志位和夫 日本共産党

力をあわせて一緒に政治を変えましょう

演説・あいさつ

2016年10月24日(月)

野党と市民の共闘 到達点と課題を語る

全国革新懇シンポ 志位委員長の発言


 22日に開かれた全国革新懇の「市民と野党の共闘の発展をめざす懇談会」で行った日本共産党の志位和夫委員長の発言は次の通りです。


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(写真)発言する志位和夫委員長

 みなさん、こんにちは。日本共産党の志位和夫です。この数年間、野党と市民の共闘がめざましく発展してきましたが、今日は、その到達点と課題についてお話をさせていただきたいと思います。

直接の源流――切実な一致点にもとづく「一点共闘」

 まず野党と市民の共闘がどうやって発展してきたか。それを進めた力はどこにあったか。この数年間を振り返って、感じていることをお話しいたします。

 この直接の源流は、2011年の「3・11」(東日本大震災)以降起こった、さまざまな分野での切実な一致点に基づく共同――「一点共闘」にあると思います。

 たとえば、2012年の3月から「原発ゼロ」をめざす毎週金曜日の官邸前行動が始まりました。このとりくみを主催しているみなさん(首都圏反原発連合)は、「普通の人が誰でも安心して参加し、声をあげられることができる場を提供する」という思いで頑張ってこられました。「いまの政治がおかしい」と思ったら、声をあげ行動する、それが当たり前という動きがここから始まった。国民一人ひとりが、主権者として、自覚的に声をあげ、立ち上がる、新しい市民運動が始まりました。

 そしてこの市民運動は、私たち政党の側からいいますと、どの政党にも開かれていたのです。ですから私たちもどんどん参加してスピーチしてきました。ほかの野党からもスピーチがされる。こうしてここは、野党と市民の共闘の最初の場になっていったように思います。

2014年の沖縄――保革の垣根を越えた「オール沖縄」の連続勝利

 こうした流れが飛躍的な発展をとげたのが2014年の沖縄でした。新基地建設反対の「オール沖縄」という大きな流れがつくられました。保守と革新の垣根を越えて、広大な連帯が発展していきました。その力でこの年の1月に行われた名護市長選挙で稲嶺進さんが勝利する。11月の県知事選挙で翁長雄志さんが勝利する。12月の総選挙で、小選挙区の1区、2区、3区、4区のすべてで「オール沖縄」の候補が勝利して、自民党をすべて落としました。沖縄では、新基地建設反対の「一点共闘」が、地方選挙での共闘、さらに国政選挙での共闘に発展していったのです。

 この沖縄の選挙に応援にうかがったさいに、本当に感動的だったのは、保守と革新の垣根を越えた画期的共闘がつくられたということです。県知事選挙の投票日のちょうど1カ月前の演説会に行って、翁長さんと一緒に訴える機会がありました。翁長さんは自民党県連幹事長だった方です。翁長さんはスピーチで、そのことにも触れながら、「自分はこれまで共産党と違う立場だったけれど、一緒に肩を並べてたたかってみて、もっと早くから仲良くしていればよかった」(笑い)ということをおっしゃった。翁長さんの言葉でたいへん強く印象に残っているのは、「保守は革新に敬意をもち、革新も保守に敬意をもち、お互いに尊敬する関係になっていきましょう」ということでした。まさにそういう関係を沖縄ではつくって画期的勝利を切り開いていったわけです。

 私は、そういうたたかいの体験を踏まえて、翌年、2015年1月の日本共産党の「党旗開き」のあいさつで、「沖縄で起こったことは、全国で起こりうるという予感がします」という話をしたのですが、それが私の実感でありました。

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(写真)パネリストの発言を聞く人たち=22日、東京都千代田区

戦争法反対のたたかい――新しい市民運動が広がり、野党を大きく変えた

 それは2015年に現実のものとなりました。安保法制=戦争法案に反対する空前のたたかいが起こりました。戦後かつてない新しい市民運動がわき起こりました。この運動は野党を大きく変えたと思います。

