2020年3月27日(金)
野党連合政権にのぞむ 日本共産党の基本的立場
―政治的相違点にどう対応するか
幹部会委員長 志位 和夫
日本共産党が26日、立憲民主党や社会保障を立て直す国民会議に示した志位和夫委員長の見解「野党連合政権にのぞむ日本共産党の基本的立場――政治的相違点にどう対応するか」は次の通りです。
日本共産党は、この5年間、3回にわたる国政選挙での市民と野党の共闘の成果を踏まえて、ここで共闘をさらに発展・飛躍させるためには、政権問題での前向きの合意――野党連合政権の合意をつくることが必要になっていると考え、昨年8月、野党各党に話し合いを呼びかけました。
その後、立憲民主党、国民民主党、社民党、れいわ新選組との党首会談が実現し、「安倍政権を倒し、政権を代え、立憲主義を取り戻す」という点までは一致が得られてきました。
この間の話し合いの到達を踏まえ、安倍政権に代わる連合政権をともにつくっていく政治的合意を確認し、それを土台に、連合政権が実行する政権公約をねりあげ、選挙協力の具体化をすすめ、来たるべき総選挙で野党共闘の勝利と政権交代をかちとりたい――これが私たちの強い願いです。
そのさい、野党各党の政策的一致点をさらに豊かに広げるとともに、政治的・政策的相違点について連合政権としてどう対応するかについても、話し合いと合意が大切になっていると考えます。
日本共産党と他の野党のみなさんとの間には、共闘をつうじてつちかわれた政策的一致点とともに、政治的・政策的相違点が存在することは事実です。そのことから生まれる日本共産党と政権をともにすることへの心配や懸念にお答えするために、野党連合政権にのぞむ日本共産党の基本的立場を明らかにするものです。
政策的一致点を広げる努力を
5年間の共闘をつうじて、野党間には、多くの政策的一致点が確認されています。その到達点は、昨年の参院選にむけて、5野党・会派が「市民連合」と確認した13項目の政策合意です。
そこには、安保法制廃止と立憲主義回復をはじめ、憲法、沖縄、原発、消費税、暮らしと経済、個人の尊厳と多様性の尊重など、国政の重要課題での合意が盛り込まれています。
それは、安倍政治からの転換の方向を次の三つの点で示すものとなっています。
――憲法にもとづき、立憲主義、民主主義、平和主義を回復する。
――格差をただし、暮らし・家計応援第一の政治にきりかえる。
――多様性を大切にし、個人の尊厳を尊重する政治を築く。
日本共産党は、13項目の政策合意、その政治的エッセンスである三つの転換の方向を土台にして、共闘が国民の切実な願いにこたえ魅力あるものとなるよう、さらに政策的一致点を豊かに広げていく努力をはかります。
野党連合政権の合意が確認されれば、政策的一致点を発展させるための協議は、連合政権が実行する政権公約をつくりあげていくための協議として、さらに重要な意義をもつことになるでしょう。
消費税について
そのさい、消費税問題に野党がどう対応するかは、重要な課題です。安倍政権が強行した消費税10%への増税は、国民生活と日本経済を危機的状況に突き落としています。
こうした状況のもと、日本共産党は、消費税を緊急に5%に減税し、富裕層や大企業への不公平税制の是正と応分の負担を求めることによって財源をまかなうという提案を行っています。消費税の減税は、新型コロナによる暮らしと経済への深刻な打撃がくわわるもと、いっそう切実な課題となっています。消費税5%への減税が野党共通の政策となるよう、最大限の努力をしていきます。
ただ、わが党は、「5%減税に賛成しなければ、野党共闘を行わない」という立場に立ちません。野党各党が、責任ある財源的措置も含めてこの問題で真剣な協議を行い、一致点を大切にして行動する――これがわが党の立場です。
政治的・政策的相違点にどう対応するか
日本共産党は、さまざまな点で、他の野党とは異なる独自の政治的・政策的立場をもっています。わが党は、党としては、それらの独自の主張を大いに行っていきますが、それを野党連合政権に持ち込んだり、押し付けたりすることはしません。
いくつかの問題について、(1)日本共産党の独自の立場とともに、(2)野党連合政権としての対応をどう考えているかについて、私たちの見解を明らかにします。
自衛隊について
日本共産党の立場……憲法9条にてらして自衛隊は違憲だと考えるとともに、憲法と自衛隊の矛盾の解決は、国民の合意で一歩一歩、段階的にすすめ、将来、国民の圧倒的多数の合意が成熟した段階=国民の圧倒的多数が自衛隊がなくても日本の平和と安全を守ることができると考えるようになる段階で、9条の完全実施に向けての本格的な措置に着手します。
