志位和夫 日本共産党

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TV発言

2020年5月5日(火)

BS朝日「激論!クロスファイア」

志位委員長の発言


 日本共産党の志位和夫委員長は3日に放送されたBS朝日番組「激論!クロスファイア」に出演し、新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言の延長、暮らしと営業への補償や医療体制の充実にむけた予算が不足している問題など、ジャーナリストの田原総一朗氏らの質問に答えながら議論し、第2次補正予算を緊急に編成する必要性を強調しました。出演者は、他に、林尚行朝日新聞政治部デスク、本間智恵アナウンサー。


市中感染の広がり――「氷山の一角」だけで全体として好転と見るのは難しい

 冒頭、テーマになったのは、政府の専門家会議が1日に、「新規感染者が減少傾向にある」と指摘したことです。志位氏は、田原氏に、現在の感染状況をどう見るかについて問われて、次のようにのべました。

 志位 専門家会議の提言で、(新規感染者数は)「減少傾向」と言っていますが、(提言では)こうも言っている。「未(いま)だ、かなりの数の新規感染者数を認めており、現在の水準は…オーバーシュート(感染の爆発的拡大)の兆候を見せ始めた3月中旬前後の新規感染者数の水準までは下回っていない」。(提言で)「オーバーシュート」の危険を認めていることが大事なところだと思います。

 田原 専門家会議以外の専門家はいまの現状をどう見ているんですか。

  ほかの専門家に取材しても全然危険性は変わっていないというのが共通した認識だと思います。志位さんのおっしゃる通りで、まだまだ対策というのは第1段階、入り口なんじゃないかと思います。

 志位 「新規感染者数の減少傾向」という評価があるんですけれども、私は、出されたデータだけから見て、そう言い切ることができるのかなというふうに思っております。

 たとえば、厚生労働省クラスター対策班の北大の西浦博教授が会見(4月24日)で、「いまの患者数というのは明らかに氷山の一角だ」「少なくとも10倍を超える感染者がいると認識している」とおっしゃった。慶応大学病院は、コロナ以外の患者さんの術前および入院前のPCR検査で5・97%という数が陽性と確認し、「院外・市中で感染したもの」と考えられると(発表している)。つまり、かなり市中感染が広がっていると見なくてはいけないのではないかと思います。

 西浦教授自身が「氷山の一角」だと(言っている)。「氷山の一角」を見て、「減っている傾向がある」ということだと思うんですが、海の下に隠れている部分がどうなっているかは、見極めるのは難しいんじゃないでしょうか。全体として好転していると見極めるのはなかなか難しいのではないかと思っています。

 志位氏は、「PCR検査体制の抜本的強化が急務です」と強調しました。

速やかに第2次補正を編成し、補償・医療を強化、後手後手から先手の対応に

 田原氏から、緊急事態宣言のもとで国民が疲弊しているなかで、政府が「宣言」延長を発表するとして、「どうも政府や安倍首相を見ていると、全部受け身なんですよね。志位さんなら、どういうメッセージを出すでしょうか」と問われました。次のようなやりとりになりました。

 志位 緊急事態宣言の延長は、現状でやむを得ないと言わなければなりません。ただ、延長するからには、今度こそ暮らしと営業の補償をする、“安心して休める補償をする”とバシッと言わなくちゃいけない。もう一つは医療の供給体制、検査体制を抜本的に強化する。医療のひっ迫を打開して局面を変える。補償と、医療のひっ迫を打開する――この二つをやるというメッセージを出すことが必要だと思います。

  田原さんの言われるように、(政府の対応が)受け身、受け身でやってきたのだと思うんですが。

 志位 これは(政府の対応は)全部が後手後手に回っていて、私たちは(2020年度)本予算にコロナ対策費が1円もないと、組み替えを要求しましたが、拒否する。それで補正予算が出てきた。この中で、医療については「緊急包括支援交付金」というのが1490億円。たったそれだけで全部やれと。それから地方に対する臨時交付金は1兆円。そして1回きりの「10万円」と「持続化給付金」。だいたいこんなメニューで、ものすごく足らない。スピードも足らない。全部が後手後手に回ってきた。私は、今度こそ後手から先手に転換しなくてはいけないと思います。先ほどいったことを具体化するために第2次補正予算案をすぐ編成して、今度は先手に回る予算措置を求めたい。

