2011年9月16日(金)「しんぶん赤旗」

志位委員長の代表質問 衆院本会議


 日本共産党の志位和夫委員長が、15日の衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。


写真

(写真)代表質問に立つ志位和夫委員長=15 日、衆院本会議

台風12号による豪雨災害からの復旧、全国的な防災の総点検を

 私は、日本共産党を代表して、野田総理に質問いたします。

 冒頭、台風12号による記録的豪雨がもたらした大災害によって、犠牲になった方々への深い哀悼とともに、被災者の方々に心からのお見舞いを申し上げます。

 大量の土砂によるせき止め湖の決壊など二次被害の防止に万全をつくすとともに、激甚災害指定を行い、被災者の生活再建への支援、自治体への財政支援を強化することを、強く求めます。

 また、台風・豪雨災害から人命を最優先で守り抜くために、避難体制の抜本的強化など、全国的な防災の総点検を行うことを提案します。総理の答弁を求めます。

東日本大震災からの復旧・復興について――政府の基本姿勢を問う

 東日本大震災から半年がたちました。被災地では、被災者のみなさんの懸命の努力で復興への息吹もおこっています。しかし、多くの被災者が、不自由な避難生活を余儀なくされ、先がみえない不安と苦しみのもとにおかれています。

 大震災からの半年間、政府の対応はあまりに遅く不十分だといわなければなりません。復興に逆行する一連の問題点もうかびあがってきました。私は、いくつかの角度から大震災にたいする政府の基本姿勢を問うものです。

被災者の生活と生業再建のための公的支援――国は責任を果たしているか

 第一は、被災者の生活と生業(なりわい)の再建の問題です。

 一人ひとりの被災者が、破壊された生活と生業の基盤を回復し、自分の力で再出発できるように公的支援を行うことこそ、復興にあたっての国の最大の責任です。政府はその責任を果たしてきたといえるでしょうか。被災地ではさまざまな問題が山積みですが、二つの問題にしぼってうかがいたい。

 一つは、被災した事業者が再出発するための直接支援の問題です。

 帝国データバンクの調査によると、岩手、宮城、福島の沿岸部の市町村の中で、とくに被害の大きい地域に本社がある5004社のうち、2498社が営業不能状態となっています。多くの漁業者、農業者も事業再開にはほど遠い状況です。放置するならば大量廃業、大量失業の危険が迫っています。7万人を超えるといわれる震災失業者の失業手当が10月下旬から切れ始めます。多数の失業者が、職を求めて地元を離れざるをえなくなることへの強い懸念の声があがっています。このままでは地域から人がいなくなり、地域社会を復興する土台そのものが崩壊してしまいます。

 復興のためには、事業再開のための従来の枠をこえた個々の事業者への直接支援が、文字通り待ったなしの緊急課題です。総理にその認識はありますか。

 商工業者にとっても、漁業者・農業者にとっても、事業再開の最大の足かせになっているのが「二重ローン」の問題です。被災地がその解消を強く求め、わが党も債務の凍結・減免のための具体的提案を示すなかで、政府も県ごとに「産業復興機構」をつくり、公的支援を行うと発表しました。しかしこの「機構」はいまだに設立さえしていません。その原因は、被災事業者を選別して、支援は再生の見込みがあると判断された事業者だけ、地域金融機関からの債権買い取りはできるだけ安くという国の姿勢にあります。

 この姿勢をあらため、政府が国の方針として、事業再開の意思がある被災事業者はすべて支援の対象にする、そのために必要な資金は国が責任をもって手当てする――このことを明確に示し、「機構」をただちにスタートさせるべきです。総理の答弁を求めます。

 いま一つは、被災した医療機関の再建です。

 被災3県では、104の病院・診療所が全壊、936の病院・診療所が一部損壊という大被害を受けました。しかし、震災から半年たっても、復旧は大幅に遅れ、入院機能の喪失、勤務医の転出、診療所の廃業が大問題になっています。被災医療機関――とくに民間病院・診療所にたいする国の支援があまりに貧弱で、復旧が“医療機関まかせ”となっているという批判が、医師会や保険医協会など多数の医療関係者から寄せられています。総理はこの声をどう受け止めますか。

 これまでの姿勢をあらため、公立病院への支援の拡充をはかるとともに、民間病院・診療所への支援制度を新たに創設し、すべての医療機関の復旧に国が責任を負うという姿勢を明確にすべきです。「選択と集中」の名で、病院の統廃合をすすめ、医療提供体制を縮小する従来の政策は抜本的に転換すべきです。答弁を求めます。

