志位和夫 日本共産党

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2018年2月6日(火)

生存権すべての国民に保障を 貧困悪化 日本は異常な国に

衆院予算委 志位委員長の質問


 安倍政権が狙う生活保護の基本となる生活扶助費の削減。日本共産党の志位和夫委員長は5日の衆院予算委員会で、安倍晋三首相の貧困悪化に対する基本認識をただし、憲法25条で保障された生存権を脅かす生活扶助費削減の道理のなさを浮き彫りにしました。


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(写真)質問する志位和夫委員長(左)=5日、衆院予算委

相対的貧困率の低下でも貧困の実態改善されていない

首相 “改善した”とは言えず

 「憲法25条に明記された国民の生存権を保障する最後のセーフティーネットである生活保護のあり方は、すべての国民の権利にとって重大な問題だ」。志位氏は、冒頭、生活保護の問題についてこう強調しました。倒産や失業、家族の介護などで職を失えばだれでも貧困に陥る状態に置かれており、食費や光熱費などに充てる生活扶助基準の引き下げは、住民税、保険料、最低賃金などにも連動し、広範な国民生活に大きく影響を与えるからです。

 それだけに今の日本の貧困悪化をどうとらえるかは重要です。志位氏は、安倍首相が「相対的貧困率の低下」を持ち出して「(安倍政権の5年間で)貧困が悪化したという指摘は当たらない」と強弁していることについて認識をただしました。

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 相対的貧困率とは、所得の「中央値」(等価可処分所得の順に全国民を並べたとき真ん中にくる人の額)の2分の1を「貧困ライン」とし、それに満たない所得の人の割合を示します。

 志位氏は、一般国民の所得が下がると「中央値」も下がり、それに連動して「貧困ライン」も下がることになると指摘。「貧困ライン」が下がるということは、これまで「貧困ライン」以下に数えられていた人が、それまでと同じ収入・暮らしであっても、「貧困ライン」が下がることによって「貧困ライン」より上にきて“貧困でない”と数えられることになると強調しました。

 「『貧困ライン』が下がることは、貧困の実態が変わらなくても相対的貧困率を押し下げる効果が働く。『貧困ライン』が下がるもとでは、相対的貧困率が低下したとしても、それだけをもって貧困の実態が改善されたとは言えないのではないか」と重ねて安倍首相の認識をただしました。

 これに対し安倍首相は、「子どもの相対的貧困率は改善した」などと答えましたが、相対的貧困率をもって貧困状態が改善したとは言えませんでした。

 志位氏は、アメリカ、イギリスなど7カ国の2000年から15年までの「貧困ライン」の推移を示し(上図)、日本以外で「貧困ライン」が大幅に引き上がっている一方、下がり続けているのは日本だけだと指摘。「『貧困ライン』が下がり続けているということは、一般国民の所得が下がり続けているということだ。日本はこの点で、異常な国になっているとの自覚はあるか」と迫りました。

貧困層の実質所得は安倍政権下で下がり続けている

首相「悪化していない」と居直り

 さらに志位氏は、所得が最も少ない10%の層の実質所得の上限値が、1999年には162万円だったのが14年には134万円と、安倍政権のもとでも下がり続けている実態(下図)を指摘。「これが貧困の実態を反映した数字だ。貧困の実態が悪化している事実を正面から認めるべきだ」と迫りました。

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 安倍首相は「所得が下がったのは高齢化によるもので、安倍政権で急に下がったわけではない。(貧困状態は)悪化はしていない」と繰り返しました。

 志位氏は、「自分に都合のよい数字だけを宣伝し、深刻な実態をみようとしない姿勢では、まともな政策はでてこない。貧困の実態が悪化している事実を正面から認めるべきだ」と強調しました。

生活扶助基準見直し“全体として引き下げ”は明らか

首相「乖離ある基準是正」

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拡大図はこちら

 志位氏は、食費や光熱費などに充てる生活扶助費を削減する政府の見直しについて、安倍首相の言い分が事実と異なっていることを追及しました。

 安倍首相は、今回の見直しの理由として「一般低所得世帯の消費の実態と生活保護基準額との乖離(かいり)を是正する」ものだとして、「生活扶助基準を全体として引き下げるものではない」(1月25日、衆院本会議)と答弁していました。

