志位和夫 日本共産党

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国会質問

2017年6月16日(金)

安倍内閣不信任決議案に対する志位委員長の賛成討論

衆院本会議


 日本共産党の志位和夫委員長が15日未明の衆院本会議で行った安倍内閣不信任決議案に対する賛成討論は以下の通りです。


写真

(写真)賛成討論に立つ志位和夫委員長=15日、衆院本会議

 日本共産党を代表して、安倍内閣不信任決議案への賛成討論を行います。

 まず「中間報告」による審議の一方的打ち切りという乱暴極まる方法で、「共謀罪」法案を強行しようとしている安倍政権に対して、満身の怒りを込めて抗議するものです。

 安倍政権は、一昨年9月の安保法制=戦争法の強行を境に、憲法を無視し、民意を無視した暴走政治にまったく歯止めがなくなってしまっています。国会での「数の力」に慢心し、国政を私物化し、目を覆うばかりのモラル崩壊がすすんでいます。もはやこの内閣に、わが国の国政を担う資格はありません。

 不信任の理由は数多くありますが、以下3点にしぼって具体的にのべます。

憲法違反の「共謀罪」法案の強行――国民をうそで欺き、国際社会からの批判を無視

 不信任の第一の理由は、憲法違反の「共謀罪」法案を強行しようとしていることであります。

 この法案の最大の問題は、何を考え、何を合意したかが処罰の対象となる―「心の中」、内心を処罰するということです。それは、具体的な行為があってはじめて処罰するという刑法の大原則を根本から覆すものです。思想や内心の自由を絶対に「侵してはならない」と定めている憲法19条に反する違憲立法にほかなりません。

 政府は、「共謀罪」法案をごり押しするために、国民を欺くうそをいくつも重ねてきました。

 一つは、「テロ対策」といううそです。政府は、国際組織犯罪防止条約の批准のためといいますが、この条約はマフィアなど経済犯罪に対応するためのものであり、テロ対策の条約ではありません。そのことは、この条約を締結するための国連「立法ガイド」を作成したニコス・パッサス教授が、「条約の目的はテロ対策ではない」と断言していることからも明らかです。だいたい、日本政府自身が、条約の起草過程で「テロリズムは本条約の対象にすべきではない」と主張していたではありませんか。

 いま一つは、「一般人は対象とならない」といううそです。参議院の審議で、政府は、環境保護団体や人権保護団体を「隠れみの」とした場合には処罰されることがあり得ると言い出しました。さらに、「組織的犯罪集団」の構成員ではない「周辺者」が処罰されることがあり得ると言い出しました。しかし、「隠れみの」かどうか、「周辺者」かどうかを、判断するのは誰か。捜査機関ではないですか。どうやって判断するのか。広く一般市民を日常的に監視することになるではありませんか。

 だいたい、質疑のなかで、政府は、岐阜県大垣署による市民監視事件―風力発電所に反対する市民運動を監視し、情報を中部電力に流していた事件について、謝罪も反省もせず、「適正な職務だった」と開き直っています。すでに行われている市民監視を「適正」と開き直っている政府が「一般人は対象にならない」と言って、いったい誰が信用するでしょうか。

 5月18日、国連人権理事会が任命した特別報告者、ジョセフ・ケナタッチ氏から、「共謀罪」法案が、プライバシー権や表現の自由への「過度の制限」になると強く懸念する書簡が、安倍総理に届けられました。ところが、日本政府は、ケナタッチ氏から寄せられた質問に一切答えないまま、「強く抗議する」という問答無用の態度をとりました。日本政府は、国連人権理事会の理事国に立候補したさいに、「特別報告者との建設的な対話」を公約したはずです。国際公約をほごにしてはばからない安倍政権の態度は、世界の恥というほかないではありませんか。

 「共謀罪」法案をめぐって、「かつての治安維持法の再来になる」との危惧が強く寄せられています。それは決して杞憂(きゆう)ではありません。金田法務大臣は、治安維持法について「適法に制定され、適法に執行された」と言い放ちました。安倍政権に問いたい。それならば、治安維持法による弾圧、拷問で犠牲になった多くの人々―作家の小林多喜二の虐殺も、哲学者の三木清の獄死も、「適法」だというのか。このような勢力に「共謀罪」法案を与えるわけには断じていきません。「共謀罪」法案は廃案にするしかありません。

 国民をうそで欺き、国際社会からの批判にも耳を貸さず、憲法違反の「共謀罪」法案を強行しようとする安倍政権に日本の舵(かじ)取りをする資格はありません。速やかに退陣すべきであります。

「森友」「加計」疑惑――権力による国政私物化への関与の疑惑を隠蔽

 不信任の第二の理由は、安倍総理が、「森友」疑惑、「加計」疑惑―権力による国政の私物化の二つの重大問題への関与の疑惑を、隠蔽(いんぺい)し続けていることであります。

 「森友」疑惑の核心―8億円もの国有地の値引きがどうして行われたかをめぐって、総理夫人の昭恵氏の関与の疑惑がきわめて濃厚になりました。にもかかわらず、総理は、昭恵氏の証人喚問を拒否する許しがたい態度を取り続けています。

