2009年2月21日(土)「しんぶん赤旗」

雇用・景気をどうするか――

いまこそ国会が仕事をするとき

CS放送「各党はいま」志位委員長が語る


 日本共産党の志位和夫委員長は、二十日放送のCS放送・朝日ニュースター番組「各党はいま」に出演し、朝日新聞の早野透編集委員の質問にこたえました。要旨を紹介します。


予算委員会質問のポイント――現行法でも「派遣切り」を止める道はある

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(写真)質問に答える志位和夫委員長

 早野 二月四日に衆院予算委員会で、志位さんは、具体的な会社での雇用の実態で次々と質問されていましたが、あれはどういうふうにデータが集まってきたのですか。

 志位 党本部にメールで告発が寄せられ、調査に行ったら大変なことが起きているということもありますし、日常的に職場でたたかってきて実態が分かったということもあります。

 早野 (雇用破壊の)こういう時代、共産党が駆け込み寺、頼りにされていると感じられるようなことをうかがいます。

 志位 いま雇用破壊は深刻です。まず「派遣切り」「期間工切り」から始まりましたが、正社員にもそれが及んで非常に深刻な事態になっています。この雇用破壊が景気全体を悪くする悪循環を引き起こしている。首を切られた方が、路頭に迷って助けをもとめてくるケースもありますし、これから切られそうだという方が、こんな不当なことはどうしてもやめさせてほしい、と相談にくるケースもあります。

 早野 労働組合を結成するケースもありますね。

 志位 労働組合を各地に立ち上げたり、労働組合に結集したり、若い方を含め立ち上がりつつあります。一つ一つはまだ少数でも、全国各地に起こって、一つの流れができつつある。大変未来がある動きだと思います。

 早野 (二月四日の衆院予算委員会の)質問のポイントをうかがわせてもらえますか。

 志位 私たちは、雇用の問題をめぐって三つの仕事が大事だと思っています。一つは、職を失った方々にたいする住居と生活と再就職の支援。二つ目は、これ以上の雇用破壊を止めること。三つ目は、労働者派遣法を抜本改正し、「使い捨て」の労働をやめさせることです。

 そのなかでも、この前の質問は、これ以上の雇用破壊を止めることに絞ったもので、とくに「派遣切り」といわれている事態を、どうやったら止められるのかということでやりました。現行法のもとでも、これを止める手だてはないものかと、とことんつきつめてみようと考えました。いろいろ調べましたら、大企業の製造業の場合、多くのケースが、派遣で四年、五年、六年と働いている方が切られている。

 早野 (派遣労働の期限は)たしか三年のはずでしたよね。

 志位 そうです。派遣というのはあくまで「臨時的・一時的」な仕事だから、三年を超えて使い続けると、これは違法になるのです。

 早野 ところが実際はもっとやっているのですね。そこにはどういうからくりがあるかという質問だったわけですね。

 志位 からくりを突き詰めていくと、実態は、例えば(派遣で)五年働いていた方も、最初の二年は偽装請負だったというような事態が明らかになったのです。偽装請負というのは違法な形の派遣労働です。実態は派遣労働です。ですから、「これ(偽装請負の期間)は派遣労働期間に、当然、通算されることになりますね」と政府に問いただしたら、国会答弁で初めて「通算される」と認めたのです。こうなってくると状況はガラっと変わってきます。

 早野 法律では三年を超えると企業は正社員にすべく申し入れなきゃいけない。

 志位 そういう直接雇用の申し込み義務が出てくるのです。とっくに期間制限を超えていて、申し込み義務を果たしていなければいけないはずなのに、果たさないで逆に首を切っているということになるのです。

 早野 政府としてそれを通算できるようにカウントする、と舛添(厚労相)さんも答弁された。そこがポイントですね。

 志位 そこがポイントです。

 早野 もうちょっと大きく扱ってなくちゃいけなかったな。新聞も。(笑い)

 志位 今からでも遅くはないですよ(笑い)。私たちが質問で取り上げた例ですが、パナソニック若狭というところで、三年十カ月も派遣で働かされた方が、首切りにあった。これは納得できないと労働局にいったら、「あなたの契約は前半は請負契約だった」という答えがかえってきました。「そんなはずがない。請負なら偽装請負のはずだから調査してください」、といったら、「調査できない」といわれ、本人が調査して資料を(労働局に)持っていったら偽装請負と認めたのです。そうしますと通算すると三年十カ月ですから、違法になっていたのですね。そこが明らかになったので、パナソニック若狭は「派遣切り」をいったんは通告してきたのですが、いまは撤回するという形になっているのです。止まるのです。こういう形で。

