志位和夫 日本共産党

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国会質問

2019年2月14日(木)

消費税10%の“根拠”総崩れ 増税計画はきっぱり中止せよ

衆院予算委 志位委員長の基本的質疑


 日本共産党の志位和夫委員長が12日の衆院予算委員会で行った基本的質疑は次の通りです。


写真

(写真)質問する志位和夫委員長=12日、衆院予算委

志位 「こんな経済情勢のもとで増税を強行していいのか」――この点にしぼってただす

 志位 日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。来年度予算案の最大の焦点である消費税増税問題について質問します。

 今年10月から消費税を10%に増税する総理の方針に対して、消費税に賛成という方も含めて、「こんな経済情勢のもとで増税を強行していいのか」、「景気が悪化するのではないか」という批判、懸念の声が広がっております。

 日本銀行が、1月9日に発表した「生活意識に関するアンケート調査」(昨年12月実施)の結果を見ますと、1年後の景気が今よりも「悪くなる」と答えた人の割合は39・8%、「良くなる」の7・8%を大きく引き離し、安倍政権になって最悪となりました。多くの国民が消費税増税によって今年の景気は悪くなると感じているのであります。

 企業はどうか。東京商工リサーチが、全国の企業8000社以上を対象に行った「消費増税に関するアンケート」調査(昨年9月実施)――では、「消費税増税で景気はどうなると予想されますか」という問いに対して、「景気は悪くなる」と答えた企業が57・8%、「景気は現状維持」と答えた企業が37・2%となっています。多くの企業もまた、消費税増税による景気の悪化への懸念を強めています。

 わが党は、消費税という税金のあり方そのものに反対ですが、今日は、「こんな経済情勢のもとで増税を強行していいのか」――この点にしぼって総理の認識をただしていきたいと思います。

志位 家計調査ベースでも、GDPベースでも、消費は8%増税の打撃を回復するにいたっていない。この事実を認めよ

首相 (家計消費は)水面上に顔を出していない

志位 増税の追い打ちは、日本経済に破滅的影響を及ぼす

こんな深刻な消費不況のもとで増税をしていいのか

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出典:総務省「家計調査」、2人以上世帯の消費支出(季節調整済実質指数)を年額換算、単位:万円

 志位 まずうかがいたいのは、こんな深刻な消費不況のもとで増税をしていいのかという問題です。

 パネルをごらんください。(パネル1

 総理にうかがいます。これは総務省の家計調査をもとに作成した、2人以上世帯の実質家計消費支出の推移のグラフです。グラフで明らかなように、実質家計消費は、2011年の東日本大震災の年をボトム(底)として、12年、13年と弱々しいが回復傾向にありましました。それが2014年の消費税8%への増税を契機にドーンと大きく落ち込み、増税前の13年の平均363・6万円に比べて、18年平均は338・7万円と、年額で約25万円も落ち込んでおります。2月8日の政府の発表(家計調査)でも家計消費は5年連続でマイナスとなっています。総理にうかがいます。家計消費が、8%増税による打撃を回復するにいたっていない、この事実はお認めになりますね。総理がお答えください。

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(写真)答弁する安倍晋三首相=12日、衆院予算委

 安倍晋三首相 家計消費についてはですね、世帯あたりの消費を捉える家計調査の家計消費支出について、そのパネルはそうなんだろうと思いますが、それまさに、家計の消費でありますから、家計全体ですよね。おじいちゃん、おばあちゃんがいて、お父さん、お母さんがいて、子どもたちがいればその全体ということになりますから。しかし、それがですね、いま世帯人員が、これ減少しているわけでありまして、これは2人以上ですから、おじいちゃん、おばあちゃんということが大変多いんだろうと、そう思います。そういうことも含めてですね、長期的に減少傾向となっているのは事実だろうと思います。もちろん、その駆け込み需要との関係はありますよ。それを含めていま申し上げた点もベースとしてあるということであります。

 一方で、一国全体の消費を捉えるGDP(国内総生産)ベースとおっしゃった…この次のパネル…それを出してくださいと(爆笑)、おそらく次が、それが出てくるんだろうと思いますね。出てきますが、それを見ていただければですね…、それを出してくださいというわけにもいきませんから、その後を見ていただければいいんですが、国、一国全体の消費を捉えるGDPベースで見るとですね、2016年以降、2016年以降についてはですね、増加傾向、増加傾向と…、まあ、最近ちょっと、こう折れているんですが、こう増加傾向にあるという、まあ、志位先生は別の質問…別の解説をするかもしれませんが(笑い)、私の解説はそうだということを申し上げておりまして、持ち直していると、こういうことでございます。

 志位 私は、まず、家計調査のベースで落ち込みを回復していないと聞いたわけですが、これは否定できませんでした。

 世帯人員の減少が影響しているといわれましたけどね、世帯人員の減少でこのグラフは説明できないですよ。2013年から14年、15年に世帯人員が急激に減少したわけがないじゃないですか。これは増税の影響なんです。

「持ち直している」というが水面下に沈んだままではないか

図

出典:内閣府「2018年7―9月期GDP二次速報」(2018年12月10日)持ち家の帰属家賃を除く家計最終消費支出(季節調整値、年額換算)、単位:兆円

 志位 GDPベースということをおっしゃいましたので、次のグラフ(パネル2)をごらんください。

 これは、内閣府のデータをもとに作成したGDPベースでの実質家計消費支出です。実態のない統計上の架空の消費である帰属家賃は除いています。GDPベースで見ても、実質家計消費は、8%への増税を契機に大きく落ち込み、増税前の13年平均241・0兆円に比べて、直近は237・9兆円と、約3兆円も落ち込んでいる。

 総理にうかがいます。あなたは「持ち直している」とおっしゃったが、水面下に沈んだままなんですよ。GDPベースで見ても、家計消費が、8%増税による打撃を回復するにいたっていない。明らかじゃないですか。事実をお認めください、総理。

 野田聖子予算委員長 先に、担当の茂木大臣。

 志位 総理、あなたが所望したグラフじゃないですか(笑い)。ちゃんと答えなさい。

 野田 志位さん、そのあとに(首相に)答弁いただきます。

 茂木敏充経済財政担当相 先ほどのグラフもそうですが、このGDPベースのですね、家計消費支出につきましても、2013年というのは、やはり特殊な年でありまして、われわれ今回、消費税引き上げにあたってですね、駆け込み需要、そして反動減を平準化する、まさに大きな、駆け込み需要というのが、2013年に起こってしまったと。ですから、さっきのグラフも、このグラフもですね、2013年のあたりがボコッと上がって、逆に2014年の4月以降のあたりが大きく下がる、そこのなかで長期的なトレンド(傾向)を取るということになるんだと思っております。

