2011年9月29日(木)「しんぶん赤旗」

国民・子どもの命守るため 原発災害に国は責任果たせ

衆院予算委 志位委員長の基本的質疑


 日本共産党の志位和夫委員長が27日の衆院予算委員会で行った基本的質疑の内容を紹介します。


放射能汚染対策

志位「国の責任で『仮置き』の期限を明示し、除染費用は全額負担を」

首相「(期限は)明示できるように努める」「(費用は)国が責任をもって対応する」

志位「自治体まかせをあらためよ」

写真

(写真)質問する志位和夫委員長=27日、衆院予算委員会

 志位和夫委員長 私は日本共産党を代表して、野田総理に質問いたします。

 まず、原発事故によって大量、広範囲に広がった放射能汚染から、どうやって国民、とくに子どもたちの健康と命を守るかについて、総理の基本認識をうかがいます。

どれだけの量の放射性物質が、どれだけの範囲で広がったか

 志位 原発事故から半年を超えましたが、いまだに収束の見通しはたたず、10万人もの方々が避難生活を強いられ、福島では、この秋晴れのもとでも子どもたちが外遊びさえできないという状況が続いております。

 私が、衆院本会議の代表質問で、「原発安全神話」にどっぷりつかって大事故を引き起こした歴代政権の責任をどう自覚しているのかとただしたのに対して、総理は、「原子力に関する安全神話にとらわれてきたという事実は謙虚に反省します」とお答えになりました。また、放射能汚染対策については、「政府が一丸となって総力をあげ、全力で取り組む」と答弁しました。

 私は、総理に、原子力災害対策本部長としての基本的認識をうかがいたい。今回の原発事故で、いったいどれだけの量の放射性物質が放出され、放射能汚染が日本の国土のどれだけの範囲に広がっていると認識しておられますか。端的にお答えください。

 野田佳彦首相 数字にかかわることなので、経産大臣かと思いますが、お尋ねでございますので、私の方からお答えいたします。

 9月11日に公表した「国際原子力機関(IAEA)にたいする日本国政府の追加報告書―東京電力福島原子力発電所の事故について(第2報)」でございますが、現時点までの放射性物質の総放出量は、環境モニタリングデータから逆推定結果をふまえると、ヨウ素131は10万テラベクレルから20万テラベクレル程度。セシウム137は1万テラベクレルから2万テラベクレル程度と推定をしています。

 なお、文科省が作成した環境放射能水準調査結果によれば、9月26日時点における各都道府県のモニタリングポストの放射線量は、宮城、福島、茨城の3県の観測点を除き、過去の平常値の範囲におさまっており、現時点での放射性物質の影響は、限定的な状況にはなっていると認識しています。

 志位 放射性セシウム137、これが一番の問題になっておりますが、1万から2万テラベクレルという数字をおっしゃいました。政府が出している数字では(原子力安全・保安院発表)、広島型原爆のだいたい168倍という数字が出ております。

 パネル(地図)を一つごらんいただきたい。これは群馬大学の早川由紀夫教授が作成した放射能汚染の地図です。国と自治体がおこなった7万余りの計測値をふくめ、インターネットで公開されている無数のデータを参考にして作成したとのことです。赤い色が最も高い放射線量の地域で、オレンジ色、黄色、黄緑色、緑色と続くわけですが、放射能汚染の広がりは、判明している限りでもきわめて広大で、北は岩手県から、南は千葉県、埼玉県、神奈川県まで及んでおります。これは最新の9月のデータです。

 総理は、私の代表質問に対して、「国の責任として大規模な除染――放射能を取り除く取り組み――をおこなう」ということを述べました。そこで、総理にお聞きしたいのですが、これは福島県はもとより、放射能で汚染された地域はすべて国が責任をもって除染するということですね。総理の答弁をお願いします。

 細野豪志原発担当相 お示しをいただいた資料ですけれども、緑色のところが薄いということなんですが、その濃いところと薄いところが若干わかりにくくなっておりまして、薄いところも含めて、この事故由来で汚染されたということでいうならば、たしかに、非常に広範囲に広がっているということでございます。

 除染についてご質問をいただきました。基本的な考え方をお示しをし、そして予算は2次補正で2200億円。3次補正でもしっかり取りたいと思っております。

 もちろん、もっとも汚染の度合いが大きいのが福島県でございますので、重点的な除染対象ということになってまいりますが、除染そのものについては福島県に限定するというものではなく、必要なところには政府としてしっかり取り組んでいくということでございます。

「国が責任を持つ」というが、千葉県東葛地区では政府方針の説明すらしていない

 志位 政府として全部について取り組むということだと思うんですが、実態はどうか。

 たとえば千葉県の東葛地区であります。ここでは福島県内に迫る高い数値の放射線量が検出され、東葛地区の六つの市で協議会をつくり、独自に放射線量の測定・除染に取り組んでいます。ここは早川教授が作成した地図で見ても、年間1〜20ミリシーベルトとなる危険のある地域で、当然、国が責任をもって対応しなければならない地域です。

 ここで、国からどのような支援あるいは協力があったか。六つの市の担当者に直接問い合わせてみました。そうしますと、財政的な支援・協力どころか、政府の除染に関する「基本方針」、あるいは「除染実施ガイドライン」などの方針についての説明についてさえ、一切ないという。どの自治体も、新聞報道で知って、独自にインターネットなどで情報を入手したという。これは総理、あまりに無責任ではないですか。こういうやり方は、責任のないやり方だと思いますが、総理、いかがでしょう。

 細野担当相 あらためてデータを確認をしてみたいというふうに思っておるんですが、たしかに福島県外でも、除染についてさまざまな要請がでてきているのは事実でございます。したがって、情報を幅広く提供して、必要に応じて政府が取り組んでいくということは重要なことであると思っております。

