志位和夫 日本共産党

力をあわせて一緒に政治を変えましょう

談話・記者会見

2017年9月20日(水)

野党と市民の共闘、総選挙の争点について

志位委員長の記者会見(一問一答)


 日本共産党の志位和夫委員長が18日、党本部で、野党と市民の共闘、総選挙の争点について語った記者会見での記者団との質疑応答でのやりとりはつぎのとおりです。


写真

(写真)記者の質問に答える志位和夫委員長=18日、党本部

野党共闘の基本についての考え方は

 ――野党共闘について、これまで志位委員長は、共通政策、相互推薦・支援、政権問題、三つの課題をあげていましたが、現時点での考え方をもう一度お願いします。

 志位 これは変わりません。野党と市民の共闘を成功させるためには、共通政策を豊かに発展させること、相互に推薦・支援する「本気の共闘」を行うこと、そして政権問題では私たちは「野党連合政権」(国民連合政府)という提案をしており、この問題はこれまでは合意になっておりませんが、協議のなかでこの問題でも前向きの合意を得る努力をしていきたいと考えています。

小選挙区における候補者調整の現状は

 ――関連して野党共闘の関係ですが、現時点で共産党として、とりわけ小選挙区の擁立状況と、具体的に小選挙区での野党統一候補の調整に向けて現状の調整状況と、今後、具体的にどのような形で他の野党、市民連合などと協議を進めていくお考えですか。

 志位 これはすでに他の野党の方々、それから「市民連合」のみなさんともいろいろな話し合いを始めております。(具体的な予定はとの問いに)だんだん、出てくると思います。

候補者調整の可能性、共通政策、必勝区について

 ――委員長はこれまでも、共通政策、相互推薦・支援がなければ、一方的に候補をおろすことはしないと話をされていましたが、それは変わらないのですか。共通政策は、総選挙となると幅広い国政のテーマが出てくると思いますが、現時点でこういうものを入れたいと思っているものがあればお話しください。共産党として15の必勝区を掲げていたと思いますが、この扱いを今後どうしたいのか。たとえば民進党と候補者調整をして、ここは共産党に一本化してほしいと思われているのですか。

 志位 私たちは野党と市民の共闘を成功させる、勝利に導くためには、しっかりとした共通政策、「本気の共闘」の態勢が必要だと考えております。そういうものを抜きにわが党として一方的に候補者をおろすということは全く考えていません。

 共通政策については、この2年間で土台がつくられています。一つは、安保法制を廃止し、立憲主義を回復する。二つ目は、アベノミクスによる国民生活破壊、格差と貧困を是正する。三つ目は、TPPや沖縄など国民の民意を無視した強権政治を許さない。四つ目に、安倍政権のもとでの憲法改悪に反対する。この四つの太いところは、4野党党首の合意となっています。これはぜひ、再確認できたらと考えています。

 プラスアルファは今後の話し合いになってきますが、これまでの到達点についていいますと、昨年の参議院選挙にさいしては野党4党で出した議員立法の内容も共通政策としていこうという確認があります。それから「市民連合」のみなさんと何度かにわたって政策合意をしていますが、これも共通政策にしていこうということを確認しています。

 このように、これまでも四つの柱プラスかなり豊かな広がりをもった到達点があるのです。それを土台にさらに発展できればと願っています。

 私たちとしては、ぜひとも核兵器禁止条約に日本が参加する、これは唯一の戦争被爆国の国民多数の願いでもあると考えています。ぜひこれを野党共闘の課題にできれば、野党共闘が国際的にも大きな大義を持つものになるだろうと考えています。

 最後に必勝区についてです。すでに全国で15の必勝区を明らかにしています。私たちは、すでに全国の約260の小選挙区で予定候補を決定しており、そのすべてで勝利を目指して奮闘しますが、15については必勝と位置づけて、その取り組みをずっとやってきているところです。これは、私たちがそういう位置づけをしているということであり、そういうものとして他の党にもお伝えしてあります。ここは話し合いになってくると思っています。

安倍首相が、計算違いだったと、ひどく後悔するような結果を

 志位 私は、野党と市民の共闘というのは、この2年間で、大きな成果をあげてきたと考えています。去年の参議院選挙では全国32の1人区すべてで野党統一候補を擁立し、11の選挙区で勝利しました。それに続く新潟県知事選挙での勝利、先日の仙台市長選での勝利など、野党4党プラス市民で力を合わせれば安倍政権を倒しうるということが、この2年間のたたかいで実証されてきていると思います。それをぜひ総選挙においてもっと発展させたい。またそれは可能だと考えています。

