2012年11月14日(水)
「政府が乗り出して横暴をやめさせよ」―。13日の衆院予算委員会で、電機・情報産業の大企業が行っている大量の首切り・リストラ問題をとりあげた日本共産党の志位和夫委員長。日本社会の大問題に政治の役割を果たそうとしない政府と、深刻な実態と解決策を掲げて迫る党の姿が浮き彫りになりました。
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志位氏は、NECでくり返しの違法な退職強要を受けている労働者の声を野田首相に突き付け、「『自殺しろというのか』というところまで追い詰められている。くり返し面談を強要し病気に追いこむことなどあってはならないことだ」とただしました。
応じなければ“シリアへ転勤になる”。NECの脅しを紹介すると、委員会室がどよめきました。野田首相は「個別のことはお話できません」と逃げるだけでした。
志位氏は、自由な意思決定を妨げる退職勧奨は違法とする最高裁判決をパネルで示し、「違法であることは明らか」と強調。NECが「退職強要はしていない」(アエラ11月19日号)と開き直っていることをあげ、「断固たる措置をとるべきだ」と追及しました。
「個別の事案は(答弁を)控えさせていただく」しか言えない三井辨雄(わきお)厚労相。志位氏が「個別と言って答弁を避けていたら行政の責任を果たしていない」と迫ると、進行役の中井洽(ひろし)予算委員長が、「資料があらかじめでていない」と言いがかりをつけ、三井厚労相に“助け舟”を出す場面も。
志位氏は「政府として首切り・リストラの実態を全面的につかみ、違法行為は踏み込んででも止めるべき。それが政治の責任だ」と迫ると、枝野経産相が電機産業の所管大臣だと出てきて、「企業ぐるみで(違法行為を)している具体的な証拠を示していただけば経産相として調査させていただきたい」と述べました。
5月から7月まで11回もの面談で退職を強要されました。4メートル四方の窓もない狭い部屋に入れられ、「仕事を続けてもらうのは難しい」と100回くらい言われ、不安や不眠で適応障害になっても強要は続きました。死ぬことを考えるようになり、上司から「(職場に)残れないよ。残れると思った?」と言われた時は涙があふれてきて、「自殺しろと言うのですか。もう苦しめないでください」と叫んでしまいました。
5月から12回の面談で繰り返し退職を迫られました。「能力がない」「新入社員にも劣る」とののしられ、私の全てを否定されました。希望退職に応じなければ「内戦状態のシリアへの転勤になる」と脅されました。眠れなくなり、食欲もなく吐き気や腹痛で体重は5キロ以上減りました。仕事に誇りをもってやってきたのに、悔しさを通り越して、毎日が悲しい。
最高裁判所判決要旨 多数、長期にわたる退職勧奨は、退職を強要する結果となる可能性が高く、十分配慮すべき。労働者の自由な意思決定が妨げられる場合は、違法な権利侵害となる(1980年7月10日 最高裁判決)
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ある日突然、正当な理由なく解雇を通告し職場から締め出す「ロックアウト解雇」にあった日本IBMの労働者。志位氏は、その切々たる訴えを示し、「これが許されるのか」と野田首相にただしました。
具体的答弁を避けた野田首相ですが、志位氏が「『解雇通知書』を突きつけて、すぐに出て行けとはひどいと思わないのか」と迫ると、「あってはならない」と明言しました。
7人の労働者の「解雇通知書」を野田氏に手渡し、「『解雇理由』として通用するのか」と志位氏。三井厚労相は「通用する」とはいえませんでした。
志位氏が労働契約法第16条や「エース損害保険事件」の判決をあげ、「解雇理由」に正当性はないとただすと、三井厚労相は「個別事案については、さまざまな事情を考慮し解雇の合理性が判断される」と答えるだけ。志位氏は「どの労働者も立派な労働者だ。まともな『解雇理由』など書きようがない」と反論しました。
志位氏は、日本IBMが業績評価によるリストラ・人減らしを「毒味」(大歳元社長)と称し、他社に広げようとしていることを示し、「『ロックアウト解雇』という『毒味』を許せば、日本中にこの無法なやり方が横行し、解雇自由の真っ暗闇の世の中になる」と述べました。
