2012年1月28日(土)

志位委員長の代表質問 衆院本会議


 日本共産党の志位和夫委員長が27日、衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。


「政権交代」に託した国民の願いを裏切った自覚と反省はあるか

写真

(写真)代表質問をする志位和夫委員長=27日、衆院本会議

 私は、日本共産党を代表して、野田総理に質問します。

 2009年夏の総選挙での「政権交代」に国民が託したものは、「自民党政治を変えてほしい」という願いでした。それから2年半。3代を数える民主党政権によって、この願いは果たされたでしょうか。

 野田政権がいま、その政治生命をかけて突き進むとしている、消費税10%への大増税も、米軍普天間基地の「辺野古(へのこ)移設」も、国民への公約を裏切るものであるとともに、自民・公明政権が始めた動きを、そっくりそのまま引き継いだものではありませんか。そのうえ、日本の食料と農業、国民生活をアメリカに売り渡すTPP(環太平洋連携協定)参加への暴走です。野田政権は、いまや自民党以上に自民党的政権と言っても過言ではありません。総理、あなたには、「政権交代」に託した国民の願い、「自民党政治を変えてほしい」という願いを、ことごとく裏切っているという自覚と反省はありますか。

 なぜこうなったのか。それは、民主党政権が、“アメリカいいなり・財界中心”という旧来の政治の「二つの害悪」に縛られ、そこから抜け出すことができなかったからです。「政治を変えてほしい」という国民の願いにこたえようとすれば、この「二つの害悪」を断ち切る改革こそ必要です。私は、この立場から、国政の熱い焦点となっている問題について、総理の見解をただすものです。

大震災と原発問題――政府の姿勢の根本をただす

大震災への救援・復興――12万人を超える震災失業者に安定した働き場を

 まず東日本大震災と原発事故についてです。

 大震災から10カ月が経過し、被災地では復興への懸命の努力が続けられていますが、なお33万人を超える方々が仮設住宅などで厳しい避難生活を強いられています。仮設住宅での寒さ対策への万全の措置とともに、医療・介護の負担減免措置を3月以降も継続するなど、被災者の命と健康を守るために、あらゆる手だてをとることを強く求めます。

 復興にむけて、さまざまな課題が山積していますが、大震災で失業した12万人を超える方々に、安定した仕事と収入を保障することは、待ったなしです。失業給付の延長をはじめ、職を失った方々が生活に困窮することのないよう、緊急措置を講じることが必要です。同時に、被災した中小企業、自営業者の事業再開は、雇用確保の最大のカギとなっています。事業再開と雇用確保への一体的支援を、急いで、かつ深刻な実態にそくした規模ですすめなければなりません。

 国が行っている被災事業所へのグループ補助や、被災者を雇用した企業への賃金補助は、復興の力となっていますが、いずれもさまざまな条件や制限がつけられ、切り捨てられる事業者が多数にのぼっています。再建の意思のあるすべての事業所を支援する仕組みへの抜本的拡充を強く求めます。岩手県宮古市では、県と協力して、被災した店舗、工場などの修繕資金の2分の1を補助し、これが大きな力となって、被災した商工業者の8割が営業再開にふみだしています。こうした自治体の努力を、思い切って応援することこそ、国の責任ではありませんか。答弁を求めます。

原発事故の「収束宣言」を撤回し、除染・賠償に責任を――再稼働など論外

 政府の原発事故への対応にたいして、福島県から、政治的立場の違いを超えて、不信と怒りの声が噴き出しています。総理が行った原発事故の「収束宣言」にたいして、福島県議会は、全会一致で意見書を採択し、「避難者の不安・不信をかき立てる」として、撤回を求めています。福島県知事は、政府が、全面賠償に背を向け、県南、会津、南会津の市町村を賠償の対象外としたことに強く抗議し、県内全域・全県民を対象に賠償を行うことを求めています。政府が、最終処分に至る除染の全体方針を示さず、除染が遅々としてすすまないもとで、「国と事業者は除染に全面的責任をもて」「国の責任で18歳までの子どもの医療費を無料にせよ」という強い要求が寄せられています。県内の原子炉10基すべての廃炉を求める意見書も、福島県議会で全会一致で採択されています。総理は、「オール福島」のこれらの痛切な声にどうこたえるのか。しかと答弁を願いたい。