 いま志位委員の方でご指摘いただいた(年間)1〜20(ミリシーベルト)というのも、かなり差がございます。それこそ1年間で20というのは、きわめて高いことでございますので、除染を急がなければなりませんけれども、たとえば、1とかというレベルになれば、これは順番に除染をしていくという、生活空間の中での除染になりますので、それぞれの地域に応じた除染をしっかりやっていく。それを政府として責任をもってやるという体制で臨んでまいりたいと思います。情報がいっていないところがあれば、そこはしっかり対応すべく、あらためて指示をします。

 志位 除染を、もちろん(年間)20ミリシーベルトというのはたいへんな線量ですから国が責任をもってやる。しかし、(政府の除染の基本方針では)1〜20も国が責任をもつ、1以下でもホットスポットはできるから、国が支援するといっている。

 除染というのは、早ければ早いほどいいわけですよ。ところが、方針を決めて、ひと月たっても説明すらしていないというのは、これは国が責任をもっている姿勢とはいえないということを、私はいっておきたいと思います。

政府が最終処分の展望を示さず、「仮置き」の期限を決めていないことが障害に

 志位 福島の方に行きますが、福島では自治体の努力で除染が始まっておりますが、どこでも、最大の障害の一つとなっているのが、取り除いた土など放射能を帯びた廃棄物の保管先、「仮置き場」が決まらないということです。それが決まらないことから、除染がすすまないという訴えが各地から寄せられております。

 私は、昨日、福島県の川俣町の古川町長から実態をお聞きしました。そうしますと、「『仮置き場』で困っている。『いつまで置くのか』『どこに持っていくのか』がはっきりしないためになかなか決まらない。『仮置き場』が決まらないために、通学路の除染に取り組んでいるが、側溝の土砂の取り除きや除草がすすまず、各地にホットスポットが存在している」、こういうお話でした。

 なぜ「仮置き場」が決まらないか。古川町長の話にもあったように、最終処分の展望が示されず、「仮置き」がいつまで続くか分からないからです。

 最近、福島民報社がおこなった、県内59の市町村への聞き取り調査によりますと、「仮置き場」について「検討中」としている自治体は23の自治体にのぼりますが、ほとんどの自治体が、設置場所や時期については「未定」、あるいは「詳細はこれから決める」としており、実現のめどすら立っていないとのことです。各自治体は、「最終的な処分先が明確でなく、いつまで仮置きされるのかを不安に思う住民の理解が得られない」と訴えております。

 伊達市のある行政区の関係者は、「正直、周辺では設置に反対の声が多い。除染に協力したい気持ちはやまやまだが、仮置きがいつまでか分からず、本当に安全かどうかも分からない。住民の安全安心を考えるといい返事はできない」と苦しい胸の内を語っています。

 これは総理、お答えください。いま除染をすすめるうえで、政府が最終処分の展望を示さず、「仮置き」の期限をいついつまでと決めていない、これが最大のネックの一つになっていると、こういう認識はありますか。総理の認識を聞きたいと思います。

 細野担当相 あの、検討状況について私のほうから先に説明をさせていただきます。志位委員、ご指摘の通り、「仮置き場」を設置をしない限り、大規模な除染がすすまないということになっておりまして、各市町村、非常に、もう本当に苦しい思いをしていただいて、恐縮なんですけれども、努力をしていただいて、少しずつ、見つかりつつあるという、そういう状況です。

 ただその際に、非常に問題になっているのが、それはどれぐらいの期間、「仮置き」をされるのかと、そこはどこに持っていかれるのかということでございまして、その施設、すなわち中間貯蔵の施設を確保するというのが、政府の大きな責任であるというふうに承知をしております。

 菅総理が最後に福島に行かれたときに、大変申し訳ないながらも福島県内に中間貯蔵についてご理解をいただけないだろうかと、提案をすでに総理の方がしておりまして、それを受けて、私のほうでさまざまな自治体のみなさんとひざをつきあわせた議論を現在しているところでございます。

 このままの状況を放置をすることはできませんので、10月中には中間貯蔵のいろんな在り方も含めて、政府としての考え方を提示をしたいというふうに思っておりまして、それと並行して「仮置き場」についてもできる限り理解をいただけるように、地域のみなさんのところには環境省が直接いって説明するという、そういう対応でやってまいりたいと考えております。

国の責任で「仮置き」の期限を明示し、最終処分の具体化をはかれ

 志位 いまの話にあったように、「仮置き場」が決まらないために除染がすすまないという認識でした。

 それで、自治体が、いま一番求めているのは、「仮置き」について期限を決めてほしいということなんですよ。そこで、私は、政府として、“「仮置き」の期限は、最長でもいつまでで、その期限内に国が責任を持って「仮置き」は解消します”という形で「仮置き」の期限を明示すべきではないか。そのうえで、最終処分の方法・場所については、開かれた形で国民・住民の討論をおこない、専門家の知見も総結集して、国民・住民の合意のもとに、国として責任を持って具体化をはかることが必要だと思います。

 「中間処分」というふうに言われましたけれど、「中間処分」というのは中途半端でいちばん悪い。「中間処分」ということになりますと、またその期間が問題になってくるわけですよ。そうではなくて、最終処分どうするかをそういう形で決めたらいい。

 ただ、いま、政府が示すべきは、「仮置き」というものは最長でもいつまでと、1年なら1年、2年なら2年、それで解消しますということを、政府の責任者がはっきり言うことですよ。今度は総理がお答えください。いかがですか。

 首相 私も、9月8日、福島に行ったときに、除染のモデル地区としての伊達市の視察をしました。そのときにやはりブルーシートで置きながら、隠しながら、包みながら、対応しているような場面を見ました。

