志位和夫 日本共産党

力をあわせて一緒に政治を変えましょう

TV発言

2018年11月22日(木)

若者の共産党観から領土問題、社会主義まで

BS―TBS「報道1930」 志位委員長、大いに語る


 若者は日本共産党をどうとらえているのか、共産党は保守なのか―。20日夜放送されたBS―TBS番組「報道1930」が、志位和夫委員長をゲストに迎え日本共産党について特集企画。番組独自に行った学生のアンケート結果や党本部・赤旗編集局への取材も盛り込みながら、志位氏がキャスターの松原耕二氏らと大いに語り合いました。

「イメージがわかない」 東大生50人アンケートから

主張伝われば変わる可能性

 冒頭、「JCPサポーターまつり」で、志位氏が行ったピアノ演奏の動画が放映され、志位氏が共産党に入党した動機などについてのトークが。

 そのうえで、現役東大生50人に実施した街頭インタビューやアンケート結果が紹介されました。日本共産党について「苦しんでいる人たちの苦しみをゼロにしようというところに一貫してコミット(関与)している姿が魅力的」「志位さんはしゃべりがうまい人で、いい人そう。(好き嫌いでいえば)好きかなという感じがする」「力がないのかなという感じ」「名前を変えて受け入れられやすい政党の名前にしたらいい」などの声がありました。

 松原氏から感想を求められた志位氏は、「みなさん、共産党に対して意見を言ってくれるのはうれしいですね。『全然関心ありませんよ』と言われたら一番がっかりですから」。党名については「私たちは変えるつもりないんです。これは党のアイデンティティー。資本主義で人類の社会は終わりじゃないという私たちの理想を刻んだ名前なんです」と答えました。

 50人アンケートで支持政党は、自民党14人、公明党なし、立憲民主党5人、国民民主党2人、共産党なし、支持なし29人という結果。「もっとがんばんなくちゃいけないですけど。野党が自民党に代わる選択肢をちゃんともっているということが強力に見えてくれば、支持なし層や自民党支持層も変わってくると思います」と志位氏。

 共産党のイメージで最も多かったのが「イメージがない」で8人。次いで「よくわからない」5人。一方で「言っていることに筋が通っている」「弱者のためにがんばってたたかっている」という意見もありました。

 これに対し志位氏は、「『イメージがない』というのは、私たちの努力不足でもあるんだけれども、マイナスのイメージもないわけで、私たちの主張が伝わっていけば、変わっていく可能性もあると思いますね」と感想。コメンテーターの堤伸輔氏は「共産党に対するアレルギーがある意味なくなった。ただ、今度はアレルギーが消え過ぎかかっているのが今の状況だと思うので、何かきちんと打ち出さないといけないんではないか」と提案しました。

党本部・赤旗編集局も紹介

「保守にウイング広げ、一緒には けっこう驚き」

 では逆に日本共産党は若者たちにどうアピールしようとしているのか―。こんな問題意識で同番組は、ネット番組「とことん共産党」などを担当する党宣伝局の取り組みや、「しんぶん赤旗」日刊紙の青年のページ「若者ボックス」で学生の奨学金の返済に関する問題や長時間労働で残業代が出ない若者の実態を取り上げていることを紹介しました。さらに、「共産党は、他の野党とも一緒に手を結ぶし、真面目な保守の方ともいろんな課題で一致する人とはやりたい。それがわかるように新聞で出していくことを心がけています」との山本豊彦・日曜版編集長のインタビューも交え、来年10月からの消費税10%増税に反対する藤井聡・内閣官房参与(京都大学大学院教授)のインタビューを1面で掲載した「しんぶん赤旗」日曜版11月18日号を紹介しました。

 松原氏は、「まじめな保守の人にもウイングを広げて、意見が一致すれば一緒にやっていきたいと意識をされているというのは、けっこう驚きました」と発言。話題の日曜版を示し、「現役の内閣参与、つまり官邸のスタッフが反対している。(山本編集長は)保守の方にも読んでほしい、そういう人とも手を結びたいという思いがあるとおっしゃっていた。そうなんですか」と尋ねました。