 総理が、「収束宣言」と一体に、原発再稼働に取り組むと表明したことも、きわめて重大です。政府は、ストレステスト(耐性試験)を再稼働の口実にしようとしていますが、「やらせ」を行った電力会社が実施し、「やらせ」を組織した保安院が審査したテストなるものを、いったい誰が信用しますか。原発事故の原因は多くが未解明であり、放射能被害がどこまで広がるかもわからない状態です。昨年9月の予算委員会で、私の質問にたいして総理は、再稼働について、「事故の究明がすべてのスタートの大前提」と答弁しました。この答弁にてらしても、再稼働など論外だと考えますがいかがですか。

「社会保障と税の一体改革」――三つの大問題と日本共産党の提案

大震災からの復興にどういう影響を及ぼすと認識しているのか

 政府が、「社会保障と税の一体改革」の名で、2015年までに消費税を10%に増税する方針を決めたことにたいして、国民のごうごうたる批判が広がっています。

 まず総理にただしたいのは、消費税の大増税が、大震災からの復興にどういう影響を及ぼすと認識しているのかということです。「大震災と原発事故で苦しんでいるさなかに、なぜ大増税か」。被災地のこうした怨嗟(えんさ)の声にどう答えますか。生活と生業(なりわい)の再建に立ち上がろうというときに、被災地も情け容赦なく襲う大増税を強行するなど、常軌を逸した冷酷な政治です。総理には胸の痛みさえないのですか。答弁を求めます。

消費税10%のどこが問題か――三つの大問題をただす

 総理は、消費税大増税について、「どの政権でも避けて通れない」というだけで、「なぜ大増税か、なぜ消費税か」について、まともな説明はいっさいしていません。私は、つぎの三つの大問題について、総理の見解を問うものです。

第一

無駄遣いを続けながら大増税

 第一は、無駄遣いを続けながらの大増税という問題です。なぜ「コンクリートから人へ」の目玉政策として、公約で中止を約束した八ツ場(やんば)ダム建設を復活するのか。なぜ過去に1兆円もの税金を投じながら事故続きで止まったままの「もんじゅ」を含め、原子力推進予算を4200億円も計上するのか。なぜ重大な欠陥が指摘され完成してもいない、1機100億円もの次期戦闘機を42機も買い入れようとするのか。なぜ年間320億円の政党助成金には、いっさい手をつけようとしないのか。そして、なぜ庶民には大増税を押しつけながら、富裕層と大企業には、年間1・7兆円もの新たな減税をばらまくのか。国民に納得のいく説明をしていただきたい。

第二

「一体改革」というが社会保障は切り捨てばかり

 第二は、「一体改革」といいますが、社会保障で用意されているメニューは、切り捨てばかりではないかということです。年金では、まず総額2兆円におよぶ年金支給額の大幅削減をすすめ、つづいて支給開始年齢をさらに引き上げるとされており、高齢者にも現役世代にも大幅カットを押しつけようとしています。医療では、お年寄りを「姥(うば)捨て山」に追いやる後期高齢者医療制度を形だけ変えて温存し、2013年度には70歳から74歳までの医療費窓口負担の2割への引き上げをすすめようとしています。保育所探しを保護者の自己責任にするなど、保育への公的責任を投げ捨てる「子ども・子育て新システム」を導入しようとしています。これらは、民主党がかつてあれだけ批判していた自公政権時代の社会保障切り捨て路線の復活そのものではありませんか。

