2010年2月10日(水)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長が8日の衆院予算委員会でおこなった基本的質疑の内容を紹介します。
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志位和夫委員長 日本共産党を代表して、鳩山総理に質問いたします。
経済危機のもとで、国民の暮らしの実態はきわめて深刻です。昨年の失業率は5・1%と悪化幅は過去最大となり、有効求人倍率も0・47と史上最悪となりました。日本経済の土台を支える中小企業の年間倒産件数は1万3000件を超え、倒産によって毎月1万人を超える雇用が奪われ続けています。
経済危機から国民の暮らしを守るために政治はいま何をなすべきか。今日はこの問題にしぼって総理の見解をただしたいと思います。
志位 重大なことは、日本の経済危機が、発達した資本主義国のなかでも、とくに深刻であることです。OECD(経済協力開発機構)の経済見通しによりますと、日本の2009年実質経済成長率はマイナス5・3%と、先進7カ国のうちで落ち込みがもっとも激しくなっております。なぜ日本経済の落ち込みが、これほどまでに激しいのか。私は、その根本には日本経済の抱える異常なゆがみがあると思います。
志位 (パネル(1))これは2008年秋のリーマン・ショック前までの10年間で、先進7カ国、G7におけるGDP(国内総生産)と雇用者報酬の推移がどうなったかを示すグラフです。左は、GDPの伸び率ですが、他の6カ国が10年間でGDPを3割から7割増やしているのに対して、日本の伸びはわずか0・4%です。右は、雇用者報酬、すなわち働く人の所得の伸び率ですが、これも他の6カ国が2割から7割増やしているのに対して、一人日本だけが5・2%減らしています。
総理に認識をうかがいたいと思います。この10年間で自公政権は「構造改革」、「成長戦略」の掛け声で、「強い企業をもっと強くする、そうすれば企業の利益がいずれは国民の暮らしにまわり、経済も成長する」と言い続けてきました。たしかにこの時期、大企業は空前の利益をあげ続けた。しかし国民の所得は落ち込み、経済全体も成長どころか、日本はG7のなかでも、もっとも成長力のない国になってしまっています。
総理、自公政権が「成長戦略」の掛け声ですすめてきた、「強い企業をもっと強くすれば、暮らしが良くなり、経済も成長する」、この旧来の経済政策からの転換が求められていると考えますが、いかがでしょう。
菅直人財務相 まず先に一言だけ申し上げますが、基本的な認識は共通部分があります。私はよく、第一の道に加えて第二の道、つまりはサプライサイド(供給側)を効率化すればよくなるんだと言って、結果において格差が拡大し、雇用がかなり厳しく失われてきた。そういう意味では、その部分がかなり大きかったと思います。わが政権ではそういった意味では需要の拡大、とくに雇用と需要が同時に拡大するような介護とか医療とかにも目を向けて、今の失敗した10年、あるいは20年を大きく変えていきたい。これが基本的な方針です。
志位 総理の答弁を求めます。
鳩山由紀夫首相 いま菅大臣からも話がありましたが、いわゆる「弱肉強食」型の市場主義万能というか、市場経済に身をゆだねすぎた、その政治も大きな原因があったと思います。結果として何が起きたか、国際競争のなかに生き残らなければならないということで、たいへん大企業も努力をしていくなかで、結果としていわゆる派遣労働者のような方々をたくさん生んだということになり、いわゆる格差が拡大をした。結果としていまそこに書いてありますように、一人一人の雇用された方々の給与はむしろ下がってしまうというような状況が一方で生まれたと考えておりまして、私どもはそのように経済のなかで、人間が歯車のように使われている時代ではなくて、むしろ人間のための経済というものに大転換させていくことが必要だと認識しています。
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志位 こういうやり方からは大転換が必要だという点では、共有する方向だと思います。大企業が空前の利益をあげながら、暮らしも経済も豊かにならないのはなぜか。
(パネル(2))ご覧ください。これはこの10年間の大企業の経常利益と内部留保、雇用者報酬の推移を示すものです。10年間の推移を見ますと、大企業の経常利益――緑の折れ線グラフは、15兆円から32兆円に大きく増えています。その一方、労働者の雇用者報酬――赤の折れ線グラフは、279兆円から262兆円に大きく落ち込んでいます。
大企業の利益はどこにいったのか。巨額の内部留保となって蓄積されました。大企業の内部留保――青の棒グラフは、この10年で142兆円から229兆円に急膨張しました。大企業が利益をあげても、少しも国民の暮らしに回らず、過剰な内部留保となって蓄積される。このシステムが家計と内需を衰退させ、日本経済の成長力を損なっている。そうした脆弱(ぜいじゃく)な経済に、世界経済危機がどーんと襲いかかってきた結果、日本の経済危機は世界で最も深刻なものになったのだと思います。
イギリスの新聞「フィナンシャル・タイムズ」は、1月13日付で、「日本の困難な数十年から何を学べるか」と題する論評を掲載しています。そこでは、「なぜ日本経済が世界規模のショックにこれほどまでに脆弱だったのか」と問いかけ、「企業が過剰な内部留保」を蓄積したことを、日本経済の「基本的な構造問題」の一つとして指摘しています。そして、「内需主導の成長のために最も重要な要件は企業貯蓄の大規模な削減であり、新政権は、企業の行動を変化させる政策を実行すべきだ」とのべています。私は、一つの見識だと思います。