 「持続化給付金」について、国会で、詰めて聞いていきますと、首相は「収束が長引いた場合には(複数回支給を)検討する」ということを言いました。ここで先の見通しがなくては、ご商売を続ける心が折れてしまいます。家賃については、地方自治体では8割補償ということも始まっています。1回きりではない、継続的な補償が必要だということを言いたいです。

  志位さん、重要なことをおっしゃって、持続化するためには次つぎと打っていかなければならない。追加の対策が必要だと。国会が6月半ばまでですが、もう一つ補正を必ず打つべきですか。

 志位 必ず打つべきです。可及的速やかに。補正予算では、あまりにも足らない。今度はどーんと安心できるものをつけて、一気に事態を好転させるという、国民、とくに困っている人たちに届く2次補正を一刻も早く編成して、これを国会にかけるべきです。

安倍首相の政治姿勢――現場で苦しんでいる方々への想像力がない

 田原 たとえば、(世論調査で)これまでの政府の対応を評価するが33%、評価しないが53%。国民の多くが安倍さんも政府もダメだと言っている。志位さん、具体的にどこがダメか。

 志位 一言でいって、コロナのいまのまん延のもとで、苦しんでいる現場の方々に対する想像力がない。想像力が欠けている。ここが一番、国民のみなさんの気持ちを逆なでしている。

 たとえば「マスク2枚」配る。このマスクについて必要ないとは言わないけれども、医療現場のみなさんから、「これで心が折れた」という声も聞こえるんですよ。命がけでやっている。ところが医療現場に物資が届いていない。そのときに、これかということになるんですね。

 本当に現場で苦しんでいる方々に対する想像力がないというところに問題を感じますね。

 田原 (医療に対する)緊急包括支援交付金が1490億円。こんな少ない。志位さん、どれくらいにすべきですか。

 志位 数兆円規模は必要です。

 田原 10倍以上ね。

 志位 桁がまったく足らない。医療機関に対する財政的補償、PCR検査の体制もしっかりとる、それから軽症者などの方には療養施設を確保する、等々をやりましたら、数兆円規模でのお金がかかります。

国民の声が政治動かす――「おかしいことはおかしい」と声をあげよう

 話題は、当初の補正予算で組まれていた一部の人への「30万円給付」から、「一律10万円給付」への変更がテーマに。林氏は与党内政局と指摘しながら、「10万円のプロセスをどうご覧になっていますか」と質問しました。

 志位 たしかに最後は与党のなかに矛盾が起こったわけですが、根底には当初の「30万円(給付案)」に対する(国民の)怨嗟(えんさ)の声があった。当初案は、(対象が)ごく一握りの人になり、「線引き」がされる。“分断をもちこんで、とんでもない”という声が起こった。早くやるうえでも1人10万円配ろうと野党が提起し、国民の中からも声が起こった。この声が政治を動かし、画期的な一歩になったと思います。それが与党の中の矛盾になり、動いたということだと思う。こういう(新型コロナ感染症の拡大という)状況で国民のみなさんは、声をあげづらい面もあるかと思います。(大きな)集会やデモはできませんから。ただSNSもあるし、いろいろな方法でみんなで声をあげて「おかしいことはおかしい」と言って動かしていこうとよびかけたいです。

 本間 若い人は、自分の一票がどう政治に結びつくかわからず、投票にも行ったことがないという人も多いと思う。今回のように「それはおかしいじゃないか」と声を出せば届くんだと希望の一つになったような気がして。

 志位 そうですね。たとえば、(学生団体の)FREEが、大学の学費を減免してほしいと動きをつくり、わが党の小池さん(晃書記局長)が(国会で)“この声に耳を傾けろ”といい、萩生田文部科学相も“追加のお金が必要だ”と言わざるを得ませんでした。声を上げれば、政治は動くと言いたいですね。

