2013年2月1日(金)

志位委員長の代表質問 衆院本会議


 日本共産党の志位和夫委員長が31日、衆院本会議で行った代表質問(全文)は次の通りです。


 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。

大震災からの復興問題――国の災害政策の抜本的転換を要求する

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(写真)代表質問をする志位和夫委員長=31日、衆院本会議

 私はまず、アルジェリアの事件によって犠牲になられた方々、ご遺族、関係者のみなさまに心からの哀悼の意を表するものです。今回の事件をしっかりと検証し、二度と悲劇を繰り返すことのないよう、力をつくす決意です。

 東日本大震災からまもなく2年を迎えますが、復興は立ち遅れ、被災者の命と暮らしが脅かされる状況が続いています。日本共産党は、つぎの3点について、これまでの政策の抜本的転換をはかることを要求します。

 第一は、「個人財産の形成になる」として、住宅や事業所などの復旧を支援しないという従来の災害対策を改め、住宅と生業(なりわい)の再建に必要な公的支援を行うことを基本原則にすえることです。

 住宅再建支援金を300万円から500万円に引き上げる措置をとるべきです。中小企業再建を支援する「グループ補助金」を大幅に拡充するとともに、再建意欲のあるすべての小零細事業者を対象にした直接助成制度を新たに創設すべきです。

 第二は、「期限切れ」といって支援策を打ち切る非情な政策をやめることです。政府が昨年9月末に打ち切った医療・介護の減免措置を復活すべきです。

 第三は、福島原発事故の「収束宣言」を撤回し、除染・賠償をはじめ、「安全・安心の福島県」をとりもどすまで、すべての過程で復興に責任をもつことです。

 総理は、所信表明で「復興を加速する」とのべましたが、その言葉が本気のものであるならば、多くの被災者が切望している以上の諸点で、これまでの政策の転換に踏み切ることは当然ではありませんか。答弁を求めます。

どうやって深刻なデフレ不況から抜け出すか――政府に「三つの決断」を求める

デフレ不況の原因と責任をどう認識しているのか

 どうやって深刻なデフレ不況から抜け出すかは、多くの国民が切望する国政の大問題となっています。

 まず伺いたいのは、デフレ不況が深刻化した原因と責任についてです。政府の「緊急経済対策」を読んでも、なぜ日本経済がデフレ不況に陥っているのかという原因の分析がいっさいありません。原因を明らかにせずに対策をたてるというのは、たとえていえば、的を定めずに矢を射るようなもので、矢を何本射ようとも、的外れという結果になります。総理は、日本経済がデフレ不況に陥った最大の原因は、いったいどこにあるとお考えなのでしょうか。

 私は、働く人の所得が減り続けてきたことが、デフレ不況の最大の原因だと考えます。1997年を100として、企業の経常利益は163まで増えましたが、労働者の所得・雇用者報酬は88に落ち込んでいます。総理は、賃下げとリストラの繰り返しで、働く人の所得を減らしつづけてきた、このことにこそ、デフレ不況の最大の原因があるという認識をお持ちでしょうか。

 さらに、日本をこうした賃下げ社会にしてしまったのはだれなのか。私は、その重大な責任は、歴代自民党政権にあると考えます。労働法制の規制緩和をすすめ、派遣やパートなど、非正規雇用を拡大してきたことが、賃金を引き下げ、貧困と格差を拡大したことは、政府の統計でも明らかです。総理、今日の深刻なデフレ不況をつくりだした重大な責任の一端を、あなたも含めた歴代自民党政権が負っているという認識と反省はありますか。答弁を求めます。

消費税増税、社会保障削減――国民の所得を奪うあらゆる政策を中止せよ

 減り続けている働く人の所得を増やす方向に転換する――ここにこそデフレ不況から抜け出す最大のカギがあります。私は、つぎの「三つの決断」を政府に求めるものです。

 第一は、消費税増税の中止です。一口で消費税10%といいますが、サラリーマン世帯でいえば、1カ月分の給料がまるまる消費税に消えてしまうのが「税率10%」です。消費が凍りつき、景気の底が抜ければ、税収も落ち込む――そのことは、97年の消費税増税後に14兆円もの税収が減ったという事実によって証明ずみのことではありませんか。

 同時に、社会保障削減計画を中止すべきです。政府はその突破口として、生活保護制度の大幅切り下げを進めようとしていますが、これは受給者の生存権を乱暴に破壊するとともに、最低賃金など国民生活全体の悪化をもたらし、賃下げ社会をいよいよ深刻にすることにもなり、断じて認めるわけにはいきません。

 総理に、真剣にデフレ不況から抜け出す決意があるのならば、国民の所得を奪うあらゆる政策の中止を決断すべきだと考えますが、いかがですか。

財界の身勝手な賃下げ・リストラに、政治の責任でストップを

 第二は、大企業・財界の身勝手な賃下げ・リストラに、政治の責任でストップをかけることです。

 日本経団連は、賃上げを拒否するだけではなく、「定期昇給の延期・凍結」など、新たな賃下げ宣言を行っています。電機・情報産業の大企業は、「業績悪化」を理由に、13万人の首切り計画を進めています。

 個々の企業だけを見れば、賃下げ・リストラは、利益をあげるようにみえますが、それを全体の企業が競い合って行えば“合成の誤謬(ごびゅう)”に陥る―社会全体の需要がますます冷え込み、デフレ不況をいよいよ深刻にし、企業もたちゆかなくなります。