総理にうかがいたい。国民がつくった富を、大企業のみが独り占めにする。日本経済をまともにしようと思ったら、このシステムを改める必要があると思いますが、いかがでしょう。端的にお答えください。
首相 たしかにグラフを拝見させていただきますと、内部留保がたいへんに増えているという実態があると思います。それをどうするかというのも、一つの判断はありうるのではないかと思います。一方で、内部留保そのものに関する話であれば、その規模は、事業活動の結果にくわえて、リーマン・ショックとかいろいろな大きな変化に対しても生き残っていくためにも必要だと考えておりますし、また、設備投資の見通しなど企業の経営判断が本来重要だと思っておりますので、政府としてそれをどのように判断するかはたいへん難しい話ではないかなと思っております。
また、内部留保に関しては、企業の持続的な発展、あるいはそれを通した雇用の安定に資さなければなりませんし、取引先企業との関係の維持のためにも必要だと思っておりまして、そういう幅広いもののために活用されるものだということもあるものですから、これを政府として一概に、どのような政策によって取り崩させればよいかという判断は、なかなか難しいのではないかと考えます。
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志位 富が一握りの大企業のみに集中する。この仕組みが日本経済を弱くしているのは明々白々の事実ですから、これは転換が必要だと思います。
大企業が利益をあげても、少しも国民の暮らしに回らず、大企業の内部留保となって蓄積される。このシステムがどうやってできたかといえば、労働法制の規制緩和による正社員の非正規社員への置き換え、リストラと賃下げ、下請単価の買いたたきをはじめとして中小企業いじめのうえにつくられたと思います。このシステムを変えようとすれば、つぎの二つの改革が必要だと思います。
第一は、大企業に「安定した雇用」を保障する社会的責任を果たさせる、とくに“非正規社員から正社員への雇用転換”をすすめるルールをつくることです。
第二は、大企業と中小企業との公正な取引のルールをつくることです。
この二つの改革をすすめ、大企業の巨額の内部留保と利益を国民に還元させる。そうしてこそ日本経済の健全な発展の道が開かれる。これが私たちの提案です。この立場から以下、具体的にただしていきたいと思います。
志位 まず第一に、“非正規社員から正社員への雇用転換”という問題についてです。
総理は、施政方針演説で、「労働をコストや効率で、あるいは生産過程の歯車としか捉(とら)えず、日本の高い技術力の伝承をも損ないかねない派遣労働を抜本的に見直し、いわゆる登録型派遣や製造業への派遣を原則禁止します」とのべました。
そこで、労働者派遣法の改正について、二つの問題にしぼってただしたいと思います。
志位 一つは、「製造業への派遣の原則禁止」についてであります。
製造業への派遣が深刻な問題点を持っているということは、一昨年以来の「派遣切り」の引き金を引き、社会的に指弾を浴びたのが、トヨタやパナソニックなど、世界に名だたる自動車や電機の巨大企業であったこと、製造業で働く多くの派遣労働者が「職とともに住居も失う」という非人道的な状態に突き落とされていることなど、すでに事実をもって証明されています。
総理は、「製造業への派遣を原則禁止します」と言われました。これは、これまで派遣労働者をモノのように「使い捨て」にしてきた大企業製造業の工場で、これからはいっさい派遣労働者を使うことができなくなるようにさせるということなのでしょうか。お答えください。
長妻昭厚生労働相 規制緩和というものは一般的に必要なものだと思いますけれども、労働分野における規制緩和というのは一番慎重にすすめなければならない。前政権は、ぱっぱぱっぱといったら語弊がありますけれども、日雇い派遣まで野放図に認めて、これほどの現状を生み出したということで、我々はその反省に立って前政権ではできなかった派遣法の改正案を提出するということでございまして、いまのご質問でございますけれども、製造業における派遣といいますのは、1年を超える見込みのない派遣については基本的に禁止するということでございます。
志位 「1年を超える見込みのないものは禁止する」ということは、1年を超える雇用の見込みがある、あるいは、1年を超えて働いている、こういう場合は、短期契約の更新を続けている場合でも、これは「禁止の例外」とするんですか。
厚労相 これについては、おっしゃられるように、製造業、その現場の派遣というのが社会問題といってもいいほど大きな問題になったということにかんがみて、やはり1日、2日、1カ月、2カ月というんではなくて、少なくとも1年を超える見込みがあるというもの以外は禁止するということで取り組むわけでありまして、それだけではなくて、マージン率も派遣会社に公表させる。どれだけ利益を得ているのか。あるいは、違法な派遣があったと判断された時は、派遣先が直接雇用の申し込みをしなければならないということで、雇用者の利益を保護するということを考えております。
志位 1年を超える雇用の見込みがあれば「禁止の例外」だということをお認めになったと思います。
