志位和夫 日本共産党

力をあわせて一緒に政治を変えましょう

インタビュー・対談

2019年1月1日(火)

志位和夫委員長 新春インタビュー

日本を変えるたたかいに挑戦を

沖縄と憲法――二つの大きな成果を確信に

聞き手 小木曽陽司・赤旗編集局長


写真:新春インタビュー

 小木曽陽司 あけましておめでとうございます。

 志位和夫 あけましておめでとうございます。

 小木曽 今年はいよいよ統一地方選、参院選の年です。安倍政治とのたたかいも正念場です。昨年1年をふりかえりつつ、新年の抱負についてうかがいます。

 志位 昨年の「党旗開き」で、私は、「今年は絶対に負けられない二つのたたかいがある」と訴えました。一つは、沖縄県知事選挙で必ず勝利を勝ち取ること。いま一つは、安倍首相による憲法9条改定を許さないことです。

 沖縄県知事選では、「オール沖縄」の玉城デニー候補が、安倍官邸が総力支援した丸抱え候補に8万票の大差をつけて、知事選史上最高得票で圧勝しました。改憲を許さないたたかいでは、安倍首相は憲法審査会を動かして自民党改憲案を提示しようと執念を燃やしたわけですが、それを水際で撃退し、昨年の国会では断念に追い込んだ。この二つは大きな成果です。

 もちろん、どちらのたたかいも決着はついていません。今年は沖縄も憲法も正念場を迎えますが、安倍政権の思い通りにさせなかったことは、今年のたたかいを展望しても、大きな土台になるものです。

 小木曽 二つのたたかいでは、やはり「共闘の力」が大きかったですね。

 志位 そうですね。私たちは「市民と野党の共闘で政治を変える」という立場を堅持して、あらゆるたたかいにのぞみました。

 昨年を振り返って、野党の国会共闘の画期的な発展は特筆すべきです。昨年1年間で、5野党・1会派による「合同ヒアリング」が、通常国会、閉会中審査、臨時国会をあわせて167回も開かれました。野党が一致結束して安倍政権を追い詰め、政治を動かすいろいろな成果もあげてきました。

 「働き方改革」にかかわって、裁量労働制に関するデータのねつ造を暴いて、裁量労働制拡大の部分を法案から削除させたこと、外国人労働者の受け入れ拡大問題で、失踪した技能実習生から聞き取った「聴取票」のデータ改ざんを明らかにし、その実態を明るみに出したこと、などです。野党議員が力をあわせて「聴取票」を閲覧し一枚一枚書き写しする“写経共闘”も取り組まれました。安倍政権をボロボロになるまで追い詰め、そういうたたかいとあいまって、自民党改憲案を憲法審査会に出すことを許さない抵抗線がはられて、実際に水際でくいとめることができたのです。

 小木曽 なるほど。「オール沖縄」の共闘も、こうすれば勝てるという共闘のお手本を示すものでしたね。

 志位 ええ。何といっても明確な対決軸――辺野古新基地建設反対をひるむことなく掲げたことです。もう一つは、「心一つの共闘」――私たちは「本気の共闘」という言い方をしていますが、共闘の中にはいろいろな立場の人がいる、その立場の違いをお互いにリスペクト(尊敬)し合い、大義のもとに結束して頑張るということです。「沖縄のようにたたかえば勝てる」――このことをみんなの確信にして、今年は、日本を変えるたたかいに挑戦したい。

 統一地方選挙、参議院選挙は、日本の命運を分けるたたかいになります。市民と野党の共闘の勝利、日本共産党の躍進で、安倍政治を終わらせ、希望ある新しい政治に踏み出す年にしていきたいと決意しています。

安倍政治をどう倒すか――「忘れず、あきらめず、連帯して」

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(写真)志位和夫委員長

 小木曽 安倍政権とのたたかいは昨年暮れで7年目に入りました。安倍政治をどうみて、どうたたかうかは、引き続き大きなテーマです。委員長は昨年衆院在職25年を迎えましたが、安倍政治をどのようにみていますか。

 志位 戦後政治史に類を見ない悪質な政権ですね。この戦後最悪の政権にはメダルの表裏のような特徴があると思います。

 一方で、国民の民意を踏みつけにする強権政治です。国民多数が反対した安保法制=戦争法、共謀罪、秘密保護法を「数の力」で強行する。沖縄県民が何度選挙で「ノー」の審判をつきつけても辺野古新基地を力ずくで押しつける。

 もう一方では、ウソと隠ぺいの政治です。「森友・加計疑惑」にみられるように、総理大臣自身がウソをつく。そのウソにつじつまをあわせるために、まわりがウソをつくという“ウソの連鎖”が広がりました。隠ぺい・改ざんが、「森友・加計疑惑」だけでなく、「働き方改革」、南スーダンの自衛隊「日報」、外国人労働者問題などあらゆるところで起こった。政治モラルの一大崩壊が起こっています。

 強権政治を押し通すために、ウソをつき隠ぺいする。まさにメダルの表裏です。類をみない悪質さだと思います。

 小木曽 強権とウソ、そういうやり方に頼るしか、もはやこの国を統治する術(すべ)をなくしているということですね。その意味では大変もろい政権ですね。

 志位 そうです。どちらも決して政権の強さを示すものではなく、破たんの表れです。国民に説明がつかないことを無理押ししようとするから、強権に頼り、ウソや隠ぺいに頼る。

 小木曽 もっとも、これほど悪事を次から次へと続けられると、悪慣れし、あきらめてしまうということにもなりかねない。どう押し返していくか。

 志位 昨年各地で行われた演説会で、私は、「安倍政権がこれだけ悪事を重ねているのに倒れないのはなぜか。その理由と倒す方法をお伝えしましょう」(笑い)とのべ、安倍首相が権力を維持してきた「三つの卑劣な手口」を告発したんです。

