国者・接触者外来」への流れが「目詰まり」を起こしているとして、かかりつけ医が必要だと判断したら検査センターに行けるようにする流れをつくることが重要だと指摘。「問題は、この前の補正予算に(検査センターの予算が)1円もついてない。この検査センター、だいたい1カ所5000万円ぐらいかかる。全国で数百つくろうとしましたら、200億円という単位のお金がかかるのです。だから本腰入れてやろうと思ったら、ちゃんとお金をつけて、本気になってこの流れを強める必要がある」とのべました。そのうえで、次のように力説しました。

 志位 PCR検査(採取した検体の検査)については、先日、京大のiPS細胞研究所の山中伸弥さんと総理が対談しているのを見ましたら、山中さんが京大のiPS研究所にもPCRの機械が30台ぐらいあるし、扱える人もたくさんいる、だから全国の国立大学のネットワークを生かせば1日の検査数は10万件程度はできるというんです。いまは2万が(政府の)目標だけど10万件程度までいけると言っているんですね。だから国立大学、そして民間の力を生かせば、私は、検査数を1桁あげるのは十分、日本でできないわけないと思っています。隣の韓国では、やっているのですから。

 もう一つ言いたいのは、病院と介護施設と福祉施設などです。ここはクラスターになりやすい。そしてとくにリスク管理を厳格にやらないとならない。そういう施設に勤めていらっしゃる職員さん、あるいは患者さん、入所者さん、これらの方々の全員をPCR検査の対象にすることも必要です。必要なPCR検査はすべてやるというところに転換しないと、これはやはり先に進めないと思います。

 寺嶋氏も「民間の力、大学の研究施設、そういうところの機械とマンパワーをコロナ対策に用いてもらいたい」とのべました。

第2次補正予算案――医療、補償で抜本的措置を

 右松氏があらためて「第2次補正予算で必要なものはなんだと思いますか」と質問したのにたいし、志位氏は「数兆円規模で、医療にお金をつける必要がある」とのべました。PCR検査センターをつくるために200億円ぐらいが必要であり、コロナ対応で財政負担がかかる病院への補償に月2400億円程度、半年で1・4兆円、第1次補正予算の「包括支援交付金」(1490億円)の10倍ぐらいの金が医療機関への財政補償で必要になってくると指摘しました。さらに、軽症者向けの療養施設確保のために6500億円ぐらいかかるという概算を示しました。

 志位氏は「もう一つは補償の方なのですが、補償にかかわって、第1次補正予算でついたのは、全ての日本在住者に10万円の給付と、持続化給付金ですが、これは両方とも1回きりです。1回きりでは足らない。持続的な補償のスキーム(枠組み)をつくっていく必要があります」と力説。雇用調整助成金を「コロナ特例」にして、働いている人の収入・賃金の8割を、上限30万円として補償するスキームをつくろうと提案していることを語りました。

 また、家賃を含む固定費への補償について次のようにのべました。

 志位 家賃については、毎月毎月支援していくスキームを、いま野党として提案しています。与党案も今日出てきましたから、早速突き合わせて、すぐに具体化していく必要があります。ですから補償のほうは1回こっきりじゃなくて、持続的な収入と固定費の支援、これを出す仕掛けをつくる必要がある。この両面で急がれます。ですから第2次補正ただちに編成に入るべきだと思います。

 細川氏が、諸外国でも現金給付は行われているが、補償という性質ではなく国による支援として行われていると発言しました。

 志位 補償といっても支援といっても、どっちでもいいんです。ただ、考え方としては、いま外出自粛がこれだけ要請されているわけです。休業要請の対象に直接なっていないお店であっても、ものすごく打撃をうけているわけですよ。ですからそこは区別なしに、全体を補償するという概念で考えたらいいと思います。

 イギリスの場合は確かに、休業要請したことの対になった措置ではないけれども、考え方としては補償という考えだと思います。

 やはり政府がいろいろな要請をしている、あるいは指示をしている国もあります。そういうものに対する「全体としての見返り」という考え方だと思います。

 細川 ほかの国と比べて参考にすべき点はスピード感が違う。

 志位 スピード感で言うと、考え方が違うと思うのは、ドイツなどでは全部、審査が後なんです。まずお金を出して、あとから審査するというやり方に非常事態なので切り替えている。日本の場合は、雇用調整助成金も何もかも全部、審査を事前にやってお金が出る。雇調金もお金が出るのが7月、8月だと、お店がつぶれてしまうと(いう訴えがある)。だからこの考え方を変えるというのが、私はスピード感の一番のカギだと思います。

野党共闘――相互理解、信頼関係が進んでいる

 最後に飯塚氏が、2022年までに野党連合政権を目指すという日本共産党の方針をめぐり、立憲民主党の枝野幸男代表と無所属の中村喜四郎衆院議員のことについて尋ねました。

 飯塚 枝野さんにどんな印象をもっておられますか。

 志位 協力してやっていけるという信頼をもっています。

 飯塚 この20年で、志位さんは本当に共産党のイメージをソフトに変えてこられた。昨年11月の高知県知事選でも共産党の候補を立てたが、共産党アレルギーをなかなかぬぐえない。枝野さんとこのことについて話しましたか。

 志位 よく話します。私は、この間、国政選挙を3回、野党共闘でたたかう中で、だいぶ相互理解、信頼関係が進んだし、いわゆるアレルギーの壁は崩れてきていると、思っています。

 飯塚 安保とか天皇制とか、政策の難しい点、不一致点、そこも3月末の協議では、なかなかハードルが高かったという感じがする。

 志位 そうではありません。今言われた、安保、自衛隊、天皇の制度、確かに共産党は独自の立場を持っていますが、それを連合政権のなかに持ち込んだりしません、連合政権としてはこういう対応をしましょうと、かなり整理して、枝野さんたちにも、それぞれお話しして、その点はよくわかっていただいていると思います。

 飯塚 次に中村喜四郎さんは、いま永田町で一番、志位さんの理解者ではないか。もともと金権政治家だったわけですが、いま野党結集に表立って動いています。どんな印象をもっておられますか。

 志位 信頼して、一緒に野党共闘を進めております。中村さんは、「無私の精神」といいますか、自分の利益とかそういうものを度外視して、今の国を変えないといけないという思いが強いですね。私どもの党大会にも特別ゲストとしてご招待しました。

 飯塚 喜四郎さんは選挙協力をしろ、とにかく一緒に選挙を協力して100議席取れと党大会で言われた。

 志位 一本化して、野党が協力すれば、100くらいの小選挙区でひっくり返すことは、可能です。

 飯塚 衆院選はいつごろですか。

 志位 これは考えていません。いまはコロナの収束が最優先ですから。いつかは言えないけど、野党としてはこういうなかでも落ち着いてしっかり準備はしておくべきだと思います。