 志位氏は、厚生労働省のデータを紹介。それによると、生活保護を利用している全世帯で、生活扶助費が上がる世帯は26%、変わらない世帯は8%、下がる世帯は67%。7割近い世帯が引き下げになるのです。これにより、生活扶助費は最大5%、平均1・8%削減され、扶助費総額は年間210億円(国費分160億円)の削減です。

 「だれがどう見ても、全体として引き下げるものになっていることは明らかだ」との志位氏の指摘に、加藤勝信厚生労働相は、生活扶助費は一般低所得世帯の消費支出と比べて「おおむね均衡」との答弁に終始。志位氏が「モデル世帯を選んで指数をかけた結果、210億円の引き下げになった。この数字に間違いがあるのか」と重ねて追及すると、安倍首相は低所得世帯と生活保護世帯の「乖離ある基準を是正した」と本会議と同じ答弁を繰り返し、数字に間違いがあるとは答えられませんでした。

 志位氏は、今回の引き下げが2013年の最大10%、平均6・5%、総額890億円(国費分670億円)に続く引き下げで、2回合わせて総額1100億円の引き下げになると指摘。「圧倒的多数の生活保護世帯が削減となる。こういう切り下げを押しつけながら、痛みを感じていない。これは大問題だ」と厳しく批判しました。

一般低所得世帯に合わせての引き下げではなく支援こそ

首相“引き下げではない”と強弁

 今回の見直しの最大の問題点は、所得が最も少ない10%の層である「一般低所得世帯」に合わせて生活扶助基準を引き下げることです。志位氏は、「現在の生活扶助基準が、憲法25条が保障している健康で文化的な生活といえる水準か」と2人のシングルマザーの事例(別項)を紹介しました。委員会室が静まり返りました。

 千葉で5人の子どもを育てる母の買い物は、8枚切りの食パン98円が49円と半値になってから。「品物ごとに安売りの底値が頭に入っている」といいます。冬場におふろを沸かすのは週1回。後は水シャワーです。

 大阪で2人の子どもを育てる母は、生活保護を受ける前の「一般低所得世帯」だったとき、「3年間幼い子どもを一度も病院に連れて行けなかった」といいます。あまりにも恥ずかしく、周囲に悟られないようにしていました。今回の引き下げが分かったとき、「今度はどこを削って生活しよう」と不安になりました。光熱費も食費も切り詰めが限界です。

 志位氏は「生活扶助基準を引き下げることは、この母子家庭をかつて置かれていた生活扶助基準にすら満たない生活に引きずり戻すことではないか」と怒りを込めました。

 ところが安倍首相は、一般低所得世帯の消費支出は増えているとし「生活保護世帯が同じように下げられるわけではない」と、基準見直しは引き下げではないと強弁しました。

 志位氏は「私が聞いたのは、このお母さんが一般低所得世帯の水準に合わせて扶助基準を引き下げるのはおかしいじゃないかという問いだ」と反論。首相が「生活保護の子どもへの支援を強化したい」と述べたのに対し、母子加算2割カットなどで「この世帯の扶助費は年間10万円下がる」と首相のごまかしを明らかにしました。

 志位氏は、一般低所得世帯の生活水準が低いのなら「やるべきことは一般低所得世帯を支援すること。これこそが憲法25条に基づく政治の責任だ」と強調しました。

底値になってから買い物

 小学生3人と、中学生と高校生の5人の子どもを育てる千葉県のシングルマザーの話(要旨)

 生活保護を利用するようになって子どもたちの給食費が毎月納められるようになったのがうれしかった。

 買い物は値段が下がるまで待っていきます。食パンは8枚切りで98円が49円と半額になってから。品物ごとに安売りの底値が頭に入っていて、底値以上のものを食べてはいけないと思っています。