 そして、家計消費支出ということでありますけど、帰属家賃を除いて、計算を志位委員にいただいておりますが、この帰属家賃、これは借家住まいの人が家賃を払って住宅サービスを購入しているのと同じようにですね、持ち家の人も自宅に対して家賃を支払って住宅サービスを購入しているとみなして、消費に計上することでありまして、国連が定めました国民経済計算の国際基準=SANに基づくものでありまして、これをすることによってですね、たとえば国によって文化的、制度的な背景が違います、持ち家比率が異なる国々でも、消費水準やGDPが比較可能になってまいります。

 野田 簡潔にお願いします。

 茂木 簡潔にやります。その上で、委員ご指摘のGDP統計の家計消費支出について帰属家賃も含むベースで見てみますと、帰属家賃を除くベースで見てもですね、2016年以降、増加傾向で推移をしている、そのことについては変わりません。

 野田 志位さん、総理の答弁はいいんですか。

 志位 私が聞きます。いま帰属家賃ということをいわれました。この帰属家賃というのは、持ち家について借家と同じように家賃を払ったものとみなして、家計消費とみなす計算上の家賃なんですよ。架空の消費にすぎず、これが増えても商店の売り上げは1円も増えません。国際比較ということをおっしゃった。これ(帰属家賃)は持ち家が多い国と、賃貸が多い国の比較ができるようにする指標であってね、国際比較の上ではこれを含めることは合理性を持ちますが、一国の消費の推移を見るうえではこれを除いてみることが当たり前なんです。

 総理に聞きますよ。総理がご所望のパネルですから(笑い)、ちゃんと答えてください。いまね、(茂木大臣は)13年は(駆け込み需要で)ポコッと上がっているといいましたけども、ポコッていうもんじゃないです。12、13(年)とやや上がってきて、それがドーンと14年に下がって、回復していないじゃないかと。この事実をお認めいただきたい。

 首相 さきほど私が申し上げましたのはですね、それ…いまのような形で線を引いていただければですね、ジグザグしながら回復しているのは、まだもちろん、水面上には顔を出していませんが、水面上にいま向かっているんですね。水面上に向かい始めているということで申し上げているわけでございまして、ぜひこの…ですから、このポコッと上がって下がったという経験を生かしてですね、今回は十二分な対策をとらさせていただけるということでございます。

 志位 総理もね、水面の上に上がっていないということはお認めになりました。

増税分をすべて返すぐらいだったら、最初から増税をやらなければよい

 志位 世帯当たりの消費を捉える家計調査ベースで見ても、いまの一国全体の消費を捉えるGDPベースで見ても、家計消費は8%増税による打撃を回復するに至っていないんですよ。これは総理も、いまお認めになりました。

 総理、家計消費は、日本経済の6割を占める文字通りの経済の土台です。この土台が増税の痛手を負ったままなんです。そこに、さらに5兆円もの消費税増税の追い打ちをかけたらどうなるか。消費はいよいよ冷え込み、日本経済に破滅的影響を及ぼすことは明らかではないか。総理、お答えください。

 首相 さきほども水面下というのは、いわばこの13年平均の志位委員がつくられたもののこの上にですね、出ていないというのは、ま、事実でありますが、それに向かって、こう、だんだん上がりつつ…あるのは事実でございます。

 そこでですね、消費を取り巻くこの環境を見ますと、2012年から2018年までの6年間で、生産年齢人口が500万人減少するなかにあってもですね、380万人就業者が増えたということでありまして、景気回復により仕事が増加したことによってですね、正社員の有効求人倍率は初めて調査開始以来最高の水準となっていると、こういうことでございまして、賃上げも、この連合の調査によれば5年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げが実現しておりますし、中小企業の賃上げは過去20年間で最高となっているのも事実でございます。つまり、雇用と賃金がですね、非常に、伸びているというなかにおいてですね、また今回の消費税の引き上げにつきましては、まさに少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保するために必要なものでございますし、また幼児教育の無償化を一気に進めていく、また来年のですね、真に必要な子どもたちの高等教育の無償化を進めていくということも含めまして、引き上げを行っていきたいと。

 また繰り返しになりますが、今回は、前回のですね(志位「繰り返しはいらない」)、繰り返しもこれは大切なことなんで(志位「時間がもったいない」)、非常に簡潔に言いますと、いわば前回のこれは反省点を踏まえてですね、今回はいただいたものをすべてお返しする形でですね、しっかりと消費喚起の対策を行っていきたいと思っています。

 志位 あのね、消費税の増税分をすべて還元するという対策をやるんだといわれましたけどね、返すぐらいだったら最初から増税やんなきゃいいじゃありませんか(拍手)。だいたいね、増税分を上回る「対策」をいわねばならないということ自体、今の日本経済が増税に耐える力をもっていないことを自ら認めるものです。

 あなたは、380万人就業者が増えたと、連合の調査では今世紀最高水準の賃上げだと(答弁した)。あとでこの問題しっかりやります。

今の日本経済が増税にたえる力をもっていないという懸念が多くの人々から

 志位 今の日本経済が増税に耐える力をもっていないという懸念は、立場の違いを超えて多くの人々から寄せられています。

 セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文氏は、『文芸春秋』に寄せた一文で、消費税増税は必要としつつも、「いまのタイミングで消費税を上げたら、間違いなく消費は冷え込んでしまうことでしょう」、「国内景気がさらに悪化して、消費の減少、企業倒産の増加、失業率の上昇といった負の連鎖に直面する可能性もある。当然、消費税だけではなく、法人税、所得税といった税収全般が、逆に低下する事態に陥ってしまいかねません」と警告されておられます。

 今の日本経済にいかに増税に耐える力がないか、さらに明らかにしていきたいと思います。

志位 毎月勤労統計では、「所得環境は改善」という首相の主張に真っ向から反し、実質賃金マイナスという結果が出ている

経済財政担当相 実質賃金は伸び悩んでいる

首相 消費税を上げれば、実質賃金は押し下げられるのは当然だ

「共通の事業所」では18年の実質賃金はマイナス――政府は数値を出せ

 志位 次に見ていきたいのは賃金・所得はどうかという問題です。総理は、いまも「5年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げが続いている」「所得環境は着実に改善している」と繰り返していますが本当か。