具体的にお聞きします。パナソニックが、兵庫県姫路市に新たに液晶パネル工場を立ち上げるということで労働者を募集しています。
現地にうかがって話を聞きますと、正社員の募集はゼロ。「オープニング・スタッフ」として募集している100名はすべて派遣社員です。「契約期間は3カ月、更新あり、最長3年」という条件で募集しています。こうした短期雇用が反復継続される派遣社員の場合、製造業への派遣は禁止されることになるのでしょうか。
厚労相 個別の案件にお答えできませんけれども、さきほどお答えしましたように、1年を超える雇用が確保される見込みがあるということが、今度の新しい法案の一つの骨子でありまして、この法案というのは我々が勝手につくった法案ではございませんで、労働側、使用者側、この両者がぎりぎりの中で、時には激しい言葉の応酬もありながら、我々政治主導で出した諮問について真摯(しんし)にぎりぎりの中でお答えいただいた結論だということについても、ご理解いただきたいと思います。
志位 結局ですね、1年を超える(雇用の)見込みがあれば「禁止の例外」ということになりますと、いまいったパナソニックのようなケースも「常用型派遣」ということになって、派遣法が改正されても使い続けられるということになるわけですよ。
志位 あなた方は「常用型なら雇用の安定性が高い」と、だからこれは「禁止の例外」にするんだというふうにいわれるんだけれども、どういう労働条件で働かされているのか。
同じパナソニックで滋賀県に草津工場があります。冷蔵庫や自動販売機を製造している大規模工場です。ここで長期に働いている「常用型派遣」、政府が「禁止の例外」にしようとしている派遣労働者の方々からも話を聞きました。
給料は、時給1050円の時給制でまったく上がらない。社会保険は本人が希望しなければ入れない。工場の生産計画に合わせて出勤日が決められ、月12日とか14日とかしか働けない月もある。時給制ですから、出勤日が減らされましたら、そのまま給料が下がるんですね。月20日間働いても給料は16万8000円、月14日間なら11万7600円、月12日ならば10万800円です。そこから月5万5千円の寮費――寮といっても6畳一間、隣の部屋の(人の)咳(せき)まで聞こえてくる薄っぺらい仕切りしかない寮ですが――寮費が引かれ、さらに電気代1万円、水道代2千円、ガス代5千円が差し引かれ、手元に残るのは2万円から9万円くらいです。
派遣先大企業の都合で、ただでさえ低い給料が、月によって5万円から、ひどい時は7万円下がる。これが「常用型派遣」の実態ですよ。こうした働かされ方のいったいどこが「雇用の安定性が高い」といえますか。こんなものを「(禁止の)例外」としていいんですか。
厚労相 志位委員もご存じなようにですね、前の政権では今回の派遣法の改正すらできないわけでありまして、かなり我々は労働側、そして使用者側がぎりぎりの中で判断いただくような、かなりの諮問をお願いして、それにぎりぎり答えていただいたという案でございます。
私どももいまお話しいただいた窮状を、鳩山総理と一緒に今年の元旦に公設の一時宿泊所にまいりました。ちょうどそこには、おととしの秋に製造業の「派遣切り」にあった方がたくさんおられました。本当に普通の若者です。これ人ごとじゃありません。前の日まで公園で寝泊まりされておられるということで、我々もそれについて本当に真摯に取り組みたいということで、まず今回こういう対策を出させていただいた。それで、いまおっしゃられたことは、派遣のみならず、たとえば直接雇用でもアルバイトで雇われている方についても、いま大変な状況でありまして、いまご指摘のことは、我々もすべての方が正社員になるということは理想ではありますけれども、その理想を法律ですぐに措置するということはできないわけで、一歩一歩理想に近づいていくということであります。
志位 一歩一歩理想に近づいていくということですけれども、さっき話したようなパナソニックみたいな例が、野放しにされることを問題にしているわけですよ。
もう一つ、具体的な例を示しましょう。キヤノンがカメラの組立工場として設立した子会社が大分にあります。私は一昨年の本委員会の質疑で、キヤノンで正社員から派遣社員への大規模な置き換えがおこなわれている実態を取り上げました。その後、キヤノン本社は派遣労働者をゼロにすると表明しましたが、子会社ではいまだに多数の派遣労働者を使っています。
大分の子会社でも数百人規模で派遣労働者を使っていましたが、キヤノンの生産調整を理由にして、昨年秋以降に採用された約100人の派遣労働者が、いま次々に解雇されています。時給わずか800円で、社会保険もなく働かされ、数カ月で解雇されていっています。解雇された派遣労働者が派遣会社との間で交わした雇用契約書を見せてもらいました。ここに写しがあります。「雇用期間」の欄には「期間の定めなし」、こう書いてありますよ。これも政府が「禁止の例外」としようとしている「常用型派遣」になるでしょう。しかし、派遣先企業がキヤノンの生産調整を理由として受け入れる派遣労働者の数を減らせば、派遣会社との間で「期間の定めのない」雇用契約を結んでいても、たちどころに解雇されている。これが実態なんですよ。「安定性」どころか、「安定性」のまったくないのが実態なんです。これがわかっているのか。