 あるいは、穴を掘ったやり方で何かできないかという、そういう知恵をめぐらしているという場面にもでくわしましたけれども、それをいつまでにするかということは、それはさっきの細野大臣の答弁にもあったとおり、中間と位置づけるか最終と位置づけるか、要はそこの最後のところが決まらないとなかなか決めにくいと思いますので、その見通しを明らかにした上で、住民のみなさんにご理解をいただくような、その期限というのが割り出していくんではないかというふうに思いますし、それはなるべく早く対応しなければいけないと思います。

 志位 これはもちろん、最終処分と「仮置き」の期限というものは、リンクしてくるわけですけれども、それを含めて、「仮置き」の期限をいつまでと、総理の責任で、いまここで何年と言えというわけじゃないけれども、明示すると約束してください。

 首相 いま言ったように、そのシステムを完結していく後ろを決めながらのなかで「仮置き」は何年とか、という形で、それは住民の安心のためにも明示できるように努めていきたいと思います。

 志位 しっかりやっていただきたい。

除染費用は国が責任をもって全面的に支払い、東電に賠償責任を負わせよ

 志位 もう一つ、除染をすすめる障害になっているのは除染費用の問題です。

 福島県の二本松市で、市に協力して除染の専門アドバイザーとして活動している研究者からお話を聞きました。そうしますと、「仮置き場」の設置について住民の方々の心配は、「いつまでか」ということとともに、「安全か」ということになっている。そこで、汚染された土壌を山積みにする際に、産業廃棄物処理施設で使用しているような遮水シート、水が通らないしっかりしたシートを敷いたらどうかと提案したわけですが、市の側は、「残念ながらお金がなくて難しい」ということで、一般のブルーシートということになったと聞きました。これでは、短期しかもたないで水が染みてしまうことにもなる。除染費用の心配から、「仮置き場」の設置さえこういう状況なんですよ。こういう実態なんです。

 さらに、個人の住宅の除染が必要でしょう。これになりますと、費用がさらに大変になってまいりまして、二本松市の担当者にうかがったところ、「庭付きの家で本格的な除染をすると100万円かかる」というんです。「2万世帯あるから200億円になる。市の予算総額は249億円しかない。よほどの財政支援がないと個人宅の除染は難しい」。こういうことでありました。

 総理、除染費用は、国が責任を持って全面的に支払う、そのうえで東電にすべての賠償責任を負わせる、こういう姿勢をはっきり打ち出すべきだと思いますが、いかがでしょう。

 細野担当相 基本的には、志位委員がご指摘のスタンスでやっていくのが政府の方針でございます。いまうかがっておりまして、二本松市長さんですか、私も何度かお会いしたんですが、自治体が本当にやろうとしておられることと、政府がいま、さまざまな財政的な支援をしているところが、マッチしてない部分があるのかもしれません。しっかり確認したいと思います。

 市町村ができるだけ除染をやろうということで努力をされていることをしっかりバックアップする体制でいくのが基本的な考え方でございますので、しっかり確認します。

 ただ一方で、一言だけ申し上げると、除染のやり方というのもだいぶめどがたってまいりまして、例えば中間貯蔵にしてもどういう形にすれば安全に保管できるのか。除染についてどういうやり方が効率がいいのか。

 もちろん、経済的な制約を乗り越えてやらなければならないと思っているんですが、効率的なやり方というのは追求していかなければなりませんので、コストができるだけ効率的に回るような、すなわち、効果的な方法というのを市町村としっかりと情報交換するなかで政府としては財政的な負担を全面的にしていくと、そういう考え方で取り組んでまいりたいと思います。

 志位 「しっかり」とか「基本的」にはという言葉はあったんだけれども、最後に一言、「全面的に」ということも言われたけれど、全面的に国がまず負担するとはっきり総理の口から言ってください。

 首相 もちろん市町村と協力したりするっていうことはありますが、最終的には国が責任を持って除染をおこなっていくということだと思います。その上で、そのコストのほうでいろいろあると思うんです。

 例えば、2センチ削ってやるのか5センチ削ってやるのか、2センチでも十分だとか、そのへんの技術的な課題もクリアしながら最終的に国が責任を持って除染の対応をしていく。全面的というか、国が責任を持って対応するということです。

 志位 全面的にという言葉を使うことを渋るわけですよ。そこが問題です。

 「国が責任を持って除染する」といいながら、いまお話ししたように、実態は、福島県以外は除染方針も伝えていない、廃棄物の最終処理の展望が示されていない、財政支援の展望も示していない。結局、自治体まかせになっているんじゃないですか。

 それは、政府の除染方針が結局、年間20ミリシーベルトを超えたら国が直接除染する。しかしそれ以下は自治体の取り組みを支援するという受け身のものになっているから、こういう事態が生じていると思います。

 これは国と東電の責任で起こした事故なんですよ。自治体には何の瑕疵(かし)もない、何の罪もない。ですから、本当に全面的に費用は国が出し、そして責任を持つということをやっていただきたいと、強くいっておきたいと思います。

除染推進体制――原研機構まかせにせず、日本の英知の総結集を

 志位 さらに、除染を推進する体制についてうかがいたい。

 これほど深刻な放射能汚染から国民と子どもたちを守る除染という仕事は、これまで人類が取り組んだことのない一大事業であり、政府がそれにふさわしい強力で特別の体制をつくる必要があります。

 ところが、政府がつくっている環境省の除染委員会(環境回復検討会)の委員をみますと、放射能関係の専門家として参加しているのは、日本原子力研究開発機構(JAEA)の関係者だけです。政府は、この機構を「原子力に関するわが国唯一の研究開発機関」と位置づけ、「除染に係るガイドライン」の作成もこの機構に丸投げしている。そんな姿勢でいいのかが問われていると思います。