 私は、今日は、この問題を三つの統計をもとに検討していきたいと思います。

 一つは、厚生労働省の毎月勤労統計です。

 二つ目は、連合が発表している賃上げの調査です。

 三つ目は、総雇用者所得です。

 まず検討したいのは、厚生労働省の毎月勤労統計です。毎月勤労統計は不正調査により、2018年の賃金上昇率が実態よりもかさ上げされていたことが大問題となっております。

 パネルをごらんください。(パネル3

図

出典:厚生労働省「毎月勤労統計」、5人以上事業所、現金給与総額の対前年同月比実質増減率、単位:%「政府公表値」は厚生労働省が公表した再集計値。「共通事業所(推計値)」は同省公表の名目値から志位和夫事務所が計算。共通事業所のデータは12月分が未公表のため、「年間平均」は11月までの平均である

 これは、毎月勤労統計から作成した2018年の実質賃金増減率のグラフです。青い棒線(薄い線)は調査対象を変えたために伸び率が過大になった「政府公表値」です。赤い棒線(濃い線)は「共通の事業所」で比較したもので、より実態に近いものです。

 「共通の事業所」で見ますと、6月を除いてすべての月がマイナスとなり、実質賃金は年間平均でマイナス0・5%となりました。野党が行ったこの試算について、厚労大臣は「おっしゃった通り」と事実上追認しました。総務省の統計委員長も、賃金の増減を見るには「共通の事業所」での比較が適切だという見解を示しております。

 総理にうかがいます。毎月勤労統計では、あなたのいう「所得環境は着実に改善している」という主張に真っ向から反する結果――すなわち前年比で実質賃金がマイナスという結果が出ているではありませんか。どうですか、総理。

 根本匠厚生労働相 毎月勤労統計のお話ですから、私のほうから、まず申し上げたいと思います。整理して申し上げますと、委員のこの共通事業所推計値というのは、志位委員の事務所で計算したものと、こう書いてあります(志位「野党全体です」)。そして、私はですね、一定の前提で、われわれは、この実質値については、共通事業所の問題は、いろいろな課題がありますから、われわれ統計をつくる側がとしては、実質値はまだ計算しておりません。ただ、ユーザーの方がいろんな加工をする、これは私はユーザーのみなさんの判断で、そういう意味では、たとえば消費者物価上昇率を前提にして出せば、こういう数字にはなると思いますが、それはあくまでもそういう前提だということであります。われわれのほうでは、実質賃金のこの指標は出しておりません。(志位「出しなさいよ」)

 そして、はい、9月…まず二つの観点で申し上げますが、統計委員会でもいっています。労働者全体の賃金の水準については、労働者全体の賃金の水準については、新設事業所の影響が反映され、標本数も多く、標本誤差が小さい本系列、これが実はメインであります。ただ、もう一つは景気指標としての賃金変化率、これは一定の同一事業所の平均、同一事業所で出す共通事業所というのがありますが、賃金変化率としては景気指標として、同一事業所の平均賃金の変化を示す共通事業所、これがそれぞれ重視していくことが重要との見解が示されました。そして、(志位「早く(答弁を)。マイナスになるんじゃないかと聞いている」)……。ですから、われわれが見ているのは、この本系列で見ていますから(野田「簡潔にお願いします」)、この共通事業所の推計値はわれわれの出したものではありませんので、私は答弁は控えたいと思います。

 志位 いまの答弁でもね、賃金の増減をはかるには「共通事業所」が適切だということは否定していない。だったら出しなさいよ(「そうだ」の声)。実質賃金がどうなっているか、きちんと示しなさい。賃金の増減を見る数値はこれしかないんですから。出すことをあらためて強く求めます。

6年間の推移では、政府公表値でも、実質賃金は10万円以上落ち込んだまま

図

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」、5人以上事業所、実質賃金指数(現金給与総額)を年額換算、単位:万円

 志位 次に進みたいと思うんですよ。2018年だけでなく、次のパネルを見てください(パネル4)。この6年間の推移を見るとどうなるか。

 もう一枚、毎月勤労統計からグラフを作成いたしました。2012年から18年までの平均実質賃金の推移を、これは政府公表値から作成したものです。今度は総理に聞きます。実質賃金は、2014年の消費税8%への増税を契機に大きく落ち込んで、13年平均で392・7万円ですが、それに比べて、18年は382・1万円と、10万円以上も落ち込んだままなんですよ。これは、政府の公表値です。

 総理、一人一人の労働者の実質賃金を示す毎月勤労統計で、この6年間の推移を見れば、政府の公表値でも、「所得環境は着実に改善している」というあなたの主張に真っ向から反する結果が出ているじゃないですか。この6年間の推移について。総理、真っ向から反するじゃないですか。総理、答えてください。

 茂木 名目賃金につきましては、間違いなくですね、プラスで推移をしております。そしてこの実質賃金の推移でありますが、これは、何度も説明をさせていただいておりますが、われわれも伸び悩んでいると、こういう説明をこれまでも繰り返してまいりました。

 その要因、二つありまして、一つは景気回復にともなって、雇用が増加しております。6年間で就業者数380万人増加する過程において、女性であったりとか、高齢者、比較的、時間が短く、パートで働く方も増えたと。実際、昨年1年間だけでも、女性のですね、就業者数87万人増加をしております。

 そして、われわれとして、デフレというのがやっぱり一番の問題だと。このデフレから脱却をしていく、こういった取り組みや、また原油エネルギー価格の上昇によって物価が上昇したと、こういうことが要因になりまして、実質賃金…ただし、これは、計算上の数字でありますから、これまで申し上げているようにですね、分母がパートの人も含めて大きくなる、つまり10人の会社でいままでフルタイムの人がいたと、パートの人が2人入ると、そうすると分子の従業員数が10人なり12人なりますけど、分母の方は、給与の方はそこまで大きくならないというようなことです。

 志位 伸び悩んでいるということはお認めになりましたけど、パートが増えているとかいう説明でした。しかしね、このグラフでの変化、パートが増えていることで説明つきますか。13年から14年、15年にかけてパートが急増したんでしょうか。これは増税の影響なんですよ。増税の影響によって、平均実質賃金が、「所得環境が着実に改善している」という総理の主張とは真っ向から反する結果になっている。つまりマイナスになっている。これを聞いているわけです。総理、これはお認めになりますね。認めてください。