志位 (パネル(3))厚生労働省は、昨年5月1日、派遣先企業が派遣会社との派遣契約を中途解除した場合、派遣労働者の雇用がどうなったかを調査し、発表しています。これは、それを表にしたものです。調査の対象となった約3万6000人の派遣労働者の大多数は、製造業で働いていた人たちです。
派遣先大企業が、派遣会社との間の派遣契約を解除すれば、この表にありますように、政府が「禁止の例外」にしようとしている「常用型派遣」の場合でも76・7%もの労働者が解雇されています。「登録型派遣」の場合は解雇率75・8%ですから違いはありません。派遣先大企業が、派遣会社との間の契約を解除すれば、派遣労働者が(派遣会社との間で)「常用型派遣」の契約を結んでいても何の役にも立ちません。4人に3人以上の人たちがただちに職を失い、収入を失っている。「常用型派遣」ならば「雇用の安定性が高い」などという根拠はどこにもないはずです。これはいったい根拠がどこにあるんですか。
厚労相 個別の案件そのものにはお答えできませんが、一般論として、たとえば数カ月で製造業の派遣で解雇されたということでありまして、それについて今度の新しい法案では先ほど来申し上げておりますように、1年を超えるということでありますので、それから見て合理的な理由がない場合は、これは違法な派遣だと仮にみなされた場合はですね、今度は派遣先の事業主がですね、派遣の方に対して直接雇用を申し込まなければならない、申し込む義務が発生するということで直接雇用を実質的に保証すると。こういうような法案も入れさせていただいています。
いまおっしゃられたこの数字でございますけれども、たしかに解雇率というのはこのような数字でございますが、ただですね、この調査の時点というのはリーマン・ショック等々あり、これは正社員の方もふくめ、あるいはアルバイトの直接雇用の方もふくめたいへん厳しい状況であるというふうに考えておりまして、私どもとしてはもう日雇い派遣とか1カ月、2カ月の派遣とか、そういう製造業の派遣というのはもう基本的に禁止をするということで取り組んでいるところであります。
志位 聞いていることに答えてないですね。「常用型派遣」だったらどうして「雇用の安定性が高い」とあなた方は言うのかと聞いているわけですよ。
これは経済危機のときの数字だと言われました。しかし危機のときこそ雇用の安定を保障する仕組みが必要なんじゃないですか。そのために議論を始めているんじゃないですか。それじゃあ大臣に聞きたい。平時ならば「常用型(派遣)」は「雇用が安定する」ということを示すデータをあなたは持っているんですか。
厚労相 まあこのデータとしてですね、いま志位委員が示されたデータは解雇率だけでありますけれども、自己都合とかですね、解雇でない形で辞めた率でいうとですね、「登録型派遣」は91・1%、「常用型派遣」は87・2%ということになっておりまして、この「登録型派遣」というのはよくご存じと思いますけれども、派遣先の仕事がなくなれば即解雇されるというものであります。この「常用型派遣」というのは派遣先の仕事がなくなっても派遣元の会社が雇わなければいけない、1年を超える期間まではと、こういうようなものでありまして、ぜひですね、前政権ではできないぎりぎりの労使の中で合意ができた案ということでございまして、これをぜひご理解いただきたいと思います。
志位 結局、「常用型派遣」のほうが「安定する」というデータはないんですよ。「常用型」だったら派遣会社が常時雇用しているからなかなか切られないだろうというふうに言うけれど、派遣先企業から(契約を)解除されたらとたんに解雇されているのが実態なんですよ。
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志位 総理に問いたいと思います。「製造業の派遣を原則禁止にする」とあなたはおっしゃった。そう言いますけれど、「禁止の例外」として製造業への「常用型派遣」を残したらいったいどうなるか。
大企業はいままでどおり派遣労働者を使える。いままでどおりいらなくなったら「使い捨て」にできる。大企業の横暴勝手はなんらの制約も受けることはありません。
一方で、労働者はどうか。「常用型」といっても名ばかりで、「ワーキングプア」と呼ばれる低賃金から抜け出せない。いつクビにされるかという先の見えない不安定な状態からも一歩も抜け出すことはできません。
総理、これでは「製造業の派遣の原則禁止」じゃなくて「原則容認」じゃありませんか。これは見直すべきだと思います。総理いかがでしょう。総理、答えてください。
首相 さきほどから長妻議員、いえ大臣が、答弁申し上げておりますように、私ども、製造業のいわゆる派遣は原則禁止すると、これを公労使、とくに労使がぎりぎりの交渉の中で決めてきた、そこで1年というのをどのように判断するのかという議論はあると思いますが、常用、いわゆる常時雇用されるものの労働者派遣はやはりこれは(禁止の)例外をするということにしながら、しかしながら極力、いわゆる大企業のある意味での力関係の中で簡単に「派遣切り」されないように、すなわち解雇されないような状況というものを見守っていくということが大事であって、そのためにたとえば今日の議論などもたいへん私は参考になる話だと思っております。
むしろ志位委員からこのようなことをご指摘されることによって、大企業としても節度を持ってのぞむと私は理解されますし、そのような状況を我々としても作り上げていくことが大事じゃないでしょうか。大事なことは法案をしっかりと、まずはあげて、一歩二歩前進の状況を作り上げていくことが大事なんじゃないか、そのように私は考えます。