 いろいろな経過がありましたけれども、野党5党――共産党、民主党、維新の党、社民党、生活の党が、たたかいの過程で法案阻止で一致し、最後まで頑張りぬいたのです。国会の節々で6回にわたって野党の党首会談を行い、最後は野党5党で「安倍内閣不信任決議案」を共同提出しました。私は、共同提出を決めた野党党首会談で「もしもこの決議案が通ったら、ここにいる野党5党とそれに賛同した議員で政権をつくることになりますね」と発言しました。びっくりした方もいたようでしたが、理屈の上ではそういうところまで野党は共闘を発展させたのです。

 安保法制=戦争法案は、9月19日に強行されましたが、私たちはその日の午後、「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」の呼びかけを行いました。この法律ばかりは「数の暴力」で強行されたからといって、そのままにしておくわけにはいかない。希代の憲法違反の悪法は廃止しなければならない。そのためには政府をつくる必要がある。そのために野党は選挙協力をやろう。こういう呼びかけをいたしました。これは何といっても、「野党は共闘」という多くの市民のみなさんの声に、私たちもこたえなくてはいけない。私たちも変わらなくてはいけない。こう思いを定めての提案でありました。

 この提案は、いろいろな方面から評価をいただきましたが、実際には野党共闘はなかなか進まなかった。ここでもまた、野党の背中を押してくれたのが、市民の運動でした。12月には「市民連合」が結成され、翌年(2016年)1月には共同街宣をやる。「ぐずぐずしていてどうする」というような声が市民からあがりました。

 そういう声におされて、2月19日でありましたが、野党5党の党首会談をやりまして、安保法制廃止、集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回、安倍政権の打倒をめざし、国政選挙で協力をするという画期的な5野党合意を確認しました。これをきっかけにして全国各地の参院選1人区での野党共闘が進み、すべての1人区で野党統一候補が実現し、そのうち11で勝利を勝ちとることができました。最初のチャレンジとしては大きな成果をあげることができたと考えています。

 この参議院選挙での野党と市民の共闘は、いろいろな財産をつくりましたが、私は、他の野党の方々、市民運動の方々との新しい信頼と連帯の絆がつくられたということが、次につながる一番の財産だと考えています。

新潟知事選の勝利――「大義の旗」を掲げた「本気の共闘」

 野党と市民の共闘は、参院選後も発展しています。10月16日に投開票された新潟知事選挙で、野党統一の米山隆一さんが自公推薦候補に6万3000票の大差をつけて圧勝するという、素晴らしい出来事が起こりました。

 新潟の勝利の教訓がどこにあったか。私は、二つあると思います。

 一つは、「大義の旗」を明確に立てたということです。「柏崎刈羽原発の再稼働は認めない」。この旗を米山さんが勇気をもって掲げ、この大義のもとに結束してたたかい、それを大争点におしあげた。これが県民の心に深く響いて、県民を動かしました。

 いま一つは、「本気の共闘」をやったことです。3野党(共産党、自由党、社民党)と市民の会を中心に、互いに信頼し、互いに敬意を持ち、心を一つにたたかう、「本気の共闘」を、新潟ではおこなったのだと思います。民進党も個々の国会議員がこの共闘の輪の中に入ってきたことは重要です。

 米山さんが知事に当選した後に、共産党本部にみえて、私たちと懇談をしました。その席で米山さんが、「共闘はお互いを信頼していることが重要で、それは周囲に絶対に伝わるものです」と言われていたのが印象的でした。本当にお互いを信頼していれば、何倍もの力が出る。そしてその本気度が県民に伝わる。

 「共産党と組むと票が逃げる」という議論がまだあるようですが、これは妄想だったということが私ははっきりしたと思います。共産党もしっかり共闘の輪の中に入ったたたかいをやった結果、無党派層の7割、自民支持層の3割を米山さんは獲得したわけです。保守層だけでなく自民支持層の一部までつかんだたたかいをやったのです。