 首相 もちろんですね、消費税を上げればですね、実質賃金においては、その分ですね、それは押し下げられるのは当然のことでございますが、それプラス、さきほど茂木大臣が答弁をさせていただきましたように、ベースとしてはですね、安倍政権になってから、新たに380万人の雇用が増えました。女性の方だけで200万人増えた。この方々はですね、いわば働き始めた、また働きに戻った、あるいはいままで正規であったのが、定年を迎えたあとですね、非正規になったという方が多いもんですから、収入は下がっている。この頭数で割りますから、当然そうなればですね、毎月のこの勤労統計におきましては、これは下がっていくという…ま、これは名目でも下がります。で、実質においては、まさに、名目で下がるということですが、さらに実質はですね、物価でこれをかけもどしますから、デフレではないという状況ができあがったこと、さらにはですね、また、まあ、石油価格等の変化もあると、こういうことではないかと、こう思います。

 さきほどの、ちょっと付け加えさせていきますと(野田「簡潔にお願いします」)、さきほどのGDPベースの家計消費支出について、水面下というお話をさせていただいたんですが、これはよく見ると13年の平均なんですよね。これ、要するに13年の平均というのは、駆け込み需要があった年の平均ですから、非常に高く出ているんですが、12年からの平均で見ればですね、これはもう、水面上に顔を出して実はいるということでございます。

 志位 これは12年比でも水面下です。いま総理がいろいろとおっしゃったけど、私が聞いたのは、この平均実質賃金の推移で見れば、この「所得環境が着実に改善している」という総理の主張から真っ向から反しているじゃないかと。そういう結論が出ているじゃないかということを聞いたんですが、否定できませんでした。毎月勤労統計では、あなたの主張を真っ向から否定する結果が出ている。そういう否定しようのない現実がこのパネルに表れているじゃないですか。

志位 「今世紀に入って最高水準の賃上げ」というが、実質賃金は最悪水準、実質ベースアップはマイナスではないか

首相 (反論できず、就業者が増えたことを繰り返す)

志位 都合のよい数字をつまみ食いにして「最高水準の賃上げ」などというゴマカシをいうのは金輪際やめるべきだ

 志位 次に私が検討したいのは、連合が発表している賃上げの調査についてです。総理はさきほど、「連合の調査では、5年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げが続いている」とおっしゃいましたね。

 私は、この総理が強調してやまない「今世紀に入って最高水準の賃上げ」なるものは、二重の上げ底の主張だということを今日は指摘していきたいと思います。

実質賃金でみれば「今世紀に入って最悪水準」ではないか

図

連合の資料をもとに政府が作成したグラフ 出典:内閣府「安倍政権6年間の経済財政政策の成果と課題」、総務省「消費者物価指数」、単位:% 実質賃上げ率は、名目賃上げ率を前年の物価変動率(帰属家賃を除く)で調整

 志位 第一は、これが名目ベースの数字だということです。賃金の水準をはかるとき、物価上昇を差し引いた実質賃金が何よりも大切になることは言うまでもありません。買えるモノやサービスの水準は、何よりも実質賃金で決まってくるからです。

 パネルをごらんください。(パネル5

 これは、連合の調査にもとづいて作成した、春季労使交渉における賃上げ率のグラフです。青い棒線(細い線)のグラフは、名目ベースでの賃上げ率で、連合の調査をもとに政府が作成したグラフをそのまま書き込んだものです。政府は2002年以降を三つの時期に区分けし、賃上げ率の平均値を計算して書き込んでいます。濃い青の横棒線(太い線)です。この濃い青の横棒線、名目ベースで見ますと、2002年から07年の賃上げ率の平均は1・73%、2010年から12年の賃上げ率の平均は1・7%、2013年から18年の賃上げ率の平均は2・01%と、最近の6年間の賃上げが一番高くなっています。総理は、名目ベースのこの数値をもとに、「5年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げ」ということを強調されているんだと思います。

 しかし、実質ベースではどうか。私は、連合の調査をもとに試算してみました。赤い横棒線(点線)がその結果であります。煩雑になるので三つの時期の実質賃上げ率の平均値だけをグラフに書き込みました。2002年から07年の実質賃上げ率の平均は2・14%、2010年から12年、総理が「悪夢」と悪罵を投げつけている民主党政権時代の実質賃上げ率の平均は2・59%。あなたにとっては不都合な数字かもしれないけれども、これが出てくるんです。2013年から18年、安倍政権のもとでの実質賃上げ率の平均は1・1%なんですよ。13年から18年までの期間は、消費税8%への増税などで物価が上がったために、実質賃上げ率がドーンと大きく落ち込んでいるんです。

 総理、実質賃上げ率で見れば、最近の6年間――安倍政権の6年間は、「今世紀に入って最高水準」でなくて、「今世紀に入って最悪水準」じゃないですか。答えてください。(拍手)

 首相 よくぞ聞いていただきました(笑い)。一つ一つ反論させていただきたいと、このように思います。

 一般の方々が仕事をして給料をもらいます。明細に書いてあるのが、これはまさに名目賃金であります。ここから、これをいわば、物価で割り戻したのがですね、実質になっていくということであります。

 そこでですね、これ、実質、高いのはなぜか。デフレだからなんです。高いのを自慢しているのは、デフレ自慢をしているようなものでありましてね、当時は名目GDPのほうが実質GDPより低いという、名実逆転という異常な経済状況なんですよ。これはまさにデフレスパイラルに入っていくということでしょうね。よければですね、実際にいいんであれば、仕事はどんどん増えているんですか。違うでしょう。違いますよね。当時、有効求人倍率で0・8台じゃないですか。0・82。いま1・6、44年ぶりの高さになっていますよね。これ47都道府県で見てみてもですね、1倍を超えているのはたった八つじゃないですか。八つの県と都。あとは1人の人に、求職者に対して1人分の仕事がないという状況ですよ。そのなかでですね、これは、まさに労働市場もそういうように需給で決まってきますから、そこで実際にもらう給料が増えているわけがないんですよ。だっていまよりも3割多く中小企業が倒産しているんですから。

 そういうなかにおいてですね、これをやっても、まさに、これはそういう、デフレスパイラルにいかに入っていたかということを示す数字であって、大切なことはしっかりとですね、名目GDPが実質GDPを上回っていくということですね。しっかりと成長していくということであります。毎年の賃上げがしっかりと確実に上がっていくということではないだろうかと、こう思います。