 もともとこの機構は、政府・電力業界と一体に、原発だとか、高速増殖炉「もんじゅ」だとか、これを推進してきた機構ですよ。それを「唯一の研究開発機関」と位置づけてきた結果、福島原発の大事故が起こったわけでしょう。その反省にたてば、除染はこの機構まかせというわけにはいかないと思います。これまでの枠を超えて、あらゆる専門家の英知を結集した体制がどうしても必要だと、私は思います。

 私は、提案したいのですけれども、すでに福島県では、東京大学、日本大学、金沢大学、東北大学、京都大学など、各大学の研究チーム、研究者が、さまざまな形で独自に研究しながら除染の活動に取り組んでおります。こういう方がたも含めて、文字通り日本の英知を総結集する、オールジャパンの体制をつくって、この一大事業に取り組むべきだと考えますが、いかがでしょう。

 中井洽予算委員長 一番最初に福島県以外に除染の方針が伝わっていないということについて事実かどうか、それからいまの質問に答えてください。

 細野担当相 福島県以外のところにも、要請があればしっかりと情報を伝えるということでやっております(議場騒然)が、伝わっていないところがあればそこは再確認をしたいと思います。

 どうしても近隣の、例えば宮城県の南部であるとか茨城県であるとか、そういったところは地図でもはっきり出ていますので、そういったところにはできるだけ情報をということでやっておるんですが、少し距離があるとどうしてもそこに情報が届いていないということがあるようですので、対応してまいりたいと思います。

 中井委員長 大至急それは各地方自治体に知らせてください。

 細野担当相 承知いたしました。

 除染の体制の問題ですが、環境省が法律を所管することになりましたので、環境省でも対応の体制についても現在整備をしております。ご指摘の原子力研究開発機構ですが、確かにこの機関はかつて動燃と原研が合併した組織でございまして、推進側の組織であります。

 ただ実際問題、日本の原子力の専門家をみますと、この原研機構に約4000人おりまして、放射能の専門家という意味では最も知見がございます。もちろんそういった推進側に立ってきたみなさんも、いまこの事態で何とか専門知識を生かそうということで現場で頑張っておられるので、そのこと自体を否定的に捉える必要はないのではないかと考えています。

 ただ、英知はこのJAEAだけではとても足りませんので、世界からさまざまなアイデアをしっかりと受け止めて、環境省でも国立環境研究所にも今回そういう機能を一部もたせようかと思っておるんですが、そういったことも含めて体制の整備をしております。

 来年1月には福島に福島環境再生事務所というものを環境省がつくりたいと思っております。当初は補正予算で40名の規模、できれば来年度には100人規模に、何とか安住財務大臣のご理解もいただいて、そこは体制を強化したいと思っておりまして、国が責任をもっておこなう体制がまだ十分でない部分があるようであれば、そこは徹底的にてこ入れをして、責任をもってやってまいります。

 志位 国際的な英知を結集すると、これも結構ですよ。それから、私は、原研開発機構の方がたを全部排除しろといっているわけじゃない。私が要求したのは、現に福島で各大学のチームが頑張っているじゃないかと。そういう人たちがチームに入っていないわけですよ。世界の知見もいいです。しかし日本で頑張っている、大学で頑張っている、全部入れたらいいじゃないですか。それを総理に聞いているんです。総理がお答えください。

 首相 どのチームうんぬんじゃなくて、広く国内でこの問題に関心をもって、そして貢献しようとする人たち、世界で同じ思いをもっている人たちの力を結集するべきだと思います。

 志位 これは本当に原研機構まかせにしてはだめだということを強くいっておきます。

図

(写真)四訂版2011年9月11日(初版4月21日)
著者:早川由紀夫(群馬大学)
地図製図:萩原佐知子
背景地図: Google Maps
この地図の作成には、文部科学省科学研
究費補助金「インターネットを活用した
情報共有による新しい地学教育」(番号
23501007)を使用しました。


損害賠償

志位「被害者の苦しみに寄り添い全面賠償を」

東電社長「加害者の意識」といいつつ「人災」とは認めず

経産相「東電は賠償額を減らそうとしている」「政府と東電による人災だ」

首相(全面賠償をおこなうとの明言を避ける)

膨大な損害賠償の請求書類――あまりに心ないやり方と思わないか

 志位 つぎに原子力災害への損害賠償問題についてただしたいと思います。

 ここに、今月12日、東京電力が発送を開始した個人向けの損害賠償の請求書類がありますが、驚くべきものです。

 記入方法の説明書だけで156ページ、それから被害者が記入する賠償請求書は60ページもあります。請求のためには、難しい専門用語を理解し、数式にあてはめた計算までしなければなりません。過去の給与明細や、避難でかかった費用を証明する領収書類の添付を求めています。着の身着のままで避難を強いられた方がたや、高齢者も少なくない被害者に、このような書類を送りつけ、提出を求めている。

 被害者から怒り、憤りの声がふきあがっています。私は、「福島民報」という地元紙を読みましたけれども、「被害者困惑、憤り」という記事が載っております。「読むだけで一週間はかかるんじゃないかな。特にお年寄りには難しいと思う。東電は手続きをわざと難しくして、申請を諦めさせようとしているんじゃないかとさえ思う」。「東電はあれだけの事故を起こした当事者意識があるのか。書類も郵送するのではなく、一軒一軒回って聞き取りし、代筆すべきだ」。こういう怒りの声が載っています。

 自治体ぐるみの避難を強いられている双葉町は、町民からの苦情が殺到し、井戸川町長が「分厚い用紙に答えなければ補償しない高飛車な態度だ」と批判して、住民への説明を中断させるという事態になっております。

 総理にお聞きしたい。東電がこういうやり方をとっている。これはあまりに心ないやり方だと思いますが、まず認識をうかがいたいと思います。

 首相 だいたい160ページ近い読み物を読むというのは相当時間がかかるし、心して読まなければ頭に入りません。ということは、あまりに煩雑すぎるだろうと思いますし、そのことについては枝野大臣も直接指導をされるというお話をされていましたので、それを踏まえて東京電力が適切に対応していただけるものと思います。