 早野 立派な方ですね。自分でそうやって突破していくのは。そうか、そういうことだったのですね。

 志位 現行法でも違法をやっているのは大企業の側ですから、直接雇用義務が出てくるのです。「首切り」やめろ、きちんと義務を果たせ、ということをいっていかないといけない。

内部留保増は国債や証券に――そのごく一部を売れば雇用を守れる

 早野 あの質問で勇気づけたわけですね。ただ、企業の対応ですが、いろいろ聞いてみると、(内部留保は)設備投資に回した、金庫にお金を積んでいるわけではない、こういう事態だから何が起きるか分からないから、というような話が伝わってくるのですが。

 志位 製造業の大企業の内部留保は、この十年間で、八十八兆円から百二十兆円に増えているのです。二ついいたいのですが、一つは、私たちは百二十兆円を全部使え、と言っているわけじゃない。たった1%を使っただけで四十万人の首切りはやらないですむのですよということです。ごくわずかですよ。

 早野 一・二兆円ですね。

 志位 もう一つは、内部留保は十年間で三十二兆円増えたんですが、調べてみましたら、固定設備投資はこの十年間に逆に減っているのです。設備投資に回っているわけではないのです。何が増えているかというと、国債と証券の保有です。

 早野 それだったら処分できるなあ。

 志位 そうです。だったら証券のごく一部を売れば資金が出てくるわけです。私たちは、工場や機械や土地や社屋を売れといっているわけじゃない。(笑い)

 早野 そういう現実性はあるということですね。

 志位 十分あります。トヨタの幹部と会談をおこなったとき、「どうして内部留保を使わないのですか。トヨタグループはこんなにもっているじゃないですか」といいましたら、「使えない」ということはいいませんでした。「経営上の判断としてそれはやりません」ということしかいいませんでした。

経済全体を考えても、雇用の維持が、健全な回復につながる

 早野 なるほど。ただ、派遣労働者の雇用を維持したとしても、企業の立場にあえてたつと、志位さんのおっしゃるのももっともだけど、働いてもらう場がないということもあるのではないかと思いますが。

 志位 これまでのいろいろな景気悪化、恐慌的な事態のもとでも、企業はこんなに簡単に首を切らなかったですね。雇用を維持することで、新しいビジネスをやっていこうということにつながっていくわけですね。

 早野 それはそうかもしれないですね。

 志位 「首切り」は一番安易で、縮小して当面の財務状況が良くなったとしても、新しいビジネスをする力がなくなっていくわけです。いま切ろうとしている派遣労働者の多くは、実際は正規労働者と同じように働いて、場合によっては正規労働者より長い時間働き、生産の中枢を担ってきた人々です。技術もあれば知識もある。

 早野 おっしゃるとおりです。

 志位 優秀な労働者ですよ。そういう人材を捨ててしまうのは、中長期でみたら、企業にとっても本当に大きな損失になってきます。苦しい時でも雇用を守る責任をきちんと果たすことこそ、企業にとっても先が出てくるということをいいたいのです。

 早野 企業のあり方を、ちゃんと原点にもどって考え直せということですね。雇用をなんとか維持していくと、いずれ需要も増えていく。切っちゃうとキヤノンのカメラもトヨタの車ももちろん買えないわけですからね。そこの悪循環というのはどうも資本主義の具合の悪いところだ。

 志位 いま企業ががんばって雇用を維持し、あるいは賃上げに思い切って踏み切っていくことが、国内の需要を活発にして、結局企業が、物を売る側が、国内で売れていくことになる。車も電気製品も売れてくるということになれば、復活の方向が見えてくると思うのですよ。これまで、あまりにひどい外需頼みだったから、日本の経済が一番落ち込んでいる。そういう時に内需まで壊してしまったら、いったいどこで物を売るのか。どこで車やカメラを売るのかということになるわけです。経済全体のことを考えても、企業が雇用を維持する、社会的責任を果たすということが、健全な回復・発展につながると思いますね。