第三

国民生活に壊滅的打撃、経済も財政も共倒れ

 第三は、消費税10%への大増税が、国民生活にはかり知れない打撃を与え、経済も財政も共倒れになるという問題です。

 1997年の橋本内閣による消費税5%への増税など9兆円の負担増は、当時、回復しかけていた景気をどん底に突き落としたうえ、景気悪化による税収の落ち込みと、「景気対策」のための財政支出によって、国と地方の借金がわずか4年間で200兆円も膨らむという財政の大破たんも招きました。総理自身、野党時代の国会質疑で、9兆円負担増を、「もっとも愚かで、もっとも無意味で、破壊的な経済政策」と指弾していますから、この大失政の惨憺(さんたん)たる結果は十分承知しておられると思います。

 ところが、あなたがいま強行しようとしている消費税10%への大増税は、1997年の9兆円負担増と比べても、はるかに「破壊的な経済政策」であります。まず、今回の負担増の規模は、消費税増税だけでも13兆円、年金支給額の切り下げなどを含めると総額16兆円にものぼります。そして、今回の大増税は、日本経済の長期低迷と大不況のさなかの大増税です。サラリーマンの年間給与は、97年と比べて55万円も下がっています。「働く貧困層」といわれる年収200万円以下の勤労者は1000万人を超え、赤字に苦しむ中小企業の割合は73%にも達しています。

 世界経済危機のもとで、もはや外需頼みの経済成長は不可能です。そのときに経済再生の頼みの綱である家計、ただでさえ冷え込み続けている家計から、16兆円も奪い取って、どうして「経済成長」ができるというのですか。それは、日本経済をどん底に突き落とし、結局は、財政破たんもいっそうひどくする道ではありませんか。くわえて、複数の閣僚から「10%では足らない」という発言がされていますが、総理は、消費税率のさらなる引き上げが必要だと考えているのですか。答弁を求めます。

社会保障拡充と財政危機打開のために――三つの柱の政策の実行を提案する

 それではどうやって、社会保障拡充と、財政危機打開のための財源をつくりだすか。日本共産党は、つぎの三つの柱の政策を実行することを提案するものです。

 第一の柱は、無駄遣いの一掃と、富裕層・大企業優遇の不公平税制の見直しに、ただちに取り組むことです。浪費型の巨大開発、原発推進予算、米軍への「思いやり予算」をはじめとする軍事費、政党助成金など、無駄遣いに聖域なくメスを入れるべきです。株取引への特別減税をやめ、富裕層に応分の負担を求める税制改正を行うべきです。大企業への新たな減税を中止し、研究開発減税、連結納税制度など、特権的な優遇制度をやめるべきです。増税というなら、まず富裕層と大企業に応分の負担を――これが民主的な税金のあり方ではありませんか。

 第二の柱として、社会保障を抜本的に拡充するためには、それだけでは足りません。つぎの段階では、国民全体で支えることが必要になってきます。その場合も、所得の少ない人に重くのしかかる消費税という不公平税制ではなく、「応能負担」――負担能力に応じた負担の原則、累進課税の原則にたった税制改正によって財源を確保すべきであります。

 第三は、第一、第二の柱と同時並行で、国民の暮らしと権利を守る「ルールある経済社会」に前進することです。労働者派遣法の抜本改正をはじめ正社員が当たり前の社会をつくる、最低賃金を大幅に引き上げ「働く貧困層」をなくす、大企業と中小企業との公正な取引のルールづくりに取り組むべきです。それは、大企業にたまった260兆円にのぼる内部留保を社会に還流させ、国民の所得を増やし、家計を温め、内需主導の健全な経済成長をもたらすとともに、着実な税収増をもたらすでしょう。

 日本共産党は、暮らしも、経済も、財政も壊す消費税大増税に、断固として反対をつらぬくとともに、以上のべた税財政・経済の民主的改革に取り組むことを提案します。財界にいわれるままに、庶民の暮らしを踏みつけにする政治から、大企業・財界に、もうけにふさわしい社会的責任と負担を求める政治への大転換が、いまこそ必要であります。総理の見解を求めます。