 志位 「指導する」というんですが、結局この請求書の書式については変えるという話をうかがっておりません。

モモ農家の訴え――被害者に苦しみのおいうちは許せない

 志位 近く発送される法人や個人事業者に対する賠償の請求書類も、個人向けと同様に分厚いものになるのではないかといわれております。

 農業などの個人事業者の被害者は、仮払いの段階でも、東電から膨大な資料の提出を求められております。私は、福島県でモモをつくっている農家から、お話をうかがいました。モモの価格が大暴落し、注文が激減している。そこで賠償を求めているがたいへんな目にあっているという。

 福島のモモは贈答品としても大変評判が良いモモで、この農家では個人の贈答用が3割を占めるとのことです。一つの農家で数百人ほどの方に贈答用として送っているということです。その価格がボーンと下がったので、これはたいへんだと賠償を求めた。そうしたら、東電から何と言ってきたか。「誰に贈ったのか、宅配の伝票を出せ。帳簿を出せ。損害請求と照合するために必要だから全部出せ」と、こう言ってくる。しかし、数百人もの顧客の伝票や帳簿の記録を出すのは、これはたいへんな作業で、多大な労力を要し、疲れ果てているとのことでした。「だいたい顧客のプライバシー(にかかわる資料)を一民間企業に出せという話も大問題だ」、「税務署の調査より厳しい」という訴えでありました。

 私は、お話を聞いて、被害者が、どうしてこんな苦しみの追い打ちをかけられなければならないのかと、強い憤りをもちました。

東京電力には加害者としての自覚があるのか

 志位 東電に聞きます。個人への賠償といい、事業者へのこの態度といい、共通して被害者から出てくるのは次の声です。「東電には加害者としての自覚があるのか」。私もそれを問いたい。東電の西沢社長に認識をうかがいます。いったい東電は加害者だという自覚をもっているのですか。イエスかノーか、答えてください。

 西沢俊夫東京電力社長 先生にお答えいたします。このたびの事故の当事者として加害者としての意識は十分もってございます。

 志位 そうすると今回の事故は、まさに人災だという認識をもっていますね。

 東電社長 放射性物質を外部に出してしまったことは事実であります。現在その事故の原因等につきましては、国の方でも事故調査委員会、それから私どもの方でも有識者を入れた形で立証委員会を開いてございますので、その結果を踏まえて、きちっと対応させて足らざる点があればそれは対応させていただきたいと思っております。

 志位 人災かと聞いているんです。答えてください。

 東電社長 その結果を踏まえて、きちっと対応させていただきたいと思います。

 志位 加害者の意識をもっているというが、そんな生易しいことでは困るわけですよ。人災と聞いても、その自覚はないわけですよ。そういうところから、こういう被害者の方々に対する心ない態度が出ていると思う。

3カ月ごとの支払いをあらため、生活や営業に困ることがないよう責任をもて

 志位 もう一つ聞きましょう。

 東電は、今後、3カ月ごとに支払いをするとしていますけれども、被災者はなお被害が続いているうえ、毎月の支払いに追われ、生活苦はたいへんな状況です。収入というのは毎月ないと生活も営業も成り立ちません。

 たとえば、農業者でいいますと、年末に支払いが多いわけですよ。ところが、3カ月ごとの支払いになりますと、9月から11月分の賠償が支払われるのは、来年になってしまう。これでは年が越せない、農業者の実情をわかっているのかという、この怒りの声が沸騰しております。

 東電の西沢社長に求めたい。3カ月ごとの支払いはあらためて、最初の賠償支払いをもとに毎月定額の支払いをおこなう、あるいは前払いをおこなうなど、被害者の方々が生活や営業の資金に困ることが絶対ないようにしていただきたい。いかがですか。

 東電社長 現在、お手元に示した資料では一応原則3カ月ごととしてございますけれども、最初非常に多くの何十万という方々がご請求されると思いますので、それをまずしっかりやるということがきわめて大事であると思っておりまして、その状況を踏まえまして、先生おっしゃるように、なるべく早くきちっとお支払いの方はスムーズにさせていただきたいと思っております。

 志位 「なるべく早く」などという、抽象的な話では困るんですよ。被害者の方々が、生活資金でも、営業資金でも、資金繰りに困って年が越せなくなるようなことは絶対にしないと、明言してください。

 東電社長 被害者の方の個々の実情いろいろあろうかと思っております。それは個別にきちっと、その点については対応させていただこうと、いうふうに思っております。

膨大な書類提出を求めるのは、賠償額を減らそうという意図があるからだ

 志位 総理にうかがいたい。

 結局、被害者の方々にこういう膨大な書類の提出を求めてくるというのは、東電に少しでも賠償額を減らそうという意図があるからですよ。本気で誠実に全面賠償をするつもりがあるならば、こんなやり方はとらないと思います。被害者への心からの反省にたって、その苦しみに寄り添う対応をするはずです。全面賠償をするつもりがないから、こんなものを送りつけてくる。総理、そう思いませんか。

 枝野幸男経済産業相 ご指摘の通り、東京電力のここまでの対応は、少しでも賠償額を少なくできないだろうかという考えがあるというふうに受け取られてもやむを得ないだろうというふうに思っております。

 私もその点を昨日、副社長を呼びましたときに指摘をいたしました。通常の取引等における法律関係ではなくて、今回は、私はこの事故は国と政府と東京電力の責任による人災であると思っておりますが、そうした責任をふまえて国としても政府としても誠意ある対応、まだ不十分だと思っておりますが、さらにしていかなければならないと思っておりますが、東京電力においてもまず被害者の視点にたって、たとえばさきほどご指摘をいただきました資金繰り、生活資金というような問題についても、結果的にもしかすると千人に1人くらい本来賠償を受けるべきでない人が紛れ込む可能性はゼロじゃないかもしれません。