 一つは、次々に目先を変えて国民に悪事を忘れさせる。二つ目は、強権に次ぐ強権を振るうことで国民をあきらめさせる。三つ目は、自分を批判する者は敵だと国民の中に分断を持ち込んでいくというものです。

 「忘れさせる」「あきらめさせる」「分断を持ち込む」というのが、相手側の常とう手段だとすると、国民がこれを倒す方法がはっきりする。第一は、安倍首相がやってきた悪事を一つ残らず覚えていて、忘れないで選挙で審判を下す。第二は、相手があきらめることを狙ってくるのだったら、沖縄のみなさんがやっているように、勝つまであきらめずにたたかい続ける。そして第三は、分断を持ち込むのなら、立場の違いを超えて連帯でこたえよう、市民と野党の共闘でこたえよう。「忘れず、あきらめず、連帯して」――この姿勢を堅持してたちむかうことが大切ではないでしょうか。

 小木曽 これは非常にわかりやすいですね。「忘れず、あきらめず、連帯して」を合言葉にたたかっていきましょう。

こんなアメリカ言いなり政治でいいのか(1)――沖縄への連帯のたたかいをさらに

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(写真)辺野古新基地建設は許さないと抗議集会に参加する人たち=2018年12月14日、沖縄県名護市辺野古

 小木曽 強権政治の最たるものは沖縄の新基地建設強行だと思います。昨年12月14日に辺野古の海を埋め立てるための土砂投入が強行され、怒りと抗議の声が一気に広がっています。

 志位 辺野古の海への土砂投入は、絶対に許せない。政府がここまで無法に無法を重ねているのは、もはや法治国家とはいえないし、民意を踏みにじるという点では、民主国家ともいえない。本当に許されないことです。

 ただ、展望がないのは政府の側です。沖縄の地元紙の報道によると、防衛省は2018年度に予定していた大浦湾側の護岸工事を20年度以降に見送ることにしたといいます。大浦湾には厚み40メートルものマヨネーズ状の「超軟弱地盤」が存在するため、大規模な地盤工事が必要となり、そのためには設計変更が必要です。設計変更には知事許可が必要ですが、デニー知事は断固反対です。だからこの報道によれば、防衛省担当者も大浦湾側での護岸工事に「着手できる見込みがない」といっているとのことです。

 追い込まれているのは政府の側です。デニー知事が頑張り、「オール沖縄」のみなさんが頑張り、全国が連帯すれば辺野古新基地は絶対つくれません。

 小木曽 土砂投入に対する怒り、抗議の広がりがすごいですね。

 志位 土砂投入という一大暴挙を転機にして、抗議の質が変わってきたと思います。

 一つは国内世論です。昨年12月の報道各社の世論調査では辺野古の土砂投入について、「反対」「不支持」がどれも50~60%台で多数です。沖縄のことを「わが事」として考える流れが日本列島に広がったというのは、大きな変化だと思います。

 もう一つ、世界からの批判が広がっている。ハワイ在住のロブ・カジワラさんが提起して、今年2月の県民投票までは埋め立てをやめるようトランプ米大統領に求める電子署名が始まり、16万人を超えたと報じられています。日本国内でも、タレントのローラさんなど多くの著名人が署名をよびかけ、大きな話題になっています。

 土砂投入を契機に、沖縄の怒りが、全国に、さらに世界に、あふれるように広がっています。

 小木曽 街で訴えていても反応が変わったという声が全国から寄せられます。

 志位 思いがけないところから発言が飛び出しています。ロシアのプーチン大統領が、辺野古新基地に対する日本政府の姿勢を引き合いに、ロシアが領土を日本に返した場合に米軍基地が置かれる可能性について、「日本の決定権に疑問がある」とのべたのです。「知事が基地拡大に反対しているが、何もできない。人々が撤去を求めているのに、基地は強化される。みなが反対しているのに計画が進んでいる」と。千島を占領し、クリミア半島を併合したロシアに言われたくはありませんが(笑い)、「日本の決定権に疑問がある」というのは、従属国家の真実を言い当てています。

 朝鮮半島で非核化と平和への流れが開始されているというのに、20年も前に決めた基地の計画を「見直してくれ」ということを一言もいわず、ただ決まったことだからと押しつける。これは最悪の「アメリカ言いなり政治」ですよ。

 小木曽 2月には県民投票も予定されています。

 志位 大成功させたいですね。今年も沖縄への連帯のたたかいをさらに強めましょう。

こんなアメリカ言いなり政治でいいのか(2)――異常な大軍拡にストップを

 小木曽 昨年末、日本の新たな軍事方針「防衛計画の大綱」(大綱)と2019~23年度の武器調達計画を示す「中期防衛力整備計画」(中期防)が閣議決定されました。安倍政権は、これに基づいて総額27兆4700億円というとんでもない大軍拡をたくらんでいます。メディアも「軍事への傾斜 一線越えた」「『専守』の歯止め どこへ」と厳しい批判をしています。

 志位 この異常な大軍拡には二つの側面があります。

 一つは、安保法制=戦争法のもとで一線を越えた質的変化がはっきりあるということです。これまでまがりなりに掲げていた「専守防衛」をかなぐり捨てたことです。

 その象徴は、海上自衛隊「いずも」型護衛艦を改修し、米国製のF35Bステルス戦闘機を運用できるように空母化することです。政府は、「戦闘機を常時搭載しないから、攻撃型空母にあたらない」などといっていますが、横須賀を母港とする米空母ロナルド・レーガンでも、艦載機は1年のうち半分くらいしか載せていない。「戦闘機を常時搭載しないから……」というのは、専門家の間ではおよそ通用しないデタラメです。対地攻撃能力のあるF35Bを「いずも」に載せれば、その搭載頻度にかかわりなく、地球の果てまで行って対地攻撃ができる能力を得ることなる。文字通り空母化です。

