志位和夫 日本共産党

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主な活動

2014年4月6日(日)

「慰安婦」志位見解 新たな展開

“運動に勢いつき始めた”

記者座談会


 日本共産党の志位和夫委員長が発表した見解「歴史の偽造は許されない――『河野談話』と日本軍『慰安婦』問題の真実」(3月14日の記者会見)がパンフレットとして発行され国内外の反響が広がるとともに、これを契機に新たな動きが出ています。担当記者で話し合いました。


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(写真)日本軍「慰安婦」問題についての「見解」を発表した志位委員長の会見(3月14日、上)、「毎日」3月27日付の特集記事(左)、「東京」3月19日付の特集記事(右)

  パンフレットは衆参両院の全国会議員や元議員、各国大使館や国内メディアなどにも届けられている。他党議員から「きちんとしたものをまとめられましたね」「この問題の全体がよくわかり、大変勉強になりました」との声が出ているという。「見解」の英語版・ハングル版もつくられた。韓国の挺身(ていしん)隊問題対策協議会からも、ハングル版を送ったことへのお礼のメールがきたというよ。

  「見解」発表の会見には海外メディアも多数取材にきていた。香港の新聞記者は日本共産党のことをあまり知らなかったようだが、「底辺の人たちの声を代表すると同時に、平和を愛する正義の党」「大多数の日本国民の真心を代表する党だ」と評していた。

  韓国のソウル新聞の記者も、政権や一部政治家からの「河野談話」の「見直し」論に憤慨しつつ、日本共産党がこういう「見解」を出したことで「日本の良心を守ってくれた」と語ってくれた。聞いた私自身がジーンときた。

  日本のメディアの論調にも影響を与えていると思う。「見解」発表後、「東京」3月19日付は特集「河野談話バッシングの背景」、「毎日」同27日付夕刊は特集「世界が注視する従軍慰安婦」を掲載した。それぞれ「見解」と共通する論理と材料で書かれているのが特徴だ。

  これまで「慰安婦」問題の報道は、「河野談話」の見直しは是か非かとか、強制連行を証明する文書があったのかなかったのかなど、「靖国」派の土俵に乗ったのが多かったからね。それが、最近の特集記事では、ひとたび「慰安所」に入れば自由を奪われ、監禁拘束のもと強制的に兵士の性の相手をさせられた―つまり強制使役の下におかれた事実にこそ日本軍「慰安婦」問題の核心があるという点を、学識者のコメントを交えながら突いている。これも「見解」が強調した角度だ。「慰安婦」問題で“潮目の変化”が起こりつつある。

  3月29日に、「慰安婦」問題に取り組んでいる中央大学の吉見義明教授の講演に行った。会場は満席だった。講演後、吉見さんに「慰安婦」問題の報道の変化の感想を聞いたら、「黙っているとどんどん変になるので、みんな行動を起こさなければいけないし、起こすべきだと思い始めている。それは非常に重要なことで、心強い」と語った。

  「慰安婦」問題の解決を日本政府に求める国際署名に取り組むキリスト教婦人矯風会の寺岡シホ子さん(業務執行理事)は、「見解」が出たことで「『慰安婦』問題への関心が高まっているようです。私も勇気づけられたし、(運動にも)勢いがつき始めている」と語っていた。

「靖国」派攻撃 正面から反論

広がる「慰安婦」問題の真実

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(写真)「歴史の偽造は許されない」―「慰安婦」見解パンフ

  ある大手紙記者が「見解」について「本当に堅牢(けんろう)な論理構成だ」と感想を述べていた。自民党の元国会議員も「打ち破りがたい論理だ」と述べていた。

  それは、「靖国」派の攻撃の中心点に「見解」が正面から反論しているからだと思うよ。彼らは、「強制連行」があったかなかったかの一点に絞って攻撃し、「河野談話」全体を信ぴょう性のないものにしようとたくらんでいる。

