2012年8月10日(金)

野田内閣不信任決議案に対する

志位委員長の賛成討論


 日本共産党の志位和夫委員長が9日、衆院本会議で行った野田内閣不信任決議案に対する賛成討論は次の通りです。


写真

(写真)賛成討論する志位和夫委員長=9日、衆院本会議

 日本共産党を代表して、野田内閣不信任決議案への賛成討論をおこないます。

 私は、不信任の理由として、野田内閣が、国民の利益に反するつぎの五つの大罪を犯してきたことをきびしく指摘するものです。

第一の大罪――

民自公3党の密室談合で消費税大増税をしゃにむに強行

 第一の大罪は、民主・自民・公明3党の密室談合によって、消費税大増税をしゃにむに強行しようとしていることです。

 昨日夜かわされた民自公3党による消費税増税法案強行の合意は、まず、何よりも国民の民意をじゅうりんするものです。どんな世論調査でも、国民の過半数は、消費税増税に反対しています。今国会での採決反対の声は6割にも達しています。「いま増税されたら暮らしが成り立たない」、「商売が立ち行かない」――国民多数のこうした切実な声を踏みつぶして、空前の大増税をごり押ししようとする民自公増税連合に対して、私は、怒りを込めて強く抗議するものです。

 民主党は、総選挙で「4年間は消費税をあげない」と公約しており、増税法案強行が自らの公約に背くものであることは明瞭です。自民・公明は、民主党を公約違反と批判してきましたが、密室談合によって増税法案を強行することは、自らも公約違反の共犯者になることを意味します。国民への公約を平気で破る民主党、公約違反といいながら公約を破らせる自民党と公明党に、およそ民主政治を語る資格はありません。

 いま増税を強行することがどんなに無謀なことか。長期にわたって国民の所得が減少し、デフレという異常事態が続くもとで、消費税10%と社会保障切り捨てなどで20兆円もの負担増をかぶせたら、日本経済をドン底に突き落とすことになることは、火を見るよりも明らかです。そうなれば、結局は、財政危機をよりいっそう深刻にすることは、1997年の消費税増税を引き金とした大不況で、税収が落ち込み、財政危機を悪化させた歴史でも証明されています。このような無謀きわまる道を、そのもたらす結果を考えもせずにやみくもに暴走する民自公増税連合に、およそ日本経済を語る資格はありません。

 「社会保障のため」という民自公3党の言い分も、そのウソが完全にあらわになっています。「一体改革」に並ぶメニューは、年金給付の減額、子ども手当減額、医療費の窓口負担増、介護の負担増など、改悪ばかりが目白押しです。さらに、民自公の3党合意によって、国民に「自助」「助け合い」を押し付け、憲法25条がさだめた社会保障への国の責任を放棄する、社会保障解体法案が突如として持ち込まれました。くわえて、消費税増税法案には、増税でつくる財源を、高速道路、巨大港湾など、大型公共事業にまわす条項まで盛り込まれました。社会保障は大改悪、無駄な大型開発にお金を注ぎ込む――これが民自公増税連合が「一体改革」の名ですすめようとしていることの正体ではありませんか。

 日本共産党は、無駄遣いの一掃、まず富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革、国民の所得を増やす民主的経済改革をすすめ、消費税に頼らずに社会保障を充実させ、財政危機を打開する具体的な「提言」を示しています。消費税に頼らない別の道がある――この対案を示して、大増税ストップのために最後まで力をつくす決意を表明するものです。

第二の大罪――

無謀きわまる原発の再稼働の強行

 野田内閣の大罪は、自民・公明とともにすすめている消費税大増税問題だけにとどまりません。

 その第二の大罪は、原発の再稼働を強行したことです。

 政府の再稼働方針は、一片の道理も、科学的知見もない、無謀きわまるものです。首相は、「福島を襲ったような地震・津波がおこっても、事故は防止できる」と断言しました。しかし、原発事故は収束に程遠い状況であり、事故の検証は始まったばかりです。大飯原発の直下には活断層の可能性が指摘されています。これでどうして「事故を防止できる」といえるのか。これこそ、「安全神話」の最悪の形での復活ではありませんか。

 毎週金曜日には、「再稼働反対」を訴える数万から十数万の人々の声によって、首相官邸は包囲されています。そのなかで「野田首相はやめろ」という声は、回を追うごとに高まっています。無謀な再稼働を強行し、国民の安全より、電力業界・財界の利益を優先する――このような内閣に国民の命をあずけるわけにはいきません。

 いま政治がなすべきは再稼働ではなく、「原発ゼロの日本」への政治決断であり、原発事故に苦しむすべての福島の被災者への支援であることを、強く訴えるものであります。

第三の大罪――

オスプレイの普天間基地配備を唯々諾々と受け入れる

 第三の大罪は、オスプレイの普天間基地配備を唯々諾々と受け入れたことです。

 世界一危険といわれる普天間基地に、墜落事故をくりかえしている危険きわまる軍用機を配備する計画に、沖縄が島ぐるみで怒りの声をあげているのは当然です。米軍は、沖縄本島の全域と、本土に設定している七つの低空飛行訓練ルートで、オスプレイの訓練を行う計画を明らかにしており、全国知事会は配備反対の緊急決議をあげています。

 首相は、「アメリカにどうこういう話ではない」と言いましたが、危険な軍用機の配備になぜ「ノー」といえないのか。日本国民の命と安全よりも、米国への忠誠を上におく野田内閣に、日本の外交にたずさわる資格はありません。

 日本共産党は、オスプレイ配備の中止、普天間基地の無条件撤去を強く求めるものです。

第四の大罪――

日本を米国に売り渡すTPP参加への暴走

 第四の大罪は、TPP参加への暴走をおこなっていることです。

 この間の、TPP参加にむけた「事前協議」をつうじて、その危険性はいよいよ明瞭となりました。

 「関税ゼロ」に例外のないことが、すべての国から念押しされました。TPPに参加すれば、コメも含めて関税の全面撤廃は避けられません。それが、農林水産業、関連産業、地域経済に壊滅的打撃をあたえることは、誰の目にも明らかです。

 さらに、「非関税障壁の撤廃」の名で、食品安全の規制緩和、国民皆保険制度を破壊する混合診療の拡大など、日本の経済と社会のあり方が、アメリカに都合のよいように「大改造」されてしまうことになります。

 日本の国を米国に丸ごと売り渡す、亡国の道をつきすすむことは断じて許すわけにはいきません。

第五の大罪――

「政権交代」にかけた国民の期待を完全に裏切った

 第五の大罪は、3代にわたる民主党政権が、「政権交代」にかけた国民の期待を完全に裏切ったということです。

 2009年夏の「政権交代」にたくした国民の願いとは、「自民党政治を変えてほしい」という願いでした。しかし、3代にわたる民主党政権によって、この願いはことごとく裏切られました。いまや野田政権は、身も心も自民党とうり二つの政権となり、自民・公明と一体になって大増税を強行するところまで、その堕落はきわまりました。

 今日の政治の閉塞(へいそく)を打開するためには、「アメリカいいなり・財界中心」という古い政治を断ち切る改革こそ必要であります。

 日本共産党は、野田内閣への不信任とともに、民自公増税連合に不信任を突き付けます。すみやかに解散して、国民に審判を仰ぐことを強く要求して、賛成討論を終わります。