 小木曽 まさに安保体制のもとでの日米共同での海外での戦争体制ということですね、「専守防衛」の一線は完全に越えてしまいます。

 志位 もう一つの側面として、トランプ大統領いいなりで、「言われたから買います」という「浪費的爆買い」の問題です。日本政府は米国製のF35戦闘機を147機導入しようとしています。関連経費をふくめると2兆円を超える。これは安保法制=戦争法からも合理的な説明がつかない。航空自衛隊の元幹部は「100機以上も買って、いったい何をするのか。目的が全く見えない」といっています。元陸将の山下裕貴氏は「トランプの言いなりで兵器を買うな」、「貿易摩擦が起きるたびにアメリカから兵器を購入していたら、安全保障上の自主性が失われてしまう可能性もある」(『文芸春秋』19年1月号)と批判しています。もともと日本政府に「安全保障上の自主性」はありませんが(笑い)、いよいよなくなるということでしょう。

 「専守防衛」をかなぐり捨てる、「浪費的爆買い」に走る――いま進められている大軍拡計画は、二重の意味で最悪の「アメリカ言いなり政治」といわなければなりません。

 小木曽 ここまで軍事費が膨らみますと暮らし・福祉への圧迫もひどくなります。

 志位 2019年度予算案をみても、低所得者の後期高齢者の医療保険料の値上げ、生活保護をさらに削るなど、社会保障はわずかなものまで削っているのに、兵器は「爆買い」。冗談ではありません。「軍事費を削って福祉と暮らしにまわせ」――これは私たちの一貫したスローガンですが、いまこのスローガンが切実な重みをもって国民のみなさんの心に響くと思います。ぜひ大きな運動を起こしたいと思います。

 私たちは、安保法制の廃止、日米地位協定の抜本的見直し、辺野古新基地を許さない、大軍拡ストップなど、日米安保条約に対する態度の違いを超えて、切実な一致点での共闘に誠実に取り組みます。同時に、こういう異常な「アメリカ言いなり政治」の根っこには日米安保体制がある。日本共産党は、この根っこまで変えようという大志をもっている党だ、日米安保条約を国民多数の合意で廃棄して、対等・平等・友好の日米関係に切り替えることを、日本改革の方針の根幹にすえている党だ、ということも大いに訴えていきたいと思います。

こんな財界中心の政治でいいのか(1)――消費税10%ストップで大同団結を

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(写真)消費税10%ストップ!ネットワークの街頭宣伝=2018年12月24日、東京・新宿駅西口

 小木曽 経済と暮らしの面で、今年の大きなテーマになるのが、10月からの消費税10%引き上げです。

 志位 私たち日本共産党は、消費税という税金そのものに反対です。立場の弱い方に重くのしかかる逆進性のもっともひどい悪税ですから。同時に、いまの経済情勢のもとで増税したらどうなるか。これは2014年4月に8%へ引き上げたときに証明されているわけです。

 8%への増税を引き金にして、長期にわたる消費の冷え込みが続いている。8%増税から5年近くたってもなお、消費の落ち込みがずっと続き、増税前に比べて1世帯あたり年間25万円も消費が落ち込んでいます。ここで10%となると、日本経済が破滅に落ち込むというのは、立場の違いを超えた声になっています。

 「しんぶん赤旗」日曜版に内閣官房参与の藤井聡京都大学大学院教授が登場し、「栄養失調の子どもに絶食を強いるようなものだ」「日本経済を破滅させる」と反対の声をあげました。『文芸春秋』1月号には、セブン&アイ・ホールディングスの名誉顧問の鈴木敏文さんが、「いまのタイミングで消費税を上げたら、間違いなく消費は冷え込む」と反対しています。消費税は必要という立場の方からも、いま上げるのは自殺行為だという声が共通して出されている。ここが大切なところです。

 小木曽 政府は総額5兆円もつぎこんで「増税対策」を行うとしています。

 志位 「増税対策」が、「ポイント還元」やら「プレミアム商品券」やら「複数税率」やら、奇怪な形で膨れ上がりました。これは10%への増税を実施した場合に、どれほど景気、経済を痛めるかわからない。そのことへの「怯(おび)え」の表れだと思います。

 ただ、これは、混乱必至の事態をつくりだす。オロナミンCが8%、リポビタンDが10%(笑い)。税率だけでも、3%、5%、6%、8%、10%と5種類の税率になる。食料品か非食料品かで違いが出てくる。大手スーパーで買うのか中小小売店で買うのかコンビニで買うのかでも違いが出てくる。現金かカードかでも違いが出てくる。この三つの要素の組み合わせで税率が変わるから、とてつもない複雑な税率になってしまう。(笑い)

 小木曽 とても覚えきれません(笑い)。消費者にとっても、業者にとっても、とんでもない負担と混乱を招くことは必至ですね。日本スーパーマーケット協会、日本チェーンストア協会、日本チェーンドラッグストア協会の小売り3団体がポイント還元は「混乱を招く」と政府に異例の再考を要求しました。

 志位 そんなに景気が心配で奇怪な「増税対策」をやるくらいなら、初めから増税しなければいい。批判の角度はさまざまですが、「10月からの10%は中止せよ」の一点で大同団結することが大切ですね。