 早野 おそらく心ある経済界の方は、実はそうなんだがなと思っている人たちも多いと思う。

雇用問題――財界・大企業のトップを国会に招致し、社会的責任をただす集中審議を

 早野 このような状況の中で、国会はどうするべきでしょうか。

 志位 私は国会が、いま仕事をしなければいけないときだと思うんですよ。この間、麻生(首相)さんの一連のいろいろな発言に加えて“酩酊(めいてい)大臣”が出てきて(笑い)、政権担当能力が根本からないという事態が現出しています。これをきちんと追及していくことは必要なんだけれども、あわせて国会として、少なくとも二つやるべきことがある。

 一つは、雇用の問題で、私も国会で提起しましたけれど、雇用破壊の先頭に立っているのは大企業です。その大企業のトップの経営者、日本経団連の会長、こういう方々を国会に参考人として招致して、集中審議をおこなって、大企業が果たすべき現下における社会的責任とは何なのかということを徹底して議論しようじゃないかと。

 早野 昔やりましたよ、それ。記憶があります。

 志位 一九七四年の石油ショックのとき、いわゆる悪徳商法というのが問題になって、商社の幹部などをずらりとよんで、成果をあげたんですよ。国会がやったんです。国政調査権を発動してやるべきです。よく私が質問をしますと、(政府側は)「個別企業のことは答えられない」というけれど、こんな「大企業擁護論」はないと思いますよ。悪いことをやっているのは「個別企業」なんですから。

 早野 おかしいよなあ。

 志位 「個別企業」のことを答えないといったら、国会の国政調査権というのは、「個別企業」に及ばないのか、「個別企業」は「聖域」なのかということになるわけです。「個別企業」であっても、とくに大企業の場合には、大きな社会的責任を負っているわけですから。

 早野 アメリカなんかやっていますからね。

 志位 そう。ビッグスリー(自動車大手三社)などを(議会に)呼んでやっているじゃないですか。ですから、日本も当然、お呼びして。

 早野 こういうへっぴり腰はけしからんな。

 志位 きちんと雇用に対する社会的責任を果たしてもらう。これが一つです。

景気対策――どうやって内需を活発にしていくかの総合対策を

 志位 もう一つは、景気対策です。(昨年十―十二月期の)国内総生産が年率換算で12・7%落ちた。これは、日本の経済があまりに外需だのみで、内需を痛めつけてきた、このツケがまわってきた。ヨーロッパの落ち方がだいたい5ポイント、アメリカが3ポイント。日本がケタ違いに悪いわけです。それだけ脆弱(ぜいじゃく)でもろい経済をつくってしまった。そのもとで、いかに内需を活発にしていくか。それを考えるさいには、雇用の問題、社会保障の問題、農業の問題、あるいは税金の問題、いろいろな問題での抜本的な総合対策が必要になってくるわけですね。

 早野 全くそのとおりですね。

 志位 雇用の問題も、「派遣切り」「非正規切り」を許さないということとともに、いかに新しい雇用を創出するかということも、大きなテーマとしてやらなくちゃいけない。

 早野 どうしたらいいか。どういう方向性で考えていらっしゃるのか。もっと財政出動すべきだとか。

 志位 適切な財政出動は当然必要です。とくに社会保障については、医療の問題、介護の問題など、それぞれがたいへんな状況になっていますから、これまでの(社会保障費)抑制路線を抜本的にあらためて、拡充の方向にカジを切る。社会保障にたいする手厚い支出ということは、断固やらなきゃならないと思います。

 雇用の問題でいいますと、雇用破壊を許さないということとあわせて、新しい雇用をどうつくっていくか、これが必要になってくる。そのためには、本当のワークシェアリングをやる必要があります。たしかに一方で、製造業の方はラインが止まっているという状況もあります。ところがサービス業などをみると、あいかわらず「過労死」寸前の長時間労働、「サービス残業」をやらされているという実態がある。異常な長時間労働、「サービス残業」をなくせば、そこに新たな雇用が出てくる。それが本当のワークシェアリングです。

 それから、介護や医療など、福祉の分野の雇用を増やす。これは、雇用を改善してそこから需要をつくるという点でも、福祉を良くして家計を直接応援するという点でも、経済をよくするうえでもいろいろな効果がありますから。ぜひそれも大いにやる必要がある。そういう、新しく雇用をつくりだしていくという仕事もやっていく必要があります。