アメリカいいなり政治を問う――二つの焦点について

TPP問題――交渉内容を秘匿する秘密交渉に日本は参加すべきではない

 つぎにTPP問題、普天間問題という、アメリカいいなり政治にかかわる二つの熱い焦点について質問します。

 私は、昨年11月の代表質問で、TPP参加がもたらすつぎの四つの大問題について、総理に見解を求めました。第一に、大震災からの復興への最大の妨げになるのではないか。第二に、TPP参加の条件である「関税ゼロ」と、政府が掲げる「食料自給率50%」がどうやって両立するのか。第三に、食料と農業だけでなく、「食の安全」「医療」「政府調達」など、国民の暮らしのあらゆる分野で、アメリカの対日要求がごり押しされるのではないか。第四に、「世界の成長を取り込む」といいますが、アメリカの対日輸出戦略に日本が取り込まれることになるのではないか。この四つの大問題に対して、総理は何一つまともに答弁ができませんでした。にもかかわらず、その直後のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議でTPP参加方針を表明した。私は、この暴挙に強く抗議するものであります。

 総理が、その時に、言い訳にしたのは、「情報収集と説明責任を果たし、十分な国民的議論を経た上で、TPPについての結論を得ていく」ということでした。ところがその後、この言明を根底から覆す重大な事実が発覚しました。

 ニュージーランド政府の公式発表によって、TPP交渉では、「交渉開始にあたって各国の提案や交渉文書を極秘扱いとする、これらの文書は協定発効後4年間秘匿される」という合意があることが、明らかにされたのです。

 TPPの交渉内容を秘密にする合意は、総理が約束した「情報収集と説明責任」も、「十分な国民的議論」も不可能にするものではありませんか。交渉国の国民に知らせないなどという驚くべき秘密交渉に、日本は参加すべきではありません。TPP交渉への参加表明は撤回すべきであります。総理の答弁を求めます。

普天間問題――環境アセス評価書の強行は、政府の正当性のなさを自ら示す

 米軍普天間基地問題でも、野田政権は、「辺野古移設」への暴走を続けています。

 年末に政府が行った行動は、言語道断の暴挙であります。

 新基地建設にむけた環境アセス評価書を、宅配便で送りつける。それが失敗すると、午前4時に沖縄防衛局長が、段ボール箱を守衛室に持ち込む。こういう卑劣なやり方そのものが、政府がやろうとしていることに正当性がないことを、自ら示すものではありませんか。総理に反省はないのですか。

 さらに、この環境アセス評価書は、環境に深刻な影響を与える垂直離着陸機オスプレイの配備を、提出の段階まで住民や自治体に知らせず、隠し通した、とんでもない欠陥アセスであります。環境学会や自然保護協会からも、「環境アセスの精神を踏みにじった史上最悪のアセス」と、きびしい批判がつきつけられていることに、総理はどう答えますか。

 私は、沖縄県民の総意を無視する「辺野古移設」の日米合意を白紙撤回し、普天間基地の無条件撤去を求めて米国と交渉することを、重ねて強く求めるものであります。

 TPP問題も、普天間問題も、昨年9月の日米首脳会談で、アメリカから「結果を出せ」といわれて始まった、やみくもな暴走です。こんな恥ずかしいアメリカいいなりの国でいいのか。この問題が問われています。総理、あなたには「アメリカいいなり」から抜け出す意思はないのですか。しかと答弁されたい。

 日本共産党は、日米安保条約を廃棄し、対等・平等・友好の日米関係への抜本的転換をはかることを強く求めるものであります。

衆院比例定数削減反対・民意が反映する抜本改革を――政党助成金を撤廃せよ

 最後に、議会制民主主義の根本にかかわる重大問題について質問します。

 民主党は、消費税増税を口実に、衆議院比例定数を80削減する法案を、この国会に提出するとしています。そこで総理の基本的認識をうかがいます。小選挙区制は、大政党有利に民意をゆがめるという害悪をもっているという認識を、総理はお持ちでしょうか。比例定数を半減すれば、小選挙区制のこの害悪はいよいよ極端なものとなります。民主党、自民党以外の中小の政党を支持する多様な民意をばっさり切り捨てる選挙制度が、民主主義と両立するとお考えでしょうか。