 小木曽 やはり消費税に頼らない道を追求しないと。

 志位 そうですね。歴史的にみて、日本の経済の長期停滞がどこから始まったかというと、消費税を5%に上げるなどした97年の9兆円負担増が大きな要因の一つであることは誰も否定できません。それだけの破壊的影響を日本経済に及ぼすことが、すでに実証されているんだから、根本的に別の道を選択する必要があります。

 日本共産党は、富裕層と大企業に対する優遇税制をなくして、一番大もうけしているところに世間なみに払ってもらうという対案を出しています。さらに、下げすぎてしまった法人税、下げすぎてしまった所得税・住民税の最高税率を元に戻す措置を取っていく。軍事費、原発推進予算、大型巨大事業などの無駄遣いにメスを入れるなど歳出改革も進めていく。これらによって当面17兆円の財源をつくろうと提案しています。日本共産党が、消費税に頼らない別の道を示していることを大いに伝え、「この道にこそ未来がある」と大いに訴えていきたいと思います。

こんな財界中心の政治でいいのか(2)――財界主導の「成長戦略」の切り替えを

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(写真)小木曽陽司赤旗編集局長

 小木曽 もう一つ、財界主導の「成長戦略」がどれも行き詰まって、破たんが明確になってきているという問題があります。

 志位 安倍首相の「成長戦略」なるものは、大企業にもうけさせる、そうすればもうけの果実が国民に広く及び、日本経済が成長するという、大企業の応援政策だったわけですけど、その「成長戦略」がどれもこれもうまくいっていません。大企業にはたしかに巨額のもうけが転がり込み、空前の内部留保が積みあがっているが、日本経済はさっぱり成長しない。国民の暮らしは冷え込んでいる。ここでも行き詰まりなのです。

 そのなかで、武器輸出、原発輸出、カジノ解禁など、“禁じ手”に手を出し始めたというのが、この間の動きです。邪道に足を踏み入れた。

 小木曽 臨時国会閉会の議員団総会で委員長が、臨時国会で強行した悪法の名をあげ、すべて経団連発で“禁じ手”に踏み込んでいるという話を大変印象深く聞きました。

 志位 外国人労働者、沿岸漁業、水道事業という、きちんとした公的規制がなければ成り立たない分野まで規制緩和を押しつけ、財界の食い物にしようという法改悪をやりました。“禁じ手”中の“禁じ手”に踏み込んだものです。

 そうした“禁じ手”の政策の大破たんが目に見えてはっきりしたのが、原発輸出だと思います。年末に、日立のイギリスへの原発輸出計画が延期になったというニュースが伝えられました。日本の原発輸出の計画は、米国、台湾、ベトナム、リトアニア、トルコ、インド、そして英国と、軒並み断念・保留に追い込まれた。全滅ですよ。

 東京電力福島第1原発の大事故で、原発の危険性が全世界に広く明らかになった。同時に、原発事故で安全コストが急騰した。原発はもうビジネスとして成り立たないということです。輸出できないものを「コストが安い」とウソをついて再稼働などというのは、まったくの論外だと強くいいたいですね。

 小木曽 しかも、この問題は安倍首相自身がトップセールスで売り込んだものですから、首相の責任が真っ先に問われなければいけませんね。

 志位 その通りです。安倍政権の「成長戦略」――大企業のもうけ口を政治がつくってやって、大企業をもうけさせれば日本経済が成長するというのは幻想だった。それがこれだけ証明されているわけですから、大転換が必要です。働く人の所得を増やし、国民の暮らしを良くすることを最優先において、日本経済の安定した健全な成長をはかるというところに、大きく切り替えていかなければなりません。

 働く人の長時間労働を是正する、最低賃金を抜本的に引き上げる、非正規の方を正社員にする、大企業と中小企業の公正な取引を保障する――国民の暮らしを守るルールをつくっていく。ルールをつくることで働く人の所得を増やし、大企業のなかにたまった400兆円を超える内部留保が、働く人や中小企業にきちんと流れるようにする。そうしたまともな循環が起こるようにして、経済を草の根から温め、健全な成長をはかるというところに切り替えようということを、大いに訴えていきたいと思います。

安倍9条改憲を許さない――野党共闘と「草の根のたたかい」の力で

 小木曽 安倍9条改憲については、昨年は首相の思い通りにさせなかったわけですが、決着がついたわけではありません。首相は臨時国会の最終日に、「2020年は新しい憲法が施行される年にする意思は」と問われて、「その気持ちは変わりがない」と言い切っています。まったくあきらめていません。

 志位 安倍首相がここまで9条改憲に執念を燃やす理由はどこにあるのか。

 一つは、彼の個人的な野望があると思います。自分の祖父――岸信介首相は日米安保条約改定で歴史に名を残した。自分は戦後初めて憲法を変えた総理大臣として歴史に名を刻みたい。将来の学校の教科書にもそう書かれたい(笑い)。そうした個人的野望です。

 ただそれだけではない。より本質的な理由は、安保法制=戦争法をつくって「戦争する国」づくりに向けて駒を大きく進めたが、その安保法制でも越えられない壁がある。武力行使を目的にした海外派兵はできない建前になっている。集団的自衛権の全面的行使もできない建前になっている。だから南スーダンに派兵したが内戦状態になると撤収しなければならない。まだ憲法9条――9条2項は生きているのです。これを文字通り亡き者にしてしまおう。そのためには、憲法9条に「自衛隊の保持」を書き込めばいい。そうなれば、「後からつくった法は、前の法に優越する」という法の原則から、9条2項を「立ち枯れ」にすることができる。海外での武力行使が何の制約もなくできるようになる。こうした執念・衝動が働いていると思います。