 私も全国を歩いておりまして、野党と市民の共闘の流れというのは、全国各地でいろいろな形で広がっている、草の根で広がっております。全国各地に「市民連合」も結成されています。ですから、この流れは、いろいろな困難があるかもしれないけど、必ず発展すると確信をもっています。安倍(晋三)首相が、計算違いだったと、ひどく後悔するような結果をぜひつくりたいと思っております。

総選挙の争点はどのようなものになるか

 ――今回の解散・総選挙については野党からも「大義のない解散」だという声がでています。それをどうお考えか。また、総選挙の争点はどのようなものになるかお考えをお聞かせください。

 志位 「大義のない解散」という批判がたくさんでていますが、その大義のなさの一番の中心点は先ほど言った点にあると思います。すなわち、「森友・加計疑惑」――一連の国政私物化疑惑にすべてふたをする形で、「疑惑隠し」で国会を冒頭で解散してしまおう。こんなにも道理のたたない解散はないと思います。

 選挙の争点というご質問ですが、これは、総理の正式な解散表明はまだやられておりません。解散について総理がどう意義づけるのか、彼らが何を訴えてくるのかということも踏まえて、私たちは、争点を明らかにしていきたいと思います。

 ただ、少なくともこういう点は大きな争点になるだろうと、現在、考えている問題について言いますと、第一は、何と言っても、国政を私物化し、憲法を壊し、国民多数の民意を踏みつけにする、安倍政権の暴走政治をこのまま許していいのか。これに退場の審判をくだす選挙にしていきたい。

 第二は、北朝鮮の核・ミサイル問題をどう解決していくのか。私たちは戦争を絶対に起こしてはならない、「対話による解決」を一貫して主張してきましたが、これをどう解決するかについて、私たちの対案をしっかり示して議論していきたい。この問題とのかかわりでも安保法制=戦争法廃止を、緊急の課題として主張していきたい。

 第三は、暮らしと経済の問題です。「アベノミクス」を5年近くやってきたが、消費が冷え込んだままです。働く人の実質賃金が上がらない。こういう状況が続いております。その大きな原因の一つは、消費税を8%に上げたことにあります。このことを考えても消費税10%への増税は中止し、応能負担にもとづく税制改革で財源を確保する。雇用、社会保障、教育と子育てなど、国民の暮らしを応援して、日本経済を良くしていく対案を掲げて大いに論戦していきたい。

 第四に、憲法問題も大きな争点になってくると考えています。この間、安倍首相が、「憲法9条に自衛隊を書きこむ」と表明し、そういう線で自民党は動いています。その是非は大争点になってくると思います。無制限の海外での武力行使に道を開く9条改憲を許さず、9条を生かした日本をつくっていく。

 そして第五に、世界の大きな流れとの関係で、国連で採択された核兵器禁止条約に唯一の戦争被爆国である日本が背を向けていいのか、これに参加していこうじゃないかということも大いに訴えていきたい。

 安倍暴走政治に終止符を打ち、国政の大きな民主的転換に踏み出す。こういう選挙にしていきたい。そのためには共闘が必要です。野党と市民の共闘を必ず成功させて、そういう方向に日本の政治を切り替える。政治を変えるチャンスの選挙です。このチャンスをものにする結果を出したいと決意しています。

野党と市民の共闘の原点――安保法制=戦争法廃止はいよいよ重要に

 ――共通政策などではすべての要素が整わなければ野党共闘・選挙協力の環境というのは成立しないとお考えなのか。

 志位 共通政策というのは一致点でつくるものです。先ほどお話しした、これまで合意してきた一連の問題を再確認したうえで、さらに豊かにしていきたいというのが私たちの考えです。ただ、どこどこまでが整わなければと、あらかじめ一方的に線を引くようなことは考えていません。

 ただここで一つ言いたいのは、野党と市民の共闘の「一丁目一番地」というのは何かといえば、安保法制=戦争法の廃止なのです。憲法違反の安保法制は廃止する、そして日本の政治に憲法にのっとった政治――立憲主義を取り戻す。ここに共闘の原点がありますが、この点が、今日の情勢のもとでいよいよ大切になっているということを強調したいと思います。

 菅義偉官房長官などは、北朝鮮問題に言及して、「平和安全法制をつくっておいて本当に良かった」と発言しています。しかし私は逆だと思います。安保法制を作ってしまったがゆえに日本が危険にさらされている。