 毎勤統計の場合はですね、これはまさに事業所で見ていて、1人の人の賃上げを見ているわけではないんですから、普通の人というのはだいたい、1年間で4月の賃上げで、こう賃金が上がっていきますよね。これはまさに連合のみなさんが計算したというのはですね、これ、もちろん連合に加盟している組合員というのは限られているとはいえ、そこで賃上げがどれぐらい行われたかという平均値なんです。毎月、毎月変わるのはなぜかと。毎月、毎月賃上げをやっているところなんてないわけでありますから、これはやっぱり事業所で増えたりすればですね、この2人だったところが、この40万円、40万円もらっていたとすると、平均は40万円と出るんですが、忙しくなってですね、パートの人たちを10万円、10万円で雇って、100万円を4人で割ったら25万円(志位「それは毎勤(統計)の話ですよ」)、40万円から25万円に下がっています。これは毎勤との関係ですからね。いや、ですから、私は総雇用者所得が大切だということと、連合の話のこの賃上げは実際に賃上げが行われているということであって、この名目と実質の関係はそういうことではないかと、こういうことでございます。

 志位 私はあなたが、「今世紀に入って最高水準(の賃上げ)」とおっしゃるから、それは名目でしょうと。名目なんですよ。実質(賃金)は、さっき言ったように、消費税増税による物価上昇に追いついていないじゃないかと、これを見なくちゃいけないといっているんです。

 たしかにデフレは問題ですよ。しかし、デフレのときは、賃金が名目で上がらなくても、購買力は保たれるわけですよ。

 しかしいまは、物価上昇に賃金が追いつかないんだから。追いつかない。追いつかないんだから、これは、「今世紀最高の賃上げ」なんていうことはいうべきじゃない(「そうだ」の声)。「今世紀最悪水準」じゃないかと。実質で見なさいよ。モノやサービスを買えるのは実質賃金ではかられる。名目じゃないんです。

「5年連続のベースアップ」というが実質でみればベースダウンではないか

図

出典:連合公表資料、総務省「消費者物価指数」、単位:% 実質ベースアップ率は、ベースアップ率 を前年の物価変動率(帰属家賃を除く)で調整

 志位 そしてもう一つ、しかも、この数字はですね、「定期昇給」を含んだ数字になっている。「定期昇給」というのは年齢や勤続年数に応じて賃金が上がる制度で、それを確保することはもちろん大切ですが、確保したとしても労働者全体の賃上げにはなりません。賃上げというなら「ベースアップ」――労働者全体の賃金水準の引き上げが何よりも大切になります。総理自身、「多くの企業で5年連続となるベースアップが行われ、その水準も昨年を上回っています」などとベースアップを強調してきました。それがどうなっているか。

 パネルをごらんください。(パネル6

 これは、2014年から18年までの5年間の、「定期昇給」を含む賃上げ率と、ベースアップ率についてのグラフです。連合の資料から作成いたしました。連合は、「定期昇給」分とベースアップ分をちゃんと区別して調査・発表しています。青の棒線(上の線)は「定期昇給」を含む名目賃上げ率、緑の棒線(真ん中の線)は名目ベースアップ率、そして、赤の棒線(下の線)ごらんください、物価上昇を差し引いた実質ベースアップ率であります。

 赤の棒線――実質ベースアップ率をみますと、2014年がマイナス0・12%、15年がマイナス2・53%、16年がマイナス0・55%、17年は0・58%ですが、18年はマイナス0・06%、5年間平均でマイナス0・54%になるわけであります。

 総理、あなたは「5年連続のベースアップ」をさかんに強調されてきましたが、この5年間のベースアップは、物価上昇に追いついていない。労働者全体の実質での賃金水準はマイナスじゃないですか。これお認めになりますね。

 首相 これもよく聞いていただきました。このベースアップ、ありますね、14年から。この前、どうなってたと思います。実はですね、民主党政権時代、私、悪夢と呼びましたが、実はですね、連合はね、ベースアップ、これ、集計すらできなかったんです。していないの。なぜかというと、ベースアップの要求していないからです。とてもそういう状況じゃなかったんですよ。いわば、安倍政権になって、これ久々にベースアップ、復活したんですね。私の地元の山口銀行というところのベースアップ、復活したんですが、それまでもう、そのソフトなかったんですよ。そういう状況から、ベースアップができるという状況になったんですよ。ですからそういう意味ではよく出していただけたと思いますよ。この前はそういう要求すらないから。そういう統計も取ってないんですよ。ですからそれがやっとこういうことになってきた、ということでありまして、ベースアップだけではなくて、この上に、しっかりと、このまあ、報酬全体が乗っている、ということでございます。

 大切なことはですね、まあ、ちゃんと働きたい人が仕事があるという状況なんですね。さきほどのなかで、実質にしろ、名目にしろですね、失業している人たちはですね、失業している人たちはそこ入ってないんですから、まさに380万人の人たちが仕事を得て、プラス増えたわけじゃないですか。また、正規雇用だってですね、われわれ政権を取る前、前の政権、民主党政権、悪夢と呼びましたが、あれ50万人正規雇用減ってるんですよ。われわれ78万から6万、8万、おそらく6年間見ればもっと増えてると思いますよ、正規雇用増やしたんですよ。これはもう明らかにファクトですから、そのなかにおいて、当然名目賃金が上がっている、ということであります。

 志位 「380万の就業者増」についてはあとで論じたいと思いますがね、「かつてはベースアップという言葉すらなかった」と。それが復活しただけでもいいじゃないかとおっしゃった。しかし、私が聞いたのは、いまの現実は、実質で見ればベースアップになってないってことなんですよ。ベースアップどころかベースダウンじゃないですか。この事実をちゃんと認めていただきたい。

 この事実を見ないで、いやいや名目ではベースアップでございますと、今世紀最高の水準での賃上げが続いていますと、こういうやり方は、私はフェアじゃない(「そうだ」の声)。ですからこれは、ベースアップじゃなくベースダウンじゃないかと。実質では。事実じゃないですか。赤の(棒線の)部分ですよ。ベースダウンじゃないですか。これはお認めください。