 小木曽 それだけに、この9条改憲の野望をどうやって阻むかが、今年の大きな課題ですね。

 志位 今年は、9条改悪の企てを、安倍政権もろとも葬り去るという年にしていきたいですね。

 そのために大切なことの一つは、野党共闘を揺るがないものにすることです。野党各党は、憲法に対する態度はさまざまですが、「これだけ憲法をないがしろにする安倍政権のもとでの9条改憲は認められない」という点では一致しています。「安倍首相に憲法を語る資格なし」――憲法改定という土俵に上がる資格がないということを大いに訴えて、結束して頑張りぬくことが第一です。

 もう一つ、何よりも強調しておきたいのは、勝負は「草の根のたたかい」だということです。自民党の下村博文憲法改正推進本部長が昨年末、日本会議系の集会で、全国289の小選挙区支部で、日本会議と連携しながら、地域の憲法改正推進本部設置を進めるよう要請したというニュースが流れました。下村氏は「国民投票に向けて連絡会をつくりたい。202(支部)までめどが立った。まだ90弱残っているが、何とか年内に達成したい」と発言した。相手は国民投票の準備を始めているわけです。

 私たちは、草の根で安倍改憲に反対する3000万人署名に取り組んでいますけれど、これを集め切って、圧倒的な世論をつくりあげ、相手が恐ろしくて改憲の発議などできないという力関係を草の根でつくりあげる。ここが何よりも重要です。

 小木曽 「国民投票にかけたら敗北必至だ」と、彼らにそう思わせるような草の根の運動をどれだけ広げることができるかにかかっていますね。

韓国訪問について――青瓦台でのやりとりで徴用工問題の解決への道筋が

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(写真)韓国大統領府で会談後、文在寅大統領(右)と握手する志位委員長=2018年12月14日、ソウル

 小木曽 志位委員長は昨年末、韓国とベトナムを訪問されました。どういう目的の訪問で、両国でどのような活動をし、どんな成果があったのか、お話しください。

 志位 まず韓国ですが、日韓・韓日議員連盟合同総会が12月13、14両日にソウルで開催されて、それに参加しました。今回の総会は、朝鮮半島の非核化と平和という新しい画期的情勢が進展する一方、徴用工問題などをめぐって日韓両政府の関係が悪化するというもとで開催されました。

 ですから、日本共産党としてはこの総会を重視し、議員6人、秘書3人の総勢9人を派遣して、この総会が、朝鮮半島の平和のプロセスを促進するとともに、日韓の歴史問題の解決にも資するものとなるよう、力を尽くしました。日本側の参加者は全体で30人だったので、共産党の“議席占有率”は20%、自民党13人に次ぐ“第2党”でした(笑い)。積極的な役割を果たせたと思います。

 小木曽 文在寅(ムン・ジェイン)大統領との会談もあったのですね。

 志位 14日に、日韓議連の代表団として青瓦台の大統領府を訪問し、文大統領と会談しました。日本共産党からは私が参加しました。会談では徴用工問題が焦点となり、やりとりのなか文大統領が、昨年10月の韓国大法院(最高裁)での徴用工問題での判決以降では初めて「被害者個人の請求権は消滅していない」という認識を表明したことは重要であり、韓国では大きなニュースとして報じられました。

 会談のやりとりを紹介しますと、冒頭、文大統領が、日韓議連代表団を歓迎し、「歴史を直視し、未来志向で、平和と繁栄に向けて協力していきたい。不幸な過去をともに克服し、真の友達の関係を築いていきたい」と表明しました。

 日本側からは、額賀福志郎日韓議連会長が発言し、「(出発前に)安倍首相と意見交換を行った。安倍首相と共有したことをのべる」として、「慰安婦問題で『和解・癒やし財団』が解散されたこと、『徴用工』問題で韓国大法院で(賠償命令の)判決が下ったことに、安倍首相も私も、韓国の今後の対応を憂慮している。韓国政府に適切な対応を期待する」とのべました。

 それに対して文大統領は、徴用工問題について、「この問題では、労働者個人が日本企業に対して請求した損害賠償請求権まで消滅したのではないと見ている。十分に時間をかけて、知恵を集めて解決したい。この問題で両国民の敵対感情を刺激しないよう、慎重で節制された表現が必要だ。両国間の友好な情緒を損なうことは韓日の未来の発展に役立たない」と語りました。

 ここで、私は発言を促され、日韓両政府には前向きな一致点があり、打開の方策もしっかりあるということを短い発言で表明しようと考え、こう発言しました。

 「私は、徴用工問題の本質は植民地支配と結びついた人権侵害というところにあると考えている。だから、『植民地支配の反省』を明記した(1998年の)『日韓パートナーシップ宣言』の精神に立って、被害者の名誉と尊厳が回復されるよう、日韓がともに努力していくことが大切だ。

 そのさい、(1965年の)日韓請求権協定によって、両国間の請求権の問題が解決されたとしても、被害者個人の請求権を消滅させることはないということは、日本政府も最近も国会答弁で公式に表明していることだ。(日韓)両国政府はこの点で一致している。この一致点を大切にして、被害者の名誉と尊厳の回復に向けた前向きな解決が得られるよう、日韓の冷静な話し合いが大切だと思う」

 私の発言を受けて、額賀氏が次のような発言を行いました。「個人の請求権については、志位委員長が言われたように消滅していないが、外交保護権については消滅している」

 それを受けて文大統領は最後にこう言いました。

 「額賀会長、志位委員長の発言に感謝する。不幸な歴史の解決に向けて両国の合意をはかりたい。個人の請求権は消滅していないということは重要なことだ。この立場に立てば、円満な解決がはかられるのではないか」

