2013年10月18日(金)
志位委員長の代表質問
衆院本会議
日本共産党の志位和夫委員長が17日の衆院本会議でおこなった代表質問(全文)は次の通りです。
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私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問いたします。
はじめに、台風26号がもたらした大災害によって、犠牲になった方々への深い哀悼とともに、被災者の方々に心からのお見舞いを申し上げます。政府として救助・救援に全力をつくすとともに、すみやかな激甚災害指定、被災者の生活再建への支援、自治体への財政支援など、万全の措置をとることを強く求めます。
放射能汚染水の危機打開――四つの転換を提起する
福島第1原発の放射能汚染水の問題は、きわめて深刻な事態にたちいたっています。総理は、所信表明演説で、汚染水対策について、「国が前面に立って責任を果たす」とのべました。私は、国が全責任をもつというなら、政府の姿勢を次の四つの点で根本的に転換することが必要だと考えます。
第一は、「放射能で海を汚さない」ことを基本原則として確立することです。この間の東京電力のずさんきわまる対応の根本には、「汚染水はいずれ海に流せばよい」とする安易な考え方があります。原子力規制委員長までが、放射性トリチウムは「希釈して放出することになる」などと公言しています。これらの考え方を一掃する必要があると考えますが、いかがですか。
第二は、放射能汚染水の現状を徹底的に調査・公表し、「収束宣言」を撤回するとともに、非常事態という認識の共有をはかることです。この点で、総理が、「状況はコントロールされている」「完全にブロックされている」などと事実をねじまげる発言をおこなったことは有害きわまりないものです。事実に反する発言は撤回し、政府の責任で、国内外の専門的知見を総結集した調査をおこない、国民に情報を公表すべきではありませんか。
第三に、政府が、原発の再稼働に前のめりになっていることが、汚染水問題の解決にとって重大な障害となっています。東電は、再稼働を狙う柏崎刈羽原発の職員は1200人体制を維持しながら、福島第1原発では1300人から1000人まで減らしました。再稼働最優先の姿勢によって、事故現場は疲弊し、深刻なトラブルが相次いでいます。再稼働のための活動を中止し、放射能汚染水問題の解決のために、もてる人的・物的資源を集中すべきではありませんか。
第四に、東電に事故対策の主体をまかせておいてよいのかが、根本的に問われています。安易な仮設タンクに頼って汚染水を漏出させたのも、地下水の遮蔽(しゃへい)壁の建設を先のばしにしてきたのも、すべて「コスト優先」の東電の姿勢が原因でした。もはや東電に当事者能力がないことは、誰の目にも明らかです。すでに債務超過に陥っている東電は破たん処理し、国が直接に収束・賠償・除染に全責任を果たす体制を構築すべきではありませんか。
以上、4点について、総理の見解を問うものです。
消費税大増税に道理なし――その問題点をただす
総理は、1日、来年4月から消費税を8%に増税する方針を表明しました。8%への引き上げで史上最大の8兆円もの大増税を押し付ける方針に、「とても暮らしがなりたたない」「商売が続けられない」という不安と批判の声が噴き出しています。
国民に大増税、大企業に減税――あまりに不当な大企業優遇政治ではないか
今回の消費税大増税には、道理のかけらもありません。
総理は、消費税増税が深刻な景気悪化をもたらすことを認め、それへの対応として、年末に決定する復興特別法人税の廃止を含めると6兆円という「経済対策」を打ち出しました。しかし、その中身は、大型公共事業の追加に2兆円、復興特別法人税の廃止や投資減税など大企業減税に2兆円というものです。所得が減り続けている国民から8兆円も吸い上げ、270兆円もの内部留保を抱える大企業に減税をばらまく――これは、あまりに不当な大企業優遇の政治ではありませんか。
とりわけ、復興特別税について、国民には25年間の税負担を求めながら、企業だけは3年間の期限を1年前倒しで廃止し、社会的責任を免除するというのは、どういうわけか。国民に納得のいく説明をしていただきたい。
「財政再建のため」「社会保障のため」――これらの口実はなりたたない
総理は、「消費税増税は財政再建のため」といいますが、増税をすれば財政がよくなるという前提自体が間違っています。
1997年に消費税を5%に増税したさいには、増税を引き金にした大不況による税収の落ち込みにくわえて、「景気対策」の名による大企業減税や大型公共事業に巨額のばらまきをおこなった結果、増税後のわずか3年間で、国と地方の借金は449兆円から600兆円へと拡大し、財政危機は加速しました。総理がいまやろうとしていることも、同じではないですか。庶民増税で景気を悪化させ、「景気対策」の名で大企業減税と公共事業をばらまき、借金を積み上げるという「古い自民党政治」のやり方で、97年の大失政を繰り返すつもりですか。総理の答弁を求めます。