 こういうたたかいになりますと、相手陣営はなすすべもありません。「米山猛追」が伝えられて彼らがやったことは何か。自民党の二階幹事長は、あわてて、「電力業界などオールジャパンでたたかう」と言いました。しかし、こう言いますと、「原発再稼働のための選挙だ」と自分で言っていることになりますね。最後に、相手陣営が出した法定ビラは「県庁に赤旗が立つ」というものでした。これは多くの県民からあきれられたビラとなりました。これにはオチがついていまして、新潟県の「県旗」は赤いというのです(笑い)。新潟県民だったら知っているはずだ。こんなことも知らないということは、このビラをつくったのは新潟県民ではないのではないかとなった。打つ手打つ手がすべて裏目に出ました。

 新潟のたたかいは、「大義の旗」を掲げて「本気の共闘」をやれば自公を打ち破れるということを示したという点で大きな教訓をつくったと思います。

 野党と市民の共闘をつくり出し、発展させた力は、国民のみなさんのたたかいです。今後も、この共闘を発展させる力は国民のたたかいにあります。力をあわせて前途を開こうということを、心から呼びかけたいと思います。(拍手)

総選挙に向けて――豊かで魅力ある共通公約をつくっていきたい

 さて総選挙にむけてこの共闘をどうやって発展させていくか。この間、民進党の新執行部が発足しました。それを受けて、9月23日、野党党首会談をやりました。その場で、総選挙で「できる限りの協力」をしていくことを確認し、書記局長・幹事長の間で具体化のための協議を開始することで合意しました。

 今後、協議を始めていくことになりますが、総選挙での野党共闘といった場合に、私は、新しい課題が三つあると考えています。

 第一は、豊かで魅力ある共通公約をつくっていくということです。

 野党の共通政策についてのこれまでの到達点を申しますと、まず野党4党は、安倍政権と対決する政治的立場として四つの点を確認しています。

 一つは、安保法制を廃止し、立憲主義を回復する。二つは、アベノミクスによる国民生活破壊、格差と貧困を是正する。三つは、TPPや沖縄問題など、国民の声に耳を傾けない強権政治を許さない。四つは、安倍政権のもとでの憲法改悪に反対する。この四つの太い柱を確認しています。

 それにくわえて、野党4党で国会に15本の議員立法を共同提出しています。それから「市民連合」のみなさんと19項目の政策協定に調印しています。これらの中身も、共通政策にすることを確認しました。

 ただ率直に申しまして、参院選では野党間で政策協議を丁寧に行う時間はありませんでした。最後の段階で、今述べたことを確認して選挙戦に突っ込んだというのが実情でした。総選挙に向けては、本気で政策協議をやる必要があると考えています。野党間でぜひやっていきたい。「市民連合」のみなさんともしっかり話し合いをしていきたい。そして一致点を最大限に確認し、魅力ある政策のパッケージを打ち出したいと考えています。ポジティブ(前向き)なメッセージが伝わるものにしたい。

 そのさいに、原発問題でも前向きの合意を得たいと考えています。さきほど紹介した安倍政権と対決する政治的立場のなかには、原発問題が入っていません。原発問題では、野党間の合意がないのです。しかし、新潟の結果を見ても、原発に対する国民の不安、批判は非常に深いものがある。そのことは、選挙戦を通じてあらためて痛感しました。この問題は、野党と市民の共闘の太い柱にずばり据える必要があると思います。ぜひこの点でも前向きの合意を得たいと思っています。

本格的な相互協力、相互支援の共闘を実現したい

 第二は、本格的な相互協力、相互支援の共闘を実現していくことです。

 参院選1人区の共闘については、私たちはあえてこのことを求めませんでした。共産党の候補者をほとんどのところで降ろす。降ろしてでも話をまとめるという立場でのぞみました。まずは共闘を前進の軌道に乗せなくてはならない。まずは実践し、体験する。体験を通じて、互いにいろいろなものをつかむことができるでしょう。そして、「やればできる」という経験をつくりだす必要がある。そのためには共産党として候補者のほとんどを降ろしてでも野党統一候補をまずは実現し、勝利のために全力でとりくむ。そのことを優先しました。私は、この対応は正しかったと考えています。

