2011年10月8日(土)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長は7日、首相官邸で野田佳彦首相と会談し、「大震災・原発災害にあたっての提言(第3次)」を手渡し、要請しました。政府から藤村修官房長官、日本共産党から市田忠義書記局長が同席しました。
「提言」は、「1、財源問題の二つの提案」、「2、働く場の確保」、「3、住まいの再建」、「4、医療、福祉、教育の再生」、「5、原発災害の除染と賠償」の五つの章からなっています。(第3次提言全文)
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首相との会談で、志位氏は、今後の復興のあり方の基本姿勢として、「選別と切り捨ての『復興』ではなく、すべての被災者の生活と生(なり)業(わい)を支援し、地域社会全体が元気になる復興にすることを基本にすえるべきだ」と強調。「二重ローン」問題、医療再建問題、放射能除染と原発賠償問題などを例に、「不当な『線引き』をして、被災者・被害者を切り捨てるやり方をとってはならない。被災地の全体を視野に入れ、すべての被災者を支援するという姿勢が何より大切だ」と強調し、「ぜひ『提言』の内容の全体を政府の施策に生かしてほしい」とのべました。
首相は、「われわれが気づいていないこともあると思うので、『提言』のなかで取り入れられるものは、ぜひ協議していきたい。できるだけ多くの現場の声をふまえたものにしていきたい」と答えました。
この問題にかかわって、志位氏は除染問題で、環境省が年間追加被(ひ)曝(ばく)5ミリシーベルト未満は財政支援しないという方針を出し、抗議を受けて撤回したことをあげ、「二度とやるべきではない」と指摘。首相は、「間違ったメッセージを送った。申し訳ないと思っている」とのべました。
志位氏は、「提言」の冒頭に掲げた復興財源について、「必要とされる財源の規模はあらかじめ予想できない巨額なものとなる。従来の古い政治の枠組みを大本から見直し、大胆に財源を確保するという姿勢が大切だ」とのべるとともに、「一般の復興財源と、原発災害対策の財源は、性格を異にする問題であり、それぞれについての方策が必要だ」と強調し、つぎの提案をおこないました。
――地震・津波災害からの一般の復興の財源としては、(1)不要不急の公共事業、米軍への「思いやり予算」など米軍再編経費、政党助成金などを中止する、(2)法人税減税と証券優遇税制の延長をやめる。後者だけで10年間で17兆円の財源を確保できる。
――原発災害対策の財源としては、電力業界は「使用済み核燃料再処理等引当金」をはじめ約19兆円もの積み立てを行うとしているが、この積立金を国が一括して管理する基金に移し、「原発賠償・除染・廃炉基金」を創設し、財源として活用する。電力業界だけでなく、原発ビジネスで大もうけしてきた「原発利益共同体」に属する大企業にも「基金」への拠出を求める。
首相は、「ご指摘の原発関係のお金(積立金)については、今後、エネルギー政策全般を見直すなかで洗い出し、洗い出したお金は、可能な限りそちらの方(賠償と除染)に使っていく」とのべ、「基金」の提案を検討する立場を示しました。
志位氏は、法人税減税、とくに証券優遇税制について、「首相は、『景気のため』というが、到底説明のつかない話だ。中止の決断をすべきだ」と迫りました。首相は、「意見としてはわかるが、各方面からの要望もあって延長した」と答えました。
志位氏は、TPP(環太平洋連携協定)について、「参加となれば、被災地の農林水産業に壊滅的打撃を与える。JAの方々をはじめ、強い批判の声があがっている」と強調。参加の断念を決断するよう求めました。
首相は、「政府内と党内で議論の場をつくってきたので、そのなかでこれから議論していきたい。党内にもいろいろな意見がある」とのべるにとどまりました。
最後に、首相は、「今後もこうした協議をお願いしたい」とのべるとともに、「1票の格差是正のために各党協議をお願いしたい」とのべました。
志位氏は、「国会での議論が何より大切だが、これからも党首会談で提起や協議をしていきたい」と応ずるとともに、「1票の格差の是正とそのための協議は必要だが、わが党は比例定数削減は絶対反対であり、それをからめることは容認できない」と表明。首相は、「協議の眼目は1票の格差是正にある」とのべました。
さらに、志位氏は、「(民自公の)3党協議ですべて決めてしまって、それを国会におしつけるやり方は、民主主義と相いれないものであり、やめるべきだ」と求めたのに対し、首相は「3党で何でも決めていくという話ではありません」とのべました。
1 財源問題の二つの提案―復興財源と、原発災害対策の財源をどう確保するか
2 働く場の確保―再建の意思のあるすべての事業者・企業を対象に直接支援を
3 住まいの再建―政治の責任で、被災者に“住まいの安心”を
4 医療、福祉、教育の再生―子どもも高齢者もみんなが暮らし続けられる地域社会に
5 原発災害から命と健康、暮らしを守る―除染と賠償に国の責任を果たせ