2015年12月13日(日)
立憲主義を考えるシンポジウム~日本国憲法70周年に向けて~ 京都大学で
立憲主義回復 本気の提唱
「国民連合政府」 志位委員長が語る
京都大学法学部の高山佳奈子教授(刑事法)の呼びかけで学術企画「立憲主義を考えるシンポジウム―日本国憲法70周年に向けて―」が11日、同大学内(京都市)で開催されました。日本共産党の志位和夫委員長が出席して発言。ゲストの君島東彦立命館大教授、曽我部真裕京大教授、岡野八代同志社大教授がスピーチを行いました。会場での討論を紹介します。
戦争法強行によって、日本の自衛隊が戦後初めて外国人を殺し、戦死者を出すという現実的な危険が差し迫っているという問題とともに、立憲主義の破壊という問題が引き起こされています。
安倍政権は戦争法強行に際して、戦後60年余の「憲法9条の下では集団的自衛権は行使できない」という憲法解釈を百八十度ひっくり返しました。これは「立憲主義の破壊」だと多くの人々が批判している中心点です。
立憲主義の基本は、どんなに国会で多数をもつ政権党でも、憲法の枠組みは守らなければならない、権力は憲法によって規制されるというものです。
ところが、安倍政権によってこの基本が壊されている。権力が憲法を無視して暴走し始めたら、それは独裁の始まりです。
沖縄県民の民意を踏みにじり「法の支配」を二重、三重にじゅうりんする辺野古新基地建設の強行、憲法に基づいた野党の臨時国会開催要求の無視、違憲の問題点が次々に噴き出す秘密保護法など、戦争法強行と一体に、日本の法治国家としての土台が根底から崩されつつあります。この土台を立て直し、立憲主義・民主主義を取り戻すことは、急務中の急務であり、これ以上の重要な課題はないくらいの問題です。
私たちがなぜ、「国民連合政府」の提唱をしたのか。それは、本気で戦争法を廃止し、立憲主義・民主主義を取り戻すためには、それを実行する政府が必要になるからです。
戦争法廃止と集団的自衛権行使容認の「閣議決定」の撤回は、安倍政権の下ではできません。安倍政権を退陣させ、それを実行する政府をつくることがどうしても必要です。
私たちの政府の提唱は、立憲主義の回復という日本の政治にとっての最優先の課題を実行するうえでの差し迫った必要性からの提唱なのです。
この構想を実らせるために、あらゆる努力を続けたいと考えています。
パネルディスカッション
憲法の根本精神は個人の尊厳
政府の過ち、市民社会が正す
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補足発言を含めたパネルディスカッションで、岡野氏が「立憲主義破壊は『人の支配』をもたらし、個人の尊厳を破壊する」と発言したことを受け、志位氏は「同感です」と述べ、「立憲主義を取り戻す課題が、国民一人ひとりにとってどういう意味を持つのか」と提起。安倍政治の特徴は「国家の暴走によって個人の尊厳を踏みつけにする政治だ」とし、あらゆる分野で国が個人の尊厳を押しつぶす政治を進めていると批判しました。
また、菅義偉官房長官が「たくさん産んで国家に貢献」と発言したことを例に、「国家と個人の関係が逆転している」と批判。樋口陽一東大名誉教授が「近代立憲主義にとって、権力制限の究極の目的は、社会の構成員を個人として尊重することに他ならない」としていることを紹介し、憲法13条が「すべて国民は、個人として尊重される」としているところに憲法全条文の根本精神が凝縮していると述べました。
君島氏は、曽我部氏が立憲主義は多面的で民主主義との関係も深いと指摘したのを受け、「立憲主義と民主主義をあまり対立的に見ないで、むしろつないで考えていく考え方も大事だ」と提起しました。他方、戦争法に反対した人たちから立憲主義回復のために憲法9条を自衛隊の存在と実態に合わせて「改正」しようという主張が出ていることについて、「9条2項は意味がなくなったのかというとそうではない。2項がある限り政府は(戦争法などで)自衛隊に新しい任務を与えるときに憲法に違反しないと証明する責任を負う」と、その存在意義を強調しました。
これを受け、志位氏は「君島さんが言われたように9条2項は死んでいません」と指摘。政府は、9条2項があるために「自衛隊は軍隊ではなく必要最小限度の実力にとどまる」ことを“説明”しなければならなくなったこと、このことから海外派兵や集団的自衛権の行使を禁止してきた経緯を述べ、「ところが、今度の戦争法では、米軍と自衛隊が海外でどこまでも一緒になって戦争をすることになります。そうなると『必要最小限度』を論理的に画することができなくなり、憲法9条との関係でどうしても説明ができなくなる。ここに集団的自衛権の最大の隘路(あいろ)があります」と述べました。
さらに志位氏は、「9条と自衛隊の現実にはたしかに矛盾がありますが、9条は世界にまたとない理想を示したもの」と強調。「9条の理想にそって、一歩一歩現実を変え、いずれは自衛隊を解消していくことを目指すべきです。この問題での立憲主義の回復は、一定の時間はかかりますが、これがもっともふさわしいやり方です」と語りました。
曽我部氏は「今が戦争前夜にあるかどうかいろいろな見方があるが、政府が間違った方向に進むのを最後に押しとどめるのは市民社会の力だと思う」と述べました。
岡野氏は、憲法前文の「諸国民の公正と信義に信頼する」という精神でアジアの人々との平和交流を深めるとの君島氏の指摘に「感銘を受けた」と発言。安倍首相が憲法前文を「いじましい」と批判していることをあげ、「他人の言葉も信じられず、他国が攻めてくるかもしれないといって市民の生活を犠牲にしてもいいと考える政治家だ」と批判しました。