 茂木 まずですね、これ分けて考えなくちゃいけないのは、連合はですね、額面でしか出しませんから、名目の賃上げ率もベースアップ率もブルーとグリーンのラインだけです。赤は恐らく、先生の方で独自にまあ、計算をされた結果ではないかなと、そのように思いますけれど、その上で、大切なことはですね、例えば、その前のグラフにもありましたけれど、実質の賃金は高いと、しかしその分はほとんどがですね、デフレによる影響と、それによって経済が縮んでしまう、これよくなかったわけですよ。有効求人倍率が0・82の時代です。いま1・63になっている。そしていろんな人が仕事ができるようになってきている。さらにこの好循環をわれわれは回していきたいと思っておりますが、この名目のベースアップにしてもですね、いままで企業はやはりデフレの時代はベースアップをやると固定費が増えるということで躊躇(ちゅうちょ)をしていたの、このアベノミクスによりまして、ベースアップに踏み切る、大きな一歩を踏み出してるんだと思います。

国民の暮らしに心を寄せるなら、名目でなく実質でみるのは当たり前

 志位 全然答弁になっていない。私は、名目だけで見てはいけない。実質を見なくちゃいけないと何度も言っている。国民の暮らしに心を寄せるなら、名目でなくて実質で見るのは当たり前じゃないですか。それを調べてもいない。それはもうどうでもいい。これは国民の暮らしに関心を持っていないと言わざるを得ません。

 「今世紀に入って最高水準の賃上げ」という総理の主張は、名目ベースの数字、「定期昇給」を含んだ数字という「二重の上げ底」の数字をもとにしたものでした。「二重の上げ底」を取り払ってみれば、賃上げどころか賃金はマイナスなんですよ。

 連合の調査から都合のよい数字だけをつまみ食いにして、「今世紀に入って最高水準の賃上げ」とか「所得環境は着実に改善している」などというゴマカシをいうのは金輪際やめるべきだと言っておきたいと思います。(「そうだ」の声)

志位 384万人の就業者増の中身は、年金だけでは生活できない高齢者、高学費に苦しむ学生――この現状を「所得環境の改善」というのか

首相 (高齢者、学生の現状についてまともに答弁できず)

志位 生活に苦しむ多くの人々に追い打ちをかける消費税10%への増税をやめよ

 志位 さて最後に、この問題で総理が強調してやまない「総雇用者所得」について検討したいと思います。

 総理は、「安倍政権において就業者が380万人増えた」、「こうした形で総雇用者所得が増加している」といいます。「働く人が増えたからみんなの稼ぎが増えた」「所得環境は改善している」といわれますが、この380万人の中身はどうかということです。

384万人の就業者のうち、高齢者が266万人、学生・高校生が74万人

図

出典:総務省「労働力調査」から志位和夫事務所が作成

 志位 次のパネルをごらんください。(パネル7

 これは、安倍政権の6年間――2012年から18年の就業者増の内訳のグラフです。総務省の労働力調査から作成しました。この6年間で、就業者は総数では384万人増えています。その内訳を見ますと、下から、15歳~24歳までで90万人増、25歳~64歳までの現役世代では、女性の就業者は増えておりますが男性が減っているためにトータルではわずか28万人増、そして65歳以上の高齢者で266万人増となっています。

 就業者の増加の7割は高齢者ですが、高齢者が働く理由は何か。内閣府が高齢者を対象に行った国際比較調査――「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によりますと、高齢者が「就労の継続を希望する理由」は、ドイツやスウェーデンでは第1位が「仕事そのものが面白いから、自分の活力になるから」となっているのに対し、日本では断トツ1位が「収入がほしいから」となっています。「年金だけでは生活できない」「年金が減らされてこれからの生活が不安」「働けるうちに少しでも将来のための蓄えを残したい」――こういう思いから多くの高齢者が無理をしてでも働かざるを得ない。これをもって「所得環境の改善」といえるのか。

 もう一つ、就業者が増えているのが15歳~24歳ですが、この世代での90万人の就業者増のうち、調べてみますと、学生と高校生の就業者増が74万人となっています。高すぎる学費のもと、「仕送りだけでは生活できない」と、アルバイトをやらざるを得ない。日本学生支援機構の調査では、夏休みなど長期休暇中のみのアルバイトが減少し、授業期間中に行うアルバイトが増加し、約8割の学生が授業期間中にアルバイトに従事しています。

 総理、「年金だけでは生活できない」と高齢者が無理をしてでも働かざるを得ない、「仕送りだけでは生活できない」と学生が勉強の時間を削ってアルバイトをやらざるを得ない――総理は、こういう現状をもって「所得環境は着実に改善した」とおっしゃるのですか。

 首相 まずですね、生産年齢人口が500万人減っているという事実があります。当然、生産年齢人口が減る中において、これだけ380万人増えるわけでありますから、その中では、さきほどらい説明しておりますように、65歳以上の方が増加をしている。ですから、毎勤統計でみればですね、名目においても実質においても、これは下がってくる要素になってくるということを今説明していただいているんだろうと思いますが、そこでですね、高校・大学の例えば、これ大学生ということでアルバイトということなんでしょうけども、同時にですね、昨年の12月1日時点においてですね、大学卒の方の就職内定率は過去最高になっております。ということはまさにこれは、学生のみなさんがですね、会社を選べる状況になっているということになるわけでありまして、有効求人倍率が0・82だったということはですね、1人の求職者に対して、1人の求職者に対して1人分の仕事がなかったんですから。今はまさに、選べる状況になってきたということを申し上げているわけでございます(野田「ご静粛に」)。それと、それは非常に重要なことなんですよ、非常に重要なことなんですよ。65歳以上の方、もちろん、収入を増やしたいから働く方、しかし、収入を増やしたいから働こうと思ったって、普通なかなかですね、65歳を超えてすぐに仕事というのはなかなかなかったんだけれども、これは今まさに仕事があるという状況を私たちがつくりだすことができたということではないでしょうか。そうでないとですね、いきなりですね、リーマン・ショックの後もですね、リーマン・ショックの後、その当時みんな収入高かったんですか、そうじゃないですよね。しかし、その時は残念ながら仕事をしようと思ったってそう簡単には仕事がなかったのは事実であろうと、こう思うわけでございます。

 志位 私は、高齢者の現状、学生の現状を具体的に指摘して、こういう現状をもって、「所得環境が改善している」といえるのかと質問したんですよ。まともな答えがない。いろいろとまた、同じことの繰り返しです。

