2016年1月28日(木)
安倍暴走に正面対決 抜本的転換示す
衆院本会議 志位委員長の代表質問
日本共産党の志位和夫委員長は27日の衆院本会議での代表質問で、戦争法、立憲主義、暮らし・経済など日本が直面する焦点課題を取り上げ、民意にそむく安倍暴走政治と正面対決するとともに、抜本的な転換を迫りました。
アベノミクス反省し「貧困大国」からの脱却を
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暮らしと経済の問題で志位氏は、安倍晋三首相が「雇用が増え、高い賃上げも実現し、景気は確実に回復軌道を歩んでいる」とアベノミクスの“成果”を自画自賛していることを批判し、各統計の数字を示してそのごまかしを暴きました。
首相は「2012年10~12月期から15年7~9月期で就業者が117万人増」といいますが、実際は同時期で正社員は1万人減り、増えたのは非正規雇用者だけです。「高い賃上げを実現」の宣伝に関しても、物価上昇を差し引いた労働者の実質賃金は3年間でマイナス5%と、年収400万円のサラリーマンなら年間20万円も賃金が目減りしています。志位氏は、「都合のいい数字をもてあそぶのはいいかげんにやめるべきだ」「国民の暮らしの現実に立ったアベノミクスの検証と真摯(しんし)な反省が必要だ」とただしました。
首相は反省もなく有効求人倍率などの問われてもいない数字を並べた後、「アベノミクスを強力にすすめ、企業の過去最高の収益を賃上げにつなげ、成長と分配の好循環の拡大をはかっていく」と答えるのみでした。
さらに志位氏は、「暮らし最優先の経済政策への根本転換が必要だ」とのべ、「貧困大国」からの脱却を政策目標に据えることを提起。日本の相対的貧困率は16・1%とOECD(経済協力開発機構)加盟34カ国で上から6番目であり、国民の多くが突然、貧困に陥る危険と隣り合わせで生活している現状を指摘しました。
志位氏は「貧困生活からの脱却は、全国民に健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した憲法(第25条)の要請であるとともに、家計という経済の最大のエンジンを温めて経済の好循環を生み出すカギになる」とのべ、「あらゆる経済政策の基準に、貧困と格差の問題を据えるべきだ」と迫りました。
日本経済再生へ四つの提案
志位氏は、貧困と格差をただし、暮らし最優先で日本経済再生をはかる四つの提案を示しました。
(1)消費税10%増税の中止、庶民から増税で吸い上げ大企業に減税をばらまく逆立ち税制を抜本から改める
(2)社会保障削減から充実への転換、安心の社会保障を実現する
(3)非正規から正規への転換、長時間労働の規制など人間らしく働ける雇用のルールをつくる
(4)国会決議違反、公約違反のTPP(環太平洋連携協定)交渉から撤退する―。
これに対し首相は「消費税10%引き上げは、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施する」「(TPPは)協定の署名後、速やかに国会に提出し、承認を求めていく」と述べ、これまでの方針に固執する姿勢を示しました。
戦争法の極めて重大な危険
南スーダンPKOの任務拡大
「戦争法は日本にきわめて重大な危険をつくりだしている」―。志位氏は、アフリカ・南スーダンPKO(国連平和維持活動)での自衛隊任務拡大、過激武装組織ISに対する「有志連合」の軍事作戦に参加が可能となる問題を取り上げ「自衛隊が戦後初めて外国人を殺し、戦死者を出すという現実的な危険が生まれている」とただしました。
改定されたPKO法は、新たに「安全確保業務」「駆け付け警護」の任務を加え、任務遂行のための武器使用を認めています。
自衛隊が現在活動している南スーダンでは2013年12月以来、住民を巻き込んだ激しい内戦状態が続き、複数回にわたり停戦合意が結ばれても戦闘が再開される状況です。こうした状況下で南スーダンでのPKO主要任務は、自らが交戦主体となり「住民保護」のため武装勢力とたたかうという実態になっています。
志位氏が南スーダンに派兵されている自衛隊にこうした任務の追加を行うかと追及すると、首相は具体的な方針は決まっていないとしつつ、「今後慎重な検討が必要であると考えている」と述べ、排除しませんでした。