 小木曽 「個人の請求権」をめぐって、そんな重要なやりとりがあったとは驚きました。

 志位 このやりとりについては、青瓦台(大統領府)が発表した「書面ブリーフィング」でも詳細に明らかにされています。

 短い40分程度の会談でしたが、問題解決に向けての前進の手がかりになりうる重要なやりとりになったと思います。会談が終わったあと、私の発言に対して、同席していた他党の議員から「よく分かりました」「胸がすっとした」などの賛意、歓迎の声も寄せられました。

 小木曽 論点が整理されたということですね。

 志位 韓国大法院の判決というのは二重にできていて、(1)個人の請求権は消滅していない、(2)国と国においても請求権が解決していない問題があるというものです。私は、この論理は全体として検討されるべき論理だと考えています。同時に、両方をいっぺんに解決するのは、現状では不可能だと思います。

 ではどうするか。「被害者個人の請求権は消滅していない」という点では日韓両国政府が一致しているわけですから、まずは、その一致点を大切にして前向きの解決方法を見いだす。国と国との請求権の問題の解決は、将来の課題とする。こういう段階的な解決が、現実的な解決法ではないかと思います。

 2007年の日本の最高裁の判決では、中国の強制連行被害者が西松建設を相手に起こした裁判について、日中共同声明によって「(個人が)裁判上訴求する権能を失った」としながらも、「(個人の)請求権を実体的に消滅させることまでも意味するものではない」と判断し、日本政府や企業による被害の回復に向けた自発的対応を促しました。この判決が手掛かりになって、被害者は西松建設との和解を成立させ、西松建設は謝罪し、和解金が支払われました。朝鮮半島からの強制動員の場合も、同じように和解による解決が一番現実的な解決法ではないか。和解を促進するために日韓両国政府が冷静な話し合いを行うことが大切ではないかと考えています。

 小木曽 なるほど。「個人の請求権は残っている」という一致点で冷静に話し合うというのが、もっとも現実的な解決法といえますね。

 志位 ええ、ぜひとも、そういう方向で解決のために努力したいと思っています。青瓦台での会談は、そうした解決が可能だということを明らかにした話し合いになったと思います。

「戦争の危険が遠のき、平和への大転換が起こった」――このプロセスの成功を

 志位 それから、合同総会ですが、五つの分科会すべてに、わが党議員が参加し、それぞれ積極的に発言し奮闘しました。吉良よし子議員は、未来委員会の委員長代理を務め、閉会総会では、日本側の責任者として堂々と報告しました。

 採択された合同総会の共同声明では、歴史問題について、「被害を訴える当事者の名誉と尊厳が回復されるよう、日韓パートナーシップ宣言の趣旨に基づき、相互互恵の精神で共に努力する」と明記されました。これは重要な確認になったと思います。

 北東アジアの情勢の対応については、「南北・米朝首脳会談などが北東アジアと朝鮮半島の平和に寄与するとの認識で一致し、今後とも北朝鮮の核・弾道ミサイルの廃棄と平和体制の構築に向けて、国際規範の下での安全保障分野における協力を強化していく」と明記されました。

 共同声明は、全体として積極的な内容となったと思います。

 それから、韓国の国会議員のみなさんとさまざまな場で懇談する機会がありました。韓国の議員のみなさんからは、南北・米朝関係の前途については希望と懸念が入り混じる見方が語られましたが、「戦争の危険が遠のき、平和への大転換が起こった」ことへの喜びは共通して語られたことがとても印象的でした。「この時計の針を逆に巻き戻すことは、韓国国民の誰も望んでいない」という発言もありました。

 昨年、朝鮮半島で開始された、非核化と平和体制構築のプロセスを何としても成功させるため、今年、私たちもあらゆる力をつくしたいと考えています。

ベトナム訪問について――核兵器禁止条約早期発効、東アジアの平和へ協力強化

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(写真)会談前にチョン書記長(右)と握手する志位委員長=2018年12月18日、ハノイ(面川誠撮影)

 小木曽 韓国に続いてベトナムを訪問されました。これはどういう経緯だったのでしょうか。

 志位 ベトナム共産党中央委員会から私あてに「早い時期にベトナム訪問を」との招請があり、今回の訪問が実現しました。ベトナム側は、わが党の代表団の訪問をきわめて重視し、熱い友情をもって、丁重に迎えてくれました。

 12月17日に、ファム・ミン・チン政治局員、ホアン・ビン・クアン対外委員長と会談し、18日に、グエン・フー・チョン書記長・国家主席、チャン・クオック・ブオン書記局常務と会談しました。19日にはベトナム外交学院で講演、20日にはハノイの南に位置するニンビン省に行き、世界自然遺産のチャンアンの美しい自然に接し、地元のニンビン省の党のみなさんと交流するなど、とても充実した日程でした。

 小木曽 会談ではどういう話し合いが行われましたか。

 志位 チョン書記長、ブオン書記局常務との会談は、夕食会を含めて計4時間半に及びましたが、たいへん重要な合意が得られました。

 私は、今回の訪問では、両党が共通して直面している国際問題で集中して意見交換を行い、協力の強化をはかりたい考え、わが党の立場をまとまって話しました。

 ――署名69カ国、批准19カ国となっている核兵器禁止条約の一日も早い発効を国際社会が推進することが重要だとのべ、10番目の批准国であるベトナムとの協力の強化を願っていると話しました。