大震災に便乗した財界・大企業の身勝手を許すのか

 第二は、大震災に便乗した財界・大企業の身勝手を許していいのかという問題です。

 大企業が自由勝手に沿岸漁業に参入できるようにする「水産特区構想」を、国と宮城県が押し付けようとしていることに対して、漁業協同組合をはじめ被災地から激しい批判の声があがっています。目先の利益第一の企業に漁協と同格の漁業権を与えたら、漁業資源の適切な管理が損なわれ、浜の荒廃を招きます。何よりも、浜の復興の主人公は漁業者のみなさんであり、漁協が一体になって反対している方針を押し付けて、どうして復興ができますか。漁業者のみなさんが、「海がある限り海で生きる」という必死の思いで頑張っているとき、国がやるべきは、生産・加工・流通一体で水産業のインフラ(基盤)を復旧するために、本腰を入れた支援に乗り出すことではないですか。「水産特区」の押し付けはやめ、こうした支援こそ抜本的に強化すべきだと考えますが、いかがですか。

 いま一つ、ただしたいのはTPP(環太平洋連携協定)への態度です。日本経団連は「大震災を乗り越えるためにもTPP参加を急げ」と号令をかけています。しかし、TPP参加による関税撤廃は、日本の米の90%を破壊するなど農業に壊滅的な打撃を与えるだけではありません。ワカメ、コンブ、サケ・マスなど水産業にも壊滅的な被害が及びます。被災地の地域経済を支える第1次産業を土台から破壊して、どうして復興ができますか。

 総理は、TPP参加が、被災地の復興に重大な障害をつくるという認識をお持ちでしょうか。TPP参加は、食料自給率向上と両立しえないという認識をお持ちでしょうか。もしもそうした認識があるなら、TPP参加をきっぱり断念することを明言すべきです。

復興財源についての基本姿勢を問う

 第三は、復興財源の問題です。

 総理は、復興財源の一部を臨時増税で賄うとの方針を示しています。報道によれば、「法人税・所得税の臨時増税を行う」が、法人税については5%の減税をしたうえで、その減税分の一部を一時的に「増税」するとされています。結局これでは、大企業の負担増は一円もなく、所得税増税――サラリーマンと自営業者にだけ増税を求めるという話になるではありませんか。日本経団連は、「(法人税の)純増税は絶対に容認できない」としていますが、こんな身勝手を受け入れるつもりですか。大企業に復興のための新たな負担を求める意思があるのかどうか、明確な答弁を求めます。

 日本共産党は、第一に、復興財源というなら、まず何よりも、法人税減税と証券優遇税制の延長――大企業と大資産家への減税のばらまきを中止する、不要不急の大型公共事業の中止、原発の建設・推進予算の削除、政党助成金の廃止など、歳入・歳出の見直しの一部を充てるべきだと主張しています。

 第二に、当座の復興資金の調達については、257兆円という空前の規模に膨らんでいる大企業の内部留保を復興に役立てるために、通常の国債とは別建てで、市場に出さない「震災復興国債」を発行し、大企業に引き受けを要請することを提案しています。わが党の提案についての総理の見解をうかがいます。

原発災害――命と暮らしを守る緊急対策と、「原発ゼロの日本」への政治決断を

「原発安全神話」が引き起こした「人災」――この反省にたってこそ

 つぎに原発災害について質問します。原発事故は、いまだ収束の見通しがたたず、放射能汚染の被害は日々拡大し、10万人もの人々に先の見えない避難生活を強いています。

 まず総理にうかがいたいのは、この大事故を引き起こした責任をどう自覚しているかということです。

 政府は、IAEA(国際原子力機関)が各国に過酷事故対策をとることを勧告していたにもかかわらず、「日本では過酷事故は起こり得ない」として何の対策もとってきませんでした。日本共産党が国会質疑で、福島原発について、大地震と津波による全電源喪失の危険性を具体的に警告し対策を求めたにもかかわらず、何の対策もとってきませんでした。

 総理、あなたには、民主党政権も含めた歴代政権が、「原発安全神話」にどっぷりとつかって、とるべき対策をとってこなかったという認識と反省はありますか。原発事故は、歴代政権の原子力政策が引き起こした「人災」であるとはっきり認めるべきであります。そうしてこそ、今後の対応や方策も真剣で道理に立ったものになります。明確な答弁を求めます。