志位 ぎりぎりの公労使の合意だといわれますけれど、私は率直に言って財界のごり押しに屈したものだといわなければならないと思います。「原則禁止」と言われますけれど、製造業で働く派遣56万人のうち、「常用型」は63%ですよ。こういう方を「禁止の例外」にしてしまったら、これは「原則容認」になります。私たちは、例外なしの全面禁止に、製造業の場合は踏み切るべきだということを強く要求したいと思います。
志位 いま一つ、総理は、「登録型派遣の原則禁止」とも言われました。ところが労政審(労働政策審議会)の「答申」をみますと、「事務用機器操作業務」など、いわゆる「専門26業務」については「禁止の例外」としています。
「専門26業務」とは、派遣労働者399万人のうち100万人を占め、その多くは事務系の派遣労働者です。「専門業務」は、3年を超えたら直接雇用にしなければならないという派遣期間の制限がなく、いつまでも派遣のまま使い続けることができるとされています。
志位 26の「専門業務」なるものの中身が問題です。「専門26業務」で働く100万人のうち45万人は「事務用機器操作業務」です。厚生労働大臣、これを「専門業務」と決めたのはいつで、ここでいう「事務用機器」とはいったいどういうものですか。厚生労働省の「労働者派遣事業関係業務取扱要領」で「事務用機器」として例示されているものを答えていただきたい。
厚労相 「専門26業務」といういまご指摘の「事務用機器」というのが定められましたのが昭和60年の派遣法制定時でございます。その定めの中に書いてございますのは電子計算機、タイプライター、テレックス等ということでありますが、いまの時代はこれはもうそぐいませんので、いまの定義というのは、我々としては、オフィス用のコンピューターなどを用いてソフトウェア操作に関する専門的技術を活用して入力、集計、グラフ化等の作業を一体としておこなうと、こういう形でいま指導をさせていただいているところであります。
志位 オフィス用コンピューターというのは要するにパソコンのことでしょう。そのどこが「専門」ですか。これは1985年に定められたということです。1985年だったらそういうコンピューターは「専門業務」だったかもしれない。しかしいまやパソコンは普通に誰でも使っています。パソコンを使う仕事がすべて「専門業務」となれば、事務系の仕事はほとんど「専門業務」となってしまい、派遣への置き換えが天下御免になってしまうことになります。
志位 総理にうかがいたいんですが、「専門業務」なるものを抜け穴にして、直接雇用から派遣への大規模な置き換えが起こっています。NTT東日本―北海道は、ことし1月付で、それまで直接雇用にしていた契約社員全員に対して、同じグループの人材派遣会社への転籍を強要し、派遣社員に変えて働かせています。NTTは、派遣社員に変えた645人は「専門26業務」だ、だから派遣に置き換えても問題はないといっています。「専門業務」だからという名のもとに、ほんらい正社員にすべき契約社員をいっそう不安定な派遣労働者にするという逆の流れが起こっているわけであります。
総理は、労働者を、「生産過程の歯車としてしか捉えない派遣労働を……抜本的に見直す」と言われました。それならばこの「専門26業務」は抜本的に見直して、規制を強化する方向にかじを切るべきじゃありませんか。総理にうかがいます。
厚労相 この「専門26業務」については、私もですね、まあ、非常にゆるい定義だなあと、こういう感覚を持っておりまして、それで、さきほど申し上げました「事務用機器操作」につきましても、まったく無関係の業務を少しでもおこなっているケースは、これはもう認めない、あるいは付随的におこなう業務の割合が1割を超えているケースは認めないなど、実はこれから今日、通知を全国に出そうと考えておりまして、これは全国の労働局、あるいは社団法人日本人材派遣協会、社団法人経団連、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会に出させていただいて、この「26業務」の中には「ファイリング」というものもありますので、そういうものも本来の趣旨の定義、これを厳密に守るということを徹底をさせるということで、本日通知を出させていただくところです。
志位 「ゆるい定義」ということを大臣もお認めになったわけで、総理どうですか。
首相 いま志位委員とのやりとりをうかがいながら、やはり「26業務」、これは、このなかにそれなりのものはあると思いますが、あまりにも幅広く、「事務用機器操作」、パソコンは誰でも使えるような状況になっていると思います。果たしてこういうものをそのままにしておいてよいのかというのは、やはりしっかりと検討する必要があるのではないかと考えました。
志位 大事な答弁が得られました。検討するということですので、ぜひ規制強化の方向で検討をお願いしたいと思います。
労働者派遣法の抜本改正というなら、製造業派遣は全面禁止にする、「専門26業務」の抜本的な見直しをはかるなど、労働者保護法として真に実効あるものとし、その実施は先送りするのではなくて、3年、5年の先送りではなくて、速やかにおこなうべきだと考えます。それを第一歩にして、「雇用は正社員が当たり前」という社会をつくる。働く人の所得を増やす。そうしてこそ日本経済の健全な発展の道が開かれるということを強く主張しておきたいと思います。
志位 第二のテーマに移ります。大企業と中小零細企業との公正な取引のルールをつくることについてであります。