 しかしながら圧倒的多数のみなさんは日々の生活の資金繰りに困っていらっしゃるわけでありますから、概算払いですとか、そういったことについても最大限柔軟に対応するようにと昨日指示したところでございますが、ひきつづき細かく厳しくチェックをしてまいりたいというふうに思っておりますので、ぜひ委員におかれましても現場の声も含めて、問題点等については厳しくご指摘をいただきたいとお願い申し上げます。

「オール福島」による全面賠償の要求にこたえよ

 志位 「少しでも賠償を減らしたい態度」だと、大臣も言われたとおりだと思います。私が聞いたのは、全面賠償をするつもりはないのではないかという、この点でした。

 ここに、9月2日、福島県知事、JAグループ、県商工会連合会、県市長会、県町村会など、党派を超えて「オール福島」が結集した「福島県原子力損害対策協議会」が、総理と東電社長に対しておこなった「原子力損害賠償の完全実施に関する緊急要望」という文書がございます。この要望書では、「原子力発電所事故がなければ生じることのなかった損害について、……すべて賠償すること」、全面賠償を強く求めております。

 佐藤福島知事を先頭にした要請に対応した文部科学事務次官は、この要求については回答しなかったということでありました。これは総理あての文書ですから、総理にこの場でお答え願いたい。「オール福島」のこの全面賠償――原発事故がなかったら生じることのなかった損害は全部賠償すると、この痛切な要求にどう応えるのか、この場でお答えください。

 中川正春文部科学相 ご指摘の緊急要望については私どもも承知をしております。

 そのうえで文科省配下の原子力損害賠償紛争審査会においてその基準をつくっているわけですが、事故と相当因果関係が認められるものはすべて、この適切な賠償がおこなわれるということを前提にして基準をつくっているということと、それから、「中間指針」のなかで「はじめに」という前文があるのですけれども、そのなかに、東京電力株式会社に対しては、中間指針で明記された損害についてはもちろん、明記されなかった原子力損害も含め、多数の被害者への賠償が可能となるような体制を早急に整えたうえで迅速、公平かつ適正な賠償をおこなうことを期待するということでありまして、「中間指針」自体もこれからまた追加の指針というのが出てくる前提になっております。

 それから、さきほど申し上げたとおり、個々の紛争に対して原子力損害賠償紛争解決センターを9月1日に開所しまして、それぞれ紛争が起きたときの対応もきめ細かにやっていくということ、それからさらに原子力損害賠償支援機構法および原子力事故被害緊急措置法、いわゆる「仮払い法」、これも準備をしまして、トータルでこの対応をしていきたいということを考えております。

 志位 私が聞いたのは、全面賠償という福島県の要求にどう答えるのかということを聞いたのです。総理が答えてください。

 首相 ご指摘の福島県からの緊急要望は私も承知をしております。それを踏まえて、被害に遭われた方に対する賠償について国として万全を期していきたいと思います。

 志位 全面賠償するのかどうか聞いているのです。

 枝野経産相 一般的に賠償の範囲を言う場合に全面とかという言葉を使うことは一般的に多くないと思いますので、なかなか答えにくいのだと思いますが、当然のことながら、賠償といった場合には、相当因果関係の範囲のある損害について全て賠償するというのが当然であります。そうした意味でそうした方針は政府としてしっかりとすでに示しているところでございます。そうした意味では全面的に賠償するということです。

全面賠償を否定している「中間指針」見直しを求めよ

 志位 相当因果関係があるものは賠償するというふうにおっしゃるのですけれども、この「中間指針」、8月5日の政府の原子力損害賠償紛争審査会の「中間指針」には何と書いてあるか。全面賠償という立場はどこにもないですよ。

 逆にこう書いてあります。「本件事故に起因して実際に生じた被害のすべてが、原子力損害として賠償の対象となるものではない」。一部しか賠償の対象にならないと書いてあるのですよ。だから、そういう姿勢がいろいろな問題点にあらわれてくる。わざわざ全面賠償の否定が述べられているのです。

 だから、「オール福島」が結集した「(福島県)原子力損害対策協議会」は、この「中間指針」ではだめだと、「被害を十分に反映していない」と批判し、見直しを求めているわけです。総理、全面賠償を明記させるよう、「中間指針」の見直しを求めてください。今度は総理です。総理答えなさいよ。

 中川文科相 この「中間指針」の中には「中間指針に明記されない個別の損害が賠償されないということのないよう留意をされることが必要である」というふうにあります。

 志位 総理がお答えください。「中間指針」には、もちろん「中間指針」に定められていること以外にも賠償をやってもいいですよということが書いてあるけれども、一方でこういう、「(被害の)すべてが賠償の対象となるものではない」と、(賠償の対象となるのは)その一部なのだという一文もあるわけですよ。ここに問題があるから見直せといっているのです。これは、総理の権限でどうですか。

 中川文科相 この「中間指針」では、まだ暫定的なといいますか、これから範囲が広がって、さらに追加指針というのが生まれてきます。そういうものを包括した形のものと同時に、ここで取り上げられない問題についても、個々に問題があればそれは取り上げていかなければならないという、東京電力に対して申し上げておるということでありまして、そういう意味では因果関係のあるものについてはすべて考えていきなさいという、そういう趣旨だと思います。

 志位 私は、この「中間指針」では全面賠償の否定になっていると、これを見直せといったわけですけれども、それを見直すつもりがないという答弁です。

 私は、ここに根源があると思う。結局、全面賠償という立場に政府がたっていない。だから東電がああいう資料を送りつけるわけですよ。政府自身が全面的に賠償させるという立場にたてば、東電はああいうことできないはずだ。やはり根本には政府のそういう姿勢がある。全面賠償の立場にたてということを、重ねて私は強く要求しておきたいと思います。