 ――東アジア地域に平和と安定を築いていくことについて、米朝・南北首脳会談など朝鮮半島の非核化と平和体制の構築へのプロセスを促進するとともに、北東アジア地域に多国間の安全保障の枠組みをつくることが重要だと考えていると話しました。東南アジア諸国連合(ASEAN)が果たしている中心的役割を支持するとともに、日本共産党が提唱している「北東アジア平和協力構想」を紹介し、両地域での平和の取り組みが東アジア全体の平和と安定につながるように力をあわせたいとのべました。

 ――南シナ海問題については、国連海洋法条約(UNCLOS)など国際法に従った紛争の平和解決などASEANの原則を支持し、法的拘束力と実効性ある南シナ海行動規範(COC)の制定などの外交努力を支持すると表明しました。

 小木曽 それぞれの問題について、ベトナム側はどういう態度を表明したのですか。

 志位 グエン・フー・チョン書記長・国家主席との間で、焦眉の国際問題への対応で多くの一致が確認できました。

 チョン書記長は、核兵器禁止条約の早期発効について、「ベトナムは禁止条約を10番目に批准しました。ともに全力をあげましょう」と語りました。

 朝鮮半島の非核化と平和体制構築の問題については、ベトナムが韓国、北朝鮮の双方と友好関係にあることを強調し、「平和と非核化を支持する」、そのためにあらゆる可能なことをやる用意があると発言しました。

 わが党の「北東アジア平和協力構想」について、支持が表明されました。

 ASEANについては、何よりも大事なのは自主独立、団結と統一だということが強調されました。南シナ海問題については、非常に複雑なこの問題について、日本共産党が共通の立場をもっていることへの感謝が表明されました。

 私は、これまでも何度かベトナムを訪問して、当面する国際問題の協力について話し合ってきましたが、これまでと比較しても、よりいっそう具体的に踏み込んで、意見の一致を確認し、協力することで合意することができました。たいへんに重要な成果だったと考えています。

両党関係の発展――新たな高みに引き上げる3点の重要な合意

 小木曽 日本・ベトナムの両党関係でも発展があったのですね。

 志位 私とチョン書記長は、この間の両党関係について、とりわけ2007年以来8回におよぶ理論交流と、国連やICAPP(アジア政党国際会議)など国際会議での協力などを通じて、両党関係が大きく発展してきたことを確認しました。チョン書記長は、「両党の理論交流はとても有益であり、とても必要だ」と強調していましたが、一連の会談で、理論交流が有益で重要だということが共通してのべられたことは、たいへんうれしいことでした。

 さらに、私とチョン書記長は、今後の両党関係について、(1)ハイレベルの交流を維持・促進すること、(2)理論交流を継続・発展させるとともに、急速に変わる国際情勢について国際部門で機動的に意見交換を行うこと、(3)世界と地域の平和と発展のために、国連、政党会議などさまざまな国際会合・フォーラムで緊密に連携していくこと――の3点について合意しました。これは両党関係を新たな高みに引き上げる重要な合意で、訪問の大きな成果となったと思います。

 今後の実際の活動を考えてみても、この合意のもつ意義は大きいと思います。ベトナムは2020年1月から国連安全保障理事会の非常任理事国になる予定です。これまでもベトナムとは核兵器廃絶にむけ国際舞台で協力してきましたが、今回の合意をふまえ、20年のNPT(核不拡散条約)再検討会議などでの協力がより緊密にできることになるでしょう。

ドイモイについて、「社会主義をめざす探求」の真剣さについて

 小木曽 ベトナムは、市場経済を通じて社会主義をめざすというドイモイの事業を進めていますが、今回の訪問ではどのように感じられましたか。

 志位 今回の訪問で、私は「二つの点に注目しています」と話しました。

 一つは、貧困削減に目覚ましい成果をあげていることです。貧困率を1990年の58%から、2010年には10%、近年には5・9%に激減させたとのことです。世界銀行からも、「7割の世帯が安定した生活を営めるようになっている」と高く評価されていることは、うれしいことです。

 いま一つは、原発輸入を中止するという勇気ある決断を行ったことです。5年前にチョン書記長と会談した時に、私は、原発を導入するかどうかはベトナムの内政問題だが、福島の原発事故をみても、原発はとても人類が使いこなせるような技術ではないと考えているという話をしました。その後、原発輸入の中止という決断をしたということは、社会主義の精神の発揮だと思います。

 小木曽 社会主義の精神の発揮と。

 志位 そう感じます。ドイモイの外交路線について、チョン書記長が次のように語ったことは、たいへん印象深く受け止めました。

 「ベトナムは、独立、自主、平和、協力、安定、多角化の路線をもっている。各国とは友邦になるが、自主独立を守り、溶解してはならないし、従属してもならない。諸問題に臨機応変に対応するが、社会主義、マルクス主義、ホーチミン思想を一貫して堅持する」

 この言葉は、今回の訪問における、わが党に対するベトナム側の誠実で真摯(しんし)な対応とあわせて、ベトナム党指導部の「社会主義をめざす探求」の真剣さを感じさせるものであったことを、報告しておきたいと思います。

 小木曽 ベトナムの技能実習生の問題も取り上げられて話題になりました。

 志位 ベトナム人の技能実習生の問題について、私たちの側から、「日本の政党の責任として劣悪な実態の解決に力をつくす」ことを約束するとともに、必要な情報の提供をお願いしました。ベトナム側は、「感謝し、歓迎します」と応じました。NHKもこの問題に注目して報道しました。

ベトナム外交学院での講演――「自由ベトナム行進曲」の大合唱

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(写真)志位委員長の講演を聞く外交学院の学生ら=2018年12月19日、ハノイ(面川誠撮影)