志位 中小企業は、雇用の7割を支え、付加価値の5割を生み出す、文字通りの「日本経済の主役」です。その中小企業がどういう状況に置かれているか。その一つを示すデータがここにあります。
(パネル(4))大企業と中小企業の製造業で働く従業員の賃金格差が、この10年間にどう推移したかをグラフにいたしました。大企業で働く従業員の賃金を100%とした場合に格差がどうなっているかの推移であります。全体の雇用者報酬が落ち込んでいるなかで、大企業と中小企業の格差が広がっていることが一目瞭然(りょうぜん)です。
緑の折れ線グラフ――従業員100人から499人の企業では、77・7%から72・9%に格差が広がっています。青の折れ線グラフ――従業員30人から99人の企業では、62・7%から59・7%にこれも格差が広がっています。赤の折れ線グラフ――従業員5人から29人の企業では、54・6%から50・5%へと、5割を割り込む直前まで格差が悪化しております。
総理に問いたい。こういった格差は是正されるべきだと考えますが、いかがでしょう。
首相 それぞれの企業によって企業の状況の差があると思っておりますが、基本的に格差というものはなくなる方向にすすまれるべきものだと、そのように思います。
志位 格差はなくす方向にすすむべきだという答弁でした。
格差を是正するためには、格差を広げてきた原因を明らかにする必要があると思います。私は、その原因の一つに、下請中業企業の下請単価が際限なく切り下げられ、社長さんの給料はもちろん、従業員の給料もまともに払えなくなっているという問題があると思います。
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志位 私たちは、この間、東京・大田区、愛知・豊田市、東大阪市、広島市の四つの地域で、自動車、電機の大企業を支える下請中小企業の経営者から聞き取りをおこないました。どこでも、「まともな単価では仕事がとれない」との痛切な訴えがよせられました。
総理に基本的認識をうかがいますので、お聞きください。
愛知県内の自動車関連の下請零細企業からは、こういう実態がのべられました。この企業は4次、ないし5次の下請で自動車のエンジンやシートをすえつける金属部品を溶接・加工しています。溶接する長さが部品単価を決める基準となっている。10年ほど前までは1センチ1円が相場でしたが、いまでは70銭、この10年で3割下がったといいます。一方、溶接に必要なガスや溶剤などの原材料費は1センチあたり35銭から40銭に上がったといいます。その結果、単価から原材料費をひいた加工賃として会社に残るお金は、1センチあたり65銭から30銭へと半分以下に下がった計算になります。
従業員の給料は加工賃から支払われるわけですから、それが半分以下に下がったら、とてもまともにやっていくことはできません。社長さんは、「3人の従業員と話し合って、雇用保険も、健康保険も、年金も払っていない。法律違反だとわかっているが、払ったら従業員が食べていけなくなる」と、率直に話してくれました。
日本を代表する自動車産業の土台を支えている下請中小企業の社長さんと従業員をここまで追い込むほど、単価の引き下げはすすんでいるのであります。
総理、こうした下請単価の水準は、公正・適正なものだとはとうてい考えられませんが、いかがでしょう。
首相 一般論として申し上げれば、親事業者と中小の零細事業者との間で、力関係のなかで、結果として賃金が非常に圧縮されてしまうというようなことがおこなわれているのではないかと思います。したがいまして、現実には「下請代金法」というものがあるわけですから、そういったものが厳格に施行されていかなきゃならないんだろうと思っておりますが、本来、立場の弱い、中小企業の方がたにしわ寄せがいかないようにするために取引対価の決定にあたっては、本来市場の動向などを考慮する必要があるわけでございますが、親事業者と下請との間で協議をして決定をされることが望ましいわけでありまして、その趣旨は下請中小企業の「振興法」3条に基づく「振興基準」に規定されている通りだと思っておりまして、ただ、必ずしもそれが厳格に守られているかどうかという問題があるものですから、中小零細企業への下請単価の一方的な切り下げなどということを防止する必要がある。
そのために、いま申し上げたような厳格な「下請代金法」の執行とか、「下請振興法」の執行基準の周知、こういったものが大事だと思っておりまして、いまご指摘のありましたことはたいへんある意味で、いまの厳しい中小企業の現実を言い当てていると思いますので、われわれとしても努力していかなければならない問題だと思っております。
志位 総理から「下請代金法」の厳格な執行ということを言われました。
そこで公正取引委員長に聞きたいと思います。
大企業などの親企業が優越的な地位を利用して、公正な取引をゆがめるものを防止し、是正することを目的に、定められた法律が「下請代金法」です。そのなかで親事業者が著しく低い下請代金を一方的に定める行為を「買いたたき」として禁止し、処罰の対象としています。2004年4月の改正「下請代金法」の施行以降、公正取引委員会が「買いたたき」として是正の勧告処分をおこなったのは、何件ですか。件数だけで結構です。
竹島一彦公正取引委員会委員長 下請法違反行為の類型は10ぐらいございますが、いまご指摘の「買いたたき」について平成16年の法改正以降、公取が勧告を出したのは1件でございます。