原発の再稼働

志位「事故原因の究明ぬき、規制機関なしの再稼働など論外」

首相「地震の影響は不明。事故究明がすべてのスタートの大前提。そうした究明を終えたあとに再稼働のプロセスになる」

 志位 つぎにすすみます。原発事故は、原発依存のエネルギー政策の根本からの見直しを迫っています。いわゆる原発の再稼働問題について聞きたいと思います。

 総理は、定期検査中の原発の再稼働について、「安全性を確保しながら」すすめるとしております。しかしここには二つの大きな問題があると、私は思います。

黒塗りの「運転操作手順書」――これが不明では真相究明は不可能

 志位 第一は、事故原因の検証と究明が、まったく途上だということです。

 パネル(左上)を見ていただきたいのですが、これは東京電力が9月2日、衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会に提出した「通常の事故時」の「運転操作手順書」の最初のページです。手順書は、これがコピーですけども、ほとんどの部分が黒塗りです。かろうじて読めるのは、「原子炉スクラム(緊急停止)」、「原子炉圧力調整」、「原子炉減圧」など、項目の一部だけなんですよ。

図

(写真)東京電力が作成した福島第1原発事故発生時の運転操作手順書の内容の一部


 さらに、特別委員会の再三の要求に応じて、9月12日、東京電力が委員会の理事会に開示した過酷事故――シビアアクシデント時の「運転操作手順書」なる資料は、表紙と目次の計3枚のみで、2日に示されたものよりもさらにひどいものでした。表紙に「1号機事故時運転操作手順書(シビアアクシデント)」と書かれているだけで、目次のほとんどが黒塗り、内容についてはまったく不明のうえ、資料は、東電の求めで閲覧後に回収されたということでありました。

 事故時における「運転操作手順書」というのは事故原因を究明するうえで不可欠のものです。全電源喪失時の操作が手順書に書いてあったのかどうか。規定されていたとしたら規定どおりの操作で事故が起きたのか。それとも、規定外の操作で事故に至ったのか。こういう一つ一つの検証は絶対に欠かせないものです。

 総理に認識をうかがいたいのですが、シビアアクシデントのさいの「運転操作手順」は、これが不明のままでは事故原因の真相究明は不可能だと、誰が考えてもそう思いますが、いかがでしょうか。

 枝野経産相 ご指摘の問題は、従来から指摘をされておりまして、私の判断によりまして本日、経済産業省として東京電力に対し、いわゆる原子炉等規制法に基づく報告徴収の指示をおこなったところでございます。

 報告徴収にもとづいて入手した手順書については、経済産業省、私のもとで情報公開法にもとづいて公開できない部分がないかのチェックをしたうえで、公開できる部分についてはただちにチェックが済みしだい公開をいたします。

 志位 委員会には全部出すということでよろしいですね。

 枝野経産相 委員会だけではなくて、国民的に全面的に情報公開法の例外規定にあたる部分以外は全面的に公開をいたします。

政府のIAEAへの報告書でも「地震の影響は未だ不明」としている

 志位 事故原因の検証、究明が途上にあることは、この問題だけではもちろんありません。政府自身がIAEAに提出した報告書も認めていることです。

 つぎのパネル(左下)をご覧いただきたい。

 政府は、6月にIAEAに報告書を出していますが、この報告書では原子炉建屋で観測された地震の揺れの大きさが一部で設計の基準値を超えたことを認めたうえで、「原子炉施設の安全上重要な設備や機器については、現在までのところ地震による大きな損壊は確認されていないが、詳細な状況についてはまだ不明であり更なる調査が必要である」と述べています。

 9月のIAEAへの追加報告書でも、「地震による影響の詳細な状況については未だ不明の点も多いことから、今後、現場での実態調査等のさらなる調査・検討を行って、評価を実施する」。こう書かれています。

 要するに地震による原子力プラントの損壊の実態はまだ不明であり、さらなる調査が必要だということを繰り返し報告しているわけです。

 原発を襲ったのはまず地震でした。つぎに津波がやってきた。津波によってどう壊されたかについてはある程度わかっていても、その前に来た地震による原子力発電所の破壊については、まだ解明されていない、政府の認識はそういうことですね。

図

 細野担当相 6月の報告書、そして9月の報告書ともに、私が責任者でとりまとめているので、答弁させていただきます。

 東京電力の報告、さらには保安院の技術者の私に対する報告で申しあげますと、津波によって大きなダメージは受けているけれども、地震については大きな損壊がなかった、そういう報告をしております。ただ、それはあくまで解析の結果であるとか、さまざまなコアの機能についての分析でありまして、すべての機能が確認できているわけではありません。従いまして、ここは慎重な書き方をすべきだという私の判断のもとで、こうした記述になっているということでございます。

 当面の検証については、政府の検証委員会の中でも当然、こういう技術的なところについての検証はなされるべきだというふうに思いますし、さまざまな批判的な意見もいただく中で、実際に中を見れないという問題がありますので、どういった形で解明できるのかという非常に難しい問題はあるわけですが、とにかく慎重にも慎重を期して判断はしていくべきだと思っております。

 志位 いまの大臣の答弁の中で、たいへん気になったのは、津波による破壊は確認されていると、「地震による破壊は大きな損壊はなかった」、というふうにおっしゃったけど、(政府がIAEAに報告しているのは)「大きな損壊は確認されていない」ということなんですよ。「確認されていない」ということと、「なかった」というのは違うんです。違うでしょう。だから、そういういいかげんな答弁しちゃだめですよ。「確認されていない」ということと、「なかった」ということは違うんです。これは、政府の報告書でも地震についての解明はまだ未解明だといっている。