連合政権としての対応……現在の焦眉の課題は自衛隊の存在が合憲か違憲かでなく、憲法9条のもとで自衛隊の海外派兵を許していいのかどうかにあります。連合政権としては、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」の撤回、安保法制廃止にとりくみます。海外での武力行使につながる仕組みを廃止する――これが連合政権が最優先でとりくむべき課題です。
「閣議決定」を撤回した場合、連合政権としての自衛隊に関する憲法解釈は、「閣議決定」前の憲法解釈となります。すなわち、自衛隊の存在は合憲だが、集団的自衛権行使は憲法違反という憲法解釈となります。
日米安保条約について
日本共産党の立場……日本の政治の異常なアメリカ言いなりの根源には、日米安保条約があると考えており、国民多数の合意で、条約第10条の手続き(アメリカ政府への通告)によって日米安保条約を廃棄し、対等平等の立場にもとづく日米友好条約を締結することをめざします。
連合政権としての対応……安保条約については「維持・継続」する対応をとります。「維持・継続」とは、安保法制廃止を前提として、第一に、これまでの条約と法律の枠内で対応する、第二に、現状からの改悪はやらない、第三に、政権として廃棄をめざす措置はとらない、ということです。
連合政権として日米関係でとりくむべき改革は、すでに野党間で合意となっている日米地位協定の改定、沖縄県・名護市の新基地建設の中止などです。これ自体が、異常なアメリカ言いなりの政治をただすうえで、大きな意義をもつ改革になると考えます。
天皇の制度について
日本共産党の立場……憲法の前文を含め全条項を守ることを党綱領で明らかにしており、天皇条項については、「国政に関する権能を有しない」などの制限条項の厳格な実施を重視し、天皇の政治利用をはじめ、憲法の条項と精神からの逸脱を是正することを、中心課題として重視しています。
将来の展望として、「民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだとの立場に立つ」ことを明らかにしつつ、「天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべき」(党綱領)ということを表明しています。
連合政権としての対応……日本国憲法の条項と精神を順守するという立場で対応します。たとえば天皇による閣僚の認証は、憲法に定められた「国事行為」の一つであり、現行通りに対応します。天皇とその制度を政治利用することを、きびしく慎みます。
社会主義・共産主義について
日本共産党の立場……日本が直面する変革は、資本主義の枠内での民主的改革によって「国民が主人公」の日本をつくることだと考えていますが、それをやり遂げたのち、国民多数の合意で資本主義を乗り越えた未来社会――社会主義・共産主義にすすむという展望をもっています。
わが党がめざす社会主義・共産主義とは、崩壊したソ連や現在の中国のような、他国に対して覇権主義をふるい、国内では自由も民主主義も人権もない社会とは全く違います。
党綱領では、未来社会について、「社会のすべての構成員の人間的発達を保障する」、「民主主義と自由の成果をはじめ、資本主義時代の価値ある成果のすべてが、受けつがれ、いっそう発展させられる」、「さまざまな思想・信条の自由、反対政党を含む政治活動の自由は厳格に保障される」と明記しています。
すべての人間の自由で全面的な発達が保障され、資本主義の時代にかちとられた自由、民主主義、人権を、全面的に引き継ぎ、豊かに発展させる社会が、私たちのめざす未来社会です。
社会変革の方法も、選挙で国民の多数の支持を得て平和的に社会変革を行うという立場を一貫して堅持します。「暴力革命」「一党独裁」などという攻撃は、まったく根拠のないデマ攻撃にすぎません。
連合政権としての対応……連合政権では、「資本主義か、社会主義か」などという体制選択は問題になりません。そのとりくみが資本主義の枠内の改革であることはいうまでもありません。
「閣内協力」と「閣外協力」――状況にそくして最善の道を選ぶ
最後に、野党連合政権にたいして、日本共産党が「閣内協力」となるのか、「閣外協力」となるのかについては、わが党は、あらかじめどちらを取ると決めていません。状況にそくし、また共闘のパートナーとも相談しながら、最善の道を選びます。
私たちが「野党連合政府」と言わず、「野党連合政権」と言っているのも、「政権」ならば、「閣内協力」「閣外協力」の双方を含むより幅広い概念になると考えているからです。
かりに「閣内協力」となった場合には、わが党から入閣した閣僚は、自衛隊、日米安保、天皇の制度などの諸問題で、政府の統一した立場に従った行動をとることは当然です。