志位 「買いたたき」の是正勧告は1件ということでございました。もう1問聞きます。
この間、「派遣切り」とともに、いったん発注した仕事を一方的に打ち切る、いわゆる「下請切り」が大問題になっております。「下請代金法」では下請企業には責任がないのに、下請への仕事の発注を一方的に打ち切ったり、変更したりすることを法律違反として禁止しております。2004年4月以降、これにもとづいて是正の勧告処分をおこなった件数は何件ですか。
公正取引委員長 厳格な意味で一方的な契約解除といいますか、下請への発注打ち切りですが、これについて勧告したことはございません。ただ、いま前提がございまして、取引は基本的に自由でございます。その上で契約を更新するしないも自由でございます。そこにおっしゃったような打ち切りとか見直しとかいう、1回契約したものを一方的に自分の都合が悪いからといって下請事業者に不当なことを要求するといって初めて問題になるわけでございまして、それぞれがお互いよく協議をして定めていただくというのが、これがいまの基本的な枠組みになっていますので、そこはご理解いただきたいと思います。
志位 「下請切り」の是正はゼロだというお答えでした。それぞれ協議してやっていると言いますけど、一方的な発注の打ち切りというのが蔓延(まんえん)しているわけですよ。
もう1問聞きます。公正取引委員会は、親事業者と下請事業者の双方に下請取引に関する違法がないかどうかの書面調査をやっているとのことでありました。それでは平成20年度でおこなった下請企業に向けての書面調査票の発送数と回収率はどうなっていますか。
公正取引委員長 平成20年度におきます下請事業者向けの調査票の発送数は16万230通でございまして、回収率は8・2%。で、これは低いというふうに思われるかもしれませんが、19年度までは約30%ございました。ただ20年度に事務の効率化、ようするに問題がない企業は答えなくてもよろしいというふうに20年度から切り替えましたので、8・2%に下がっていますが、それまではそういうことを言わずに調査したところ、約30%の回収率でございました。
志位 8・2%ということでした。30%でも低いですよ。
総理、これが実態なんですね。これだけ「買いたたき」「下請切り」が一大社会問題になっているのに、この5年半で「買いたたき」として勧告処分を受けたのは1件、「下請切り」として勧告処分を受けたのは一つもない。「下請代金法」の規制がまったくといっていいほど機能しておりません。
志位 なぜそうなるか。公正取引委員会が、大企業・親事業者に対する調査・検査に入るのは、書面調査で違法の疑いがある場合、または下請事業者からの申し立てがあった場合だけになっているからです。しかし、下請が親事業者の違法を申し立てたり、書面調査で親事業者に不利なことを書くなどということは、よほどの覚悟がなければこれはできません。「書けば必ず特定され、仕事がなくなってしまう」と聞きました。書面調査票の回収率が8・2%というのは、下請がいかにモノ言えぬ立場に置かれているかを示していると思います。
総理にうかがいたい。ここは切り替える必要があるんじゃないでしょうか。書面調査だけに頼ったり、下請事業者からの申告を待って乗り出すというやり方は改めなければ、「下請代金法」を生かすことはできません。
大企業・親事業者に立ち入って、「下請代金法」に基づいた公正な取引がおこなわれているのかどうかを、受け身ではなく主導的に検査する、必要な抜き打ち検査もおこなう、などの態勢に抜本的に改めて、そのために下請検査官も抜本的に増員する、こういう態勢をしっかりとるべきだと、転換が必要だと思います。総理いかがでしょう。
直嶋正行経済産業相 下請検査官の検査態勢の質問がございましたのでお答えさせていただきます。現在、国家公務員の増員については、たいへん厳しい状況ですが、下請代金検査官の定員を平成21年度の66名から22年度は84名、18名増員することといたしました。検査官の検査能力を高めるために公正取引委員会と連携しながら過去の違反事例を題材とした実践的な研修をおこないまして、検査手法の改善も含め下請代金の検査態勢を強化してまいりたいと思っております。
志位 下請代金の検査官を若干増員したといいますけども、数十万の下請をみるにはとても足りませんよ。私が総理に聞いたのは、これまでの転換が必要じゃないかと。書面調査や申し立てを待っているんじゃなくて、主導的にどんどん調査に入る。こういう取り組みにする必要があるんじゃないかということを聞いたんです。どうでしょう。
首相 いま、志位委員からのご提案もありました。ただその前に法律がしっかりと執行されていないんじゃないかという部分もあると思います。従いまして、法の執行、たとえば下請代金支払遅延等防止法などというものがありますが、そういったものの執行態勢を強化をするということがまず求められているんじゃないか、そのように思います。
志位 執行態勢の強化ということを言われましたけど、ぜひこれまでのあり方を転換していただきたい。下からの申告待ちじゃなくて、あるいは書面調査だけじゃなくて、主導的に入る、そして断固として、これをなくすという立場に立っていただきたい。