 それにくわえて「加計」疑惑が大問題になっています。疑惑の核心は、総理が「腹心の友」とよぶ加計学園理事長との関係によって、公平公正であるべき行政がゆがめられたのではないかということにあります。問題は「岩盤規制」の是非一般ではありません。「岩盤規制に穴を開ける」と称して開けた「穴」が、加計学園しか通れない「特別の穴」であったことが問題となっているのです。

 「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」と明記された文書が明るみに出され、前川喜平前文部科学事務次官が、文書は省内で共有されていたと証言し、疑惑はいよいよ決定的になりました。にもかかわらず安倍政権の取った態度は、文書を「怪文書」呼ばわりし、前川氏に対する卑劣な人格攻撃を行うということでした。

 追い詰められた政府は、加計文書の「追加調査」をすると表明しましたが、その結果はいまだに発表されていません。総理は「徹底調査を指示」したといいますが、文書を隠蔽しつづけたことへの反省もなく、まともな調査ができるはずもありません。だいたい「徹底調査」といいながら、なぜ圧力をかけた側の内閣府の調査を拒否するのか。なぜ前川氏の証人喚問を拒否し続けるのか。説明がつかないではありませんか。

 国会質疑における安倍総理の態度はあまりにもひどいものでした。ヤジがあれば「静かにしろ」と延々と時間をつぶす。そのくせ自席から「反論させろよ。いいかげんなことばかり言うんじゃない」とヤジるというルール違反を繰り返す。都合の悪い質問には「印象操作」と言って答えない。野党議員の質問に興奮して恫喝(どうかつ)まがいの答弁を行う。あまりにも傲慢(ごうまん)、不遜。一国の首相としての品位もなければ、品性もありません。こうした態度一つとっても総理失格といわねばなりません。

 ある識者が、「いま日本で真実という価値が脅かされている。真実を共有しなければデモクラシーは成立しない」と発言しておられましたが、まったく同感です。「赤信号を青といえ」、「あったことをなかったこと」にしろ―このようなことの横行を許すならば、およそ民主政治は成り立たないではありませんか。安倍政権が破壊しようとしているのは、まさに「真実という価値」だということを、きびしく指摘しなければなりません。

 国政は、安倍総理とその「お友達」の私物では、断じてありません。そして、安倍総理は、「森友」「加計」疑惑のどちらについても、自分が関与していたら総理を辞めると約束していたことを忘れてはなりません。疑惑解明にふたをする態度を取り続ける安倍総理に、もはや総理の資格はありません。私たちは真相の徹底究明を引き続き強く求めるものであります。

憲法9条改定の宣言――海外での武力行使が文字通り無制限に

 不信任の第三の理由は、安倍総理が、憲法9条改定に手をつけようとしていることであります。

 5月3日、総理は、憲法9条を改定して自衛隊を明記する、2020年までには施行すると宣言しました。

 だいたい、内閣総理大臣が、こうもあからさまな憲法改定を、期限まで決めて宣言することが許されるでしょうか。総理は、「自民党総裁としての発言であって、総理と総裁は違う」と弁明していますが、そのような使い分けは絶対に通用するものではありません。総理の発言は、すべての公務員に「憲法を尊重し擁護する義務」を課した、憲法99条に反する憲法違反の発言といわなければなりません。

 総理は、「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」とのべています。これは、単に存在する自衛隊を憲法上追認することにとどまりません。文字通り無制限の海外での武力行使を可能にすることになります。

 政府は、自衛隊を合憲としたものの、9条2項の制約から、それを「自衛のための必要最小限の実力組織であって、戦力にあたらない」と説明してきました。「戦力にあたらない」ことを建前としたため、海外派兵、集団的自衛権行使、国連軍への参加はできないとしてきました。安保法制=戦争法によって、集団的自衛権行使の大きな穴が開けられましたが、それでも政府は、それを「限定的」だと説明し、武力行使を目的にした海外派兵はできないという建前を続けざるをえませんでした。9条2項は、安保法制=戦争法をも縛る力となって働いているのであります。

 ところが、別の項目を立てて、自衛隊が明記されたら、どうなるでしょう。たとえ9条2項が残されたとしても、それが死文化=空文化されてしまいます。なぜなら、別の項目で自衛隊の存在理由が書かれれば、それが独り歩きし、自衛隊の役割がとめどもなく拡大することは避けられないからです。それが安保法制=戦争法を「合憲化」するだけでなく、この法制のもとでもできないとされてきた集団的自衛権の全面的行使、武力行使を目的にした海外派兵を可能にすることになることは、明らかではないでしょうか。

 国民の目、耳、口をふさぐ秘密保護法、モノ言えぬ監視社会をつくる共謀罪、安保法制=戦争法に続く憲法9条改定の企て―「海外で戦争する国」への暴走を、これ以上続けさせるわけにはいきません。安倍政権を一刻も早く打倒しなければなりません。

野党と市民の共闘を成功させ、安倍政権を打倒し、憲法が生きる新しい政治を

 野党4党は、6月8日の党首会談で、「安倍政権の下での憲法9条の改悪に反対する」ことを確認しました。憲法に対する野党の立場には違いもありますが、立憲主義を平気で壊す安倍政権に憲法を変える資格はない。この一点で、野党は固く結束しています。きたるべき総選挙で、野党と市民の共闘を必ずや成功させ、安倍政権を打ち倒し、憲法が生きる新しい政治をつくるために全力をあげる決意を表明して、私の賛成討論を終わります。