  とくに最近持ち出してきているのが、16人の元「慰安婦」証言がずさんで裏付けがないものだという点だ。

当時の経過 丹念に検証

  「見解」は、この点について「河野談話」に至る経過を丹念に検証し、当時の政府が「被害者でなければ語り得ない経験だ」「被害者でなければ到底説明することができないような証言というものがその中にある」(河野洋平元官房長官)として、元「慰安婦」の証言の全体と当時の資料などを「総合的に判断」するならば「慰安婦とされる過程で強制性が存在したことは否定できない事実だとの認定をおこなった」こと、それは「当然の責任ある判断」で「公正で正当なもの」と指摘している。

  私は、元「慰安婦」の裁判を取材してきたが、裁判そのものは敗訴の連続でつらい思いをした。しかし裁判がこういう形でまとめられ、日本の司法判断で「河野談話」の真実性は認定されていると指摘してもらい、非常に勇気をもらったし、運動してくれた方々への期待を感じた。

  「見解」を読んで早稲田大学の浅倉むつ子教授も、「元『慰安婦』たちの被害の実態はすでに司法を通じて詳しく事実認定されている」という「この重要なことに気づかせてくれます」と述べてくれた。

  いま学者・研究者を含め多くの人が声をあげている。3月30日に「日・中・韓の歴史認識論争―誰と誰が対立しているのか」と題するシンポジウムも開かれた。翌31日には、「河野談話」を維持すべきだという点で一致する学者が「河野談話の維持・発展を求める学者の共同声明」を出し、賛同署名は1600人以上となっている。

談話を保つ強い「武器」

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(写真)「慰安婦」問題についてのセミナーで講演する吉見義明中央大学教授=3月29日

  歴史学者や研究者に「見解」の感想を聞くと、“私たちの研究の水準に達している”という反応で共通している。逆にいうと、安倍晋三首相やその周囲の人たちの水準があまりにも低いということの裏返しだ。国立歴史民俗博物館の前館長の宮地正人名誉教授は、本紙への寄稿で「『河野談話』を抹殺しようとし、国際社会に勝ち目のない“あらがい”(抵抗)を挑み続ける勢力に対する強力な『武器』となる」と高く評価してくれた。

  女性団体の中では、「見解」による解明を力に署名を大いに集めようということが語られている。新日本婦人の会愛知県本部が高校生など若者と一緒に「慰安婦」問題の証言会を3月23日に開いたが、そこに600人も集まったという。大学の新入生歓迎運動で民主青年同盟が「見解」を示して対話すると、「真実を知りたい」と加盟する人が増えている。

  政治の動きはどうだろうか。オバマ米大統領の仲介で、日米韓首脳会談が初めて開かれたが、歴史認識問題は議題にされていない。会談前に安倍首相は国会で「河野談話」について「安倍内閣としては見直す考えはない」と言明したが、一方で菅義偉官房長官は「検証する」との立場をとり続けている。明らかな矛盾だ。「見直さない」なら「検証」など必要がない。

見直し勢力追いつめる

  3月30日のNHK「日曜討論」で日本共産党の山下芳生書記局長が「見直し勢力に対してなんら政府は反論していないではないか。つまり迎合的な態度を取っている」と指摘した。これに対し自民党の石破茂幹事長は「迎合していない」といいながら、「(談話が)どういう経緯でできたのか『検証』する。しかし、『見直し』はしない。パーフェクトにつじつまが合うことはないかもしれないが…」と苦しい言い訳だった。

  「河野談話」見直しを政府に迫った日本維新の会の松野頼久国会議員団幹事長は、山下さんの批判に何も反論できなかった。

  「見解」も指摘しているが、日本が事実に正面から向き合い、反省し、二度と繰り返さないという立場を明らかにすることこそが本当の日本の名誉であり、日本への信頼を高め、日本が世界と仲良くなる道だ。

  集団的自衛権行使を日本に迫ってきたアメリカだが、“こういう歴史修正主義者の安倍政権にやらせていいのか”と危ぶんでいる。その原因が、安倍首相の靖国神社参拝と「慰安婦」問題での言動だ。「慰安婦」問題での「見解」を広めることは「戦争する国」づくりを許さないたたかいとしても意味がある。