 ただ、本来のあり方を言えば、選挙協力というのは相互的なものだと思います。お互いの候補者を推薦、応援しあう――そうした相互的なものが選挙協力の本来のあり方だと思います。

 私たちは、総選挙においては、相互協力、相互支援の共闘がどうしても必要だと考えています。そうでなくては本当の力は出ません。相手に勝てません。総選挙では、日本共産党の候補者を一方的に降ろすということは、まったく考えていないということを、ここではっきりと申し上げておきたいと思います。

 野党各党が、互いに信頼し、互いに敬意を持ち、互いに譲るところは譲って、心を一つにしてたたかう。そういう「本気の共闘」を実現してこそ、選挙に勝ち、安倍政権を倒すことができる。そういう「本気の共闘」をぜひ総選挙に向けてつくっていきたいと決意していますので、どうかお力添えをよろしくお願いいたします。(拍手)

野党連立政権――綱領や将来像が違っても、当面する一致点で協力する

 第三は、政権問題で前向きの合意をつくるということであります。

 民進党のなかから「綱領、理念、政策の違うものとは政権をともにできない」という話が伝わってまいります。しかし、「綱領、理念、政策」が同じだったら同じ政党になりますね(笑い)。「綱領、理念、政策が違うものとは政権をともにできない」ということは、論理的には民進党の単独政権ということになります。それがはたして現実的なのかどうかということが問われてくるでしょう。

 綱領や将来像が違っても、国民の切実な願いにこたえて、当面する一致点で協力する。これが、政党間の共闘の当たり前の姿ではないでしょうか。そのことは選挙協力だけでなくて、政権協力でも同じことだと思います。私たちは、こうした立場から「国民連合政府」を呼びかけておりますが、これに賛成できないなら、どういう政権構想を考えているのか。ぜひ示していただきたい。この問題についても、真剣な話し合いを通じて前向きの合意をはかりたい。総選挙に勝つためにはどうしても必要なことだと思います。

ともに力をあわせてたたかうなかで、お互いが前向きに変わりうる

 野党と市民の共闘は、多くの未熟な点を抱えています。多くの課題も抱えています。今後には曲折もあり、困難もあると思います。しかし、私は、大局でみれば、この流れは逆戻りすることは決してないという確信をもっています。

 そして、最後に強調しておきたいのは、野党と市民の共闘にはなかなか妙味がありまして、さきほど「体験を通じて」という話をしましたが、ともにたたかっていくなかでお互いに変わるということがあるのです。

 私たちも変わった。相手も変わったと思います。私自身も、一緒にたたかうなかで、「民進党のなかにも日本の前途を真剣に考えている立派な人がいる」と、ずいぶんたくさんの友人を得ました。私自身も認識を新たにし、認識が豊かになったと思っております。先方も、聞いておりませんけれども(笑い)、一緒にたたかうなかで「共産党もいいところがある」と見直した方もいらっしゃるでしょう。これは政党と政党だけでなくて、政党と市民との関係でも同じことがいえるのではないかと思います。変わらないものではないのです。一緒にたたかうなかでお互いに変わりうる。真剣にたたかえば、お互いに前向きに変わっていくということはあることだと思うんですね。この共闘の今後は、曲折もあり、困難もあり、私も楽観していませんが、ぜひそういう立場でお互いにこのとりくみを進めていきたいと思います。

 市民のみなさんの運動と力をあわせて、誠実に共闘を積み重ねるなら、必ずこの流れは発展するというのが私たちの確信です。そのことを申し上げ、そのために力をつくす決意をのべて発言といたします。(拍手)