 日本共産党は、国民の多様な民意を切り捨てる比例定数削減に断固反対いたします。わが党は、民意をゆがめる小選挙区制を撤廃し、比例代表中心の選挙制度への抜本改革を提案するものです。同時に、議会制民主主義を守るために、比例定数削減反対・民意が反映する抜本改革で、党派を超えて力を合わせることを呼びかけるものであります。

 政治の特権にメスを入れるというなら、何よりも総額320億円、国会議員1人あたり年間4600万円の政党助成金にこそメスを入れるべきです。驚くべきことに民主党の収入の82・7%が政党助成金です。国民の税金に首までつかってぬくぬくとしている党の体質こそ、まず正すべきだと考えませんか。日本共産党は、憲法違反の政党助成金をただちに廃止することを強く求めるものであります。

民主党政権に国政を担う資格なし――衆議院を解散し、国民の審判を仰げ

 消費税増税、TPP参加、「辺野古移設」など、あらゆる分野で、国民への公約を裏切り、暮らし、平和、民主主義を壊す暴走を続ける民主党政権に、もはや国政を担う資格はありません。衆議院を解散し、国民の審判を仰ぐことを強く求めて、質問を終わります。



志位委員長代表質問への野田首相の答弁(要旨)

 日本共産党の志位和夫委員長が27日に行った代表質問に対する野田佳彦首相の答弁(要旨)は次の通り。

 【国民への公約について】昨年夏、マニフェストの中間検証を実施した。高校授業料無償化や農家戸別所得補償などが実現した。一方で、実現に至っていないものがあることも率直に認め国民に反省とおわびを申し上げた。

 民主党が前回総選挙時に国民に約束したことは、衆議院の任期中には消費税の引き上げは行わない、引き上げを行うさいには国民に信を問うということだ。現在の任期中において消費税率の引き上げは行わない。公約違反ではない。

 普天間代替施設の建設については、政権交代後、鳩山内閣のもとで県外移設を追求した後、米国との間で訓練移転の促進や環境配慮などを盛り込んだ合意に達した。

 【大震災対策】応急仮設住宅の寒さ対策は重要。窓の二重サッシ化、断熱材の追加、暖房器具の設置など、おおむね年末まで完了した。引き続き、被災者の生活負担を軽減できるよう取り組む。被災者の健康を守る観点から、福島原発事故による警戒区域等の住民の医療や介護の一部負担金の免除措置を最長1年間延長し、その他の地域でも、無職や高齢者の方が加入する国民健康保険、後期高齢者医療制度や介護保険の一部負担金の免除措置を一定期間継続する方針だ。

 特例として、210日分の延長をしてきた失業給付の期限が到来するなか、復旧・復興事業で生じる求人をハローワークで開拓・確保し、必要な求職者には個別対応、職業訓練など、きめ細かな就職支援を実施する。被災地の強みである農林漁業、水産加工業に対して、産業政策と一体となって安定的な長期雇用を創出するなど、被災地の雇用創造に全力を尽くす。

 中小企業等グループ補助金については、国費県費合わせて2064億円の支援を実施。2012年度予算案において500億円を計上し、引き続きしっかり事業を進める。

 【原発事故対応】東京電力福島第1原発については、専門家による緻密な検証作業を経て、原子炉が冷温停止状態に達したことを確認したことから、発電所の事故そのものは収束にいたったと判断し、「ステップ2」完了を宣言した。発電所のなかの事故そのものについては、一つの区切りがつき、周辺住民の方々が再び避難することはなくなったという意味で収束と申し上げた。警戒区域解除や避難指示区域見直しを検討する段階に移ってきている。できるだけ早期に避難者が帰郷できる環境を整える。