放射能汚染の測定と除染――国の総力をかたむけ一大事業としてとりくむ

 原発事故によって、大量かつ広範囲に広がった放射能汚染から、国民、わけても子どもたちの命と健康を守ることは、日本社会の大問題です。

 福島原発から放出された放射性物質の総量は、「広島型原爆の20個分」という莫大(ばくだい)な量に達しています。これだけの規模で広がった放射性物質を除染し、適切な方法で処理し、封じ込めるという事業は、人類がこれまでにとりくんだことのない一大事業であり、その自覚に立った構えが求められます。総理は、どのような構えで除染にとりくむのか、その自覚と覚悟をまずうかがいます。

 最新の科学的知見によれば、放射能による健康被害には、「これ以下の被曝(ひばく)なら安全」という、いわゆる「しきい値」は存在しないといわれており、放射能汚染にたいしては、「被曝は少なければ少ないほどよい」という大原則に立った対策が求められます。政府が8月にまとめた除染方針のような、年間20ミリシーベルトを超えたら国が直接除染するといった受け身の姿勢では、国民の命と健康を守ることはできません。この姿勢をあらため、能動的・積極的な放射能汚染対策を打ち立てるべきではありませんか。

 私は、その立場から、四つの具体的対策に政府が責任をもってとりくむことを求めます。

 第一は、放射能汚染が疑われるすべての食品を迅速に検査し、放射線量を測定する体制をすみやかにつくることです。

 第二は、妊婦と子どもを守るための「緊急除染」です。保育園、幼稚園、学校、通学路、公園、病院などを中心に線量を測定し、高線量のホットスポットを迅速に除染することです。そのための専門家の配置を国が責任をもって行うことです。

 第三は、詳細な放射能汚染地図をつくり、放射能で汚染された地域の危険を最小にする「恒久的除染」にとりくむことです。除染には住民の理解と協力が不可欠です。除染計画は住民の納得と合意で決め、実施と財政的な手当ては国が全面的に支援すべきです。

 第四は、科学者、専門家などの知恵と力を総結集し、放射能汚染の測定と除染を推進する強力で特別な体制――「放射能測定・除染推進センター」をつくることです。

 以上のべた具体的対策に政府がただちにとりくみ、日本の命運がかかった一大事業として放射能汚染対策に本腰を入れてのぞむことを強く求めます。総理の見解をうかがいます。

原発災害の賠償問題――全面賠償を大原則とすることを明確にせよ

 原発災害の賠償問題も待ったなしの緊急課題です。

 8月、政府は、賠償に関する「中間指針」を発表しました。しかし、福島県知事を会長とする「福島県原子力損害対策協議会」は、「中間指針」は「福島県の被害を十分に反映したものとはなっていない」とし、「事故によって福島県民が被った様々な損害は、すべて賠償されることが大原則」と訴えています。この声をどう受け止めますか。

 損害賠償は、その範囲を恣意(しい)的に限定するのでなく、全面賠償――「原発事故がなければ生じることのなかった損害について、被害者が求めるものはすべて賠償すること」を大原則にすることを明確にすべきではありませんか。

 賠償責任と負担は、東京電力に第一義的に求めることはもとより、電力業界、原発メーカー、大手ゼネコン、鉄鋼・セメントメーカー、大銀行など、原発で大もうけをしてきた「原発利益共同体」に責任と負担を求めるべきです。総理の見解を問うものです。

「原発ゼロの日本」への政治的決断を求める

 原発事故は、原発に依存したエネルギー政策の根本からの見直しを迫っています。

 総理は、定期検査中の原発の再稼働について、「安全性を確保しながら」すすめるとしています。しかし、事故の収束もできず、事故防止策の前提となる事故原因の調査さえ途上ではありませんか。これでどうして「安全性の確保」ができるというのですか。原子力の規制機関とされてきた原子力安全・保安院は、「やらせ」まで行っていたことが明らかになり、規制機関失格の烙印(らくいん)がおされました。規制機関なし、まともな対策なしの再稼働など論外だと考えますがいかがですか。

 一方で、総理は、「原発の新設は困難」とのべています。それならばうかがいます。建設中の2基の原発、建設準備中の12基の原発について、政府として中止を求める意思はありますか。破たんしたプルトニウム循環サイクルから撤退し、青森県六ケ所村の「再処理施設」の閉鎖を求める意思はありますか。自分の国では危なくて使えないものを他国に押し付ける原発輸出政策は中止すべきではありませんか。