 小木曽 ベトナム外交学院ではどのような講演をされたのですか。

 志位 ベトナム外交学院は、1学年200人ぐらいの学院ですが、卒業生の4分の1ぐらいが外交官になり、他の学生も多くが政府などの重要な行政機関の働き手になると聞きました。

 「21世紀、世界と東アジアの平和の展望」と題して講演し、質疑に応じました。政治会談とは角度を変えて、日本共産党の綱領の世界論に立って、20世紀に進行した「世界の構造変化」とはどういうものだったか、ベトナム革命はどういう役割を果たしたか、21世紀の世界を全体としてどうとらえるか、東アジアにどうやって平和を築いていくかなどについて、わが党がこの間の理論と実践を通じて考えていることをまとまってお話しする機会となりました。(講演と質疑は4日付に掲載します)

 小木曽 歌も披露されたことが、話題になりました。(笑い)

 志位 講演の冒頭、「自由ベトナム行進曲」という、ベトナムがフランスからの独立を獲得した時の革命歌で、日本に1954年に紹介され、日本でもベトナム侵略戦争に反対する連帯闘争のなかで歌われていた歌について、若いみなさんに「知っていますか」と尋ねたところ、「知っています」との答え。私も、若いころよく歌った歌で、たいへん懐かしく、一節を歌いました。

 そうしたら、講演と質疑を終えて、最後に、司会の方が、「志位委員長に対するお礼に、みんなで『自由ベトナム行進曲』を歌いましょう」とよびかけ、全員で大合唱となりました。ベトナム革命の精神が、若い世代に受け継がれていることを感じ、とてもうれしい思いでした。

 小木曽 革命精神の「世代的継承」ですね。(笑い)

 志位 そうですね。抗米救国戦争に勝利してから40年余がたち、若い世代には直接の記憶はないわけですが、革命精神の「世代的継承」は成功しているように感じました。

 私自身、3回目のベトナム訪問となりましたが、回数を経るに従って相互理解と相互信頼の深まりを感じます。日本共産党への特別の信頼を強く感じました。また、ドイモイの事業に対する自信、ベトナムの国際的比重の高まりと役割への強い自信を感じました。そのもとで、両党が国際問題でのいっそう緊密な協力、両党関係の新たな発展について合意したことは、今後にとって画期的な意義をもつものとなったと思います。

統一地方選挙、参議院選挙での勝利に向けて

 小木曽 さて、今年はいよいよ選挙の年です。統一地方選挙、参議院選挙という連続した選挙をどうたたかいますか。

 志位 目前に迫っているのは統一地方選挙ですから、ここで躍進を勝ち取るということを前面にすえて奮闘しつつ、同時に「参院選は統一地方選が終わってから」という段階論に陥らないで、「比例を軸に」すえた参院選での躍進を一貫して追求していきます。参院選では、比例代表で「850万票、15%以上」を獲得し、7人以上を当選させ、選挙区では現有3議席を絶対に確保し、さらに増やす。こういう躍進にむけた取り組みを、統一地方選勝利と同時並行で追求していきたいと思います。

 統一地方選挙についていいますと、躍進するのは容易ならざる課題です。前回、4年前の選挙は、21議席に躍進した2014年の総選挙の直後の選挙で、道府県議の選挙では80議席から111議席へ31議席増となりました。ですから、現有を守ること自体が、なかなかの大事業で、それにプラスをしたら大勝利となります。現有議席を絶対確保することを最優先にすえ、新たな議席増に攻勢的にかつ手堅く挑戦する。そういう構えでたたかいたいと思います。

 前回の選挙では、すべての道府県議選で議席を獲得し、空白県議会をなくしました。これは史上初めての快挙でした。今回は、絶対に新たな空白をつくらないということも、とくに心がけたい。2回続けて空白ゼロとなりましたら、これも「史上初めて」(笑い)の大記録になりますから。

 小木曽 ぜひ、そういう記録を打ち立てたいものですね。

 志位 躍進するのは容易ならざる課題だとのべましたが、その条件は大いにあります。何よりも、安倍政治に対するもっとも痛烈な対決者として、いま共産党を伸ばしたいという期待を感じます。そして、市民と野党の共闘の推進者として、共産党を大きくしたいという期待も感じます。

 地方政治においては、全国の自治体の多くは、依然として共産党をのぞく「オール与党」なんですね。そういうなかで、福祉と暮らしを守るうえでも、巨大開発の無駄遣いをやめるといううえでも、議会と自治体の民主的な運営でも、あらゆる問題で、日本共産党議員団は抜群の役割を果たしています。前回、空白を克服した七つの県に伺いますと、共産党の議席が生まれて県議会の雰囲気が一変したということが、どこでも語られていました。

 そういう条件をすべて生かせば、躍進は可能です。

 小木曽 参院選では市民と野党の共闘をぜひ実らせたいですね。

 志位 その通りです。32の1人区での「野党候補の一本化」では野党の間で足並みがそろってきているわけですから、一刻も早く政党間でその具体化のための協議を始めることを、重ねて呼びかけたいと思います。「本気の共闘」を実現し、安倍政権を退場させる選挙にしていきたい。

 同時に、「本気の共闘」を成功させるうえでも、統一地方選挙で共産党が勝利・躍進することが決定的に重要です。

 「強く大きな党をつくりながら選挙に勝つ」ということを追求し、「前回参院選時比3割増」を目標に、党員を増やす、「しんぶん赤旗」読者を増やす、後援会員やJCPサポーターも増やす。そうやって党の新しい活力を強めながら、選挙を大いに楽しく、元気いっぱいたたかいたいと決意しています。頑張ります。

 小木曽 「しんぶん赤旗」も連続選挙勝利、安倍政権打倒へ全力をつくします。今日はどうもありがとうございました。