2010年6月15日(火)「しんぶん赤旗」

志位委員長の代表質問 衆院本会議

菅新政権の姿勢浮き彫り


 菅新内閣はどういう姿勢で出発しようとしているのか―。日本共産党の志位和夫委員長が14日に衆院本会議で行った代表質問では、米軍普天間基地、経済・財政、社会保障など、平和と国民のくらしにかかわる問題で、菅直人首相の姿勢が鮮明になりました。


普天間問題 

どうなった沖縄県民への「約束」

写真

(写真)代表質問をする志位和夫委員長=14日、衆院本会議

 沖縄・米軍普天間基地問題で志位氏は、菅首相が民主党代表代行時の2006年6月、「沖縄に海兵隊がいるかいないかは、日本にとっての抑止力とあまり関係がないことなのです」と明言していたことを示し、「なぜ4年前に否定していた『海兵隊は抑止力』という立場にたつことになったのか」と迫りました。

 ところが菅首相は「いろいろな発言をしていたことは否定しない」としつつ、「現時点において総理として考え取り組むスタンスとして、沖縄の海兵隊の抑止力は極めて重要」などと述べ、アメリカいいなりに自身の過去の発言も投げ捨てる姿勢をとりました。

 志位氏が、日米合意について、「沖縄県民の合意を得ることができると本気で考えているのか」とただしたのに対し、菅首相は、“合意を得る”との答弁はできず、「厳しい声があることは理解している」「日米合意を踏まえる」と答弁しました。

 志位氏は、「沖縄のこの怒りは決して一過性のものではない」と強調し、苦難の歴史をじゅんじゅんと説きました。

 1955年の米兵による6歳少女の暴行・殺害、59年の児童11人を含む17人が死亡した小学校への米軍機墜落、95年の米兵による少女暴行、04年の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落―。

 「県民なら忘れることのできない、共通して心に刻まれた悲劇だ。長年の基地の重圧、悲劇の累積が、抑えようもなく噴出している」。志位氏はこう告発しました。

 志位氏は、自身が訪米し米政府に、「解決の道は無条件撤去しかない」と伝えたことを紹介。「県民の声を米国にありのままに伝えることが問題解決の出発点ではないか」として、日米合意の白紙撤回、普天間基地の無条件撤去にむけた米国との本腰交渉を強く要求しました。

 菅首相は、「日米合意を踏まえ、沖縄の負担軽減に尽力する」と述べるだけで、米国と交渉する姿勢はまったく見せませんでした。

経済と財政 

財界の身勝手につき従うのか

 「財政再建のツケは、すべて国民が払え、大企業は1円も出さない、もっと税金をまけろ―これはあまりに身勝手だと思わないか」

 志位氏は、菅首相が唱える「強い財政」に関して、経団連が「消費税を一刻も早く引き上げ(る)」ことを求める一方で、法人税の引き下げを求めた「経団連 成長戦略 2010」について認識をただしました。

 菅首相は「各方面のご意見に耳を傾けながら、必要な財源を国民でどのように分担していくかという議論をおこなう」として、財界の意見を聞くが、財源は国民で分担するという意向を示しました。

 志位氏は大企業減税の穴埋めに消費税増税をすることについて、「財政再建にも、社会保障財源にも役立たず、庶民の暮らしを破壊し、景気を破壊し、日本経済の危機をいっそう深刻にするものだ」として「断固として反対する」と表明しました。

 菅首相がかかげる「強い経済」について志位氏は、民主党政権下の今年3月期決算で大企業が軒並み黒字決算を計上し、「V字回復」を達成した一方で、「失業、倒産、賃下げはますます深刻だ」と強調。大企業のもうけを優先すれば、その利益がいずれは国民の暮らしにまわり、経済も成長するという経済政策の破たんは明らかだと力説しました。

 「大企業を応援する経済政策から、国民生活を応援する経済政策への大本からの転換が必要だ。総理にその意思はあるか」と正面から迫る志位氏に対し、菅首相は「経済社会が抱える課題の解決をあらたな需要や雇用創出のきっかけとして、これを成長につなげる」と繰り返すだけで、大企業応援からの転換には触れませんでした。

 志位氏は、労働分野では「雇用は正社員が当たり前」の社会をつくることを主張し、中小企業の分野では、「町工場は日本の宝」として「家賃・機械のリース代など固定費の直接補助に踏み出すべきだ」と強く求めました。

社会保障 

後期医療廃止先送り窓口負担も軽減せず

 志位氏は、菅首相のいう「強い社会保障」が、社会保障の立て直しという意味ならば、自公政治の社会保障費削減路線の「傷跡」を治すのが第一の仕事だと指摘し、「大きな傷跡」である後期高齢者医療制度と医療費の病院窓口3割負担の問題をただしましたが、菅首相は後ろ向きの答弁に終始しました。

 民主党政権が公約していた「廃止」を先送りした後期高齢者医療制度。志位氏は、菅首相の所信表明演説では一言も触れられなかったこと、「新制度」として「うば捨て山」の“入山年齢”を75歳から65歳まで引き下げる案が検討されていることを批判し、制度の即時廃止と75歳以上の医療費無料化を求めました。

 菅首相は、「制度廃止は4年間の任期のなかで」と改めて先延ばしを表明。75歳以上の医療費については「無理のない負担は必要だ」と拒否しました。

 医療費の病院窓口3割負担について、志位氏は、これが導入された2003年に菅首相が民主党代表を務めており、「3割負担撤回法案」を日本共産党とともに提出したこと、同年11月の総選挙マニフェストで「受診抑制を解消し、早期治療を促進するためにも自己負担は2割に引き戻す」と明記していたことを指摘。「この公約を実行する意思はないのか」と迫りました。

 菅首相は「国民皆保険維持のためにある程度の窓口負担は必要だ。2割に引き下げる公約は現在はしていない」と背を向けました。