総理は、「消費税増税は社会保障のため」といいますが、政府が現実にやっていることは何か。生活保護基準の引き下げに続き、困窮者を生活保護から締め出す法律の大改悪は許すわけにはいきません。政府が閣議決定した社会保障制度改革「プログラム法案」は、「政府は自助・自立のための環境整備等に努める」と明記したうえで、医療では、70~74歳の窓口負担の2倍化、介護では、要支援の人を介護保険から外す、年金では、恒久的な支給削減、将来的な年金支給開始年齢の引き上げの検討など、手あたりしだいの負担増と給付減が盛り込まれています。政府の言う「自助・自立のための環境整備」とは、憲法25条にもとづく社会保障を解体して、公的支えをなくし、国民を「自助」に追い込むということではありませんか。このような法案を提出しながら、「消費税増税は社会保障のため」というなど厚顔無恥というほかないではありませんか。
日本共産党は、国民の暮らし、経済、財政を壊し、ひとかけらの道理もない消費税大増税を中止することを強く求めるものです。
本気で賃上げをめざすというならば――政府がいまなすべきことは何か
働く人の賃金を引き上げることは、デフレ不況から抜け出す最大の決め手であります。
総理は、「法人税を減税すれば賃上げにつながる」とのべています。しかし、その保障はいったいどこにあるのでしょうか。1997年から2012年までに、法人税の税率は37・5%から30%へと引き下げられました。ところが同じ時期に、働く人の賃金は下がり続け、平均年収は70万円も落ち込みました。大企業の内部留保は、140兆円から270兆円へと130兆円も膨らみました。法人税を減税しても賃金は下がり続けた――この歴然たる事実を総理はどう説明されますか。
本気で賃上げをめざすというなら、これまでの姿勢の根本的転換が必要です。私は、総理に二つのことを提起するものです。
第一は、政府として、経済界に「内部留保の活用で賃上げを」ということを正面から提起することです。大企業の270兆円の内部留保の1%を活用しただけで、8割の企業で月1万円の賃上げが可能になります。賃金を決めるのは労使の交渉ですが、政府として経済界に内部留保の活用を正面から提起し、賃上げの実行を迫ることは、賃上げの世論を広げる大きな力になります。総理にその意思があるかどうか。しかとお答えいただきたい。
第二は、雇用のルールを強化し、非正規社員の正社員化をはかり、人間らしい雇用を保障することです。政府がすすめている派遣労働の完全自由化や解雇自由の「雇用特区」――いわば「ブラック企業特区」などはただちに中止・撤回すべきです。労働者派遣法を抜本改正し、均等待遇のルールを確立し、正社員化の流れを推進するべきです。中小企業への手当てをしっかりおこないながら、最低賃金を時給千円以上に引き上げるべきです。総理の答弁を求めます。
若者をはじめ働く人を過酷な労働に追い立て、モノのように使い捨てるブラック企業が社会問題になっています。日本共産党は、一昨日、違法行為へのペナルティーの強化、長時間労働の規制、ブラック企業の実態の情報公開などによって、ブラック企業を規制する法案を国会に提出しました。各党の賛同を得て成立をめざしたいと考えますが、わが党の法案についての総理の見解を求めるものです。
国民への約束は反故にされた――TPP交渉からの即時撤退を
総理は、国民の反対を押し切ってTPP(環太平洋連携協定)交渉参加を決めたとき、二つのことを約束しました。
一つは、国民への「丁寧な情報提供」です。総理は、「交渉に参加すれば情報を入手しやすくなる」とまで言いました。ところが、交渉初参加のマレーシア会合で政府代表が最初にやった仕事は、秘密保持契約への署名でした。その後政府は、交渉経過はいっさい公開できないとして、日本政府がどういう提案をしているのかさえ、まったく明らかにしていません。総理、「丁寧な情報提供」という約束は、いったいどうなったのでしょうか。明確な答弁を求めます。
いま一つの約束は、「強い交渉力で守るべきものは守る」でした。ところが、最近、自民党の西川TPP対策委員長は、「(農産物の重要5項目を関税撤廃の例外から)抜けるか、抜けないか、検討はさせてもらわなければならない」と発言しました。自民党は、参院選公約で、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖などの農産物の重要5項目を「聖域」とし、「それが確保できない場合はTPP交渉からの脱退も辞さない」と国民に約束しています。重要5項目の関税撤廃の検討に踏み込むという自民党の姿勢は、自らの公約を裏切るものであることは明瞭だと考えますがいかがですか。
国民への二つの約束は、もはや完全に反故(ほご)にされています。農業、医療、食の安全、国民生活を土台から壊し、経済主権をアメリカに売り渡すTPP交渉からの即時撤退を決断すべきです。総理の答弁を求めます。
基本的人権を蹂躙する「秘密保護法案」の国会提出を断念せよ
最後に、政府が国会提出を企てている「特定秘密保護法案」は、憲法が保障する基本的人権を蹂躙(じゅうりん)し、戦前のような軍事国家に逆行させようという希代の悪法です。
とりわけ、「秘密」の範囲が政府行政当局の判断しだいで際限なく広げられること、「秘密」を漏らした人だけでなく、「秘密」にアクセスしたり取材したりする国民やメディアの活動が重罪とされること、国会による「秘密」に対する調査権も制限されることなど、法案の内容は、民主主義の根幹である国民の知る権利、言論・表現の自由を侵害し、憲法の基本原理を根底から覆すものとなっています。
日本共産党は、国民の目、耳、口をふさぐ悪法の国会提出を断念することを強く求めるものです。総理の答弁を求めて、質問を終わります。