 この間、安保法制の発動として、自衛隊艦船による「米艦防護」が行われました。さらに、自衛隊艦船による米艦に対する「燃料補給」が行われました。重大なのは、国民がまったく知らないところでオペレーション(作戦)がやられていた。報道が明らかにして後になって分かる。これはきわめて重大です。

 いま米朝で軍事的対立がエスカレートしています。万が一、軍事衝突ということになった場合に、日本が自動的に参戦することになる。国民が知らないところで日本が戦争の当事国になる。日本が攻撃されていないにもかかわらず、米国の戦争に参戦することで、戦争を日本に呼び込むことになる。この危険が安保法制によってもたらされている。それでいいのか。このことを強調しなければなりません。

 北朝鮮問題の解決の唯一の道は、経済制裁の強化と一体に「対話による解決」に取り組む。これ以外にありません。そのためには、北朝鮮にこれ以上の軍事的挑発を許さないことがまず重要ですが、すべての当事国が自制する必要があります。軍事対軍事の悪循環に陥ってはならない。ところが、安保法制=戦争法の存在は、軍事対軍事の危険な悪循環をエスカレートさせることになっている。

 北朝鮮問題とのかかわりを考えても、安保法制=戦争法を廃止することは、喫緊の課題となっていることを強調したいと思います。

「新党」の動きについてどう考えるか

 ――若狭(勝)さんと細野(豪志)さんが設立を目指している新党について、まだ立ち上がっていないが、解散の流れを受けて何とか間に合わせると当事者がおっしゃっている。繰り返し強調されている野党共闘ということを考えたときに、その新党ができた場合、そことはどういうスタンスを取っていくのでしょうか。票が割れてしまう危険性が懸念されるところですが。

 志位 私は、いま言われた流れ(「新党」の動き)というのは、野党の流れと考えておりません。自民党と公明党の補完勢力をつくるという以外のものではないと思っております。その中心になっている議員の方も、自民党の議員をずっとやってこられて、安保法制についても、共謀罪についてもすべて賛成してこられた方でしょ。ですから自民党政治に代わる旗印が立つ道理がありません。すべて間違っていましたというんだったら別ですけれど、そうじゃない以上、これは自民党政治の補完勢力というしかない。この流れに私は未来があると思っていません。もちろん連携はあり得ないことです。

理念・政策が異なる政党間の共闘は可能か

 ――(民進党の)前原(誠司)代表が30分ほど前、野党共闘について理念・政策の一致するところと組むという話だけをされました。前原さんは代表選で、政策の一致するところで共闘するとした去年の参院選と政権選択選挙となる衆院選では対応が違うという話をされていたこともあります。先ほど、委員長がおっしゃった消費税10%の対応ですとか、日米安保の対応ですとか、理念・政策が違うように思うんですけれども、それでも今回の衆院選で共闘は可能だと思われていますか。

 志位 私は可能だと思っています。政党間の共闘というのはそもそも何か。政党ですからそれぞれ独自の理念と政策を持っています。理念・政策が同じだったら同じ政党になるんです。違うから別々の政党をつくっているんです。それでは政党間の協力・共闘とは何かといえば、理念・政策がそれぞれ違っても、国民が望む当面の一致点で力を合わせる、これが政党間の共闘です。

 先ほど言ったような(共通政策の)項目は、これまでも合意してきたわけです。これは十分な国民的大義を持つものだと思います。理念・政策が違っていたとしても、お互いの立場をリスペクト(尊敬)して、相互に尊重しあって、違いは持ち込まない。そして一致点で協力する。違いをあげつらうのでなく、一致点をよく探せば、たくさん一致点は出てきます。これが政党間の協力だと私は思います。

 昨年の参院選挙ではそういう精神で選挙協力の第一歩を踏み出したわけですが、政権協力も基本は同じだと思っています。私たちは、「野党連合政権」ということを提唱しております。これは連合政権ですから、さまざまな立場の党が集まるわけです。これも理念・政策が違っても、それを横において、当面する大事な一致点で協力する。これは連合政権を構成するさいにも同じことだと思います。

 私たちについていえば、たとえば「日米安保条約を国民多数の合意で廃棄する」というのは、綱領で掲げている日本改革の中心点です。しかしこの問題は残念ながらまだ野党間に一致がない。そうである以上、共闘に持ち込んだりしない、ということを繰り返し述べております。不一致点は互いに持ち込まないということです。一致点に基づいて協力・共闘する。これが政党間の共闘の当たり前の姿だと思います。

消費税10%への増税について

 ――争点について、次の総選挙で(安倍政権が)消費税増税分を借金返済ではなく社会保障に充てる、これを掲げるというのが一部報道にあり、これは民進党の考え方と同じに見えます。こういった争点隠しのような手法をどう考えますか。