 他方、周辺地域の除染はじめ事故とのたたかいは終わっていない。発電所の安全維持に万全を期し、廃炉に至る最後の最後まで全力を挙げて取り組む。

 原子力損害賠償紛争審査会において、さまざまな要素を勘案・議論して、原子力事故との相当因果関係が住民に一律に認められる対象区域を指針で定めた。迅速な賠償のための目安を示すもので、対象区域外でも、個別具体的な事情に応じて、事故との相当因果関係が認められれば賠償の対象となりうることが指針にも明記されている。

 除染については、放射性物質汚染対象特措法に基づき、国が責任を持って迅速かつ着実に進める。12年度予算に盛り込んだ約4500億円を含め、今後とも十分な予算を確保し、福島県に福島環境再生事務所を開設し、本省等も含め400人規模の態勢を確立し、市町村ごとに丁寧に対応する。

 子どもの医療費無料化は、福島県知事などから要請を受け、政府部内で検討している。課題の多い問題でもある。

 福島県議会の廃炉を求める請願書については承知している。立地市町村も含めた地元の意見や経営状況等も総合的に勘案し、東京電力において適切に判断を行っていくべきものと考える。

 ストレステストは、事業者による評価結果を、保安院が国際原子力機関のレビューも受けつつ確認し、さらに原子力・安全委員会が確認する。原発の再稼働については、地元の理解や国民の信頼が得られているかどうかという点も含め、政治レベルでの総合的な判断を行う。

 【社会保障と税の一体改革】社会保障の充実安定化をはかり、若い世代を含めた国民の不安を解消し、将来に希望をもてる社会を取り戻すための、どの内閣であっても先送りできない課題。消費税率の引き上げにあたっては、低所得者等にも十分配慮する。

 八ツ場ダムについては、国交相が事業継続との判断を行ったものであり、今後官房長官裁定をふまえ適切に対処する。「もんじゅ」については維持管理に最低限必要な経費を計上している。わが国の防空体制に欠落が生じないよう次期戦闘機であるF35を着実に整備する必要がある。

 一体改革は社会保障の機能強化を確実に実施し、社会保障全体の持続可能性の確保をはかることにより、全世代を通じた国民生活の安心を確保するもの。全体では最大3・8兆円程度の充実を行う一方、最大1・2兆円程度の重点化効率化も行い、あわせて2・7兆円程度の機能強化を行う。

 【比例定数削減、政党助成金】改革実施には誰よりも政治家自身が身を切る姿勢が不可欠。各党協議会において与野党が議論し、早急に結論をえることを強く期待する。比例定数削減が民意を切り捨てる、政党助成金が憲法違反であるとのご指摘は、日本共産党の主張として承るが、そのような認識に立ってはいない。政党助成金のあり方は各党各会派でご議論いただきたい。

 【経済成長と消費税増税】人口構造の急速な高齢化、社会経済状況の変化、欧州の政府債務問題に見られるグローバルな市場の動向を踏まえれば、社会保障の充実、安定化を図ることは、先送りできない課題。一体改革を実施することは将来の不安を取り除き、人々が安心して消費や経済活動を行う基礎を築くものだ。

 なお、15年度以降については、素案において今回の改革に引き続き、少子高齢化の状況、財政の状況、経済の状況を踏まえ、次の改革を実施するとされている。新成長戦略、日本再生の基本戦略等を実施し、力強い経済成長を実現するとともに、歳出・歳入両面から最大限の努力を行っていく必要がある。

 【無駄づかいの一掃、富裕層・大企業優遇の不公平税制の見直し、社会保障の財源確保にかかる税制】無駄削減は、これまでも事業仕分け等を通じ、最大限取り組んできた。11年度予算でも提言型政策仕分け等を予算に適切に反映させるとともに、公務部門において徹底した無駄を排除することとしている。今後とも無駄削減に全力で取り組み、真に必要な分野で予算を確保する。