 志位 まさしくそうですね。いまの安倍政権がまともな保守ですらなくなっちゃっているという問題があると思うんです。安倍政権のもとで戦後ずっと集団的自衛権は(憲法)9条のもとでは行使できませんと(解釈されてきたが)、ころっと変えてしまう。自分たちがやってきたことも、全部ひっくり返していくようなやり方をやっているだけに、これまでの平和の積み重ね、あるいは現にいまの生活、働く人の権利、農業者や中小企業者の営業をしっかりと守っていきたい――この「守っていきたい」という気持ちは、もちろん悪いことではないわけですから、そういう方々と私たちが広く手を結んでいくということが大事だと(思っています)。

 沖縄では、亡くなった翁長前知事は自民党沖縄県連幹事長をやっていらした方なんですね。まさに保守の代表の政治家と私たちは手を結んで、「オール沖縄」という固まりをつくり、辺野古(新基地建設)反対の一点で力を合わせ、この前の(県知事選挙で)玉城デニーさんもまた勝ちました。保守・革新という垣根を越えて、沖縄では一つの固まりをつくった。それを全国でもやりたいと思っています。

「共産党は自民より保守?」

平和・暮らしを壊す動きから守る、根本のゆがみ変える

 若者をめぐる意識動向で紹介されたのが、昨年、読売新聞と早稲田大学が実施した共同調査。年代別に「保守」と「リベラル」の認識を聞いたもので、「若い有権者ほど、共産党は自民党より保守と答えている」(松原氏)とその結果を指摘し、志位氏に聞きました。

 志位 「憲法9条を守ろう」「労働者の権利や暮らしを守ろう」「中小企業や農業を守ろう」と、この「守ろう」と言うことは、私たちは多い。何から守るかといったら、それを壊す動きから「守ろう」ということです。やはり今の政治があまりにも悪いから、それに対して私たちが正面から立ち向かうなかで、このイメージがある程度出てくるのではないかと思います。

 ただ同時に、守るためには(政治を)変えなきゃならない。今の日本の政治のゆがみがどこにあるのかといったら、アメリカに対する従属政治、財界中心というこの二つゆがみがどの問題でもあるわけです。このゆがみを正すという点で私たちはぶれずにやっているわけですね。

 たとえば日米安保条約という問題がある。私たちは、もし野党連立政権ができた場合は、安保(条約)の問題は共通になりませんから、この安保条約廃棄は持ち込まず、横におきますとはっきりいっています。ただ、党としてどうするのかといったら、安保条約を廃棄して、日米友好条約に代えて、本当の独立国といえる日本をつくる。この大方針は揺るがず貫くという立場なんです。

「たたかう」ことは共産党のアイデンティティー、たたかってこそ歴史は進歩する

 これに対し堤氏は、「2012年に安倍政権が2度目に登場して以来、私は一番変わったのが共産党だと思っているんですよ。ほかの政党、野党と比べても」と、野党共闘に取り組む共産党の活動を指摘。「ただし、私は編集者ですので、日本共産党の綱領を見て、言葉遣いがものすごく気になる。『たたかう』という言葉が12回、『たたかい』が6回、『闘争』が6回(出てくる)」「共産党のいわばかたくなさと、一方で安倍政権に対峙(たいじ)するために変わっている部分のギャップを共産党自身がどう埋めるか」と発言。志位氏は次のように述べました。

 志位 「たたかう」というのは、私たちのいわばアイデンティティーなんですよ。世の中の矛盾、国民を苦しめるもろもろな問題があります。それと正面からたたかってこそ歴史は進歩するというのが、私たちのいわばアイデンティティーです。ですから、いつでもその言葉を使っていなきゃならないということではないですけど、綱領ではそういう立場を述べているんですね。