地震による原発の破損がどうだったのか、その検証ぬきの再稼働などとんでもない

 志位 東京電力は、事故原因をもっぱら「想定外」の津波による電源喪失だと言い張っています。しかし、「津波以前に原発を襲った地震による配管などの損傷も原因ではないか」とする専門家の指摘もあいついでいるわけです。

 柏崎・刈羽原発を抱える新潟県の泉田知事は、「東電は、福島原発事故の検証を一切せずに、津波のせいにしている。(地震による)配管破断が本当になかったのかなど、問題点を一切明らかにせずに、再稼働はありえない」と批判しています。

 地震による原子力プラントの破壊はどうだったのか。その検証、解明抜きに再稼働などとんでもない、これはあまりに当然の声だと思いますが、今度は総理、お答えください。

 首相 この報告書を見ると、地震の影響はまだ不明という評価になっておりますけれども、そういうことを踏まえて、早急に事故の究明、徹底調査をおこなうことが、すべてのスタートの大前提になるだろうというふうに思います。

 そのうえで、そうした究明等を終えたあとに、再稼働については何度も申しあげてきたとおり、ストレステスト(耐性試験)を事業者がおこない、それを保安院が評価をし、(原子力)安全委員会が確認をし、最終的に総合的に地元の世論の動向とかを踏まえて総合的な判断を政治がおこなう、というプロセスをたどっていくことでございます。

 志位 事故原因の究明がすべてのスタートだとおっしゃった。ですから、これは究明抜きの再稼働はありえないということですね。

「黒塗り」の事業者、「やらせ」の保安院、「情報隠し」の安全委員会を信用できるか

 志位 いま総理は、再稼働については、「事業者がおこなったテストを、保安院が評価し、さらにその妥当性を原子力安全委員会が確認したうえで、地元の理解や国民の理解が得られているかと言う点も含めて判断する」とお答えになりました。

 そこで、第二の問題ですが、「安全性の確保」と総理はおっしゃるけれども、問題は、再稼働の「安全性」なるものを「確保」する主体が一体誰かということなんですよ。いまあなたが答弁でもいわれたように、「事業者」と「保安院」と「原子力安全委員会」、この“3人組”なわけでしょう。これらによる「安全性の確保」を、国民がどうして信頼できるかという問題があります。

 まず、「事業者」が「テストをおこなう」といいますけれども、過酷事故――シビアアクシデントが起こったときにどういう対応をとるかの「運転操作手順書」を、国会に平気で黒塗りで出してくる。これだけ問題になって、やっと(公開を)検討しましょうと。つまり、自分に都合の悪い情報は明らかにしない。塗りつぶす。こういう電力会社がおこなったテストを一体誰が信用できるかと。

 それを「原子力安全・保安院」が「評価」するという。しかし、中部電力や四国電力管内の国主催のシンポジウムで、なんと保安院が賛成質問など、つまり「やらせ」を要請していたことが明らかになりました。原子力を規制すべき保安院が、「やらせ」を要請するなど、言語道断、文字通りの自殺行為であります。そうした機関がおこなう「評価」を一体誰が信頼できますか。

 さらにそれを「原子力安全委員会」が「確認」するという。しかし原発事故直後に、あの「SPEEDI」というシステムで放射能の影響を予測しておきながら、事故から2週間もその情報を公表せず、住民を危険にさらしたのは一体誰か。「安全委員会」じゃないですか。その「確認」など、誰が信頼できるかと。

 総理。国民の信頼を根底から失っている、「黒塗り」の事業者、「やらせ」の保安院、「情報隠し」の安全委員会(笑い)、この“3人組”がおこなった「安全性の確認」なるものを根拠にして原発の再稼働をやるといっても、これは地元の理解や国民の信頼は絶対に得られないと思いますよ。いかがでしょう。

 枝野経産相 原子力の安全について一定の知見を持っているいまの国の行政機関は保安院と原子力安全委員会でございます。ご指摘の通り保安院については、過去に「やらせ」問題に関わっていたという許し難い事態が明らかになりました。いまこれについてすべてのことを明るみにだせ、膿(うみ)を出し切れということで、第三者も入れた検証をおこなっているところでございます。

 まさにこうしたさまざまな経過の中で、国民のみなさまに信頼をしていただく、安心をしていただくためには、過去のすべての膿を出し切ることが必要だと思っておりますので、まず私の所管にあります保安院については徹底して膿を出し切るということによって、国民のみなさんからの信頼を得るべく努力したいと思っておりますし、当然のことながら電気事業者においても、さきほどの黒塗りの問題がございますが、自らがおこなってきた「やらせ」の問題等について、各電力事業会社含めて、さまざまな過去の問題点について国民のみなさまに自ら積極的に明らかにする、あるいはその責任を明らかにする、という姿勢がなければ国民のみなさんに信頼は得られないと思っておりますし、逆にそうしたことをしっかりと徹底していただくことで国民のみなさんの信頼を得るべく努力をしていただくべく、促してまいりたいと思っております。

 志位 時間がきましたので終わりたいと思いますが、結局、これからそれぞれの「膿」を出すというんですけれども、再稼働は春とか夏にやるという。そうすると結局、「膿」が出ないままの機関がチェックをすることになります。私は、事故原因が究明されていない、まともな規制機関もない原発の再稼働は論外だと思います。

「原発ゼロの日本」をめざす政治的決断を求める

 志位 私たち日本国民が今回の原発事故を通じて体験したように、原発事故というのはひとたび重大事故が発生し、放射性物質が放出されたら、それを完全におさえる手段がありません。このような他に類のない「異質な危険」を持つ原発という技術を日本社会が許容していいのか。これが問われております。

 私は、政府に、原発からのすみやかな撤退を決断し、「原発ゼロの日本」をめざすという政治的な決断をおこなうとともに、期限を設定して原発をなくし、同時並行で自然エネルギーの急速な普及をすすめるプログラムを策定することを強く求めて質問を終わります。