 政府として、日本経団連・財界にたいして、賃下げ・リストラ競争の中止を強く要請すべきではありませんか。これは、ヨーロッパ各国の政府ならば、当たり前のように行っていることです。

 大企業の内部留保は不況下でも増え続け、260兆円にものぼっており、そのごく一部を還元しただけで賃上げは可能です。答弁を求めます。

人間らしい暮らしを保障するルールを――政府として「賃上げ目標」こそもつべき

 第三は、人間らしい暮らしを保障するルールづくりに踏み出すことです。

 ――労働者派遣法の抜本改正、パート労働法の改正など、非正規社員の待遇を改善して、正社員化の流れをすすめる。

 ――中小企業への手当てをしっかり行いながら、最低賃金を時給千円以上へと大幅に引き上げて日本から「働く貧困層」をなくしていく。

 ――独占禁止法の強化など、大企業と中小企業が公正に取引できるルールをつくる。

 政治の責任でこれらの改革をすすめ、賃下げ社会から脱出し、働く人の所得が増える社会への転換をはかるべきではありませんか。

 安倍総理は、無制限の金融緩和で「2%の物価引き上げ目標」を持つとしていますが、かりに物価が上がっても、賃金が下がり続けたままでは、生活はいよいよ苦しくなります。政府として目標を持つというのなら、賃上げ目標こそ持つべきではありませんか。答弁を求めます。

原発問題――「安全神話」をふりまき、大事故を引き起こしたことへの反省はあるのか

 原発問題について、安倍内閣は、再稼働を推進し、新増設を容認するなど、あからさまな原発推進政策を進めようとしています。しかし、「少なくとも過半の国民は、原発に依存しない社会の実現を望んでいる」ということが、国民的議論の結果を分析した政府の認識ではありませんか。総理は、自民党政権に交代したから、原発に対する国民的議論のこの到達点が変わったとでもおっしゃるのでしょうか。あからさまな原発推進政策は、「過半の国民」の意思に背くものだと考えませんか。

 だいたい、2006年12月に、日本共産党の吉井英勝議員が、質問主意書で、「巨大地震の発生にともなう全電源喪失によって冷却機能を失った場合の検討を行っているのか」とただしたのに対して、政府は答弁書で、「ご指摘のような事態が生じないように安全の確保に万全を期している」と答えたのであります。そして、この答弁をしたのは、安倍総理、あなただったのです。総理にいま求められているのは、こうした「安全神話」をふりまき、大事故を引き起こしたことへの深刻な反省であり、国民とりわけ福島県民への謝罪ではありませんか。しかとお答え願いたい。

 日本共産党は、「即時原発ゼロ」と再生可能エネルギーへの抜本的転換の政治的決断を強く求めるものであります。

米軍基地問題――沖縄県民の総意にどうこたえるのか

 米軍普天間基地問題について、総理は、総選挙直後、「辺野古移設」を明言しました。選挙期間中は具体的言及を避け、選挙直後に「辺野古移設」を明言するという、あなたのやり方に、「県民を欺き、侮辱する行為」という激しい怒りの声が噴出しています。しかも、沖縄の4人の自民党公認候補は、全員が「県外移設」を公約に掲げて当選しています。選挙が終わったら、手のひらを返して新基地を押し付けるなど、断じて許されるものではありません。沖縄県民の総意にこたえ、県内移設は断念すべきではありませんか。

 傍若無人で沖縄全土を飛び回っているオスプレイ配備撤回も県民の総意です。先日、沖縄県下41市町村のすべての首長と議会の議長、すべての党派の県議会議員がそろって上京し、オスプレイ配備即時撤回、普天間基地閉鎖・撤去を求めました。総理は、この沖縄県民の総意にどうこたえるのか。答弁を求めます。

日本軍「慰安婦」問題――「文書がないから強制はなかった」という議論はなりたたない

 総理が、日本軍「慰安婦」問題について軍の関与と強制を認めた「河野談話」の見直しを主張していることについて、ニューヨーク・タイムズが、「日本の歴史を否定する新たな試み」と題する批判の社説を掲載するなど、大きな国際問題になっています。

 日本軍「慰安婦」問題について、一部に、強制性を立証する文書がないことをもって、強制の事実そのものがなかったとする議論があります。しかし、この議論にかかわって、「河野談話」の作成に直接携わった当時の石原信雄官房副長官は、つぎのように証言しています。

 「通達とか指令とかという文書的なもの、強制性を立証できるような物的証拠は見つけられなかったのですが、実際に慰安婦とされた人たち16人のヒヤリングの結果は、どう考えても、これは作り話じゃない、本人がその意に反して慰安婦とされたことは間違いないということになって、河野談話にしたわけです」

 このように、「河野談話」は、もともと強制性を立証する文書を見つけることはできなかったことを前提に、「慰安婦」とされた人たちの証言の真実性にもとづいて、これは真実のものだと政府として判定して、政府として強制性を認めたものです。したがって、政府として「河野談話」を継承するという立場をとるかぎり、「強制性を立証する文書がないから強制の事実はなかった」などという議論を肯定する余地はまったくないと考えます。総理の見解を問うものです。

 第2次世界大戦後の世界の秩序は、日本・ドイツ・イタリアによる戦争は、不正・不義の侵略戦争だったことを共通の土台にしています。この土台を覆す動きが万が一にも具体化されたら、日本が世界とアジアで生きていく政治的・道義的立場を失うことになることを、厳しく警告して質問を終わります。