 私たちは、安倍政権打倒とやってきているけれど、この状況では、(コロナ問題の)国会議論で安倍さんから「一本取る」というよりも、前に向かってすすむように、徹底的にプッシュする姿勢でやっていくことが大事だと思う。「一本」取っても、国民の命、一人も救えませんから。「命を救う」「暮らしを守る」、そのために役に立つ仕事をやっていきたい。

PCR検査の抜本強化――予算をしっかりつけ、本気でやらせなければならない

写真

(写真)「激論!クロスファイア」で紹介された「PCR検査の主な流れ」をしめすフリップ=BS朝日から

 田原 志位さん、国民が一番疑問に思っているのは、PCR検査がやたらに少ない。韓国の50分の1、ドイツの17分の1。なんでこんなに少ないの。

 志位 政府はこれまでPCR検査を絞る方針だったんですよ。医療崩壊が起こるといって絞ってきた。しかし、絞ってきた結果、市中感染が広がり、院内感染が広がって、医療崩壊が始まってしまったわけです。これを切り替える必要があるんですけれども、(検査の)やり方のチェンジが必要なのです。

 これまでのPCR検査というのは、フリップ(図)で左の流れですが、感染が疑われる人が、「帰国者・接触者相談センター」――保健所にまず連絡して、保健所がオーケーといったら、「帰国者・接触者外来」に行って、初めて検査をうけられる。ところが、保健所はがんばっていますけれども、疲弊しちゃっているわけですね。それから、「接触者外来」の方ももうパンクなんですよ。ですから、流れがつまっちゃっているんですね。

 これを右の流れにしようということを提案してきまして、感染の疑いのある人が、かかりつけ医に電話で相談する。電話というのが大事です。電話で相談して、かかりつけ医がオーケーとなったら、PCR検査センターで検体をとって、分析機関に回す。この流れをつくろうと、私たちは提案して、安倍首相も4月17日に「センターをつくる」と言いだした。

 ならばそれをやりなさいと、私は、国会でさんざん言ったんですが、問題は、補正予算に検査センターのお金が1円もついていない(ことです)。補正予算でつけなさいといったんだけれど、最後までつけるといわないのです。これは政府がお金つけなかったらすすまない。

 田原 志位さん、安倍さんは右の流れにするといっているんだけれど、本当はやる気がないんだ。

 志位 やる気が、本気が見えなかった。だから、本気でやらせなくてはならない。本気で検査数を増やそうと思ったら、右の流れを太くしないとすすみません。右の流れを太くすれば、うんと増やすことができる。大量に検査して、隔離と保護をする。そして感染者の数を抑えていく。早く検査することは、重症化を防いで命を助けていくうえでも大事です。そして医療崩壊を防ぐうえでも大事です。

 田原 林さん、安倍さんは、なんで本気でやらないの。

  この間、志位さんがおっしゃったように、本気なのか、本気じゃないのか、見えないままきてしまって、補正予算でもできなかったということなんですが、志位さんにお聞きしたいんですけれども、安倍官邸の機能不全もあるんですが、厚生労働省の機能不全というのは、志位さん、どうお考えでしょうか。

 志位 初期にPCR検査を絞った、絞ったことの是非については、あとで検証をしっかりやりたいと思うんだけれども、いまの局面では絞るということはまったく間違いです。市中感染が広がっているわけですから、うんと広げなくちゃいけない。ところがこういう局面のときに、少なくとも、安倍首相自身が検査センターをつくるといったのに、お金をつけるというところになかなかふみきっていかない。ここはどうしても、後押ししてやらせなくちゃいけない。

 いま全国の自治体は(PCR検査センターを)どんどんつくりだしているんですよ。東京都では、医師会主導で、47カ所が目標で、すでに12カ所の検査センターが稼働しています。長野県で20カ所とか、沖縄県で5カ所とか、自治体や医師会がしびれ切らしてつくりだしている。

 その時に、政府がぐっと後押しをしないといけない。そうはいっても、つくろうとすると、お金もかかります。1カ所平均だいたい5000万円かかる。地域の医師会のみなさんに輪番であたってもらうには手当もいりますし、クリニックを休止にしたら補償もいります。だから、お金の後押しやって、検査センターをどんとつくって、PCR検査をぐっとふやしていく。感染者を把握しながら、院内感染も防いでいく。これがいま、とても大事になっていると思います。

