2011年9月28日(水)「しんぶん赤旗」
「国と東電に加害者だという認識があるのか」―。衆院予算委員会で27日、基本的質疑に立った日本共産党の志位和夫委員長。福島原発事故の被害者の叫びを突きつけ、除染と全面賠償、原発再稼働問題で、国が責任を果たすよう迫りました。
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放射能汚染から国民と子どもたちの健康と命をどう守るのか―。志位氏は、自治体まかせの政府の姿勢を厳しくただしました。
福島原発の事故で放出された放射性物質は、セシウム137なら広島型原爆の168倍。志位氏は、群馬大学の早川由紀夫教授が作成した放射能汚染の地図(左図)を示し、汚染が北は岩手県から南は神奈川県にまで及んでいることを示しました。
ところが、福島県内に迫る高い数値が検出されている千葉県東葛地区6市ですら、政府から除染方針の説明さえされていません。志位氏の具体例をあげた追及で、政府は「要請があれば伝える」(細野豪志原発担当相)という姿勢だったことが明らかになり、中井洽予算委員長も「大至急、自治体に知らせてください」と発言しました。
そのうえで、志位氏は、除染の最大の障害となっている二つの問題を追及。一つが、放射能を帯びた土などの「仮置き場」が決まらないことです。福島県川俣町の古川道郎町長が、“仮置きの期限が明確でないために仮置き場がなかなか決まらず、側溝の土砂の除去などがすすまない”と話していたことを紹介。「最終処分の方法と場所を、専門家の知見も総結集して住民合意のもとに国として責任をもって具体化すべきだ」と提案し次のように迫りました。
志位 仮置きの期限を明示すると約束すべきだ。
首相 システムの後ろ(最終処分)を決めながら、(仮置き場の期限を)明示できるよう努めたい。
もう一つの障害が除染費用の問題です。
志位氏は、福島県二本松市では、汚染した土壌を山積みするさい、遮水シートではなく、ブルーシートで代用していることを指摘。「庭付きの家で本格的な除染をすると100万円。よほどの財政支援がないと個人宅の除染は難しい」との担当者の話も紹介し、次のように提起しました。
志位 除染費用は国が責任をもって全面的に支払う。その上で東電にすべての賠償責任を負わせるべきだ。
首相 全面的というか最終的には国が責任をもって除染を行う。
志位 全面的と言うのを渋るのが問題だ。結局、自治体まかせになっている。
志位氏がこう述べると、野党席からも「そうだ」の声が相次ぎました。
志位氏は、除染の体制についても提案。環境省の除染の委員会に専門家として加わっているのは、原発を推進してきた日本原子力研究開発機構の関係者だけだと指摘。現に各大学の研究者が除染に取り組んでいると述べ、日本の英知を結集した体制をつくるよう迫りました。
首相は、「広く国内でこの問題に関心を持ち貢献しようとする人たちの力を結集すべきだと思う」と答えました。
被害者から憤りの声がふき上がっている原子力災害の損害賠償問題。志位氏は、被害者の声をつきつけ、速やかな全面賠償を求めました。
東電の個人向けの損害賠償請求書類は記入方法の説明書だけで156ページ。専門用語を理解して計算し、領収書など膨大な書類を添付するなど大変な作業です。
志位氏は、「分厚い用紙に答えなければ補償しない高飛車な態度」と批判する双葉町長の声を紹介し、「あまりに心ないやり方だ」と批判。仮払いでも膨大な資料の提出を求められ、「税務署の調査よりも厳しい」と訴える福島県のモモ農家の訴えを紹介し、こうただしました。
志位 東電は加害者だという自覚があるのか。
西沢俊夫東電社長 加害者意識は十分ある。
志位 ならば事故は人災との認識か。
西沢社長 国の事故調査委員会、私どもの立証委員会を開いている。その結果を踏まえて対応する。
あくまで「人災」と認めない西沢社長。志位氏は「人災との自覚がないことが被害者への心ない態度に出ている」と批判。被害者が生活や営業の資金に困らないよう、3カ月ごとの賠償支払いを改めるよう要求すると、西沢社長は「なるべく早く支払えるようにする」「個別にきちんと対応する」と答弁。枝野幸男経産相も、「概算払いとか、最大限柔軟に対応するよう指示した」と述べました。
東電が被害者に冷たいのはなぜか―。志位氏はさらに、こう追及しました。
志位 少しでも賠償額を減らそうという意図があるからだ。
枝野幸男経産相 少しでも賠償額を少なくできないかと受け取られてもやむをえない。事故は政府と東京電力の人災。その責任を踏まえて誠意ある対応をしていかなくてはならない。
「人災」と認めざるを得なかった枝野氏。しかし、志位氏が、福島県原子力損害対策協議会が「事故がなければ生じることのなかった損害について、…すべて賠償すること」と要望書を出していることを紹介し、全面賠償に応えるよう要求すると、枝野氏は「相当因果関係にある損害はすべて賠償する」と答えるにとどまりました。
志位氏は、政府の原子力損害紛争審査会の中間指針では、わざわざ全面賠償を否定していることを指摘し、見直すよう要求。しかし、中川正春文科相は中間指針の見直しに背を向ける態度に終始しました。
志位氏は「政府が全面賠償という立場にたっていないところに根本的問題がある」と強調。賠償を渋る東電の消極姿勢を改めさせるためにも「全面賠償の立場に立つべきだ」と述べました。
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定期検査などで停止中の原発の再稼働について志位委員長は、「安全性を確保しながら」すすめるという野田首相の姿勢を批判し、「二つの大きな問題点」を浮き彫りにしました。
第一に事故原因の検証、究明がまったく途上だということです。
志位氏は、東電が提出した福島第1原発の通常事故時の「運転操作手順書」がほとんどが黒塗りで、過酷事故発生時の同手順書も、表紙と目次の計3枚だけで、同様にほとんど黒塗りで内容はまったく読み取れないと指摘しました。
さらに、東電が津波による電源喪失が事故原因だったと言い張っていることについて、政府が国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書では、地震による原子炉の損傷は詳細が依然不明で、「更なる調査が必要」だと認めていると指摘しました。
志位 地震による原子力プラント破壊の検証、解明ぬきに再稼働などとんでもない。
野田 (政府の)報告書を見ると、地震の影響はまだ不明という評価になっている。早急に事故の究明、徹底調査を行うことがすべてのスタートの大前提になる。
志位氏は、「大前提というなら、究明ぬきに再稼働はありえない」と主張しました。
第二の問題は、「安全性の確保」をだれが担うのかです。野田首相は「事業者(電力会社)が行ったテストを原子力安全・保安院が評価し、さらにその妥当性を原子力安全委員会が確認」すると答弁しました。
“黒塗り資料”を出す電力会社、シンポジウムなどで賛成質問の「やらせ」を組織していた保安院、放射性物質拡散予測データを事故後約2週間も公表しなかった「情報隠し」の安全委員会―。志位氏は、この「3人組」が行うテストや「評価」「安全確認」など、いずれも「国民の理解は絶対に得られない」と批判しました。
志位氏は、「事故原因も究明されず、まともな規制機関もないままでの原発再稼働など論外だ」と指摘。重大事故で放射性物質が放出されたら、完全に抑える手段がないなど、他に類のない「異質な危険」がある原発を社会的に許容していいのかが問われていると述べ、「『原発ゼロの日本』を目指す政治的決断を」と迫りました。
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