 多くの国民はいま、原発事故のなかに、他の事故にはみられない「異質の恐ろしさ」をまのあたりにしています。すなわち、ひとたび重大事故が発生し、放射性物質が外部に放出されたら、それを完全に抑える手段は存在せず、被害は空間的にどこまでも広がる危険があり、時間的にも将来にわたって危害をおよぼす危険があり、地域社会の存続すらも危うくします。このような事故は、他の事故にはみられない、原発事故だけに特有の「異質の危険」だと考えますが、総理の認識をうかがいたい。

 私たちは、こうした「異質の危険」は、いまの原発の技術が、本質的に未完成で危険であることに起因するものであると考えます。いま開発されているどんな型の原子炉も、発電の過程で莫大な「死の灰」を生み出します。しかし人類がこの「死の灰」を閉じ込めておく保障をもっていないことは、スリーマイル、チェルノブイリ、フクシマと3度にわたって経験したことではありませんか。さらに、「核のゴミ」を、その危険がなくなる100万年という単位で、安全に処分する方法も人類はもっていません。総理は、いまの原発の技術が、本質的に未完成で危険なものであるという認識をお持ちでしょうか。

 安全な原発などありえません。ひとたび重大事故が起きれば、とりかえしのつかない事態を引き起こす原発を、世界有数の地震津波国・日本において、社会的に許容していいのかが問われています。

 私は、総理に、原発からすみやかに撤退し「原発ゼロの日本」をめざす政治的決断を行うとともに、期限を設定して原発をなくし、同時並行で自然エネルギーの急速な普及を進めるプログラムをつくることを強く求めます。明確な答弁を求めます。

「税と社会保障の一体改革」――消費税を10%に上げ、社会保障は悪くする

 総理は、「税と社会保障の一体改革」の名で、2010年代半ばまでに消費税率を10%まで引き上げる法案を、来年3月までに国会に提出するとしています。

 しかし「一体改革」といいますが、この「改革」で社会保障は良くなるのでしょうか。政府が6月に決定した方針では、医療では、現行の医療費の3割負担に加えて外来受診のたびに定額負担を上乗せする、年金では、支給開始年齢を68歳ないし70歳まで引き上げるなど、社会保障切り捨てのオンパレードではありませんか。その一方で、国民にあれだけ約束した「後期高齢者医療制度の廃止」の公約はまったく影も形もないではありませんか。消費税を10%に上げて、社会保障を悪くする――これが政府の「一体改革」の正体ではないですか。総理の答弁を求めます。

 総理は、日本社会で「中間層の厚み」が損なわれ、格差が拡大してきたことを問題にしています。しかし、所得の少ない人に重くのしかかる消費税増税は、格差の拡大においうちをかけ、中間層をますます貧困に落とし込みます。総理にその自覚はないのですか。貧困と格差を本気で問題にするなら、消費税増税は中止し、「応能負担」――負担能力におうじた負担という原則に立って、税制と社会保障のあり方を土台から再構築することこそ必要だと考えますが、いかがですか。答弁を求めます。

沖縄・普天間基地の問題――解決のために向き合うべきは米国政府

 最後に米軍基地と日本外交の問題です。

 総理は、沖縄・普天間基地の問題について、「辺野古移設」を推進するとのべました。しかし、総理は、本気で「県内移設」が可能だと考えているのですか。あなたの目には、沖縄で「県内移設反対」が党派を超えた島ぐるみの揺るがぬ意思となっているという現実が見えないのですか。米国議会でもレビン上院軍事委員長などの有力議員が、「辺野古移設」は「非現実的、実行不可能」とのべています。米議会の中からも「辺野古移設」を疑問視する声があがっているのに、総理は何の疑問も感じないのですか。

 玄葉外相が、「辺野古移設」について、「踏まれても蹴られても誠心誠意、沖縄の皆さんに向き合っていく」とのべたことが、県民の怒りをよびおこしています。琉球新報は「踏みつけているのは誰か」と題する社説で、「これはいわば加害者が被害者であるかのごとく装う、明らかな主客転倒発言だ」と批判しています。「県内移設反対」の沖縄県民の声を無視し、危険きわまる最新鋭輸送機オスプレイの配備を押し付けようとしている日米両政府こそ、「県民を踏みつけにしてきた張本人ではないか」と批判しています。総理は、沖縄のこの声にどうこたえますか。

 野田内閣が、向き合うべきは沖縄県民ではなく米国政府です。普天間基地の無条件撤去を求めて、米国政府と本腰の交渉をおこなうことを強く求めて、質問を終わります。