 田原 志位さんね、どうもいまのPCR検査はじめ、医療がなんかこう広がらないのは、厚生労働省が頑固でどうしようもないんでしょうか。

 志位 先日、予算委員会で議論したときに、(加藤勝信)厚生労働大臣は、「検査センターというのは接触者外来の一形態でありまして」などと、昔ながらの答弁をやっているわけです。これを突破しなくちゃいけないと思います。

「医療提供体制は国が責任をもって守る」と言った以上は、減収補てんを

 本間 志位さん、先ほど、医療機関への財政補償とおっしゃっていました。

 志位 医療の課題は、もう一つありまして、いま病院経営が大変なんですよ。コロナ患者さんを受け入れる病院に、たいへんな財政的負荷がかかっちゃうんですよ。ベッドを空けて待っていなきゃなりません。特別の病棟や病室をつくらなきゃならない。特別の医師や看護師の体制をとらなけりゃならない。そうしますと一般の病床が減ってしまいます。さらに、手術や健康診断も先延ばしということになっているわけです。先日、全国公私病院連盟の会長の邉見(へんみ)公雄さんにお話をうかがったら、「(コロナ対応で)頑張っている医療機関ほど赤字になってしまう」ということでした。

 医療従事者への「敬意」をいうんだったら、医療機関にお金を出さなきゃだめです。どれくらいのお金が必要かというと、杉並区では、四つの区内の基幹病院に、平均月2億円の減収補てんをやるという。全国に、コロナ患者受け入れ病院というのは1200ありますから、全国で計算したら月2400億円のお金がいる。半年だったら1・4兆円いる。このお金を政府は出さなきゃならない。これを出さなかったら、病院はつぶれちゃう。

 田原 なんで政府は出すといわない。

 志位 本当に何を考えているのかと思います。ただ、この前、予算委員会で、ずいぶん押し問答をやって、最後に、総理は、「医療提供体制の機能は国として責任をもって、しっかり守っていく」と言いましたから、そう言った以上は、お金を出さなくちゃいけない。病院がつぶれちゃったら医療崩壊です。その一歩手前に民間病院が来ているということを私は訴えたいし、これは支援がどうしても必要だ。

 田原 病院というのは、国民の生命を守る、一番安心できるところ。ところがいまや、病院は非常に危ないところだと思われている。どうする。

 志位 私は、病院、介護施設、福祉施設のような、とくにリスク管理が大事な施設については、その職員さん、患者さん、入所者さん全体にPCR検査をやって、安心できる場所、安心して働ける場所にしていく。これが大切だと思います。

与野党超えて協力し、補償、医療の抜本的支援の強化を求めたい

 志位氏は、雇用調整助成金(雇調金)を「コロナ特例」としてバージョンアップし、迅速に支給が受けられる制度に抜本的に改善するとともに、支給限度額も大幅に引き上げることを提案していることを詳しく紹介しました。

 田原 (雇調金の)上限が(1日)8330円。20日やって月17万円。イギリスはこの2倍。これ、政府になんとかやらせてよ。

 志位 自民党のなかからも、「少なすぎじゃないか」と怒っている声が聞こえてきます。(政府は)「失業給付とのバランス」というが、いまはもう非常時ですから、平時じゃないんですから。非常態勢にしてイギリス並みに出すと(いうことを求めています)。「世界で一番手厚い」と自分で言っているのだから。ぜひこれは超党派で動かしたい。

 それから家賃、固定費に対する支援、補償をやっていく。これも与野党を超えた声になっています。大量失業が起こっていいのかと、どんどんお店がつぶれていいのかと。だれもいいという人はいないんですよね。与党も野党もない。ですからこれは与野党協力でぜひ、やりたいと思います。PCR検査の強化と医療機関の支援も与野党を超えてできるはずです。いま「与党だ」「野党だ」と言っているときじゃない。政府に対しても、野党の意見もいいものは全部取り入れてほしいと言いたい。

  どういうやり方ですすめますか。

 志位 コロナ対策の与野党協議会が設置されています。与野党の政策責任者で構成されています。今後も、この場でどしどし提案をしていきます。