 志位 消費税については、私たちは10%への増税は中止すべきだという立場です。この点は民進党のみなさん、あるいは他の野党のみなさんとよく話し合っていきたい点ですが、税についての考え方はそれぞれだと思います。私たちは消費税そのものに反対しています。すなわち、消費税そのものが、逆進性という宿命を持っていますし、格差と貧困をひどくする。最悪の不公平税制です。この税金そのものに反対です。この点では、他の野党と意見の違いがあると思う。

 同時に、再来年の10月1日から10%にする。これにどういう態度をとるかということを考えた場合に、よく話し合えば接点が出てくるのではないか。8%に上げたために長期にわたる消費不況が起こった。今でもそれは続いている。実質賃金もマイナスです。こういう状況が続いている。消費不況が続いているもとで、10%に上げられるのか。それから一方で、法人税減税をどーんとやっている。大企業には大減税をしておいて、庶民増税ができるかという論点もあるでしょう。

 ですから税に対する考え方はそれぞれであったとしても、再来年10月からの10%はダメという一点で前向きの合意ができないかを話し合ってみたいと思います。

自民党に代わる「受け皿」を担えるのはどこか

 ――次の選挙で自民党に代わる受け皿をどうつくるのかが一つの焦点になっています。都議選の結果、自民党に代わる受け皿への期待感が各種世論調査でも高まっていました。小池百合子さん(都知事)の支援を受けた若狭新党も含めて受け皿をどこが担うかが大事なポイントになりますが、共産党としてどこが受け皿を担うべきか、受け皿を担えるのかという点に関して見解をお聞かせください。

 志位 ずばり4野党と市民の共闘。これが自民党政治を倒したうえでの選択肢です。これが受け皿になる。その受け皿へ1票を投じてみようと国民のみなさんに思っていただけるような共通の旗印をぜひ示していきたい。

 「都民ファースト」について言いますと、今の都議会で「都民ファースト」に寄せられた期待をすっかり裏切るようなことになっている。ぜひそこに目を向けていただきたい。小池都知事が一番強調したのは「情報公開」、都政の「見える化」でした。ところが、築地市場の豊洲移転を、「無害化」という公約を投げ捨てて強引に進める。都議会の予算特別委員会の設置にも反対する。都知事の一問一答の質疑にも応じない。そんな調子でまったく都民に見えないところで、ごり押ししようとしています。深刻な都議会の空洞化、形骸化という事態が進んでいます。「受け皿」というが、結局、自民党が進めてきた路線の執行者になりつつあるのが今の小池都政の実態ではないか。こういう事実もよくみて、いわゆる「新党」の動きも見極めてほしいと思います。

野党と市民の共闘は、国民の共有財産――大事に育てていきたい

 ――共闘の意義ですが、これは可能な限り当選者1人の小選挙区で、候補一本化を目指すということでいいのですか。全部は無理だと思いますが、だいたいどれくらいやりたいのでしょうか。

 志位 それは、これからの話し合いいかんなんです。何といっても共闘の内実として、どれだけしっかりした共通政策を確認できるかがとても大事な点になってきます。それから「本気の共闘」のためには一方的な対応というのでは力が出ない。相互に支援する、推薦する。ここに踏み切っていけるかも大事なところです。

 共闘がどこまで本格的なものになるかということが、どこまで調整ができるかということに連動すると思います。私たちは、冒頭申し上げたように、野党と市民の共闘を必ず成功させて安倍政権を倒したい。今度の選挙はそういう選挙にしていきたい。新しい政治に道を開く選挙にしていきたいと考えています。そのために、最も早いスピードで話し合いを進めていきたいと思っています。

 それから共闘というと、民進党と共産党の関係にだけ光が当たるという面があるのですが、そうではない。もちろん民進党は野党第1党ですし、共産党は第2党ですから、両党の責任はたいへんに重いと思うけれども、やはりこの共闘ということで、忘れてはならないのは、安保法制=戦争法に反対する空前の市民の運動の中から「野党は共闘」という声がわき起こった。それにこたえて始まったものなのです。野党と市民の共闘なのです。これは4野党のものでもないし、いわんや民進党と共産党のものでもない。私は、国民共有の財産だと考えています。そういうものとして大事に育てていきたい。そしてそういう立場で市民のみなさんと力を合わせれば、必ず道は開けると思っております。ぜひそういう選挙にしていきたいということで、頑張りますので、今後も引き続きよろしくお願いします。ありがとうございました。