 若者が志向する「保守」についてコメンテーターの高安健将・成蹊大学教授は「このままでいいと思っているわけではなく、『変化』『変わる』という言葉に対しては、ポジティブ(積極的)なイメージを持っている」との見方を示しました。

日ロ領土問題―危険な「2島返還で平和条約」論

戦後処理の不公正をただしてこそ

 国政の焦点問題で志位氏は、日ロ領土問題と、安倍首相が狙う自衛隊明記の9条改憲について語りました。このなかで安倍首相が14日のプーチン・ロシア大統領との日ロ首脳会談で「1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意した」と述べたことの評価について次のように述べました。

 志位 私は大変危惧しております。歯舞群島、色丹島の2島を先行的に返還を求めるということはありうることなんですよ。ただ、その場合も絶対に平和条約を結んではいけない。平和条約を結びますと、これで両国の国境線の画定にどうしたってなるんです。つまり、それ以上の領土交渉の要求ができなくなるという立場になりますから、平和条約は領土問題を完全に解決した段階で結ぶべきだと。ですから、2島先行の場合は、中間的な友好条約のような形で処理して、さらに(交渉を)続けるというのがまず一点言いたいことですね。

 この問題は、なぜ戦後70年間、解決しなかったか。とくに日ソ共同宣言のあとの60年余についていいますと、結局、日本政府の立論というのは、「国後、択捉は千島にあらず。だから返してくれ」という、この一点なんですよ。

 ところが、この理屈は通らない。1951年にサンフランシスコ平和条約を結んだ際に、同条約の2条C項で千島の放棄をやった。後から「それには千島に入っていない」と言い出した。しかし、サンフランシスコ条約の受諾演説で、(当時の)吉田首相は、国後、択捉を「南千島」とよび、(得撫〈うるっぷ〉以北の)「北千島」を含めて、この全体が(平和条約で放棄した)千島列島だと見る立場を表明している。その線で(条約を批准した)国会でもはっきり答弁をしている。ですから、これは後になって(「国後、択捉は千島にあらず」と)言い出しても通用しないわけですね。

 では、どうするか。結局この問題は、第2次世界大戦の戦後処理で大変な不公正が行われたことに根本があります。つまり、「領土不拡大」というのが(戦後処理の)大原則だったわけですね。戦争に勝った国も、領土を拡大してはいけませんよと(いうことです)。これが確認されていたのですけれども、1945年の「ヤルタ協定」で(旧ソ連の)スターリンが千島列島をよこせといい、それに対して(米国大統領の)ルーズベルトもオーケーといって、「引き渡し」を決めてしまうわけです。それに拘束されて進んでいき、サンフランシスコ条約で千島の放棄をやってしまう。ですから、戦後処理自体が不公正だったわけですよ。

 ここまでさかのぼってロシアに対して「領土不拡大」(に反する)という不公正をやった、そこを改めて、きちっと交渉しようということを日本政府がいう必要がある。この立場に立つならば、日本政府は南千島だけじゃなくて、北千島も含めて、樺太・千島交換条約(1875年)で平和的に日本の領土にしたわけですから、この全体の返還を求める、そういう交渉をやる、そのなかでこそ、択捉、国後も戻ってくる道が開かれると。

 松原 2島を先行させてはだめだと。

 志位 いや、2島の先行は、さっきいったようにありうると。ただ、その場合に平和条約を結んではダメですよと。これを強く言いたい。これはとても危ないと思います。いまの安倍首相の姿勢を見ていると、事実上、2島だけでもう終わりにしてしまうという危険がある。「2島プラスアルファでいい」なんていう議論もいろいろやっている人がいますけども、そういった形で事実上のピリオドを打って、平和条約を結んじゃったらおしまいです。

米英の若者の間で資本主義に「はてなマーク」がついている

 社会主義・共産主義も話題になりました。堤氏が「世界的な格差の広がりから、社会主義を評価する声が一方にある。ただ、若者の間では社会主義や保守の定義がリベラルを含めて定まっていない」と指摘すると、松原氏も「そうですよね。ある人によっては“強欲資本主義”というぐらい金融でがーっともうけたり、(その一方で)置いてきぼりの若者がいたり。これ以上は厳しいなという感じがあります」。志位氏は次のように述べました。

