志位和夫 日本共産党

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談話・記者会見

2019年3月15日(金)

国保料(税)の連続・大幅値上げか、公費1兆円投入で大幅値下げか

――統一地方選挙の一大争点に

志位委員長の会見


 高すぎる国保料(税)のさらなる連続・大幅値上げを許すのか、公費1兆円を投入して抜本的引き下げを実現するのかが、統一地方選挙、参議院選挙の一大争点となっている。

1、全国の8割の自治体で、平均4万9千円の値上げの危険――「19年度標準保険料率」の動向調査の結果

 2019年度以後、全国の自治体で、国保料(税)の連続・大幅値上げの危険がせまっていることが、各都道府県が発表した「標準保険料率」に基づき、市区町村(東京23区を含む)の国保料(税)を算出した結果で明らかになった。

 安倍政権は、昨年4月から「国保の都道府県化」をスタートさせた。2018年度は、統一地方選挙前ということもあり、国民の批判をおそれて「激変緩和」を国が指示したために、国保料(税)の全国的な負担増という事態には至らなかったが、2019年度以降は、本格的に、値上げの仕掛けが動きだそうとしている。

 その仕掛けとは、「標準保険料率」の水準に合わせて国保料(税)を引き上げることを、市区町村に強要していくということである。

 「標準保険料率」は、安倍政権が導入した「国保の都道府県化」によってつくられたもので、市区町村が、保険料(税)の値上げを抑えたり、独自の減免措置を実施するために行っている一般会計から国保会計への公費繰入(政府の言い方は「法定外繰入」)を行わないことを前提に計算されている。

 安倍政権は、「法定外繰入の解消」の号令をかけ、実際の国保料(税)を「標準保険料率」に合わせることを市区町村に求めている。市区町村の国保料(税)を「標準保険料率」に合わせようとすると、これまで国保料(税)の値上がりを抑えてきた自治体や、子育て世帯や低所得者、障害者、ひとり親家庭など、それぞれの自治体が実情にあわせて独自の減免をしてきた自治体は、大きな値上がりを強いられることになる。

 今回、日本共産党は、「2019年度・標準保険料率」を発表している38都道府県(1429市区町村)で、市区町村が「標準保険料率」どおりに国保料(税)を改定した場合、負担額がどうなるかを、モデル世帯を置いて試算した。

 その結果は、別紙資料の通りである。

●8割の自治体で国保料(税)の値上げとなる。

●「給与年収400万円・4人世帯(30歳代の夫婦+子2人)」でみると、80%、1144市区町村で値上げとなる。平均値上げ額は4・9万円である。

●給与年収の単身世帯、年金収入の高齢夫婦世帯、自営業の3人世帯など、別のモデル世帯でも、約8割の自治体で値上げという傾向は同じであった。

 「都道府県化」された国保は6年サイクルで運営されることになっており、政府は、今後4~5年をかけて、国保料(税)を「標準保険料率」の水準に「統一」していくことを自治体に要求している。

 現在明らかにされているのは18年度と19年度の「標準保険料率」だが、「標準保険料率」自体が、高齢化による給付費の増加などによって毎年のように引き上がる仕組みになっている。「標準保険料率」というゴールまで走ることをせまられる上に、ゴール自体がドンドン引き上げられていく。市区町村はいま、二重の国保料(税)引き上げの圧力にさらされているのである。

 こうして、国保料(税)の大幅な値上げが、今後4~5年程度で連続的に行われる危険があることを、強く告発しなければならない。

 国保料(税)は、今でも高すぎる水準にあり、協会けんぽ、組合健保、共済などの他の公的医療保険と比べても、大きな格差がある。これをさらに引き上げれば、住民の命と健康、暮らしが脅かされるだけでなく、国民健康保険制度そのものの存立さえ脅かすことになる。この道は絶対に止めなければならない。

2、自治体が従う法的義務はない――国保料(税)の値上げは止められる

 「国保の都道府県化」のもとでも、法令上、「標準保険料率」は「参考値」にすぎず、自治体に従う義務はない。「国保の都道府県化」が実施された後も、地方自治の原則に基づいて、自治体の判断で公費繰入ができることは厚労省がたびたび答弁している(「一般会計からの繰り入れをどうするかということにつきましては、それぞれの自治体でご判断をいただく」「これを制度によって禁止するというふうなことは考えていない」〈厚生労働省・唐澤保険局長〔当時〕、2015年4月17日〉)。

 そもそも地方自治体が条例や予算で、住民の福祉のための施策を行うことを、国が「禁止」したり、廃止を「強制」することは、憲法92条の地方自治の本旨、94条の条例制定権を冒すものである。だから、安倍政権であっても、「標準保険料率」を建前上は、「参考値」とせざるをえず、厚労省も国会では、「自治体の判断」と答弁せざるを得ない。