政治がやるべきは低すぎる年金の底上げ、高すぎる学費の抜本的引き下げ

 志位 高齢者が「年金だけでは生活できない」といって働いている。そして学生が高すぎる学費に苦しんでアルバイトに追われている。これは事実です。しかも授業期間中にアルバイトをやっている、8割の学生が。これは事実なんですよ。こういう現実を踏まえるなら、政治がやるべきことは、低すぎる年金の底上げをはかることであり、高すぎる学費を抜本的に引き下げることではないですか。消費税を10%に増税することは、生活に苦しむ高齢者、学生、女性、多くの人々に追い打ちをかけることであり、絶対やってはならないことではないですか。いかがですか。

 首相 だからこそですね、来年度からはですね、真に必要な子どもたちに対する高等教育無償化を行います。と同時にですね、すでに始めていることでありますが、いわば返金不要の奨学金を拡充してまいります。それのみならずですね、授業料を減免して、なおかつ生活費にも充てることができるような形でですね、われわれ奨学金を出していくということで、そういう学生のみなさんがアルバイトをしなくて学業に専念できるような環境をつくるためにしっかりと取り組んでいるわけであります。さらにそれを進めていきたいと考えています。

 志位 給付制奨学金を創設したとおっしゃったけれども、何人ですか。わずか2万人でしょう。300万人の学生の1%足らずですよ、現状は。それから学費の無償化を検討しているというけど、要件が厳しすぎて、これはごく一部のものです。ですから本気でやるというんだったら、もう給付型奨学金をドーンとやらなくちゃいけない。学費の値下げも大幅にやる必要があります。私はそのことを聞いたんです。そしてこういうもとでは消費税の増税は絶対にやってはならないと聞いたわけであります。

消費税10%への増税の「根拠」は総崩れ――増税はきっぱり中止せよ

 志位 総理は、「所得環境は着実に改善している」と主張し、10月からの消費税10%への増税の最大の「根拠」とされてきました。しかし、今日議論してきたように、毎月勤労統計でも、連合の調査でも、安倍政権になってからの労働者の実質賃金はマイナスでした。名目、名目とおっしゃるけど、実質賃金はマイナスなんです。そして「総雇用者所得」と、あなたが強調してやまないその実態も、380万人増えているというその実態も、私が話したように、「所得環境の改善」の根拠とはなっていない。なっていないですよ。高齢者だって、学生だって、女性だって。

 私は、消費税10%への増税の「根拠」は総崩れになったと思います。ですから増税計画をきっぱり中止することを強く求めたいと思います。(拍手)

志位 中小企業団体のなかで「ポイント還元」に手放しで歓迎する声がどこにあるか

経済産業相 (具体名をあげられず)

志位 中小小売業者からも国民からも総すかんの天下の愚策は絶対に認められない

「ポイント還元」――混乱、負担、不公平をもたらすとして怨嗟の的に

 志位 さらに問題点をただしていきたいと思います。

 安倍政権が行おうとしている、消費税増税に対する「景気対策」なるものが、前代未聞の異常で奇々怪々なものになったことへの強い批判が広がっております。

 とくに「ポイント還元」は、複数税率とセットになることで、買う商品、買う場所、買い方によって、税率が5段階にもなり、混乱、負担、不公平をもたらすとして怨嗟(えんさ)の的となっています。

 ところが総理は、本会議での私の質問への答弁で、「ポイント還元」について、中小企業団体などからの「現場の声」に応えたものだとのべました。

 いったいどこにそのような「現場の声」があるのか。昨年12月、日本スーパーマーケット協会など流通3団体は、「ポイント還元」の見直しを求める異例の意見書を政府に提出しています。意見書では、「一般の消費者にとっては極めて分かりづらい制度となり、日々の買い物において必要のない混乱が生じるのではないか」、「事業者間の競争環境に大きな影響を与え、かえって過当な競争を招き込む」などの強い懸念が表明されています。

 総理にうかがいます。「ポイント還元」を批判する声、懸念する声はたくさん聞こえてきますが、中小企業団体のなかで、これを手ばなしで歓迎する声がいったいどこにあるんですか。具体的に示してください。あなたの答弁ですから。総理に聞いています。

 世耕弘成経済産業相 今回はですね、やはり8%への引き上げの際に予想以上に景気が低迷をして、その後、景気の回復に力強さを欠いたということ、これを受けた施策であります。このためですね、消費税率10%への引き上げにあたって、中小企業団体からは商工会議所、あるいは中小企業連合会からですね、まず今回は強力な需要喚起策を講じてほしいという要望がありました。それを受けてわれわれはポイント還元、しかも5%という形でやらせていただいております。その上で、商工会連合会からもキャッシュレスを行うんだったら事業者が意欲のわくような支援策をしてくださいということですから、端末購入費用の補助ですとか、あるいは支払手数料の補助という仕組みも入れているところであります。しっかり中小企業団体の声に耳を傾けた施策になっていると考えております。

 志位 だめですね。具体的な(中小企業)団体名を上げられない。そしてやるんだったらこれをやってほしいという話でした。

東京・北区の十条銀座商店街で出された懸念、不安、批判の声

図

 志位 私は、先日、東京・北区の十条銀座商店街を訪問し、経営者の方々から、消費税増税と「ポイント還元」について意見をお聞きしました。

 経営者の方々からは、「消費税引き上げには反対だが、10%に上げるなら、品物によって税率を変えるとか、ポイント還元とかやらないでほしい」、「私のまわりのほとんど全員が、今度のやり方に怒っている」。こうした強い批判の声が寄せられました。

 パネルをごらんください。(パネル8

 「ポイント還元」については、次のような懸念、不安、批判が寄せられました。おおまかにいうと三つです。

 一つは、キャッシュレス決済に対応できなくなる商店が出てくるということです。売り上げの少ない商店、高齢者のやっている商店などでは、対応できなくなる商店が出てくる。対応できない商店はお客が他にとられてつぶれてしまう。商店街つぶしだという批判です。

 二つは、カード会社に払う手数料が心配だということです。増税実施から9カ月間に限って手数料は売り上げの3・25%以下、そのうち3分の1は補助ということですが、それでも売り上げの一部、2%以上を手数料としてカード会社に払わなければならない。9カ月たてば3・25%の制限はなくなり、補助もなくなり、手数料が引き上がる。中小小売店の場合、手数料は5%から10%にもなる。その時は品物の値段に乗せるしかない。それができなければ利幅が減る。商店の経営にとって大きな重荷になるという、こういう批判でありました。