 志位 たしかに、社会主義のイメージなりがはっきり定まっているわけじゃないかもしれないんだけれど、「資本主義はもうだめでしょう」という気持ちはかなり出てきたと思うんですよ。

 たとえば、(米世論調査機関の)ギャラップ社が、(米国民に対して)最近行った調査結果をみて面白いなと思ったのは、「資本主義と社会主義のどっちに好意的ですか」という設問にたいして、18歳から29歳では、「資本主義」が45%、「社会主義」が51%。社会主義のほうに好意的なんです。社会主義をどうみているかというのはいろいろだと思うんですけれども、今の資本主義のシステムはあまりに格差、貧困などいろんな問題が起こり、このシステムはどうもダメだよとなってきている。

 それからもう一つ興味深かったのは、イギリスなんですよ。イギリスでは、野党・労働党の最左派のコービンさんが党首になって、去年の総選挙でかなり躍進しました。ここでも世論調査で、「全面的な社会主義政府が実現したら、イギリスはよくなるかどうか」と聞いたら、「よくなる」が43%、「悪くなる」は36%なんですよ。

 社会主義というのはもともと、資本主義へのいわばアンチテーゼ、資本主義を乗り越え、資本主義のいろんな矛盾を解決していくところからきている。アメリカとイギリスの二つの国の若者の中で、資本主義に大きな「はてなマーク」がついている。これは大変面白いことだと(思います)。

「共産党は現実離れ、予測不可能?」

共産党伸ばし、共闘成功で実現できる

 松原氏は「たしかに日本共産党の言うことは筋が通っているかもしれない。しかし、“やっぱり現実離れしているよね”“いまの現実はそんな簡単にいかないよね”という声がやっぱりあるんだと思う」と述べ、高安氏は「党のなかの議論というのが有権者にはよく見えない。現実に共産党が権力をもったときに何をするのか予測可能性が低いというのがある」と指摘しました。

 志位 いろいろ努力していきたいと思いますね。ただ、たとえば党大会をやりますでしょう。党大会のときには、だいたい2カ月前ぐらいに決議案を出します。2カ月間かけて、党内討論をやるんですけども、いろんな異論がある方も含めて(寄せられた意見を掲載した)雑誌を出し、公開討論をやるんですよ。そういう点では、一つひとつ、私たちとしてもいろんな努力をやってきたけれども、なお努力は必要だろうなと思います。

 それから、「実現可能性はあるか」というご意見はわかるんですけども、実現する上で何が必要かといえば、国会で多数を占めなかったら実現できません。私たちは、大きな改革のビジョンを持っていますが、そのビジョンでは一致できなくても、まず緊急のビジョンで、これとこれとこれはやりましょうと野党間で一致できる問題をはっきりさせて、共闘に踏み出すということを3年前にやった。これは、野党共闘が成功して、野党が多数を取れば実現可能なんですよね。

 そういう実現可能なビジョンは、野党でかなり共有もしています。たとえば、「原発ゼロ基本法案」なども野党共同で国会に出しました。これは野党共闘が成功して多数を取れば実現できるんですよね。ですから、国民のみなさんにも、共産党も伸ばして、共闘も成功すればこれは実現しますよというのがいま見えるようになりつつある。そういう面もぜひ見ていただきたいなと思います。

 最後に、若者たちに対しての期待を問われ志位氏は次のように述べました。

 志位 若いみなさんにとって、「いまの生活を守りたい」「自分の将来を守りたい」という意味での“保守”というのは、決して悪いことじゃないし、まっとうなことですよね。ですから、そういう若いみなさんの心にも響くような訴え方をしていきたい。

 同時に、私たちは、大改革・大変革を求める党でもありますから、そっちのほうの魅力を伝えることも、あわせてやっていきたいと思います。