 社会保障財源となる税収は、高い財源調達力を有し、経済の動向や人口構成の変化に左右されにくく安定していることが求められる。高齢化が進むなかで勤労世代など特定の者への負担が集中しないものであることが必要だ。消費税はこれらの特徴を有することから、高齢化社会における社会保障の安定財源としてふさわしいと考える。

 今回の税制抜本改革では、所得税について、特に高い所得階層に一定の負担増を求めることにより、その累進性を高めるとともに、資産課税についても相続税の基礎控除の見直し等を行い、税制全般としての再分配機能の回復を図ることとしている。

 【労働者派遣法改正案、最低賃金、大企業、中小企業間の取引ルール】労働者の生活を安定させ、中小企業の活力を高めることは、分厚い中間層を復活させ、日本経済を再生させるために重要だ。そのため派遣労働者を保護するための労働者派遣法改正案の早期成立を目指す。最低賃金については新成長戦略で掲げた目標の実現にむけて、雇用、経済の影響にも配慮し、労使関係者との調整を丁寧に行いながら、その引き上げに取り組んでいく。大企業による中小企業に対する違法な行為を排除するため、引き続き独占禁止法や下請け法の厳正な執行に取り組んでいく。

 【消費税及び大企業・財界の税負担】社会保障制度は現在でも全体として給付に見合う負担を確保できていない。その機能を維持し、制度の持続可能性を確保するためには、受益も負担も特定の世代に過度に偏ることなく、将来世代に負担を先送りすることのない仕組みをつくらなければならない。そのために、消費税率を引き上げることとしている。なお、11年度税制改正における法人実効税率の引き下げについては、わが国企業の国際競争力強化等を通じて雇用や国内投資の拡大を図る観点から実施するものだ。

 【TPP交渉における文書や情報の取り扱いに関して】ニュージーランド外務貿易省のホームページにTPP交渉中のテキストおよび交渉の過程で交換されるほかの文書を秘密扱いとする旨の記述が掲載されていることは、承知をしている。

 一般に、外交交渉で交渉相手国が非公開として提供する文書については、当該国の意向を尊重することは、当然であると考える。実際、この記述においても、これは通常の交渉の慣行に沿った扱いであるとされている。その一方で、TPP交渉参加国政府は一貫して、TPP交渉に関する透明性の向上にともに尽力してきている旨、記載をされているところだ。

 いずれにせよ、わが国は協議を通じてえられた情報については、出せるものはきちんと出していくとの考えのもと、適切な情報提供や説明にしっかりと努め、十分な国民的な議論をへたうえで、あくまで国益の視点に立って、TPPについての結論を得ていく。

 【普天間基地「移設」の環境影響評価書】昨年末、評価書の提出に伴う混乱をできる限り避けるため、やむを得ず課業時間外に沖縄県庁に搬入することとした。また、同評価書にはMV22オスプレイについて適切に反映されており、関係法令等に基づき、適切に対応しているものと考えている。

 【普天間問題、TPP協定交渉などの日米関係】普天間飛行場移設は、日米両政府間で同飛行場の危険性を早期に除去するため、日米合意を着実に実施していくことを確認している。在日米軍再編に関する現在の日米合意は、在沖縄海兵隊のグアム移転や、嘉手納以南の土地の返還も含み、全体として沖縄の負担軽減につながると考えている。引き続き沖縄のみなさまの理解を得るべく努力していく。TPPは、あくまで国益の視点に立って、結論を得ていくこととしており、在日米軍の再編の問題も含めて、アメリカの言いなりとの指摘は当たらない。

 【解散・総選挙】野田内閣の使命は、大震災復興、原発事故とのたたかい、経済再生、社会保障・税一体改革であり、なんとしても行政改革、政治改革の推進と合わせてやり抜く決意だ。政策判断の是非は、次の選挙で国民に判断をいただくべきものであり、やり抜くべきことをやり抜いた上で判断を仰ぎたい。