 市区町村の判断によって、国や都道府県の圧力をはねのけ、一般会計繰入による国保料(税)の負担抑制や自治体独自の保険料減免を維持・拡充することは可能である。

 都道府県も、「標準保険料率」の算定は法律上の義務になったが、その活用は都道府県の判断にゆだねられている。国いいなりに市区町村に圧力をかけるのか、国の圧力をはねのけて、住民の立場で負担抑制・軽減の努力を続けるのかは、都道府県が判断することができるのである。

 全国知事会、全国市長会、全国町村会など地方団体は、今の国保制度には「被保険者の所得水準が低く、保険料(税)の負担率が高い」という構造問題があることを強調し、その解決のために、抜本的な公費投入増による保険料(税)引き下げを国に求めてきた。

 全国知事会は、2014年、国保に公費を1兆円投入することで国保料(税)を「協会けんぽ」並みの負担率にすることを国に要求し、「国保の都道府県化」が実施された2018年以後も、引き続き、「国定率負担の引き上げ」(2018年7月)を求め、全国市長会も「国庫負担割合の引き上げ」(2018年11月)を要求している。

 加入者の所得や生活の実態から、現在の国保料(税)が高すぎることが、国民健康保険制度の構造的な問題であるという認識は、保守系の首長を含めた地方自治体関係者の一致した認識である。この構造問題を解決するどころか、値上げで危機を深化させたら、早晩、国保制度は立ちいかなくなってしまう。こうした主張からみても、安倍政権の国保料(税)連続・大幅値上げに協力・加担してはならないはずである。

 安倍政権に言いなりに国保料(税)の連続・大幅引き上げに突き進むのか、それとも「住民の福祉増進」という地方自治の本旨にのっとって国保料(税)の引き下げをめざすのか。このことが全国の自治体に鋭く問われている。

 統一地方選挙で、住民の審判によって、国保料(税)の連続・大幅引き上げを止め、引き下げに道を開くことを、強く呼びかける。

3、公費1兆円投入で国保料(税)を協会けんぽ並みに引き下げる――日本共産党の提案

 日本共産党は、昨年11月、公費を1兆円投入して、国保料(税)を「協会けんぽ」並みに引き下げるという政策を発表している。

 日本共産党の政策は、全国知事会、全国市長会など「公費投入で構造問題を解決する」という地方の強い要望とも一致したものである。

 党の政策は、国保料(税)を「協会けんぽ」並みに引き下げる方法として、事実上の“人頭税”である「均等割」「平等割(世帯割)」をなくすことも提案している。国保財政への公費負担は、国と都道府県で4・6兆円(国75%、都道府県25%)であり、これを1兆円増やせば、国保料(税)を「協会けんぽ」並みに引き下げることができる。

 財源は、安倍政権のもとで、純利益を19兆円から45兆円へと2・3倍に増やしながら、4兆円も減税された大企業や、株高で資産を大きく増やした富裕層に応分の負担をしてもらう。例えば、富裕層優遇になっている株式配当や譲渡所得への課税を欧米並みにするだけで1・2兆円の財源となる。

 安倍政権いいなりで国保料(税)のさらなる連続値上げにすすみ、住民の健康と暮らしを壊し、日本の公的医療保険制度を崩してしまうのか、構造問題の解決のために公費投入を増やして値下げ――他の公的医療保険との異常な格差、不平等・不公正をただすのか。これは統一地方選挙、参議院選挙の重大争点である。

 日本共産党の躍進で、国保料のこれ以上の引き上げを止め、抜本的引き下げに道を開くことを訴えて、選挙戦をたたかいぬきたい。

標準保険料に合わせた場合の国民健康保険料(税)の値上げ

 各都府県が算定した19年度の「市町村標準保険料」の通りに各市区町村が国保料(税)率を改定した場合の国保料(税)の増減について試算したところ、4人世帯では約8割の市区町村で値上げとなることが判明した。

(集計方法)

「18年度の実際の国保料の額」と「19年度の市町村標準保険料率で計算した国保料の額」とを比較した。

(集計対象)

すでに19年度の標準保険料率を算定した38都道府県(下記)、1429市区町村(東京23区を含む)

北海道、青森県、岩手県、宮城県、山形県、福島県

栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県

新潟県、富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県

三重県、滋賀県、京都府、大阪府、和歌山県

島根県、岡山県、広島県、山口県

徳島県、香川県、愛媛県、高知県

福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、鹿児島県

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