係争中を理由に答弁を避けた野田首相に対し、「大企業にたいし政治がものを言うべきだ。無法な実態をつかみ、これを止めることが必要だ」と政治の責任を強調しました。
9月18日、「5時からミーティング」と言われ、指示された部屋に行くと、見知らぬ2人が入ってきて突然、「解雇通知書」を読み上げました。「終業時刻までに私物をまとめて帰れ。明日から出社禁止だ」と告げられましたが、すでに終業時刻まであと15分。上司に監視されながら私物を整理させられました。同僚にあいさつもできず、それ以来、職場には入れません。「業績不良」が理由とありましたが、会社は何の根拠も示していません。
勤続25年で表彰され、9月末まで特別休暇を取り、10月1日に出社した翌日、突然、「解雇通知書」が読み上げられました。ショックで意識もうろうとなり病院に運ばれましたが、その車の中でも上司は「君はもう会社にこなくていい」と言いました。解雇通知の当日夜にはIDが使えなくなってしまいました。労働者の業績を証明するものを取り上げてしまおうというねらいだと思います。
日本IBM・大歳(おおとし)卓麻元社長 日本IBMは人事制度改革で日本の毒味役になる。我々が毒味してみて、大丈夫そうだとなれば、日本の会社の皆さんもやりやすいんじゃないか(『日経ビジネス』2001年4月23日号、社長当時)
労働契約法 第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして、無効とする。
「エース損害保険事件」の確定判決(2001年8月10日、東京地裁) (解雇する場合は)それが単なる成績不良ではなく、企業経営や運営に現に支障・損害を生じ、または重大な損害を生じる恐れがあり、企業から排除しなければならない程度に至っていることを要(する)。
13日の衆院予算委員会で日本共産党の志位和夫委員長は、日本の電機・情報産業は、深刻な衰退の危機にあり、その原因は「目先の利益だけを追い求め、企業にとって命である人間を切り捨ててきたことにある」と指摘し、「こういうやり方に未来はあるのか」と追及しました。
労働者をモノのように切り捨て、技術開発の土台を自ら破壊し、いっそうの「経営悪化」への悪循環を作り出していると述べ、「人減らしのリストラでは、日本の電機・情報産業の『復活』は決してありえない」と迫りました。
野田首相は「個別の業界についてとやかくいうことは妥当ではない」とまともに答えませんでした。
志位氏は、ヨーロッパでは政府が乗り出して身勝手なリストラに待ったをかけていることを示し、「13万人もの人々が首切り・リストラに苦しめられているときに、政府が無為無策でいいのか」と強調。電機・情報産業の大企業の内部留保は26兆円にも及び、雇用を守る力を持っていることをあげ、「この力を持って雇用に対する社会的責任を果たさせることこそ政府の責任だ」と主張しました。
フランスの自動車最大手プジョー・シトロエン・グループ(PSA)が、経営難を理由に約8000人の労働者を解雇する「経営改善計画」を発表したことについて、オランド仏大統領はテレビインタビューで「受け入れられない。再交渉すべきだ」と批判しました。「政府はそのままにしておくつもりはない」「解雇者数を減らし、補償なしに解雇される労働者が出ないようにする方法を見つけるため協議を始める」と強調。同社への公的支援策を閣議決定し、支援の条件として雇用の維持を求める方針を示しました。
志位氏は、(1)電機・情報産業の大企業が強行している大量の首切り・リストラが、労働者の生活と人権をきわめて深刻な形で脅かしている(2)雇用不安がテコとなって内需の冷え込みがすすみ「デフレ不況」をいっそう深刻にしている(3)下請け中小企業と地域経済に甚大な打撃を与えていることをあげ、「日本社会の大問題となっている」と強調しました。
志位氏は、パナソニック4万人、ルネサス1万4千人、リコー1万2千人、シャープ1万人といった13万人にも及ぶ大企業の人員削減計画を示し、政府として全体の規模をどのように把握しているのかと迫りました。
三井辨雄(わきお)厚労相は「昨年4月から本年9月までの間に提出された再就職援助計画によると、電機関連製造業の離職者は約2万7千人となっている」と答え、会社が届け出た一部の報告書だけの数字を示しました。
志位氏は「2万7千人というのは現実と合わない過小なもの。届け出を待っているのではなく、もっと主導的につかむ必要がある」と指摘しました。