志位氏は、南スーダンでは停戦合意など「PKO参加5原則」が崩壊していると強調。「武装勢力といっても軍隊と民間人の区別はつかない。自衛隊が一たび、少年兵や民間人を撃ってしまったら取り返しがつかない。海外での武力行使を禁止した憲法9条のもとでは絶対に許されない。日本の貢献は、憲法9条にたった非軍事の人道支援、民生支援に徹するべきだ」と力説しました。
対IS軍事作戦に参加
志位氏は、ISのような残虐なテロ組織が生まれ勢力を拡大してきた背景には、米国などによる2001年のアフガニスタンでの「対テロ」報復戦争、03年のイラク侵略戦争による、中東の混乱と泥沼化した内戦があると指摘。米国主導のこうした戦争を無条件に支持した政府に猛省を促しました。
その上で志位氏は、政府がISへの空爆支援を「政策的判断として考えていない」としていることを指摘し、こういう「政策判断」をしている理由を質問。「戦争法がある以上、(米国からの要求があれば)拒否できず、軍事支援を行うのではないか。日本自身が入り込み、日本国民をテロの危険にさらす、その道を断じて許すわけにはいかない」と迫りました。
首相は「政策判断」の理由として、「非軍事分野においてわが国としての責任を果たす」と述べるにとどまりました。
志位氏は、世界からテロをなくすために国際社会が一致結束して取り組む対策として、4点を提唱しました。
(1)国連安保理決議を厳格に実行し、テロ組織への資金・人・武器の流れを断つ断固たる措置をとる
(2)貧困や格差、民族的・宗教的差別など、テロの土壌をなくす
(3)ISが支配地域を拡大してきたシリアとイラクでの内戦を解決し、平和と安定をはかるための政治的・外交的努力をつくす
(4)シリア国民の半数以上が難民として苦しむもとで、難民の人権を守り抜く国際的支援を抜本的に強化する
安倍首相は「いずれもテロ防止のため重要」と認めました。
立憲主義破壊と沖縄問題は根が一つ
志位氏は、安保法制=戦争法の強行により、日本政治は立憲主義破壊という深刻な事態に直面していると指摘。その現実の例として沖縄米軍新基地建設問題を挙げ、「安倍政権が沖縄に対して行っている暴政は、憲法を無視し、法の支配を無視する独裁政治そのものだ」と追及しました。
昨年10月、沖縄県の翁長雄志知事は、県民の圧倒的民意を踏まえて、名護市辺野古への米軍新基地建設の埋め立て承認を取り消しました。安倍政権は、国民の権利救済が目的の行政不服審査法を悪用する違法行為で、埋め立て承認取り消しの効力を停止。さらに、知事に代わって埋め立て承認の取り消し処分を撤回する「代執行」訴訟まで起こしました。
安倍首相は「法治国家として関係法令にのっとって、辺野古移設を進めていく。憲法と法の支配を無視する独裁政治だという指摘はあたらない」と居直りました。
志位氏は「これらはどれも、憲法が保障する地方自治と民主主義を根底から覆すものであり、安保法制=戦争法と沖縄に対する暴政は立憲主義の破壊という点で根が一つだ」と強調。辺野古への米軍新基地建設を中止し、移設条件なしに普天間基地を閉鎖・撤去すべきだと迫りました。
「緊急事態条項」
あらゆる明文改憲許さない
志位氏は、安倍首相が憲法改定の重要テーマとして「緊急事態条項」の新設を位置づけていることに対し、「独裁国家、戦争国家に道を開き、憲法9条改定につながる危険極まりないものだ」と厳しく批判しました。
自民党の「改憲草案」では、戦争や大規模災害の際、首相が発した「緊急事態の宣言」のもとで「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」「何人も…国その他公の機関の指示に従わなければならない」と明記しています。
志位氏は、内閣に権力を集中し、基本的人権を制約する規定を憲法に明記することが必要と考えるのかとただしました。さらに、災害対策が「緊急事態条項」新設の理由にならないことを、東北弁護士会連合会の「会長声明」が「日本の災害法制は既に法律で十分に整備されている。…国家緊急権は、災害対策を理由としてもその必要性を見出すことはできない」と述べていることを示して、明らかにしました。
安倍首相は「憲法改正草案は、自民党として将来のあるべき憲法の姿を示したものだ」「新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、国民的な議論と理解が深まるよう努めていく」と述べ、答えをはぐらかしました。
志位氏は「解釈改憲とともにあらゆる明文改憲に断固として反対する。日本国憲法の平和主義、立憲主義、民主主義を貫く新しい政治、すべての国民の個人の尊厳を守り、大切にする社会の実現をめざして全力をあげる」と表明しました。