 おふろは、冬場に週1回沸かすだけで、後は水シャワー。絶対に一人で入らず、まとまって短時間で済ませています。


息ひそめるような生活

 小中2人の子どもを育てる大阪のシングルマザーの話(要旨)

 生活保護受給が決定する前、「一般低所得世帯」であったころの私たちの生活はとても厳しいものでした。

 私は今より8キロ以上やせていました。子どもたちを食べさせるために自分はあまり食べずにいました。貧しいのは私のせいだから私は食べたらダメ、という強迫に近い感情がありました。

 一番つらかったのは無保険だった期間です。3年間、幼い子どもを一度も病院に連れていけませんでした。息をひそめ、薄氷の上を歩いているような生活でした。でもそんな生活は、外側からは見えにくい状態だったと思います。あまりにも恥ずかしい生活なので、周囲には悟られないようにしていました。

 国には、そんな生活が人として健全な暮らしかどうか、目を向けていただきたい。本当に必要な対策は、生活保護費を下げることではなく、保護受給世帯や低所得世帯の生活実態を把握して考えていくことではないでしょうか。(生活保護を受給でき)本当は感謝したい国に対して、反対意見を出すということがとても悲しいです。

低すぎる捕捉率――「正当な権利」と表明を

首相は表明せず

 なぜ「一般低所得世帯」の生活水準が困窮した状態に置かれているのか。

 志位氏は、その原因の一つに、生活保護を利用できる資格がある人のうち、実際に利用している人の割合(捕捉率)が2割程度にとどまっているという大問題を指摘しました。生活保護の利用者数は現在約213万人。その背後に数百万人単位で利用できていない生活困窮者が存在しているのです。

 志位氏は、厚労省が2010年に発表した報告書では「所得のみ」で推計すると生活保護の利用は15・3%であり、「今回と同様(捕捉率)の調査を定期的に実施し、その動向を把握していく」と述べていると指摘。「厚労省は、この7年間、同じような調査を行っているのか」と追及しました。

 加藤厚労相は、「その時(2010年)以降、推計している結果はございません」と、捕捉率の推計をしていないことを認めました。

 志位氏は、政府自ら約束した捕捉率の調査を実行するよう求めました。

 捕捉率が低い理由については、専門の研究者らが(1)“生活保護は恥”との意識(スティグマ)や生活保護バッシング(2)制度の周知不足(3)役所の窓口で生活保護申請を間違った説明で追い返す「水際作戦」―などの問題があることを指摘しています。

 このうち「スティグマ」については、国連社会権規約委員会も日本政府に対する勧告(2013年)で、「公的福祉給付に付随したスティグマを解消する目的で、締約国が国民の教育を行うよう」日本政府に具体的措置を求めています。

 志位氏は安倍首相に対し「スティグマ」と言われる意識をなくすことの重要性は共有できるはずだと指摘して、「総理の口から『生活保護を利用することは恥ずかしいことではない。憲法25条にもとづく国民の正当な権利だ』と表明してほしい」と重ねて提起しましたが、安倍首相は、あくまで「国民の正当な権利」とは言いませんでした。

国連の社会権規約委員会の勧告(2013年)から抜粋

 委員会はまた、締約国に対して、公的福祉給付の手続きを簡素化し、申請が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとるよう求める。委員会はさらに、公的福祉給付に付随したスティグマを解消する目的で、締約国が国民の教育を行うよう勧告する。

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貧困打開のために生活保護を使いやすくする提案

 志位氏は「今回の政府の生活扶助削減の方針はまったく道理のないものだ」と批判し、生活扶助削減の方針の撤回、2013年の削減前の水準に戻すよう要求しました。

 その上で、貧困打開のためには「最低賃金の引き上げや年金の底上げ、非正規社員の正社員化などの総合的対策と一体に生活保護の改正が緊急に必要だ」と述べ、生活保護を使いやすくするための緊急要求として、四つの柱からなる生活保護法の改正を提起。「憲法25条の生存権が文字通りすべての国民に保障される日本をつくるために力を尽くす」と決意を表明しました。