 三つは、キャッシュレスになると商品が売れても現金がすぐに入ってこなくなる。半月先、ひと月先にならないと現金が入ってこない。それでは資金繰りが苦しくなる。小さな商店ではお金がまわらなくなってつぶれてしまう。こういう不安であります。

 総理にうかがいます。総理は、先日、東京・品川区の戸越銀座商店街を訪問したそうですが、中小小売店のみなさんからこうした懸念、不安、批判、そういう声は出なかったのですか。

 首相 私も戸越銀座にいきました。志位さんにもぜひ足を運んでいただければと思っておりますが、先日、商店街に足を運びましたらさきほどもお話になりましたようにQR決済は、店舗にQRコードを一枚紙を置いておくだけで、町の花屋さんも簡単に導入できたと、このように言っていたわけです。今回、幅広い決済資料を対象としますが、中小・小規模事業者のみなさんに対しては決済端末導入を支援し、負担をゼロにするとともに、手数料についても3・25%以下としたうえでさらにその一部を補助するということにいたします。いわばわれわれも、今回政府として、世耕大臣から答弁させていただきましたが、こうしたことを進めていくことによって、いままで手数料が高くてなかなかキャッシュレスの中に入れなかった方々も入ってくることが可能になってくるのかなと。こう思っておりますし、たとえばレジ締めの手間の削減による現場の生産性の向上もありますし、海外では、急速にキャッシュレスが進んでいます。そのなかで果たして日本だけが進んでいない状況を続けられるのかと言ったらそんなことはないのだろうと思います。日本を訪れた観光客の7割がキャッシュレスがあればお金をもっと多く使ったということでありまして、いま海外のお客さんは銀座などだけではなく戸越銀座にも足を運び始めています。そこの魚屋さんにもずいぶんたくさんの海外からのお客さんが来ているとうかがっています。かつては海外からの観光客は中央区の銀座にしか行きませんでしたが、いまはそこだけでなくいろんなところに結構足を運んでいただいて、そういうところでしっかりとキャッシュレスの流れをつかみ取ることができるように、政府としてもこの機会を活用して支援をしていきたいと考えております。

 志位 私は、戸越銀座でこういう不安の声を聞かなかったのかと聞いたんです。こういう不安の声はたくさんありますよ。ちゃんと歩いてください。そういう都合のいい話ばかりではないんです。手数料一つとっても3・25%に制限する、補助を一部出すというが、それは9カ月に限っているではないですか。だからみんな不安なんですよ。キャッシュレス、キャッシュレスと言うが現金がすぐに入ってこなくなる。これも不安なんですよ。

 「中小小売店のため」といってこれを導入しようというが、現場の中小小売店のみなさんからは非難ごうごうなんです、これは。そして、この間行われた「毎日」、「読売」、「共同」の世論調査のどれをとっても、国民の6割以上は「ポイント還元」に反対なんですよ。中小小売業者からも国民からも総すかんの天下の愚策は絶対に認められません。

志位 富裕層と大企業への優遇税制にこそメスを――経済同友会、OECDの証券取引への課税強化の提案を真剣に実行せよ

財務相 従来の20%にさせていただいた

志位 その見直しでは不十分ということでの、わずか5%の課税強化もやらないのか

図

出典:国税庁「申告所得税の実態(2016年分)」(18年2月公表)のデータから作成、単位:% 所得税負担率=(源泉徴収額+申告納税額)/申告所得額×100

 志位 最後に、増税するなら、空前の大もうけを手にしている富裕層と大企業への優遇税制にこそメスを入れるべきだと主張したいと思います。

 富裕層の株のもうけ(への課税が)、軽すぎます。20%です。これに欧米なみの課税を行うべきです。それから大企業と中小企業、中小企業の方が法人税の実質負担率が高い。この不公正をただして、大企業に中小企業なみの税負担を求める、これやっただけで5兆円くらい出てくる。消費税10%増税分の税収は確保できます。消費税に頼らない別の道を選択すべきです。

 総理に一点に絞ってお聞きしたいと思います。

 パネルごらんください。(パネル9

 これは有名なグラフですが、所得税の負担率は、所得1億円がピークになっておりまして、これを超えると、所得が増えれば増えるほど逆に下がっていく。株取引にかかる税金が一律20%と大変に低い。その結果このような逆転現象が起こっているのであります。

図

 もう一つパネルをごらんください。(パネル10

 この異常に軽い富裕層への証券課税については、さすがに2016年の経済同友会の提言でも「株式譲渡所得および配当所得課税の税率を5%程度引き上げる」との提言が出ています。それから17年のOECD(経済協力開発機構)の対日経済審査報告書でも「キャピタルゲイン、配当、利子所得の税率を25%に引き上げることで、税収を増加させる」という提案が出ている。

 総理、経済同友会、OECD、この提案は、誰が考えても当たり前の、最小限の提案じゃありませんか。真剣に実行すべきではありませんか。

 麻生財務相 今、金融所得課税等々お話があっておりましたけど、ご存じのように平成26年(2014年)からいわゆる上場株式の譲渡利益については、従来の20%にさせていただいたところでございます。したがって高所得者ほど所得税の負担率が上昇する傾向がみられて、所得配分機能の回復に一定の効果があったのではないかとご存じのとおりだと思います。

 また金融所得に対する課税の在り方については、与党の税制改正の大綱の中におきましても、家計の安定的な資産形成を支援するとともに税負担の垂直的な公平性を確保する観点から検討されるということとしておりますほか、経済の影響をどう考えるべきだといった点につきましてもいろいろやらせていただいたところでありまして、所得税の最高税率も40から45に引き上げておりますし、また、所得税の基礎控除も2500万円超で消失ということにさせていただいたりいろんなことさせていただいておりますのであります。

 志位 2013年の末に株取引への税金を20%にする見直しをやったといいましたけどね、経済同友会の提言も、OECDの提言もそののちに、それでは不十分だということでなされたものなんですよ。こんな5%の課税もやらないのか。

志位 消費税10%への増税の中止を重ねて強く求める

 志位 消費が冷え込み、賃金・所得が落ち込むなかで、庶民には5兆円もの大増税をかぶせながら、空前のもうけを手にしている富裕層へ課税はかたくなに拒否する。こんな間違った政治はありません。私たちは消費税10%への増税の中止を重ねて強く求めて、質問を終わります。(拍手)