世界に名だたる自動車、電機の巨大企業は、景気の良い時には、「乾いたタオルを絞る」というやり方で際限のない単価の引き下げを押し付けて、巨額の富を累積・蓄積しています。不況におちいったら、単価をいっそう押し下げながら、仕事そのものを一方的に打ち切って、犠牲を下請中小企業に転嫁するという横暴勝手をやっています。その結果、末端の下請では、まったく仕事がないか、利益などまったくでない単価で仕事をとるかという、“悪魔の二者択一”に追い込まれています。政治の責任で、大企業、親企業の無法を一掃し、公正な取引のルールをつくることが本当に求められているということを強く訴えたいと思います。
志位 下請中小企業にかかわってはもう一つ、「下請振興法」という法律があります。
この法律では、「経済産業大臣は、下請中小企業の振興を図るため下請事業者および親事業者のよるべき一般的な基準を定めなければならない」(第3条)とされ、具体的な「振興基準」が定められています。
(パネル(5))「振興基準」では、ここに書いてまいりましたけど、「取引対価」(取引単価)について、次のようなたいへん立派な基準を示しています。
「取引対価は、合理的な算定方式に基づき、下請中小企業の適正な利益を含み、労働時間短縮等労働条件の改善が可能となるよう、下請事業者及び親事業者が協議して決定するものとする」。
たいへん立派な基準がのべられているわけであります。
この「基準」で掲げた目標に照らして、実態はどうなっていると認識しておられるのでしょうか。さきほど示したように、下請を中心とした中小企業では、「労働条件の改善」どころか悪化がすすんでいるのが現実です。「振興基準」から現実がますます乖離(かいり)していっているのであります。中小企業庁は一定の調査をおこなっているようですが、「振興基準」で掲げた目標、すなわち「適正な利益」「労働条件の改善」「協議して決定」、こういう基本点に照らして、現実の実態がどうなっているという認識なのでしょうか。端的にお答えください。
経産相 私どもも調査をさせていただいてまして、たとえばさっき委員長が挙げられました「取引対価」の件で申し上げますと、一方的に親会社から決められるという答えが、20年度は実は10・9%ありました。ただ、これはたとえば5年前の16年度が、同様の答えが17・4%でした。したがって、まだ1割はさきほどご指摘のような実態があるということであります。ただ、この数字全体を見ますと、少しずつ改善の傾向をたどっておりますので、できるだけ個別の問題点を把握しながら、対処していきたいと思っております。
志位 改善の方向というのは、これは認識違いですよ。いま本当に深刻にずっとなってきています。
中小企業庁の(おこなっている)調査(内容)を読みましたけど、「労働条件の改善」、労働者の賃金の改善がどうなっているのかをなんにもつかんでいないですよ。やはり、こういうことも含めて、「(下請)振興法」では立派なことをうたっているわけですから、これを実際に厳正に執行するための総合的な施策を講ずる。そのために実態調査を徹底してやるということを強く求めたいと思います。
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志位 最後の問題です。そうした中小企業政策の抜本的な転換をはかることとあわせて、町工場を倒産・廃業の危機から守る緊急の施策を講じる必要があります。いま町工場は、リーマン・ショック以来の底が抜けたような仕事量の激減で、まったく仕事がないという状況がすでに15カ月も続き、経営努力も限界を超えております。
総理は、私が、(本会議の代表質問で)こういう町工場に対して工場の家賃や機械のリース代など固定費に対する直接補助に踏み出すべきだと言ったのに対して、「施策としては適当ではない」と本会議の答弁で言われました。
しかし実態を見ますと、たとえば東京・大田区には高度な技術を持った町工場が集積しているけれども、その半数近くは貸工場なんですよ。家賃が払えず機械ごと追い出されたり、機械のリース代が払えず機械を持っていかれた。こういう事態が次々と起こっているわけです。
中小企業で働く労働者の雇用を守るために雇用調整助成金という直接補助の制度があります。しかし、この制度で労働者の雇用を守っても、労働者が働く工場や機械がなくなってしまったら、景気が回復しても働く場がないということになります。
私は、町工場は「日本の宝」だと思います。この灯を消してはならない。ぜひ直接の「固定費補助」に踏み出すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
首相 直接の「固定費補助」はなかなか難しいということは申し上げました。ただ、いま志位委員長からお話がありましたように、町工場は「日本の宝」であることは間違いありません。この灯を消してはならない。そのように思っております。まずは景気を良くすることが大前提であろうかとは思いますが、中小企業に対するさまざまな資金繰りの対策など、万全を期していきながら、町工場の灯を消さないようにしてまいりたい。
志位 町工場は「日本の宝」だと、その灯を消してはならないとおっしゃいました。ぜひ「固定費補助」に踏み込んでいただきたいということを重ねて強く求めます。
志位 労働者を「使い捨て」、中小企業を「使い捨て」、多数の国民の犠牲のうえに一握りの大企業が巨額の内部留保をため込む。この道を続けては国民生活も日本経済も未来がなくなることは明らかです。
大企業に「安定した雇用」への責任を果たさせるルールをつくる、中小企業との公正な取引のルールをつくる、大企業の巨額の内部留保と利益を、国民に還元させる。これこそが最大の景気対策であるということを、私は訴えて、質問を終わります。