 早野 これは本気でやらなくちゃいけない。

 志位 それから農業の再生です。後継者の方々が、どんどんつくれるような、みんな農業に戻って来られるようにしていくために、価格保障、所得補償ということに力をいれてとりくむ必要がある。いろいろな形で内需をどうやって活発にするかという議論を、ぜひやる必要があります。

 早野 それをまず、論議をしっかりしてもらいたいですね。国会でね。

 志位 雇用と景気、この二つの仕事については、時間をとって集中審議をやる。テレビ(中継)も入れて、しっかり国民のみなさんの前で国会として仕事をする。

 雇用の問題は、国会として国政調査権を発動して、企業の社会的責任を問う。景気の問題も政府予算案が出ていますが、これでいいのか。根本的な修正、あるいは見直しが必要ではないか。私たちは組み替え案を出していますが、これでいいのかを国会として議論する。国会が仕事をするときだと思いますね。

論戦とたたかいで解散に追い込むことと、国民の要求・苦難にこたえる活動を両面で

 早野 本当にそう。組み替え案なんていう議論をしていかなきゃいけない。それと国会の体たらくについて、たとえば、麻生さんが「郵政民営化反対だった」、小泉(元首相)さんは「なんだおまえ」と、こんな感じで展開している。この問題についてはどう思いますか。

 志位 根本には「構造改革」路線が、みんな破たんしているという問題があると思います。つまり郵政民営化をやればバラ色になるといっていたけれど、地方の郵便局が閉鎖される、「かんぽの宿」問題みたいな新しい利権が出てくる。マイナスが次つぎと露呈してきました。それから地方の問題でも、鳩山総務相自身が「三位一体は失敗だった」といった。深刻な地方の疲弊という問題が起こっている。「構造改革」でやってきた「目玉」とされていたことがみんな実態的に破たんしているということが根っこにあるわけですね。

 そういう事態について、じゃあ麻生政権はどうするかというと、破たんした「構造改革」路線を「間違っていました。あらためます」ということもできないわけです。(「構造改革」を)「もっとやります」ということもいえない。両方ともいえない。

 早野 「実は反対だった」といってみたりする。

 志位 そう。どっちつかずで「実は反対だった」ということをいう。しかし、「実は反対だった」ということになると、自民党は党をあげて国民をだましていたのかという話にもなってくるわけですから、これはこれで大変な国民との関係で矛盾であり、背信ということになってくる。一方で小泉さんが「笑っちゃうよ」というんだけれど、小泉さんがやってきたことこそ反省しなきゃいけない。そういう人がいまさらノコノコ出てきて、モノをいう資格があるのか、ということを私はいいたいですね。

 早野 どっちもどっちということですか。

 志位 どっちもどっちの内戦状態になって、自民党は政治的にも組織的にも解体がすすんでいるという状況だと思います。

 早野 中川財務大臣の酩酊会見というのは、これは論外という一言でしょうか。

 志位 これはもう政治以前の問題で、論外ですが、いまの麻生政権が国民の生活にたいして、あるいは経済をどうやっていくかということにたいして、いかに無責任かということを象徴しているような一つの出来事だと思いますね。

 私たちはこういう状況のもとで、論戦とたたかいで解散・総選挙に追い込んでいくということを一方でやりながら、もう一方で、雇用や景気など国民が本当に解決を願っている問題について、打開策をしっかり示し、現実の苦難を軽減していきたい。

 早野 そっちもちゃんとやってもらわないとね。ただ解散・総選挙だということだけでは、ちょっとこれはすまないなと、私も思う。

 志位 そう。両方が大事です。私たちは、解散して信を問えということを一貫していっていますけれど、同時に、目の前で「派遣切り」にあって路頭に迷っている方がたくさん出ている。一体これをどうするのか。景気がこんなに落ち込んじゃった。これをどうするのか。こういう問題についての答えを政治は責任をもって出すということを、しっかりやっていかなければなりません。

 早野 いてもたってもいられない政治状況ですが、解散はどのあたりを目途にしているのですか。

 志位 目途といっても、当の本人たちがわからない状況ですから(笑い)。ただ、ここまで統治能力がなくなっているという状況では、予算が一段落ついたあとは、いつでも解散・総選挙になりうる状況だという緊張感をもって、選挙では必ず勝てるようにがんばりたいと思っています。